摩耶の鎮守府日記   作:ワタナベ提督の鎮守府

92 / 96
麻耶、追撃の準備

◇◆ スイーツ準備中の耳 ◆◇

 

スイーツの盛り付けに集中しながらも、アタシの耳はリビングの方に自然と向いてる。

日振、大東、昭南がソファでくつろいでる気配と――日振の声。

 

「ねぇねぇ、大東、昭南~……ケッコンって、いいよね?」

 

(……は? け、結婚……?)

 

一瞬、手が止まる。心臓がドクン、って音がした気がした。

 

◇◆ キラキラ三姉妹 ◆◇

 

「うんうんっ! アタイもそう思う~! 摩耶さんと提督さんみたいに、一緒にご飯つくって、お皿洗って……すっごく楽しそうだったもん!」

 

「提督さん、摩耶さんのこと、すごーく大事にしてるって感じしたし!」

 

「ねーっ! アタイも、将来は好きな人と、こんなおうちで暮らしたいなぁ~!」

 

(……ちょ、ちょっと待て……アタシと提督って、そんな“理想の夫婦”みたいな空気出てたのか!?)

 

あー……やば……顔、あったかい…… 恥ずかしいっつーの!

 

◇◆ 昭南の“名言” ◆◇

 

そのとき、落ち着いた昭南の声が、ふわっと入ってきた。

 

「……ケッコン……」

 

言葉を選ぶみたいに、ゆっくりと続ける。

 

「一緒に暮らすって……とても特別なこと」

「楽しいだけじゃない……」

「すべてを受け入れる覚悟が、要るはず……」

 

(湘南,意味わかってそうで,ちょっと怖い……)

 

「それでも一緒にいたいと思える相手がいるなら……」

「きっと、幸せ……」

 

(ほんと,意味わかってんじゃないの……?)

 

「うんうんっ! わかる気がする~!」

 

「アタイも~!」

 

(おまえらは,わかってねぇだろ……)

 

(いや、まて、アタシが子どもっぽいだけか?)

 

でもさ――

こいつらがアタシたちの姿を見て、“ケッコンいいな”って思ってくれるの、なんか……悪くない。

 

◇◆ まさかの矛先 ◆◇

 

そんなことをぼんやり思ってたら、昭南が急にこっちを見てきた。

 

「摩耶さんは、どう思いますか?」

 

(はぁっ!?)

 

いきなり振られて、脳みそが空回りする。

 

「えっ、ええと……」

 

フライ返しを握りしめたけど、いま焼いてるもん何もないし!

 

日振と大東が、満面の笑みで近づいてくる。

 

「摩耶さん、ケッコンについてどう思いますか~?」

 

「姉御、やっぱり提督さんとのケッコン、楽しい?」

 

「なっ、なに言ってんだよおまえらっ!」

 

(顔が熱い……絶対赤くなってる!)

 

◇◆ 攻めの姉妹、沈む摩耶 ◆◇

 

「そ、そんなの……考えたことねぇしっ!」

 

「でもでも~、一緒に暮らすのって、楽しそうじゃん!」

 

「提督さんのこと、好きなんですね……」

 

(うぐっ……)

 

「……まぁ、その……一緒にいるのは、悪くはねぇけど……っ」

 

「摩耶さん、幸せそう……!」

 

「姉御……最高……!」

 

日振と大東、目が少し潤んでる?

 

「ちょっと! 泣くなってば!」

 

◇◆ ずるい人 ◆◇

 

わけのわからん流れに巻き込まれてたら――

 

提督が、すっとアタシの肩に手を添えてきた。

 

「摩耶が一緒にいてくれるだけで、毎日が幸せ」

 

(日振型三人がみてる前で、アタシに何言ってんだよ!)

 

優しい笑顔に、アタシは思わず目をそらしたら――

 

「ありがとう、摩耶」

 

そう言いながら、アタシのほっぺに、提督がそっとチュウしてきた。

 

(顔、真っ赤だよ…… 嬉しいよ…… 泣きそうだよ……)

 

◇◆ 作戦行動開始! ◆◇

 

日振型三人が、再び固まる。

 

アタシはこのベストタイミングに、チビ達に指示を出す。

 

「とりあえず、スイーツ出す準備、終わらせっぞ」

 

「お皿、並べます!」

 

「アタイ、トレイ持ってくるーっ!」

 

「……ドーナツ、整列させます」

 

(おまえら、マジで可愛いな……)

 

「提督、片づけ終わった?」

 

「うん。あとは任せといて」

 

◇◆ ふっと、想像がよぎる ◆◇

 

アタシはふっと息をついて、カウンターからリビングを見やる。

 

日振、大東、昭南、そして提督――

ちっこい背中が三つ、その隣に、でっかい背中――提督を見てたら、なんか胸がキュッとなった

 

(……アタシが“ママ”になったら、どんな感じなんだろ)

 

(似合わねぇって思ってたけど……案外、悪くないのかな……)

 

そんな想像が、ふいに頭をよぎって――

 

(……って、アタシ、なに考えてんだよ……)

 

(艦娘は赤ちゃんができないかもなのに……)

 

(……でも……想像しちまう……もし、そうなったら……)

 

(うん……それも……悪くないかも)

 

アタシは思わず、ちょっとだけ微笑んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。