◇◆ 最後の砲撃? ◆◇
デザートの余韻を感じながら、摩耶はほっと息をついた。
甘いものとブラックコーヒーの組み合わせは、最高の締めくくりだった。
そんな中、店員さんが 伝票 を持ってきた。
「お会計になります。ご一緒でよろしいでしょうか?」
「ええ、まとめてお願いしますわ。」
高雄が 何の迷いもなく、スッと伝票を受け取ろうとする。
……が、その手を 摩耶が素早く制した。
「ちょっと待った!」
高雄が 驚いたように瞬きをする。
「下着も買ってもらったし、今日はアタシが払うよ。」
「えっ……摩耶が……?」
愛宕が 目を丸くして摩耶を見つめる。
普段なら 絶対にありえない 宣言だった。
「だ、だって割引券もあるしさ。姉さんたちにご馳走するの、アタシもやってみたいっていうか……」
摩耶は 少し恥ずかしそうに視線をそらし、指でナプキンを弄る。
そして、ほんの少し口を尖らせながら、ぽつりと呟いた。
「……提督が、昨日の夜にお小遣いくれたし……」
──沈黙。
愛宕と高雄が ピタリと動きを止めた。
(……あれ? なんか、変なこと言ったか?)
摩耶が そっと視線を上げると──
「……」
高雄は 優雅な笑みを浮かべつつも、どこか呆れたような目で摩耶を見つめ、
愛宕は 何かを耐えるようにプルプルと肩を震わせていた。
(な、なんだ!? なんでそんな顔してんだ!?)
「摩耶……それは……」
高雄が 静かに微笑む。
「完全に、のろけですわね♡」
「なっ……!?」
摩耶の顔が 一瞬で真っ赤 になる。
「ち、違っ……そんなんじゃねぇって!!」
「うふふっ♪ 提督さん、ちゃんと摩耶のこと甘やかしてるのね~♡」
「ちょっ、待て!! 甘やかすとかじゃなくて……なんつーか、その……!」
摩耶は 言葉を詰まらせながら、必死に弁解しようとするが──
(……いや、よく考えたら、コレ、完全に甘やかされてるよな!?)
(いやいやいや!!! 違う! 提督はアタシが困らないようにしてくれてるだけで!!)
(……でも、お小遣いって……いや、やっぱ甘やかされてるな……?)
摩耶の 思考が混乱の渦に飲み込まれる。
愛宕は 「ふふっ♪」 と優雅に微笑み、テーブルに頬杖をつきながらウインクする。
「提督ったら、ほんとに摩耶に甘いのね♡」
「そ、そ、そ、そんなことねぇしっ!!!」
摩耶は 勢いよく伝票を掴み、テーブルを立ち上がる。
顔は 耳まで真っ赤 だった。
「いいから、ここはアタシに任せとけって!!」
「ふふっ、じゃあお言葉に甘えて♪」
高雄が 微笑みながらナプキンをたたむ。
(……くそっ、また姉さんたちにやられた……!!)
摩耶は 悔しさを滲ませながら、レジへと向かった。
◇◆ 休日の午後、姉妹の穏やかな時間 ◆◇
レストランを出ると、心地よい午後の日差しが降り注いでいた。
摩耶は ふぅっと息を吐きながら、肘にかけたランジェリーショップの紙袋を見下ろす。
ほんの数時間前のことなのに、やたらと 濃厚な時間 を過ごしたように思える。
(朝から考えると、マジで大変な出撃だったよな……)
(途中、何回轟沈しかけたことか……)
でも――
(……なんだかんだで、楽しかったな。)
摩耶は 姉二人の横顔を見つめた。
二人は 楽しそうに話している。
高雄は 姿勢正しく凛とした美しさ を漂わせ、
愛宕は 柔らかく優雅な雰囲気 を纏っている。
(姉さんたち、本当に綺麗だよなぁ……)
道行く人たちも、チラチラと振り返る。
(……でも、アタシも少しは大人の雰囲気、出てたのかな……)
摩耶は ちょっとだけ誇らしい気持ちになった。
◇◆ 姉たちの最終砲撃 ◆◇
「じゃあ、そろそろここでお別れね♪」
愛宕が微笑みながら、角を指差した。
ここを曲がれば、摩耶は 提督と暮らすマンションへ、姉たちは 鎮守府へ帰る。
「明日ね、摩耶♪」
「またね、摩耶♪」
「おう! 今日はありがとな!」
摩耶は 清々しい気持ちで手を振る。
姉妹の楽しい休日デート。
その余韻を感じながら、母港(マンション)へ戻ろうとした…… その瞬間。
「あっ、そうだわ♪」
…… 高雄の、妙に弾んだ声が聞こえた。
(……嫌な予感がする。)
摩耶は 慎重に振り向く。
「今日提督に、買った下着を見せて差し上げますのよね?」
「……は?」
摩耶の 脳がフリーズする。
さらに、愛宕が全力の笑顔で追撃する。
「提督の反応、ちゃんと聞かせてね♪」
(ズドン!!!!)
摩耶、被弾。
(アタシの激戦は……まだ終わってなかった……)
摩耶は 青空を見上げ、静かに決意した。
(帰ったら、まずシャワーだ。冷静になろう。話はそれからだ。)
── 摩耶の戦いは、まだ終わらない。