悟に秘密が出来た。
「ウニャはウニャです! よろしくお願いします!」
小さくて可愛い主人が出来た。ウニャといると私は笑えた。
悟に秘密が出来た。
「な、なんなんやここ!? 召喚!? そんな漫画みたいな事あるんか!?」
ライバル?論外。仲間?論外。それでも、秘密の共有は甘美だった。
悟に秘密が出来た。
「賢者様、お願い。ウニャを誰も知らない場所に連れて行って」
居場所がないのは私達も同じ。誰も彼も放っておいてくれない。
新天地が必要だった。
呪術師達のいない場所が。
ごめんね、悟。
私はもう、君とは一緒に歩けない。
ガバッと仮眠していた五条悟は起き上がる。
「ヒェッどうしましたか、五条さん」
「傑が」
「はい?」
「傑の気配が増えた」
これは、呪われし玩具箱の話である。
新都算座は、ドアホンが鳴り、ドアをノックされて、飲んでいたコーヒーのカップを置いた。
新都はニートで老女だ。ドアホンが鳴るとしたら宅配便くらい。それも今、頼んでいるものはない。
ドアに近寄ると、声がする。
「ニーテスト。助けてほしい」
よく使うアカウント名を言われて、新都は警戒した。
「誰かな?」
「並行世界の君の弟子だよ」
「つまり他人?」
「そうなんだけど、困っているんだ。助けて欲しい。君とサバイバーとネコ太と覇王鈴木と工作王とネムネムだけが頼りなんだ」
「多いな!」
「とりあえず、1番資産があって頼り甲斐のある宰相の君の所に来た」
「それってゲームの王国か何かか?」
ハンドルネームらしき雑多な名前に当たりをつけて問う。
ただし、それらのハンドルネームに覚えはない。よくありそうな名前ではあるが。
「そうだよ。猫耳帝国というか、ミニャンジャ村というか。今の規模は実質街だけど。その、街を支配するミニャちゃん陛下の宰相が君。私は、その孫のウニャちゃん殿下の宰相候補なんだ。諸事情があって、私達は並行世界に逃げる事になってね。君なら助けてくれるし、いっそ家臣になってくれるかなって思って。君の懐を飛び出しておいて、並行世界の君を頼るなんて情けないと思うかもしれないけど……」
かなりやばい。頭がおかしいとしか思えなかった。
「ニーテスト、お願い……」
小さく震える声に、新都は息を呑んだ。
こいつ、子供を巻き込んでるのか。高校生くらいの女の子っぽい。
「子供がいるのか?」
「ウニャちゃん殿下だよ。並行世界の君のご主人様の孫。ドアを覗いてごらんよ」
どうやって子供を救うか、ドキドキしながら、新都は外を伺った。
長身の男2人に囲まれ、猫耳の少女が震えていた。
猫耳の少女が震えていた。
耳がペタリとなっている。ゆらめく尻尾も震える耳も、偽物ではあり得ない。
「わかるだろ。目立ちたくないんだ。こちらの世界に猫耳はいないからね」
どうかしている。
心臓が早鐘を打っている。
どうかしている。
新都は扉を開けた。
「ニーテスト、ありがとう」
そうして、新都は一風変わった三人組にコーヒーとミルクをご馳走する事にした。
「つまり、異世界人のミニャちゃん陛下は、女神様から『ミニャの玩具箱』という能力をもらった。私達を召喚して賢者様と呼んで魔法の力と掲示板の能力を与え、使役していた。その孫のウニャちゃん殿下は、召喚先の世界が違った。ウニャちゃん殿下もお前らも立ち回りを大失敗して、更に並行世界へと逃げる事にした」
「だから、そう言ってるやろ、ニーテスト」
「直哉。ニーテストに対して失礼だよ。それにしても、この世界にもニーテストがいて本当に良かった」
新都は戸惑いながら、お菓子を口に入れた。頭を働かせる為、糖分が必要だった。
話をする過程で、夏油と直哉は不思議な力を見せてくれた。
「ウニャちゃん殿下の臣下はお前ら2人だけなのか?」
「いきなり百人も来たら迷惑だろ? 私達は先発隊」
「いきなりじゃなくても迷惑だ。1人2人ならともかく、その人数は面倒みきれん。……ウニャちゃん殿下、君に忠誠を誓えば、私も魔法が使えるようになるのか?」
「ニーテスト、ウニャに忠誠を誓ってくれる? ニーテストがいてくれたら、とっても心強いと思う。でもでも、ミニャお祖母様やニニャ姉様の方がいいって言わない?」
「宰相の座は渡さないよ」
「将軍の座は渡されへん」
「今更出しゃばらんよ。顧問という形はどうかな」
それなら、という事で、ウニャは新都の手を取った。
温かいものが流れ、ニーテストが力を込めると、手の内に土塊が現れた。
新都の運命の流れは、ここで予想もつかない濁流となったのだった。
ニーテストは荒ぶっていた。荒ぶらないでか。
「作戦会議をする! お前ら、正座! あ、ウニャちゃん殿下はちょっとアニメでも見ててくれないか。ウニャちゃん殿下に奏上する前に情報のすり合わせをしたい」
「わかった。料理しながら待ってる」
「無理はしないでいいからな」
そうして、ニーテストは絶対零度の目で2人を見た。
「なんやなんや」
「また直哉がなんかしたのかい?」
「お前だバカ、このテロリスト! 10年前に村を一つ皆殺しにしていると出たぞ」
「やってないよ!?」
「並行世界の傑くん、そんな事するんやぁ。怖」
「誤解だ! 誤解だよ、きっと冤罪だ。そんな、ウニャちゃん殿下がいて……いないんだったね、この世界。そういえばすごく病んでた時期があった」
「それやな」
そうなると、自分を信じられない夏油である。
何せ、あの時は病んでいた。
「百人の戸籍をどうにかするってのも問題だが、同姓同名同顔のテロリストがいるって相当ヤバいぞ」
「傑くん、目立つしなぁ」
「魔法なしで、どうやって村一つ皆殺しにしたんだ」
「私は呪術師でもあるからね」
「呪術師? ちゃんと全ての情報を開示しろ」
そして、話し合いを続ける。
問題点は、夏油傑の率いる宗教。
百人分の戸籍。
秩序の守護者を気取る呪術師。
こちらの手駒は、夏油、直哉、九十八人の待機賢者達、そして並行世界の賢者……つまり、女神に選ばれる程の傑物の情報。ただし、50年の月日が過ぎ去っている。
「むぅ。どれも頭が痛いな……。呪術師とは何れ和解をしなくては駄目だ。だが、今は論外。一方的に潰されて終わりだろう……。よし。私が教団を作って手続きは全部する。村も用意する。最初の賢者との接触もする。呪術師に対する対応もできる限りしよう。そんな私を全力で守れ。あと、2人信頼のおける女子の賢者を呼べ」
鬼気迫るニーテストに、夏油達はこくこくと頷いた。
さあ、ウニャちゃん殿下に奏上である。
最終的な決定権はウニャちゃん殿下にあるのだから。
そうして、サバイバーの住まう廃村となりつつあった場所を改造し、そこに百人の賢者が移住した。戸籍についてもどうにかしたし、薬草である女神の恵みも畑に植えた。外貨の獲得も回復魔法でOKだ。後は呪術師との和解のみ。
それも、村を担当していた人のいい術師が黙っていてくれる事となった。
様々な準備を終えて、冬。
冬支度に慌ただしくしている中、その術師が駆け込んできた。
「どういうことだ、夏油傑!」
「何を怒っているんだい? 五十嵐」
「どうもこうもない、百鬼夜行のことだ!」
「何それ」
「お前がクリスマスイブに暴れると言ったんだろう!」
「言ってないよ。おひたし食べる? 落ち着きな」
夏油が女神の恵みのおひたしを用意する。
病気を祓う霊験あらかたな薬草で作ったおひたしである。
プリプリとしていた五十嵐は、怒りをひとまず飲み込み、夏油の家へと上がり込んだ。美味しいし傷の化膿がしなくなるので、五十嵐もおひたしには世話になっていた。
「どうしたんや?」
「多分、この世界の私がまたテロするらしい」
「はぁ? ええ加減にせぇや。村一つ滅ぼしたんやしもう満足せぇや」
「こっちの私に言ってくれ」
「直哉特別一級術師……!? どうしてここに」
「こっちの自分は偉いんやなぁ。自分はせいぜい二級やで」
なんだなんだと、美々子や菜々子、禪院家の子達もやってくる。
彼らと面識のあった五十嵐は、目を白黒させた。似ているが違う。
双子というよりも、体の大きさが違うため、兄弟という印象を受ける。
特に、禪院家の双子と呪詛師の双子の差異が大きかった。
「言っただろう。皆で並行世界に引っ越したって」
「なんかみんな背が高いですね……?」
「ウニャちゃん殿下の加護を得ているからね。その分よく育つのさ」
「並行世界の人間ってもしかしてマジ……?」
「そうだよ? 信じてなかったのかい?」
「もう一回話を聞かせてください」
それから、じっくり話を聞いた五十嵐は頭を抱えた。
「本当に女神様の話がマジなら、もう一回参拝させてください」
「いい心がけだね。もちろんいいよ」
女神様の像にお祈りをした後、五十嵐は夏油のやらかしについて相談した。
ウニャちゃん殿下も合流した。
「こちらの私が罪を犯すことについては心を痛めていたんだよ。ウニャちゃん殿下の許可が取れたらだけど、協力させて欲しいかな。京都は任せてくれていいよ」
「にゃー……。ウニャは、賢者様が道を誤ってしまったなら、一緒にごめんなさいしたい」
「ウニャちゃん殿下……うう、皆、本当にごめん」
なお、五十嵐に見えないウィンドウでは夏油への大ブーイングが飛び交っている。
「とは言っても、残穢同じなんですよね……。隠れて協力は無理だと思います。秘匿死刑されないように精一杯弁護するので、皆さん、来ていただけますか? 並行世界の証明のために禪院家の方にも来て欲しいです」
「じゃあ自分が行くわ」
「いや、話がややこしくなる。私が行った方がいい」
ということで、真希が証明としてついてきてくれる事になったのだった。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
今度からマシュマロ返信していくことにしたので、よろしくお願いします!
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