摩耶の鎮守府日記   作:ワタナベ提督の鎮守府

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前書き、殆ど書かないのですが……

今回のお話には、少し昔のハリウッド映画が登場します。
タイトルは『ナイト&デイ』。主演はトム・クルーズとキャメロン・ディアス。
アクションとロマンスが混ざった、軽めのロマンティックコメディです。

どちらかというと“量産型”という印象があって、映画ファンの間ではそこまで評価が高い作品ではなく、忘れ去られていく作品かもしれません。
それでも、なぜか自分の中ではずっと記憶に残っていて、今でもふと思い出す、大好きな一本です。

今回のエピソードは、摩耶の心情にこの映画がどこか重なったような気がして、そこから自然に生まれました。

もし読んでいただいたあとで、「この映画、観てみようかな」と思ってもらえたら――
もしかすると、摩耶の感じた“あたたかさ”にも少し触れてもらえるんじゃないかと思います。


摩耶、映画を鑑賞す

◇◆ 映画鑑賞 ◆◇

 

夕ご飯を食べたあと、アタシは講堂の前を歩いてる。

夕方の風、なんか気持ちいい。

このあと予定もないし、高雄型はみんな任務しているし……

何して過ごそうかなぁ……

 

「……ん?」

 

ふと、壁に貼られたポスターが目に入る。

バイクに跨った銃を構える男女――。

ポスターの上には「綾波と敷波の映画鑑賞会」の文字.

 

アクション映画?

 

「ナイト&デイ……?」

 

このタイトル、見覚えがある気がする、誰かと観たんだっけ……。

何かを思い出しそうな感じがするけど、記憶は浮かび上がってこない。

 

そういえば、綾波と敷波、お気に入りの古い映画を上映する会、講堂で毎月やってたな。

この二人、映画好きで、でぃーぶいでぃーってのを二人で集めてるって、聞いたことあるような気がする。

 

講堂の扉は開いてて、中にはもう結構座ってる。

駆逐艦が多いけど、阿武隈とか羽黒さんとか……足柄さんとか!

榛名さんもいる。

ポスターはアクションっぽいけど、阿武隈とか羽黒さんとか足柄さんとか榛名さんとか来てるってのは……もしかしてロマンティックな映画だったりする?

 

このあと特に用事もないし……結局ふらりと中に入ってみる。

もともとアクション映画は嫌いじゃないし、たまにはこんな夜も悪くないよね。

 

そういや、上映会の前は、いっつも駆逐艦の子たちが講堂にパイプ椅子並べてたな……。

 

講堂の前方、綾波と敷波がトークしてる。

 

「本日上映するのは、私たちの大好きなアクションロマンティックコメディー! “ナイト&デイ”ですっ」

 

「主演はトム・クルーズとキャメロン・ディアス! 昔の大スターです.ちょっとお茶目で、でも最強なふたりの逃避行を、ぜひ楽しんでね!」

 

綾波のトークは元気いっぱい、敷波はちょっときょどってるけど可愛い。

このコンビ、なんか微笑ましい。

 

◇◆ 上映中 ◆◇

 

序盤、空港でのシーン――

偶然じゃなかったりする男と女の出会い。

 

最初の数分で、引き込まれる。

ユーモアの中にある緊張感、そして……なんか笑っちゃう。

 

銃撃戦。カーチェイス。

派手でスピード感あって、観てて気持ちいい。

 

でも、それだけじゃない。

ふたりの距離が、少しずつ近づいていくのがわかる。

 

ヒロインの表情。

最初は不安そうで、混乱してて、それでも――

男に、だんだんと心を預けていく。

 

気づくと、アタシの心も、揺さぶられてる。

 

……なんでだろ。

 

この感じ、知ってる気がする。

ふたりで走って、ふたりで隠れて、ふたりで笑う。

バカみたいに無茶で、でも一緒ならなんとかなるって、そう信じられる関係――。

 

銃声が響いて、爆発が起きて、ふたりは危険の中にいる。

でも……ヒロインは、安心した感じの顔してるんだよな。

 

大丈夫、って思える相手が、すぐそばにいるから。

 

アタシも、そんなふうに……誰かといたことが……あったっけ?

 

胸の奥が、ぎゅっとする。

 

なんか、忘れてたことを思い出しかけてる気がする。

でも、手を伸ばすと、指の隙間からこぼれてく感じ、なの?

 

終盤。

薬で眠らされてた男を、ヒロインが病院から連れ出すシーン。

不安なはずなのに、ヒロインは笑ってる。

彼を信じて、自分で連れ出したんだ――。

 

そのあと、車に乗ってふたりで旅を続けて、ラストは南の岬……ホーン岬。

 

雲一つない空。

砂浜と遠くまで続く海。

微笑みを交わすふたり。

 

――なんか、たまらなく胸に来た。

 

あの二人みたいに、無茶で、危なっかしくて、

それでも隣にいるのが当たり前みたいな誰かと――

そんなふうに並んで、いつか海を見たことがあったような……そんな気がした。

 

◇◆ 鑑賞後 ◆◇

 

上映が終わった後の講堂、なんか良い雰囲気。

阿武隈とか足柄さんとか、目が潤んでね?

 

綾波と敷波がちょっと照れながらお辞儀してて、それもまた、ちょっと可愛い。

 

アタシは静かに席を立って、みんなとパイプ椅子片付けるの手伝って、講堂をあとにする。

ゆっくりと歩いて、部屋に。

 

扉を閉めて、椅子に腰を下ろす。

カーテンの隙間から、月の光が床に差し込んでる。

 

「……」

 

なんか、気持ちが落ち着かない。

 

映画のシーンが、何度も頭の中を巡る。

笑い合うふたり。手を取り合って逃げるふたり。

静かな海辺で、肩を寄せ合って座るシーン――

 

最後、ヒロインが男に微笑むシーン。

あれ……あれ、なんか……すごく、懐かしい気がする。

 

アタシも――あんなふうに、誰かと並んで座って。

笑って。肩をくっつけて、海を見てたような……そんな、気がする。

 

そして――

誰かに、どこかから“連れ出してもらった”ことがあるような……

そんな気が、した。

 

いつだったっけ。どこだったんだろ。

思い出せないのに、こんなに胸があたたかいの、変だよな。

 

「……幸せな気持ち、なのかな」

 

不思議だけど、悪くない。

むしろ、すごくいい。こんな夜も、あるんだなって思う。

 

胸の奥に、小さな火が灯ってる気がする。

……なんか、いい夜だったな。

 

着替えて、ベッドに入るか――

 

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