◇◆ 摩耶、割引券を思い出す ◆◇
「高雄姉、愛宕姉。お昼はさ……アタシ、提督からもらった割引券があるんだけど……。」
摩耶が肘にかけたランジェリーショップの紙袋をぎゅっと握りながら言うと、高雄と愛宕が興味を示した。
「どこかしら?」
「提督と時々行ってるイタリアン。ほら、少しいった角にある……」
「……あの店ね!」
高雄と愛宕が同時に声を上げる。
(えっ、ちょっと待て……なんで姉さんたちが知ってんだ!?)
「えっ、高雄姉と愛宕姉、あそこ行ったことあるの?」
「ええ、何度か行ったことがありますわ。落ち着いた雰囲気でとても素敵なお店よね。」
「私も大好き♪ 摩耶と提督の行きつけなのね~♪」
愛宕が楽しそうに微笑む。摩耶は少し照れながら「ま、まあな」と答える。
(ちょ、なんか“夫婦の思い出の店”みたいになってない!?)
「お昼少し前だけど、人気のお店だから席空いてるかしら?」
高雄がふと呟く。
◇◆ 摩耶、予約の恐怖に震える ◆◇
(……そうだ、やべっ! 提督と行くときは、念のため予約してたんだった!)
摩耶の脳内に警報音が鳴り響く。
\ピコンピコンピコン! 摩耶、予約確認せよ!!/
(これ、もし満席だったら……高雄姉と愛宕姉の期待を裏切ることになる……!?)
(いや、ちょっと待てよ……これで予約が取れなかったら、アタシが“段取りもできないダメな妻”みたいになるじゃねーか!!)
摩耶は反射的にスマホを取り出す。
(壁紙は—— 提督とのツーショット。)
思わず顔が緩む。
(……って、顔を緩めてる場合じゃねえ!!!)
摩耶はスマホの連絡先一覧をスクロールし、登録済みのレストランの番号をタップする。
(頼む、席空いててくれ……!!)
トゥルルル……トゥルルル……
(心臓が……心臓が……! ドクンドクンしてる!!!)
「はい、イタリアン○○でございます!」
摩耶はドキドキしながら口を開く。
「あの……、今から三人で行きたいんですけど、大丈夫ですか?」
焦りで声がうわずる摩耶。
「そのお声は……摩耶様ですね! もちろんOKです! お待ちしております!」
(……っ!!!)
「よ、よかった!! ありがとう!!」
安堵のあまり、店員さんに思わず大声でお礼を言う摩耶。
(あぶねぇぇぇぇ!!! 夫婦でデートしてる店で大失態を犯すところだった!!!)
◇◆ 摩耶、予約成功で姉たちに褒められる ◆◇
「うふふ、摩耶、よかったわね。」
「さすが摩耶、しっかりしてますわ。」
高雄と愛宕が優しく微笑みながら摩耶を見つめる。
(な、なんだこの姉たちの“しっかり者の妹を見守る目”は……!!)
(アタシ、別にそんなにしっかりしてるわけじゃないんだけど!?)
摩耶はホッと胸を撫で下ろしながら、少し誇らしげな顔をする。
(よし、やってやったぜ!)
◇◆ 三姉妹、レストランへ向かう道すがら ◆◇
予約が取れたことで、摩耶の足取りも軽くなった。
「ねえねえ、摩耶。提督とはいつも何を食べてるの?」
「えっ!? い、いや……普通に……イタリアン?」
(イタリアンでイタリアン食べるのあたりまえだろアタシ!)
(それに,「イタリアン?」って、なに「?」つけてんだよアタシ!)
「摩耶も提督さんも甘いもの好きだから、デザートとか楽しみにしてるんじゃない?」
「そ、そ、そ、そう……かも?(顔真っ赤)」
(姉さんたちの勘、鋭すぎる……)
「じゃあ摩耶は、提督とデザートをシェアしたりするの?」
「ふぇっ!? そ、そんなことしねーよ!!」
「ふふっ、可愛い♡」
(おい!! なんだこの“妹の恋バナにテンション上がる姉たち”みたいな空気は!?)
摩耶は冷静を装いながらも、内心大パニックだった。
◇◆ レストラン到着! ◆◇
お店の前に到着した三人。
「ここね、やっぱり素敵なお店。」
高雄が静かに呟く。
「ふふっ、楽しみね♪」
愛宕がウキウキとした笑顔を見せる。
(……提督と何度も来たお店だけど、今日は姉さんたちと一緒か……)
(なんか……ちょっと不思議な感じ……)
「じゃあ、入るぞ。」
そう言って、摩耶は意を決してドアに手を伸ばす。