◇◆ 摩耶、提督の腕の中 ◆◇
浴室の照明は柔らかい。
摩耶と提督はシャワーで軽く身体を流した後、二人で温めのお湯に浸かっていた。
ゆったりとした浴槽で、摩耶 「いつもの姿勢」。
湯船に浸かっている提督の足の間に座り、上体を預ける。
ゆっくりと深く呼吸しながら、背中に伝わる提督の温もりを感じる。
優しく抱きしめられながら、摩耶は穏やかに目を閉じる。
(……あったかいな……)
この安心感に包まれていると、心まで溶けてしまいそうになる。
提督の腕に、いつものように包み込まれている。
「……落ち着く……」
頬を緩ませながら、摩耶は 小さく頷く。
夫婦でゆっくり浴槽に浸かるデイリー任務、一日の終わりのご褒美……。
そして――摩耶は、口を開く。
「昨日話したけどさ……今日、高雄姉と愛宕姉とデートしてきたんだよ」
提督が穏やかに微笑みながら、摩耶の髪を指で梳く。
「ランジェリーショップに連れてかれてさ……」
◇◆ 三姉妹@ランジェリーショップ ◆◇
「あの二人が『摩耶に似合うのを選んであげる』って言い出して聞かなくてさ……」
摩耶の声が、どこか嬉しげに弾む。
「すっげぇオシャレで大人な感じの店だったんだけど……あそこ、高雄姉と愛宕姉の行きつけらしいんだよな」
提督が軽く頷く。
「それでさ、なんか……超大人っぽいやつを試着させられて……」
湯の中でジタバタしながら、摩耶は勢いよく語る。
「アタシ、マジで鏡見て固まったっつーの!!」
「でさ!! 店員さんはすげぇ可愛い子で、高雄姉と愛宕姉の馴染みの子でさ……フィッティングのプロらしくてさ……めっちゃ似合うやつを選んでくれたんだよ」
摩耶は 湯に沈みそうな勢いで顔を赤くしながら、言葉を続けた。
「その子がさ……アタシたちが店に入ったとき、開口一番『美人三姉妹ですね!』とか言うんだよ!!」
「美人三姉妹か……」
「高雄姉と愛宕姉は即答で『よく言われます♡』とか言うし……!!」
提督が小さく笑うのを感じながら、摩耶は バシャバシャと湯を揺らしつつ もじもじする。
「……あの黒のランジェリー、すごく素敵だったよ」
「ッ……!!!!!///」
(て、提督のやつ……!!!)
摩耶の顔が、一気に熱くなる。
「そ、それで……」
摩耶は、話をそらすように一気に続けた。
「……高雄姉と愛宕姉がさ……ランジェリーをプレゼントしてくれたんだよ」
提督の手が、摩耶の頭を優しく撫でる。
「……そっか」
「うん……すげぇ嬉しかった……」
摩耶の声が少しだけ小さくなる。
「でもさ……なんか……素直に嬉しいって言えなかったんだよな……」
言った後、摩耶はバシャッと湯の中で足を動かす。
「も、もういい!! 次!! ランチの話!!」
◇◆ イタリアンでのランチ ◆◇
摩耶は 話題を変えようと必死になりながら、話を続けた。
「でさ、ランチはイタリアンの店に行ったんだけど……」
一瞬、言葉を切る。
そこは、摩耶と提督が 初めてのデートで行った店。
そして、今でも二人で時々食べに行く、思い出の店だった。
「たまに一緒に行ってるあの店……提督と最初にデートしたとこ……」
湯の中で、そっと提督の腕を握る。
摩耶の声が、どこか嬉しそうに弾んだ。
「それでさ、テーブルについてくれた店員さんが、あの顔なじみの……可愛い子でさ……」
「そんで、高雄姉と愛宕姉とも顔なじみでさ……注文する前にさ……『何となく感じていましたが……やっぱり、美人三姉妹でしたか!』って……」
摩耶は ぶわっと湯に沈みかける。
「……そこでも美人三姉妹認定されたんだな」
「……そ、そう、かも……」
摩耶は少し黙った後に
「さっき、ランジェリー、プレゼントしてもらったって言ったじゃん……。」
「だからさ……そのお返しに……ランチはアタシが奢ってやったんだぜ!」
「そうか……」
提督が微笑む。
「高雄姉も愛宕姉も……すげぇ喜んでた」
摩耶の声が、どこか誇らしげだった。
「姉さんたちの笑顔みて……なんだか、アタシも嬉しかったな……」
提督は何も言わず、摩耶をそっと抱きしめる。
(……こういうのって、いいよな……)
◇◆ 夫婦の時間 ◆◇
摩耶は、子供のように楽しそうに語っていた。
でも―― 今はケッコン「カッコガチ」した提督と一緒に湯船につかってる。
(……アタシ、こうやって……提督の腕に包まれて、一日の出来事を話してるんだ……)
摩耶の胸の奥に、 ぽかぽかとした幸福感が満ちていく。
摩耶は、前を向いたまま、しばし無言になる……
ゆっくりと息を整えるように、提督の腕の中に、再び身体を預ける。
(……なんか、幸せで……ちょっと、怖いくらいだ……)
摩耶は首を回して提督をそっと見上げる。
「提督……」
優しく名前を呼ぶ。
提督の顔がすぐ近くにある。
そっと目を閉じた摩耶を。提督が、摩耶を優しく引き寄せる。
静かな湯気の中、唇が重なった。
心臓が、ドキドキと跳ねる。
摩耶は、下を向いて、ぽつりと呟く。
「……ねえ……この後……夜戦(意味深)……なの?」
声はかすかに震えていた。
でも――
どこか 期待に満ちた甘い響きを孕んでいる。