超現実アナザー・ワールド ~異世界でもぼっちはぼっちだった件~ 作:蛮野ゲリラ
話に一区切りがつき、ひとまず会話が途切れた現在。
「キワミ」
「ん?」
俺はふと思い出し、転校するより前に隣国で読んだ新聞の記事について尋ねることにした。
「アカツキの『モンスターマスター』になったらしいな」
「えっ!? 知ってたの!?」
キワミは驚いた様子を見せる。
モンスターマスターとはアカツキにいる一万ほどのモンスターテイマーの中でも最強とされるテイマーの称号だ。
モンスターテイマーのバトルにはアマチュアとプロの二種類がある。アマチュアではモンスター同士の対決が中心だが、プロの戦いではルールが異なり、テイマー自身も戦闘に参加する。テイマーもしくはモンスターのどちらかが戦闘不能になったら負けというものだ。
基本的に未成年のテイマーはアマチュアで経験を積むものだが、キワミは中学三年の十五歳という若さでプロの舞台に挑み、アカツキ最強の「
「あーあ……ハルくんを驚かせようと思ってたのになぁ」
キワミは肩を落とし、がっかりした表情を見せた。
「新聞で見たときに驚いたから、それで充分だろ」
「よくないよっ!……って言おうと思ったけど隣国までわたしの名前が届いてるなら嬉しさの極みだよねっ!」
「そうだな」
といっても小さい記事だったんだけどな。まぁ、そのことをわざわざ言う必要もないか。
「――それで、今まで聞いてなかったが、どうして俺をここに連れて来たんだ?」
俺は本題を切り出すことにした。
キワミは一瞬キョトンと目を丸めたが、すぐにニッコリと笑みを浮かべた。
そして数歩前に進み、俺に背中を向けたまま話し始める。
「……ねえ、覚えてる? 小学生だった頃、わたしとハルくんで一緒に一匹のモンスターを育てたこと」
「ああ」
懐かしい記憶だ。
子どもの頃、キワミと一緒に手のひらサイズの『羽が生えたトカゲ』を育てたことがある。……まぁ。魔物を育てるという経験がまったくない俺は飼育のほとんどをキワミに任せていたんだけど。ヘビとかは好きだから爬虫類系は大丈夫なんだけどなぁ。
「――そっか」
キワミはそう言ってこちらを振り向いた。――笑顔の彼女の右手には一枚の『カード』が握られている。
「じゃあ見せてあげるねっ!」
キワミがカードを空にかざすと、そこから光が放たれた。
モンスター召喚の前兆だ。
それにしても、あのトカゲちゃん、まだ生きてたんだな。モンスターというには小さかったし、もしかしたら寿命で亡くなったかもしれないって思っていたんだが、年を重ねた分、どれぐらい大きくなったか楽しみだ。
「出てきて、『ムート』ちゃん!」
あの頃は手のひらサイズだったから、今は辞書ぐらいの大きさだろうか。……もしかしたら電子レンジぐらいの大きさだったりして。
強い光がカードから放たれ、青白い光球がキワミの前の地面に落ちた。
光球は形を変え、モンスターの姿を形作り始める。
胴体から始まり、頭、手足、そして翼へと。以前にはなかった鋭利な爪が手足に生え、四足歩行ではなく二足で立ち上がっている。成長の証ということなのだろう。
そして、ついに姿を現した。
俺は懐かしいトカゲちゃんの顔を見るために目線を向け……いや、目線を上げた。
いや、もっと正確に言うと「見上げていた」。
そこには、巨大な竜型モンスターの顔があった。
「エッ」
「ふっふーん! ねぇ驚いたでしょ! でしょ!?」
いつの間にか俺の横に移動していたキワミが何やら得意げに話しているが、その声は耳に入ってこない。……ってか、何アレ?
いかにも硬そうな爬虫類の角質な赤い鱗。皮膚は黒く、真紅色のヘビのような瞳、鋭利な牙と牙の間から漏れ出ている炎のような息。その頭には二対のツノが生え、翼を大きく広げ、二〇メートルほどもある巨大な体躯をもつ姿は――まるで神話に登場する生物のようだ。
「この子の本当の名前は『ドグマムート』って言うんだって。寿命測定不能、出生不明、群れを成さず孤高に生きる『竜の覇王』――って四百年前の書物に名前と脅威だけが記されているんだよ。誰も子どもの時の姿なんて見たことないから、わたしもムートちゃんがそのドグマムートだって知ったときはめちゃくちゃ驚いたよ。でも、孤高の一匹狼なんてカッコイイよね!」
「オオカミじゃなくて、『ドラゴン』だろ……」
つーか――
大きくなりすぎだろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!?
ドグマムート――ムートちゃんは雄叫びを上げていた。
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