◇◆ 姉たちの完璧すぎるサポート ◆◇
「マルゲリータだ!」
店員さんがピザを運んできた瞬間、摩耶は つい本音が口をついて出た。
自分で言った瞬間、(しまった……!)と思うが、目の前にあるピザの 鮮やかな赤いトマトソースと、とろけるチーズの誘惑 には抗えない。
愛宕と高雄が、 優しい笑みを浮かべながら 摩耶を見つめる。
(なんか、姉さんたち、すごく微笑ましそうにアタシのこと見てるんだけど!?)
摩耶が 妙な気恥ずかしさ を覚えながらもピザに手を伸ばそうとすると、高雄が スッとナイフとフォークを持ち、手際よくピザを切り分け始めた。
「はい、摩耶。」
「お、おぅ……」
(さすが高雄姉、完璧すぎる……!)
三人はキールのグラスを片手に、 マルゲリータの味を楽しむ。
口の中に広がる トマトの酸味とチーズのコク。
「美味しいですわね。」
「ほんと、ここのピザは最高よね~♪」
摩耶も 頷きながらピザを頬張る。
(ふぅ……ようやく落ち着いてきたぜ……)
──と、安心し始めた瞬間。
◇◆ 悪魔が微笑む ◆◇
「ねぇ、摩耶。」
愛宕が 無邪気な笑顔で キールのグラスを揺らしながら言った。
「もう少しお酒欲しくない?」
「えっ」
摩耶の 思考が一瞬停止する。
(な、なにこの流れ!? アタシ、なにか試されてる!?)
「摩耶、お薦めある?」
愛宕の満面の笑顔。
……だが、ほんの少しだけ悪魔が顔を覗かせている。
(やばい、なにかの試練だ……!)
摩耶は 焦りながらも、必死に脳内の記憶を総動員する。
思い浮かんだのは、提督と初めてデートで頼んだロゼのシャンパン…… あれだ!
「ロ、ロゼのシャンパン……?」
なぜか 最後に「?」がついてしまう。
「ロゼ♪ いいわね!」
高雄が 即決で店員さんを呼ぶ。
(ちょ、ちょっと待ってくれ! まだ心の準備が……!)
店員さんは にこやかにメニューを差し出した。
「今日のシャンパンのリストはこちらになります!」
(……ん?)
摩耶は 目を凝らす。
メニューの文字は、 見慣れない単語のオンパレード。
(うわっ、なんかフランス語っぽい謎の単語ばっかり並んでる……!)
なんとか記憶を呼び起こし、 提督と飲んだロゼのシャンパンを探す。
確か、 上から二番目 だったような……?
(よし……! これだろ!)
指を伸ばそうとした その瞬間──
「そういえば、新しい酒屋さんと提携して、今日からメニュー変わったんですよ~(テヘペロ)」
(……は?)
摩耶の指が 宙で静止する。
(メニューが変わった……だと!?)
(順番も変わってる!? どれだ、どれを選べばいいんだ!?)
(そもそも「テヘペロ(・ω<)」ってなんだよ!!!)
「……」
摩耶の額に じわりと冷や汗が滲む。
このまま適当に選んで、 変なのを頼んでしまったら……!
◇◆ 姉のアシスト、炸裂 ◆◇
「摩耶たちがいつも飲んでいるロゼのシャンパンと 香りが似てるのってどれかしら?」
愛宕のアシスト、炸裂。
店員さんの目が キラリと光る。
「それでしたら、こちらの***(←摩耶には何を言っているのか分からない)がお薦めです!」
(……***? なんかすごくフランスっぽい響きなんだけど!?)
愛宕は 満面の笑みで即決。
「じゃあ、***をボトルでお願い♪」←完璧な発音
「かしこまりました!」
(決まった!!!!!)
摩耶、唖然。
(愛宕姉、つえぇ……!)
高雄も 優雅に微笑みながら、グラスを傾ける仕草をする。
「今日は三人ですものね。グラスではなく、ボトルで頼むのも良いですわね。」
「ボトルの方がゆっくり楽しめるものね~♪」
高雄と愛宕が 大人の余裕を見せつけながら、さらりと会話を続ける。
摩耶は 無言で二人を見つめた。
(アタシ、この姉たちに一生勝てる気がしねぇ……!)
「摩耶、今日は良いお酒になりそうね♪」
愛宕が 楽しげにウインクする。
摩耶、 一言だけ呟いた。
「……敵わねぇ……」
──そして、摩耶のドタバタなランチタイムは、まだまだ続くのであった。