超現実アナザー・ワールド ~異世界でもぼっちはぼっちだった件~   作:蛮野ゲリラ

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「よし、楽しく話せたな(圧倒的主観)」

 

 

「悪いな。昼飯付き合ってもらって」

「いや、問題ない」

 

 翌日。俺は午前の授業を終え、昼休みを迎えると、高等部に設置された食堂で立花マサムネと昼食を取っていた。

 

 ――そう! この俺が! クラスメイトと一緒に昼飯を食べているのである! しかも、クラスでも目立つ陽キャの立花マサムネとだ!

 

 これは前世を含め、生まれて初めての経験である。マサムネが俺を誘ってくれたおかげで、今こうして一緒に食堂で昼飯を食べている。

 しかも人付き合いが苦手な俺を気遣ってか一対一だ。これが複数人だったら、今頃俺は緊張で吐いていたことだろう。

 ありがとうマサムネ! ビバマサムネ! お前は俺にとっての新たな光だァ!

 

 まぁ、今もバリバリ緊張しているんですけどね……。

 

(それにしても、なんで俺なんだろうか?)

 

 自分で言うのもなんだが、俺は典型的な陰キャだ。なのに、マサムネが突然「昼休み、一緒に飯行こうぜ!」なんて声をかけてきたのだ。これが陽キャの光か……。

 

 マサムネが何を考えているのかは分からないが、せっかくの初めての経験である。

 もしかしたら、こんなことは二度とないかもしれない。友達をつくるという人生最大の目標を達成するためにも、この経験を活かしていきたい。

 

「なぁ、アオハル」

 

 マサムネの声で思考を中断される。彼は唐突にこんなことを口にした。

 

「マホちゃんって、なんで今日学校いないんだ?」

「さあな」

 

 切り出されたマホの話題。彼の言葉どおり、今日はマホが学校を休んでいた。

 思わずそっけなく答えたが、実際には心当たりが全くないわけではない。ただ、それが本当に理由なのか、確信が持てなかった。

 

 というのも昨夜、マホから電話で――『最近、政府公認の対魔物機関『セイクリッド』に所属している魔法少女が行方不明になっている』という話を聞いたからだ。

 

 詳しいことは守秘義務の都合で教えてくれなかったが、俺もその事件が気になってニュースを見てみれば、ちょうど『十代の少女が失踪している』という情報が何の変哲もない一つのトピックとしてさらりと報じられていた。

 

 ――明らかに異様だった。

 

 ニュースで『魔法少女』ではなく『少女』として扱われていること自体は不自然ではない。それ自体は魔法少女の希少性を考えれば別におかしいことではないからだ。

 

 しかし、不可解だったのはその扱いの軽さだ。

 

 なぜかこのことが事件として扱われていないうえに、詳細も何一つ公表されていなかった。

 普通であれば少女の失踪事件があればテレビなんかで大きく取り上げられるだろうし、そもそもその家族が黙っていないだろう。

 

 だというのに、失踪した少女たちの名前や人数、いなくなった経緯、家族の証言など、通常ならメディアが詳しく掘り下げそうな情報が一切明らかになっていなかったのだ。

 

 ただ淡々と「失踪事件が発生している」とだけ述べられている。それがどうにも腑に落ちない。

「政府が情報を統制しているのではないか?」そう考えるのが自然だった。

 

「…………」

 

 少し、魔法少女についての話をしよう。

 

 魔法少女とはアカツキの守護者である。

 前にも言ったが、この世界では400年前に勇者が天魔王を討伐して以降、科学技術が発達する一方で、魔法などのファンタジー要素が衰退してしまった。

 

 それに伴い、魔法や異能、モンスターをテイムする際に使われる魔力すらも衰えてしまったのである。

 そのため、昔とは違って人間が保有する魔力量が減少したり、魔法を自発的に使うことができないなどの障害を抱えている。

 唯一、異能だけは自在に使えることが多いのだが、それも弱体化してしまっていることが多い。

 

 俺が転生したこの世界は今でこそ平和だが、かつて400年前までは天魔王に支配されていた。そして、勇者により天魔王が打ち倒された後も、存在している異形の生物がいた。

 

 天魔王の統制により人類を大いに苦しめた天敵――魔物である。

 

 とはいえ天魔王が滅びたことで、魔物たちは以前のように人間の生息域を避けるようになり、人類とは基本的に不干渉の関係を保っていた。

 

 しかし。

 

 ――今よりおよそ100年ほど前、突如として魔物がアカツキ共和国に攻撃を仕掛けてくるようになった。

 

 原因は不明。しかし、何の対策もしていなかったアカツキは、もちうる科学兵器を使い果たしても魔物を駆逐することができなかった。

 当時、400年前には魔法が魔物に対抗する主な手段となっていたが、100年前には魔法どころか魔力そのものが完全に衰退してしまっていた。

 

 そんな危機的な状況で、アカツキ政府は魔法の適性を持つ者の潜在的な魔力を引き出すアイテム――マジカルリンクを開発した。これにより、元々魔法が使えなかった者でも魔法を操ることが可能となった。

 

 しかし、マジカルリンクを使うには一つ条件があり、それは――幼少から20歳までの女性、つまり『少女』のみに限定されること。

 また、使った際には魔力増幅装置、兼、戦闘服として可愛らしい衣装を身にまとって変身をすることから、現代で魔法を操り、魔物から国を護る者たちのことを『魔法少女(リトルウィザード)』と呼ぶのである。

 

 このようにして誕生した『魔法少女』は、日々魔物の脅威からアカツキを守るために活躍しているわけだが、その数はやはり少なく、希少である。

 

 そのため、彼女たちが失踪するというのは、国としても看過できない事件だ。それが明るみに出れば、世間は大騒ぎになるだろう。

 だからこそ、政府は関係者に徹底した情報統制を敷き、事件の詳細をひた隠しにしているのではないか――。

 

 と推測してマホに尋ねたのだが、それを聞いた彼女はしばらく黙り込むと。

 

「すぐに調べたいことがある」

 

 ――とだけ言って通話を切ってしまった。

 

 そして今日、彼女は学校を休んでいる。きっと何かを調べているんだろう。

 それが何なのかは分からないが、おそらく重要なことなんだろう。それをマサムネに伝えるつもりはないし、事件のことをべらべらと話すつもりはない。

 

 俺はそんなことを考えながらマサムネを見ると、彼はトンカツにソースで文字を描いていた。

 

「というか、なぜマホのことを転校してきたばかりの俺に訊く? お前らの方が詳しいだろ」

「え?」

 

 マサムネはソースをテーブルに置くと、不思議そうな顔で俺を見返してきた。彼の食器には妙にオシャレな文字で『マサムネ』と書かれた一切れのトンカツが……よくそんな細かく描けたな。器用かよ。

 

「だってお前、昨日マホちゃんと話してたじゃん」

「ああ、そうだな」

「だろ?」

 

 いや、『だろ?』じゃなくて。

 

「一緒に過ごした時間はお前の方が長いだろ」

 

 俺がそう言うと、マサムネは困ったように頬をかいた。

 

「いやぁ、それがな……」

「……なんだ?」

 

『うーん』とマサムネは口を噤んでいる。何か言いづらいことでもあるのか?

 

「最近……というか春休み前からなんだけどな。マホちゃん、どうもピリピリしてるみたいで話しかけづらいんだよ。話しかけても無視されるか流されるかだし。最近じゃ喋ってるところなんて授業で先生に当てられた時しか見てねえや」

「……なるほどな」

 

 そういうことであれば、昨日マホと連絡先を交換していた俺にマホの事情を訊くのも納得できる。

 しかし、気になることが一つ。

 マホは公私混同をしないタイプだ。苦しい時でも誰かに弱みを見せたりしないし、他人に当たり散らすことなんてもってのほかだ。

 それが、もし彼女が学校でそんな態度をとっているのだとしたら、何かしらの理由がそこにはあるはずだ。それはつまり……。

 

「…………」

「ん? どうした、アオハル?」

「いや、なんでもない」

 

 つい考え込んで黙ってしまっていたようだ。……まぁ、実際のところ、俺には関係のないことだから深く考える必要はないか。餅は餅屋、魔法少女関係は魔法少女が、今回の件はマホがどうにかするだろう。

 

「……?」

 

 すると、マサムネがニヤニヤしながらこちらを見ていた。その表情にはどこか楽しげな様子が浮かんでいる。

 

「お前とマホちゃんって、やっぱ付き合ってんの?」

「――は?」

 

 俺とマホが付き合ってる……? え、なんで? というか『やっぱ』ってどういう意味?

 

「ガキの頃から思ってたんだけど、お前らってなんか分かり合ってるよな。以心伝心って言うの? 言葉にしなくても心が通じ合ってるって感じ。中学校の時も遠距離恋愛でもしてたんじゃないの?」

 

 ……コイツは何を言っているんだろうか。ツッコミどころが多すぎて訂正するのも面倒くさい。

 

 しかし、この誤解は絶対に解かないとダメだろう。俺みたいなクソぼっちと付き合っているなんて風評、マホに失礼すぎる。

 というかマホの耳にでも入ってしまったら、あの毒舌で俺が抹殺されかねない。

 

 そもそも遠距離恋愛って都市伝説だろ。離れている間に気持ちが冷めて、新しく恋人つくってるっていうのがオチが大半だろ。

 

「俺とマホは付き合っていない。そもそも友達ではない」

 

 うん。そう友達ではない。

 友達とは時間をかけてお互いの信頼を築き、お互いを完全に理解して共感し合える存在である。

 

 しかし、俺はマホのことがまったく理解できていない。

 

 彼女が普段何を考えているのか、どういう気持ちで俺と話しているのかまったく分からない。それなのに友達と呼ぶなんて、彼女にも失礼だろう。

 それに、マホもおそらく俺のことをちょうどいい雑用ぐらいに考えているだろうしな。

 

 そんなことを考えていると、マサムネが信じられないものを見る目で俺を見ていた。

 

「――マジか」

 

 なにがですかい。

 

「……もしかして、タマネちゃんとキワミちゃんのこともそう考えているのか」

「? そうだが」

「――マジでか」

 

 だから何だよその顔は。

 その後、マサムネは「俺の中の現実アオハル像が……」とか「いや、もしかして友達以上恋人未満ってことか……?」、「それとも現実アオハルにとっては彼女たちでさえも関わる価値を感じないということなのか……?」なんてことを困惑したようにボソボソと言っていたが、一体何だったんだろう。

 うーん……まぁいいか!

 

 てか、食堂のハンバーグ定食うまいな!

 

 

 

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