コウノトリが来るか来ないかなんて、わかんないじゃん
アタシと提督は、母港が見下ろせるベンチに並んで座ってる。
星が綺麗で、港の明かりが、ゆらゆら水面に映ってて――
それを、ふたりして黙ったまま、ぼーっと見てる。
なんか、静かな夜。
話がある、て言われて……
(なんだよ、改まって)
(もしかして、プロポーズってやつ?)
そんなこと考えてたりもしたけど、港の明かりに照らされてる提督の横顔は……
悩んでる……そんな感じ。
アタシが口を開く。
「……もしかして、前に言ってた話の続き?」
「提督は、歳をとって、おじいちゃんになってくけど……」
「アタシは、ずっと若い超美人のまんまで、どうしよって?」
全力の笑顔で、茶化してみる。
提督は、ゆっくり首を横に振る。
(……………………)
「じゃあ……他に好きな子が出来ちゃったとか……?」
(……………………)
「……話してみなよ」
提督、つらそうに言葉を探してる?
(……………………)
「……艦娘に赤ちゃんが出来たって話……ないんだ……」
言葉を聞いた瞬間、妙に静かに、心の奥がしんとなった。
初めて聞いたけど……ビックリしてない。
――どこかで、うすうす知ってた気もする。
だから、アタシは全力で嘘をつく。
「そんなの……」
がんばれ、アタシ……
「そ、そんなの……知ってたし……」
(……………………)
(……………………)
提督が、親指でそっとアタシの頬を拭ってくれる。
アタシ、今……超不機嫌な顔作ってるはずなんだけど……
ほっぺた、濡れてる?
……涙、出てんのか、アタシ……
「アタシは……」
アタシは提督を見上げる。
(……………………)
提督が、なにか言おうとしてる。
「摩耶が……」
(……なに?)
「摩耶がいない人生だと……」
(……だから、なに?)
「摩耶がいない人生だと、私は幸せになれない……」
(……………………)
ばか………
そんな真っ直ぐな目で言われたら――
どうすりゃいいんだよ、もう……
アタシも、なんか言わなきゃって……
頭が真っ白になってるけど、言葉を絞り出して……
「て、提督が……ど、どうしても、アタシと一緒にいたいって言うなら……」
(な、なに言ってんのアタシ!?)
「……しょ、しょうがないから、ずっと一緒にいてあげる……」
(アタシ何言ってんだよ……!)
(……………………)
「コウノトリが……来るか来ないかなんて……」
「そんなの……」
「……そんなの……今、わかんないじゃん……」
未来のことは、わかんない。
でも、“今”の気持ちは、本物。
提督は、ふっと微笑んで――
「うん」
って、言ってくれた。
(……………………)
アタシは――
アタシは、提督にやさしく抱きしめられながら、
バカみたいに泣いた。
(……………………)
夜風が、そっと髪を揺らしていく。
港の明かりが、滲んで見える。
泣いてたけど……悲しいからじゃない。
なんか安心してる。
これから先も、きっと大丈夫だって思える。