超現実アナザー・ワールド ~異世界でもぼっちはぼっちだった件~   作:蛮野ゲリラ

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天才(陰キャくそぼっち)に挑む凡人(陽キャ人脈チート)、連絡先交換という名の聖戦

 

「う、現実アオハル――オレとも連絡先を交換してくれ!」

 

 勢いよく立ち上がった茶髪の少年――立花マサムネが、深々と頭を下げながらスマホを差し出した。その姿は、まるで一世一代の告白をしているかのようだ。

 

「…………」

 

 沈黙が場の空気をさらに張り詰めさせる。その場に居合わせた生徒たちは固唾を飲んで見守っていた。

 頭を下げたままのマサムネでさえ、彼の視線を感じ取ることができた。直接目が合わなくても、背中に刺さる圧力は強烈で、どこか非現実的ですらあった。

 

 ――立花(たちばな)マサムネにとって現実アオハルは特別な存在だった。

 

 小学校時代、現実アオハルはどこか浮世離れした雰囲気をまとっていた。教室の窓際の席に座り一人静かに佇む姿――それは自分や周囲が遊びや楽しいことに夢中になる中で、何か別次元の価値観を持つ人間のように映った。

 その孤独な雰囲気に惹かれる一方で、マサムネには一つの確信があった。

 

(彼はオレたちのような普通の人間には興味がない)

 

 その確信は、現実アオハルが黎明院マホをはじめとする才能溢れる人物たちと共に行動しているのを見てさらに強まった。彼は完全無欠の存在で、自分のような平凡な人間が触れていい相手ではない――そう思わざるを得なかった。

 

 アカツキ学園には、初等部から高等部までをエスカレーター式に進学できる制度があり、その中で独自のカリキュラムが組まれている。

 午前中は学年に合わせた必修授業が行われるが、午後は選択授業制。自分の興味や能力に応じて、上級の授業や専門的な内容を履修できる仕組みだ。例えば、小学生であっても優秀であれば高校の単位を取得することが可能で、学年の枠を超えた学びが認められている。無論、選択しなかった者には通常通りの授業が行われる。つまり、選択授業制は就きたい職がある程度定まっている者や、より高度な授業を受けたい者のみが利用するのだ。

 

 現実アオハルと黎明院マホはこの制度をフル活用していた。小学生ながら高等部の単位を取得し、優秀な成績を収めて特別にアカツキ学園の卒業資格を得るほどの成果を上げたのだ。

 だから今、現実アオハルや黎明院マホがこの学校に在籍している必要はない。残っている理由は分からないが、中学時代のマホは自身の仕事を優先し、予定がなければ来るというスタンスを取っていた。

 

 そんな天才たちに囲まれ、マサムネは引け目を感じずにはいられなかった。

 そして、彼は人を寄せ付けない。今日もクラスでの最初の挨拶の時に、敵意にも近い冷たい圧力を振りまいていた。まるで、周囲を拒絶しているかのように。それはきっと彼が孤独であることを望んでいるからに違いない。

 

 それが彼の望み――孤独であることを求めているからだということを、マサムネは理解していた。

 

 そうして彼は『触れてはいけない者(アンタッチャブル)』となった。黎明院マホという常人では触れることさえ許されない存在と親しかったことも要因だが、何よりも彼が放つ威圧的なオーラがそうさせていたのだ。

 

 そう、もとより幼い小学生の自分には、彼に近づくすべなどなかったのだ。

 そして中学に上がると現実アオハルはアカツキ学園を離れてしまった。それでも彼を忘れることはできなかった。むしろ、離れたことで彼の存在が大きくなり、心の中に刻み込まれた。

 

 時が経て成長すれば自分は彼と肩を並べる存在になるであろうと根拠もなくそう思っていた。しかし、彼は自分を待ってくれなどしないし、それどころか、彼の意識の中に自分など最初から存在していなかったのだ。

 

 ――変わらなければならない。

 

 マサムネはもう彼から目をそらしたくなかった。彼をただ超然的な存在として憧れるだけで理解を放棄するのではなく、一人の人間として向き合いたかった。

 彼が孤独を望むなら、自分は人との繋がりを深めよう。

 彼が群れを拒むなら、自分は人との絆を力に変えよう。

 その決意のもと、マサムネはアカツキ学園に在籍するほぼ全ての生徒と積極的に関わりを持った。彼らの力になれる場面では迷わず手を差し伸べ、困った時には自分も助けてもらえるような人脈を築き上げた。それは単なる「便利屋」ではなく、誰かと心を通わせるための彼なりの方法だった。

 いつか、現実アオハルにとって自分が「価値のある存在」になる――その思いだけを胸に、マサムネは今日まで努力を積み重ねてきた。

 

 そして今日、彼は再び目の前に現れた。かつてと同様に『触れてはいけない者』として――いや、昔よりもさらに圧倒的な威圧感をまとい、もはや神秘さを感じさせるほどの禍々しいオーラを放っていた。

 

 最初は気圧されてしまったが、それも悪くない。これこそが彼なのだとマサムネは受け入れた。

 そして、ついに彼に自分の意志を示す時が来たのだ。

 

 

 

 

 

 ――だが、立花マサムネは知らない。

 

 現実アオハルが高等部の授業を履修したのは、興味や目的があったからではなく、ただ適当に選んだ結果だったことを。そして、それ以降は履修計画をすべて黎明院マホに丸投げし、自分は履修システムそのものをほとんど理解していなかったことを。

 

 そして今。

 

(モテ期かな!? 我が世の春かな!?)

 

 無表情を保ちながらも、アオハルの心の中では歓喜の舞が繰り広げられていた。立花マサムネの勢いと真剣さに戸惑いつつも、気分は悪くない。むしろ、悪くないどころか――

 

(これは――脱ぼっちチャンス到来か!?)

 

 現実アオハルは差し出されたスマホを受け取り、短く「わかった」とだけ答えたのであった。

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