超現実アナザー・ワールド ~異世界でもぼっちはぼっちだった件~   作:蛮野ゲリラ

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みんなもカドモンゲットじゃぞ~!

 

「――はっ」

 

 意識が覚醒した。……どうやらショックのあまり気を失っていたらしい。

 

「あ、やっと起きたー?」

「……キワミ」

 

 隣にはキワミがいた。彼女はイタズラっぽい笑みを浮かべ、人差し指を俺に向けて突き出している。

 

「……何をしている?」

「ん? 立ったまま気絶してるおもしろハルくんに、ほっぺをツンツンとしてるー」

 

 たしかに頬には何か触られた感触が残っている。弄ばれていたのか。

 

「はぁ……」

 

 俺はため息をついて空を見上げた。

 空の色は変わっていない。時間はあまり経っていないようだ。

 周囲を見渡してみると、あることに気づいた。

 

「後輩はもう帰ったのか? さっきまで部活をしていたようだったが」

 

 スタジアムには、モンスターバトルをしていた少年たちの姿が消えていた。

 キワミは「あー」と間抜けた声を出して。

 

「今日って実はモンスターテイマー部の活動休みなんだよね。あの子たちも気分転換で来ただけみたい。『モンスターブリーダー』の活動もないって聞いてたし」

「そうだったのか」

 

 だから俺たち以外に人がいなかったのか。

 キワミが言う『モンスターブリーダー』とはモンスターテイマー部の活動の一つである。モンスターテイマーがモンスターを戦わせるという活動に対して、モンスターブリーダーはモンスターとの触れ合いを楽しむというものだ。

 

「お前部長になってたんだな。正直驚いた」

 

 自分勝手で元気いっぱいなイメージのキワミが、後輩たちをまとめるなんて想像しづらい。だが、先ほどの様子を見る限り、どうやらうまくやっているんだろう。

 

「あ、やっぱりそう思った? ふふっ、実は私もほんとつい最近部長になったから、まだ実感湧いてないんだぁ」

「それにしては、後輩たちに慕われていたと思うがな」

 

 キワミは笑いながら、指先で髪をいじっている。その仕草は昔から変わらない。なんとなく誇らしげな表情に、俺は少しだけ感心していた。

 先ほどまでコロシアムにいた少年たちがキワミのことを「部長」と呼び、笑顔を見せていたのを思い出す。あの素直な態度を見るに、彼女を慕っているのは間違いないだろう。

 

「あの子たちはわたしが直接部に誘ったからね。モンスターテイマー部はどうしても他の部活動に比べて人数が少なくなっちゃうから、その分仲良くなれるんだよ」

「……昔から変わってないんだな、そういうところは」

 

 この異世界の人類が持つ『魔力』は、人によって性質や用途が大きく異なる。

 たとえば、魔法を使うためのエネルギーとして、異能を操る力として、あるいは『モンスターと心を通わせる能力』として、魔力は多様な形で現れるのである。

 

 しかし、ファンタジー要素が大きく衰退してしまっている現代では、魔力の存在が軽視され、一生を魔力と無縁に過ごす人も少なくない。とはいえ、それは魔力を扱う者たちにとっては特大の問題だ。

 

 これは生物の進化や退化と同じだが、使わなくなった部位が世代を重ねるごとに痕跡器官となり最終的には失われるように、魔力もまた衰退の一途をたどっている。

 そのため、現在の人類では魔力という『器官』をもっているが、それが無意味な状態になっていたり、昔とは違って保有する魔力量が減少したり、自発的に使うことができないなどの障害を抱えている。

 それゆえに、魔法を操る魔力の素質をもつ少女たちの潜在能力を引き出すアイテムなどがあるが、それでもやはり四百年前の頃に比べると大きく衰えてしまっているらしい。

 そして、それはモンスターと心を通わせる魔力をもつ者たちも例外ではない。完全にその力を使いこなせる人はごくわずかで、大半の人はせいぜい『魔物の声』を微かに感じ取れる程度にとどまる。

 

 そんな状況を補うために開発されたのが、あの少年たちも使っていた『テイマーカード』である。

 

 あのカードは、モンスターテイマーの潜在能力を引き出し、魔物と心を通わせるサポートをするだけでなく、モンスターをカードに収納するという画期的な機能も持っている。この技術のおかげで、モンスターテイマーの数は増えたのだが……それでも素質がなければテイマーにはなれないし、なれたとしても飼育費用などの莫大な経費が壁となる。

 そのため、全学年の有志が集まってようやく一つの部活を成り立たせているのがモンスターテイマー部の現状である。それでも長年続いているのは部員たちの熱烈な勧誘と、他の部活にはない個性豊かな特別な活動があるからだろう。

 ……まぁ、高校一年生になりたてのキワミが部長になっているのは、人数が少ないという事情をもろに受けているのだろうけど。

 

 ちなみに余談だが、アカツキ学園には「魔法学」という選択制の教科があるが、こういった事情もあって、魔法の使い方を学ぶものではなく、その歴史や理論を学ぶのが主な内容となっている。

 なので、魔法学は物好きな生徒が選ぶ教科として有名で、俺もその名前に惹かれて受講してみたのだが、想像以上に難解で、選択したことを何度も後悔した覚えしかない。

 

「ハルくんはテイマーの才能があると思うから、モンスターテイマー部に入って欲しいんだけどなぁ……直感だけど」

 

 そういえば昔からコイツは俺にそんなこと言ってたんだっけか。

 彼女の言う「直感」は根拠に乏しいが、意外と的中率は高い。とはいえ、俺には関係のない話だろう。

 そんなふうに考えていると、キワミが突然、「そうだ!」と勢いよく声を上げた。

 

「今度、一緒にモンスターを捕まえに行こうよ! ハルくんに予備のカードあげるからさ! ねっ!」

「…………」

 

 ……うわぁ、めんどくさいことこの上ないな。

 

「あ、その顔は『めんどくさっ』って思ってる顔だね! ダメだよ、今度こそハルくんにはモンスターテイマー部に入ってもらうんだから!」

 

 キワミが俺の肩をガシガシと揺さぶる。

 これはいくら断っても無理やり連れて行かれそうだ。というかあまり無視をしていると、モンスターのいる場所まで拉致されかねない。なにせ、コイツの親は金持ちだし、コイツ自身も稼いでるから、モンスターを育成するための広大な敷地を所有しているほどだ。

 

「わかったわかった。いずれな……いずれ」

「むうぅ……乗り気じゃないなぁ。ま、でもいっか! 絶対連れて行くから!」

 

 うわぁ……やっぱり失敗したかも。 にっこりと笑うキワミを見て、俺は心の中で頭を抱える。

 今日も俺はイエスとノーをはっきり言えない自分を憎むのであった。

 

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