摩耶の鎮守府日記   作:ワタナベ提督の鎮守府

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【日常 #02】日振型の逆襲/激闘編
摩耶、反撃開始


◇◆ いくぞ、アタシ ◆◇

キッチンからダイニングテーブルを眺めると――

椅子に、ちょこんと並んで座ってる日振、大東、昭南の三人。

大人サイズの椅子に、ちょっと背伸びするみたいに座ってて。

踵が浮いてて、ぶらぶら揺れてる足も、妙にかわいい。

 

提督はお誕生日席に。もちろん、アタシの指示。

「そこだ!」って言ったら、素直に座ったのがちょっと面白かった。

 

「手伝うね」って言われたけど、今日ばかりはぜってー却下。

アタシが全部、自分の手でやりたいんだよ。

 

三人の視線が、アタシに向いてるのを感じる。

期待と、ちょっとだけ不安が混ざったその目に――

 

(よし、いくぞ、摩耶)

 

◇◆ ハンバーグ、届けっ! ◆◇

両手に持った皿を、そっとテーブルに。

 

日振と大東の前に並べたのは、アタシ特製のハンバーグプレート。

ふっくらジューシーなハンバーグの上に、とろけるチーズと半熟目玉焼き。

黄身はとろり、白身はカリッ。

デミグラスソースはコトコト煮込んだ、玉ねぎと赤ワインの甘みたっぷり仕上げ。

 

付け合わせは、にんじんのグラッセと、バターソテーのいんげん、

それから皮付きのじゃがいもをほくほくに蒸して、塩バターで。

 

スープはキャベツとベーコンのコンソメ。やさしい味。

白いごはんは、小さなお皿にによそって、ふっくら。

 

「……わぁ……!」

 

日振の目がぱあって輝く。

 

「アタイ……アタイ……」

 

大東が、なんか言おうとしてるけど、目がきらきらしすぎて、言葉が出てこないみたい。

その顔があまりにも真っすぐすぎて――アタシ、笑いそうになった。

 

◇◆ 昭南には和の心 ◆◇

次に、昭南の前に、木のお膳をそっと置く。

和食のお手本みたいな、幽庵焼き定食。

 

鯛の幽庵焼きは、皮目パリッと、中ふっくら。

ゆずの香りがふんわり広がる。味噌汁はなめこと豆腐。出汁は、丁寧にとった合わせ出汁。

 

ごはんは、白くてつややか。

 

昭南はしばらく黙ったあとに、一言。

 

「……いい香り……」

 

それだけでいい。その一言で、アタシの中がぽかぽかにあったかくなる。

 

提督にも、昭南と同じお膳。

この幽庵焼き、仕込みから焼きまで、ほんとに丁寧にやったんだからな。

 

◇◆ 摩耶の席も完成 ◆◇

自分の分は――

チビたちとおそろいのハンバーグプレート。

でも、パンで合わせた。ミルクたっぷりの、ふかふかのテーブルロール。朝焼いておいたやつ。

 

アタシの皿だけ、ちょっとだけ色が落ち着いたトーンのプレートにしてある。

……こういうの、地味にこだわっちゃう。

 

提督はお誕生日席、アタシは湘南の隣で提督側、向かいには日振と大東。

 

反撃準備、完了。

 

「よし、全員そろったな!」

 

声をかけると、三人がぴしっと背筋を伸ばして、両手を合わせる。

 

「「「いただきますっ!」」」

 

アタシと提督も、手を合わせる。

 

(あれ……)

 

(“いただきます”って、こんな……嬉しいもんだっけ?)

 

提督の方を見ると、提督も優しい目でアタシをみてる……

 

 

◇◆ 「なんかちがう」 ◆◇

昭南が、お箸を小さく動かして、ごはんをそっと口に運ぶ。

 

「……ふわ……」

 

ぽつりとこぼしたあと、そっと口元を手でおさえて。

 

「なんか……あったかい、っていうか……」

 

「アタイも! アタイもそれ思った!」

 

大東がすかさず手をあげて、フォークを小さく握ったまま、口をとがらせて考え込む。

 

「いつもと……ちょっと違う……」

 

「ちがう?」

 

日振も、ちょっとだけ顔を傾けて、小さく切り分けたハンバーグをフォークで口にはこんでいる。

 

「……鎮守府の食堂のごはんも、おいしいけど……」

 

「これ……“アタイたちのためだけ”に作ってくれた味がする……」

 

「……うん……」

 

昭南が、小さく頷きながら言ったその言葉が、なんかもう、直球すぎて……

 

(あたしのごはん、そんな風に思ってくれるんだ……)

 

日振が、フォークを両手で持ちながら、すごくゆっくり言った。

 

「摩耶さんのごはん……ほっこりする……」

 

「……心がふわぁってなる!」

 

「……そう、それ……」

 

「おうちごはんだ!」

 

(大東、オマエなにいってんだよ……アタシ、泣くぞ!)

 

◇◆ 胸の奥の、あたたかい場所 ◆◇

アタシは、黙ってそれを聞いてた。

 

三人とも、たぶん“家庭料理”って言葉も知らない……

けど、それでも、伝えようとしてくれてる。

 

自分たちのためだけに作られたごはん。

誰かが、心をこめて、自分のために作ってくれた、ってこと。

 

(……なんか、感じてくれてんのかな……)

 

アタシ、こんな風に胸の奥がふわぁっとするの、はじめてかも……

 

あったかくて。

でも、ちょっと泣きそうで。

でも、泣くのとはちょっと違って――

 

(……なにこれ……)

 

(これ、たぶん……)

 

(お母さんが子供にご飯食べさせるって、こんな感じなのかな……)

 

そんなこと考えてる自分に、ちょっと驚いてるけど、悪くないかも。

 

(……こいつらの可愛さとか、提督の天然とか……)

 

(アタシの心ばっか揺さぶってきやがって……ずるいよな……)

 

(アタシだって、できるんだぞ――って、見せてやる)

 

そう思って

 

「冷める前に、いっぱい食べな!」

 

って声をかけると、大東が、ちょっと申し訳なさそうな顔して

 

「姉御……ごはん、おかわり」

 

って返してきた。

 

なんか、すごい嬉しかった。

 

嬉しくて、ちょっと泣きそうだった。

 

アタシが作ったごはんを“もっと食べたい”って言ってくれる子がいるんだ。

 

(……また、作ってやろ)

 

心の中で、こっそり、そう思った。

 

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