◇◆ 摩耶、未知との遭遇 ◆◇
摩耶は、紙袋の中から黒のショーツを取り出し、指先でつまんでそっと明るい方へかざした。
「……」
「そういえば、『てぃーばっぐ』って言ってたな……」
違和感が、じわじわと脳を侵食してくる。
「え、ちょっと待て……白のショーツより……布、少なくね?」
まじまじと眺める。
「……少なくね……?」
白のショーツは、まあ普通に見慣れた形だった。しかし、この黒いのは何かが決定的に違う。
「……えっ、なにこれ……」
手に持ったショーツをひっくり返してみたり、前後を入れ替えてみたりするが、見れば見るほど、何かが致命的に足りないような気がしてならない。
「……なんかスースーしそう……」
脳の処理が追いつかず、摩耶はショーツを片手に呆然と立ち尽くした。
「……ていうか、これ本当に合ってるよな……?」
◇◆ まずはブラから! ◆◇
(ショーツは……まだよく分かんねえし……まずはブラからだな。)
摩耶は、白のブラをはずし、黒のブラを手に取る。
指先で触れた瞬間、わずかにシースルーの感触が伝わった。
「……ちょ、待て、透けてねえか?」
指を入れてみると、ほんのり透けて見える。
「……まじかよ……」
摩耶はゆっくりと息を吐き、覚悟を決めると、くるりん方式でブラを装着!
もちろん、「寄せて上げる」も忘れない。
「……」
鏡の前に立ち、じっと自分を見る。
そして、次の瞬間――
「……なっ!?!?!?」
摩耶、衝撃。
(……えっ、何これ、誰これ!?)
黒のランジェリーが、想像以上に雰囲気を変えていた。
今までの自分とは違う 「大人の女」 の魅力が漂っている。
「……っ!!」
普段の自分とは、何かが 決定的に違う 。
これまでは 「元気溌剌な摩耶」 。
戦うための身体。鍛え上げられたしなやかな筋肉。
しかし今、鏡の中には――
「……えっ、ちょ、なんか……色っぽくね……!?」
摩耶、超困惑。
レース越しに肌がうっすらと透けて見える。
(……これ、思った以上に、えっ……えっ!?)
軽く背筋を伸ばしてみる。
すると、胸元のレースがよりフィットし、まるで肌と一体化したかのような密着感を覚えた。
(え、ちょ、なんか……やたらと大人っぽいんだけど!?)
摩耶、再び混乱。
黒のランジェリーが、肌の白さを引き立てている。
純白のときの「清楚で可憐な雰囲気」とは異なり、今は確かに 「大人の女性」 そのものだった。
「……」
軽く胸元に手を添えてみる。
(……寄せて上げる……って、こういうことだったのか……)
試着室で姉たちと一緒に「寄せて上げる」を実践したときよりも、はるかに実感が湧く。
思い出すのは、シャワールームでの高雄の姿。
湿った髪をかき上げながら、しっとりとしたランジェリーを身につけていたあの姿……。
そして、ランジェリーショップでの姉たちの言葉。
『黒は大人っぽくて素敵よね♪』
『摩耶にぴったりだと思うわ♪』
「……」
摩耶はもう一度、自分を見つめる。
(……姉さんたちが言うなら……アタシにも似合ってるってこと、なのか……?)
唇を軽く噛み、ポツリと呟く。
「……悪くねえ……」
予想外に ご満悦 になる摩耶。
◇◆ そして黒の奇襲 ◆◇
「……次は、ショーツだな……」
摩耶は覚悟を決め、白いショーツを脱いで傍らにそっと置き、黒いショーツに足を通した。
(……えっと、前は……こっちでいいんだよな……?)
確認しながら、ゆっくりとショーツを引き上げる。
「……!」
途端に襲いかかる、未知の感覚。
「え、ちょ、なにこれ……」
(な、なんか……布が……思ってたより……どこにも無い……?)
背後――いや、おしりの感覚がおかしい。
「えっ? えっ? あれ? 布、どこいった???」
◇◆ そして摩耶、覚醒 ◆◇
『ショーツは「てぃーばっぐ」タイプね♪』
『素敵なコンビネーションね!』
「……てぃーばっぐ……」
摩耶はキッチンに置いている紅茶のティーバッグを思い浮かべる。
「…………」
「………………」
「てぃーばっぐって……Tバック!!?? そういうことぉぉぉ!?!?!?」
摩耶の中で、すべての点が繋がった。
「ちょ、待って!! これ、違う!! アタシの知ってるティーバッグじゃない!! 紅茶じゃないの!? いやいやいやいや!!」
摩耶の叫びは、誰に届くこともなく、ただ静かな部屋に虚しく響くのであった――。