◇◆ 摩耶、冷静になれない ◆◇
「ちょ、待っ……えっ!? やばいやばいやばい!! 提督……提督ぅぅぅぅ!!↑↑ どうしよどうしよどうしよ!!??」
寝室に響き渡る摩耶の絶叫。
(アタシ、完全に終わった……!!!!)
頭の中は真っ白。冷静に考える余裕なんてない。
(えっ、どうすればいい!? えっと、えっと……!)
「まずは……まずは……」
摩耶の脳が緊急稼働し、最優先事項をはじき出す。
(シャワーだ!!!!)
演習に間に合わない? いや、それ以前に、昨日の夜戦(意味深)の名残をリセットしないとダメだ!!!!
◇◆ 摩耶、焦りすぎて服を脱ぐ ◆◇
「よしっ……!!!」
寝間着のTシャツをバサッと脱ぎ捨て、ショートパンツもシュルッと下ろす。
(……パンイチ……ヨレヨレ……マルダシ……オッパイ……)
摩耶は一瞬思考が止まる。
(いや、オッパイとか言ってる場合じゃねぇ!!)
しかし、パニック状態の脳は、次に何をするべきか正しく判断できない。
(シャワー……シャワーだ……シャワー、どこだっけ……?)
寝室の中を、提督とデートした動物園の「くまさん」のように動き回る摩耶。
(「くまさん」……可愛かった……)
(……そんなこと思い出してんじゃねぇ!)
(落ち着け!! 落ち着けアタシ!!)
もはや自分が何をしているのかも分からなくなり、寝室の真ん中で立ち止まる。
「……アタシ、なにやってんの?」
寝ぼけた頭が、必死に状況を整理しようとする。
その瞬間――
◇◆ 提督、絶妙なタイミングで登場 ◆◇
ガチャ。
「摩耶、起きた? 今朝はゆっくりで大丈夫なのに……」
寝室のドアが開き、提督がひょこっと顔を出す。
「朝ご飯、準備できて……」
「えっ……」
摩耶の脳内システムがクラッシュし、目を見開いたままフリーズ。
「……あっ」
提督もフリーズ。
(……あ……)
摩耶は、寝室の鏡に映る自分の格好を横目で再確認。
(アタシ……パンイチ……ヨレヨレ……オッパイ……マルダシ……)
脳内の言語能力も失われていく摩耶。
「……っ!!!!」
摩耶の顔が、一瞬で真っ赤になる。
沈黙の後、頭の芯が妙に冷えるのを感じる摩耶。
そして、提督と一緒に観た映画のセリフが口から出ているのを、自分の耳で聞く摩耶。
「ド,ドアを開ける前に……ノックする習慣って……この世界から無くなったのかよ……」
(アタシなに言ってんの?……何言ってんだよ……何言ってんだよアタシ!!)
「えっ? なんか、叫び声が聞こえたから、心配になって……」
「……っ!!///」
「……?」
提督はポカンとした表情で首を傾げる。
(こ、こいつ……!! なんでいつも通りの顔してんだよ!!!)
◇◆ 摩耶、理不尽に甘える ◆◇
「提督!! なんで起こしてくれなかったんだよ!!!」
「今日アタシ朝イチで演習だって、知ってただろ!!」
「っていうか,提督がアタシたちのシフト決めてんじゃん!」
親に理不尽に逆ギレする寝坊した中学生のような摩耶。
摩耶はパンイチのまま抗議の目を向ける。
「ん?…… 昨日、お風呂タイムの時に言ったじゃん?」
「朝イチの演習、先方の都合で中止になったって」
「……は?」
「……え?」
摩耶の脳が、一瞬の沈黙を迎える。
(演習……中止……?)
「……昨日、高雄から連絡入ってたって……」
「…………」
「お風呂タイムに話したつもりだったんだけど……」
(……まじか……)
「それで……高雄が『他の子も含めて、午後イチにシフト変更済みですわ』って言ってたって……」
(高雄姉……やっぱ,頼りになる…………)
「そういえば……その後、愛宕が電話に出てきて……確か『今夜は摩耶に優しくね! 朝起きられなくさせちゃダメよ♡!』って言ってたような気がする……」
(愛宕姉ぇぇぇぇぇぇ!!!)
そして摩耶の思考は停止。
「……………………」
枕元の妖精さんが、新しいプラカードを掲げる。
プラカード『中破!(過負荷状態)』
妖精さんは、微妙に同情するような表情を浮かべている。
「………………(再起動中)」
「だから、朝はゆっくりでいいよって」
「……摩耶?」
「………………(再起動完了)」
(……ちょっと待て)
(……アタシ、昨日のお風呂タイム……夜戦(意味深)来るのかなって想像してたから……提督の話……頭に入ってなかった……?)
摩耶の脳内で、今までのパニック映像がフラッシュバックする。
(……あり得る……アタシ……何……?)
(パンイチで焦りまくって、ウロウロして……?)
膝の力が抜け、崩れ落ちそうになる摩耶。
(……マジで……アタシ…………アホの子じゃん……)
◇◆ 摩耶、最大の失態に気づく ◆◇
さらなる衝撃が、摩耶を襲う。
(……ん?)
摩耶は、自分の髪の感触に違和感を覚える。
(……なんか、髪……)
慌てて手ぐしを髪に通す摩耶。
指先に感じる、微妙な重さ。
(……そういえば……アタシ、昨日……髪、洗ってなくない……?)
電撃が走る。
(うわぁぁぁぁ!!!!)
摩耶の頭の中で、再び警報が鳴り響き始める。
昨夜、夜戦(意味深)に突入する前――
(アタシ「髪、あとでいいや」って言った!!!)
後でいいや、どころか、髪も体もそのまま。
(やっべえええええええ!!!!!!)
体をクンクンし、再び髪に手ぐしを通す摩耶。
(べ、別に臭ってないし、髪もベタベタじゃない……よな……セーフ?)
その瞬間――
「摩耶、いつもよりもっと良い匂いがする……」
「……は?」
提督の天然爆弾が炸裂。
「昨日の摩耶のまま、って感じ?」
「……っ!!!!」
摩耶、白目で膝から崩れ落ちはじめる。
枕元の妖精さん、すかさず新たなプラカードを掲げる。
プラカード『大破(精神崩壊)』
残念そうにため息をつく妖精さん.
崩れ落ちる摩耶をすかさず抱き留めた提督、摩耶の髪に顔を埋める。
「摩耶……」
提督の行為が摩耶にとどめを刺す。
(アタシ……提督にクンクンされてる!!)
「……摩耶の匂い……なんか安心する……」
(……オマエを殺して、アタシも死ぬ!!!)
摩耶の脳は、何回目かのオーバーロード状態に突入した。