◇◆ デザートタイムも戦場 ◆◇
「もんて……なんとか?」
「ずこっと?」
摩耶は未知のワードに困惑していた。
(なんだこの聞いたことない名前……!?)
摩耶は自分のティラミスを注文したあと、姉たちのオーダーに耳を傾ける。
「モンテビアンコと……愛宕はズコットね? お願いしますわ♪」
高雄が流れるように店員さんへと伝えた。
愛宕も満面の笑顔で頷いている。
摩耶、完全に取り残される。
「……それ何? 美味しいの?」
「ええ、もちろん♪」
愛宕はキラキラと輝く笑顔で即答。
高雄も優雅にメニューを閉じながら微笑む。
「モンテビアンコは……モンブランね!」
「ズコットはね~、チーズのケーキかな? ふわっふわで、とっても美味しいの♡」
「へぇ……」
(いや、なるほどって言ったけど……やっぱピンとこない……)
摩耶の脳内には**???**が飛び交っている。
◇◆ デザートとブラックコーヒー、到着 ◆◇
デザートの注文を終えた直後、高雄がふと思い出したようにメニューを見返す。
「そういえば、食後のコーヒーを忘れていましたわ。摩耶、ブラックで大丈夫?」
「えっ? あ、あぁ……」
(姉さんたちといると、注文し忘れに気づく前にカバーされるんだよな……)
「じゃあ、三人ともブラックで♪」
愛宕が軽やかに店員さんに伝えた。
「かしこまりました。デザートとご一緒にお持ちいたしますね!」
そして数分後——
「お待たせしました~!」
店員さんがサービスワゴンを押しながらテーブルへと近づいてくる。
ワゴンには、三人分のデザートとブラックコーヒー、そして砂糖とミルクのセットが綺麗に並べられていた。
(……このレストラン、ほんと格式高いな……)
摩耶は少し緊張しながら、ワゴンの上のデザートに目を向ける。
「ティラミス、モンテビアンコ、ズコット、そしてブラックコーヒーになります♪」
目の前に置かれたふわふわのティラミス。
ココアパウダーがたっぷりとかかり、スプーンを入れればすぐに崩れそうな柔らかさ。
「……やっぱ、これだよなぁ」
摩耶はティラミスを前に自然と笑顔になった。
しかし——戦場はここからだった。
◇◆ 「あ〜ん」の罠 ◆◇
「はい、摩耶、あ~ん♡」
「……っ!?!?」
「ほらほら、食べてみて♪」
愛宕がズコットをすくったスプーンを、摩耶の口元へ。
摩耶は一瞬ためらったが、シャンパンの酔いもあって抵抗する気力がない。
(なんかもう、流れに身を任せるしかねぇ……!)
「……あ、あーん……」
パクッ。
「……んっ、ふわっふわ……!」
ズコットの優しい甘さとクリーミーな食感が口の中に広がる。
「どう? 美味しいでしょ♪」
「……お、美味しい……!」
摩耶がぽつりと呟くと、愛宕が満足げに微笑む。
「ふふっ、じゃあ今度は私のモンテビアンコね♪」
高雄がスッとスプーンを差し出してきた。
「えっ、また!?」
「もちろん♪」
(うぅ……こうなったらもう……!)
摩耶は観念して、再び「あーん」。
口の中で栗のペーストがふわりと広がる。
「……っ、これも、うめぇ……!」
「でしょう?」
◇◆ 摩耶、撃沈 ◆◇
満足げな高雄と愛宕。
摩耶はほのぼのとした空気に包まれながらも、じんわりと恥ずかしさを感じ始める。
(……なんか、こういうのって……)
(提督とやってるのと似てねぇか!?)
と、その時。
「摩耶、提督にも『あ~ん』してもらってるかしら?」
バンッ!!!
摩耶の脳内で何かが爆発した。
「~~~~っっ!!!?!?」
摩耶はスプーンを持ったままフリーズ。
(な、何!? なんでここで提督の話が出てくんだよ!?!?)
愛宕は相変わらずの眩しい笑顔。
「ねぇねぇ、どうなの? してもらってるの?」
「……し、し、してもらってる……かも?」
(なんで疑問文で返事してんだよアタシ!!)
高雄はクスッと笑って、優しく微笑んだ。
「摩耶、小さい頃から動揺すると語尾が上がるの、変わらないのね♡」
「ちょっ……そ、そんなんじゃねぇし!!」
「ふふふっ♪」
摩耶は顔を真っ赤にしながら、自分のティラミスをすくった。
「……も、もう知らねぇっ!!」
スプーンを口に運ぶと、ほろ苦いエスプレッソの香りがふわりと広がる。
摩耶の大好きな味。
愛宕と高雄の優しい笑い声が、テーブルを包み込んでいた——。