◇◆ デザートタイム、開始 ◆◇
冷蔵庫のドアを開けて、アタシはそっと自家製プリンをとりだす。
次に、ほんのり甘く揚げたドーナツを、軽くレンジでチン。
そして、日振たち作ってくれたクッキー。
この三種の神器を、アタシなりに盛り付ける。
(ふふん、見た目もバッチリ。完璧な布陣ってやつだ)
チビたちと提督が、並べるのを手伝おうと腰を上げた瞬間、アタシはビシッと指を立てる。
「座ってろ。今日はアタシが全部やんの」
「えええっ!? お手伝いしたいのにぃ~!」
「アタイ、スプーンだけでも並べられるよ!」
「……運搬なら任せてください」
(わかってるけど……でもな、今日は……)
「いいから、座ってろっての! そのぶん、うんまいの出してやっからよ!」
「「了解!!」」
三人そろってピシッと敬礼。
(くっ……可愛すぎんだろ、オマエら)
(あとさ……なんで提督まで敬礼してんの……?)
◇◆ 甘い香りの魔法 ◆◇
お皿をテーブルに並べた瞬間、ふわっとバニラとキャラメルの香りが漂う。
「やったー! デザートだーっ!」
「摩耶さんのプリン、絶対おいしいやつだーっ!」
「……盛り付けも……綺麗」
スプーン片手に、目を輝かせてるチビたち。
その姿を見て、アタシもちょっと得意げに胸を張る。
「アタシが作ったんだ。うまくて当然だろ?」
「……じゃあ、いただきますっ!」
◇◆ しあわせプリン爆弾 ◆◇
スプーンが一斉にプリンに突っ込まれ――
「……ん~~~~!!」
日振が身をよじって、口の中でとろけそうな声を出した。
「なめらかで、とろけて……しあわせっ!」
「ドーナツふわふわ!」
「……美味……この世の正義……」
(よし、完全勝利。プリン作っといてよかった)
アタシがこっそりガッツポーズをキメた、その時――
◇◆ 噂という名の爆弾 ◆◇
「ねぇねぇ……摩耶さんと提督さんのこと、鎮守府じゃ色んな噂あるよね!」
「ぶっっっ!?!?」
アタシ、飲んでたコーヒーを、危うく噴き出すとこだった。
(なななな何だその地雷!?)
「大東、なんだっけ~?」
「えーっとね、『提督が摩耶さんのために、新居の家具を全部選んだ説』!」
「ちがぁぁう!! 家具はアタシと二人で選んだっつーの!」
「『提督さん、摩耶さんの手料理しか食べられなくなった説』も聞いた!」
「普通に食堂行ってるってば!? ときどき大盛り頼んでるし!」
「……『提督が摩耶さんの寝相を知ってる説』……」
「昭南おまえぇぇぇぇ!!」
顔、熱っつい! 火が出そう!
(ていうか誰だよそんなの言ってるやつ!!)
アタシが焦ってると――
◇◆ さらなる投下、そして沈黙 ◆◇
「そういえば、アタイ、この前見ちゃった!」
「……何を?」
(何みたの、大東……?)
「出撃前に、姉御が提督にちゅうしてもらってたの!」
「ぶばっっっ!!!??」
顔面から心臓から全部赤くなって、もうパニック。
「えええ!? それってホント!?」
「……見た、あたしも……」
(昭南、おまえなにとどめ刺しにきてんの!?)
三人、前のめり。
「ち、違……っ、いや、ちがわねぇけど!!でも、あれはな、そ、そういう儀式的な、気合注入的な……!」
「えぇぇ~、姉御、顔真っ赤~」
「……かわいい」
(昭南、お願いだからそれ無表情で言うなって!)
「摩耶さん、それってどういう意味のちゅうだったんですか~?」
「アタシが聞きてぇよ!!」
◇◆ ずるい奴 ◆◇
……そして。
ずっと黙ってデザート食ってた、あの男が――
「摩耶……照れてる姿も可愛いね」
「はひぃぃぃぃぃっ!?」
爆発した。心臓ごと。
「て、提督!! 黙って聞いてたくせに、なんでそこでとどめ刺すんだよ!!」
「……摩耶さん、かわいい……」
「お嫁さんにしたい……」
「……これが夫婦……」
「ぎゃあああああああ!!!」
◇◆ 絶叫、そして愛しさのなかで ◆◇
アタシは思わずテーブルに突っ伏す。
顔は熱いし、心臓バクバクだし、何より――
なんでこんなに嬉しいんだよ、ばーか!
日振、大東、昭南が、アタシのそばで笑ってる。
提督は、コーヒー片手に静かに微笑んでる。
この賑やかさと、甘ったるい空気が、なんだか心地よくて。
(……アタシ、今ちょっと幸せって顔してんのかな)