やはり俺達の高校最後の青春一年が、異世界でなんて間違っている。 作:翁月 多々良
気分転換だから更新は遅いよ
オリンピックレベル
『青春とは嘘であり悪である。』そんな言葉を作文用紙に書き連ねてから一年が過ぎた。
今でもその考えはあんまり変わりはしないし、撤回するつもりもない。
今思い出したらめっちゃ恥ずかしいんですけど……。
あの作文をきっかけに今は無き平塚先生に、ここ奉仕部なる意味のわからん部活に強制的に入部させられ、まぁ色々と、色々とあって1年が経過した。
欺瞞を嫌い、自分の中でどうしようもなく欲しかった何かに、取り敢えず“本物”という形を与え、それを求めて奔走した。たくさんの間違いを犯した。
愚かで、濃くて、思い出すだけでも恥ずか死に、ベットやソファの上で悶絶し枕を濡らす日もあった。
無理矢理入部させられたこの場所も、1年も経てば意心地良い場所に変わっていた。
悪くない……悪くない1年だった。
この奉仕部も一度は廃部になるも、今年から入学したマイエンジェルシスター・こまちエルを新たな
まぁ、仮にも俺達は今年から受験生だ。スカラシップを狙っている俺にしてはそう遠くないうちにすぐ、この部活ともおさらばすることだろう。
それまでは、あの日、自らくだらないと吐き捨てた最後の残り僅かな青春とやらを楽しむこととしようと……
そう、思っていたんだが……
「“ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ”」
いやいや、色々とおかしいだろ!?勇者?なんだぁそりゃ?どうしてこうなった?
それを説明するためには30分くらい時を戻そう。
意外と直近だわ……
そう、あれは俺がいつものように静かな潮風香る、ベストプレイスで昼食を味わおうとしていたときだった。
「あ~ッヒッキー。やっぱここに居た!」
俺の聖地を荒らす、今じゃもう聞き慣れたやかましい声が響き渡る。
「なんの用だよ由比ヶ浜」
現れたのは、我等奉仕部の同胞、由比ヶ浜結衣。
日だまりのような明るい髪色に着崩した制服は、ビッチなギャルを彷彿とさせるが、根は素直で心優しく、そして強かな少女である。
「も〜!ヒッキー忘れたの?今日お昼は一緒に歴史の課題出しに行こうって言ったじゃん」
「いや、なんでわざわざ昼休み?放課後でいいだろ。そういうのは」
俺がそう言って気怠げに後ろを振り向けば、其処には由比ヶ浜以外にあともう一人いた。
「あら?放課後は部活の筈よ。私、貴方に遅刻を許した覚えはないのだけれど……」
「……もうお前は部長じゃねぇだろ雪ノ下。なんで俺の遅刻にお前の許しがいるんだよ。」
「例え部長でなくとも、部員の怠慢を見逃す道理は無いわ。相変わらず社会不適合者ぶりね不適谷君。」
「そんな面倒くさいもんに適合してたまるかよッ寧ろ褒め言葉だよ褒め言葉。てか誰だよ不適谷君。」
「褒め言葉……ね。こんな罵倒に喜びを感じるなんて、とんでもないマゾヒストね気持ち悪い。コレはキツめの躾が必要かしら?」
「おい。人聞きが悪いことを言うんじゃありませんよ」
その口から飛び出る罵倒のオンパレードに反して、何処か楽しげな表情をしているこの真っ直ぐな黒髪の美少女。彼女の名前は雪ノ下雪乃。
文武両道、才色兼備という言葉が似合うクールビューティー。しかし、俺と同等にコミュニケーション能力が乏しくて。強くもあり、繊細な少女だ。
因みに“元”奉仕部部長にして、今は何の権限もない平部員へと格落ちした女だ。そして………
「ヒッキー、ゆきのん……」
ムゥ〜ッとしたふくれっ面(何だそれ、あざと可愛い)で俺と雪ノ下に「自分をほっとくな」と言いたげな視線を向けてくる。俺たちはその視線から逃れるように目を逸らす。視界の端に写った雪ノ下の耳が赤く見えたのは気の所為だと思いたい。……可愛すぎて死んじゃうからッ!
そう、俺と雪ノ下は今年の3月辺りから付き合っている。
やだッ……改めて言葉にすると恥ずかしいわ
未だに恥ずかしいので、まだカップルとはお互い明言していない。そもそも、俺たちの関係を簡単に言い表せる程の自信も度胸もまだない。だからここではパートナーと仮名させて頂くが、その世に蔓延る付き合い出しのカ……パートナーというのは、分かりやすく所構わずイチャイチャする物である。だが、俺たちの場合は話が違う。お互い思いや感情のアウトプットを不得手にしている者同士だ。戸惑い、すれ違うことも多く、他と比べるとその歩みは亀どころかナメクジにも劣るだろう。
だが、それらの諍いを含めたやりとりも、ふと唐突に生まれる沈黙も、それらの時間すべてを心地良く感じるのは……この空間が求めていた“本物”というものに近づいたからと、自惚れてもいいのかもしれない。
閑話休題。そんな俺と雪ノ下の間柄は、お互いがお互いを好きだと自覚してはいるが、明確に関係を言語化するには些か躊躇いが出ると言う。端から見ててもどかしいく、目も当てられない様になっている。まぁ、見る人が見ればイライラしていまう光景になっているんだろう。
……自分らで言うことじゃないんだがな。
だが、由比ヶ浜は一々そんなことに目くじらを立てるほど心が狭い女の子ではない。
では何故、彼女はこの様な変な視線を向けてくるのか?その理由は復活直後の奉仕部に舞い込んだ最初の依頼に関係している。
『私の好きな人にね、彼女みたいな感じの人がいるんだけど、それが私の一番大事な友達で……でも、これからもずっと仲良くしたいの。どうしたらいいかな?』
去年の春と同じように、俺にとって奉仕部最初の依頼人としてやってきた由比ヶ浜は俺と雪ノ下にそれぞれ真剣な眼差しでそう口にした。
こんな真正面から言われてわからないほど、俺も鈍感ではない。そもそも、もしかしたら?と言う、自分でも歯の浮くような想像を抱いていたぐらいには感づいてはいたのだ。
つまりは……そう、あれだ。
由比ヶ浜は、俺に………
その……何ていうの……こう
…………好、意を、
抱いてくれている……ので……ある。
うん……
いやぁあぁ~ッ!!恥ずかしぃ〜ッ!!俺自分でなぁに口走ってんの!?バッカじゃないの!?キモいよッ!●ねよヒッキー!!
ふぅ。悪い取り乱した。話を戻そう。
対して、そんな宣戦布告紛いのことを堂々と言われた雪ノ下も、にこやかにそれを受け入れ真っ向から受け止めるつもりでいる。
遠慮のなくなった由比ヶ浜は、事あるごとに俺達にちょっかいをかけるようになる。意味深な言葉で雪ノ下を挑発したり、雪ノ下と予定が合わない日の俺をデートに誘ったりなどなど1年前では考えられない程、由比ヶ浜結衣という少女は大胆にそして強くなったと思う。俺なんか真正面から『逃さない』とまで言われてしまった。
だがやはり何処か優しい由比ヶ浜は俺達の仲を完全に邪魔するつもりは無く、雪ノ下の予定が合わない時を狙ってくる辺り、しっかりと一線は引いているらしい。
対する雪ノ下は、この攻防を何処か楽しんでいる風で、彼氏の俺からしたら心臓に悪い状況である。
だから思うのだ。
やはり俺の青春ラブコメは間違っている。……と。
「ゴホンッ……で?由比ヶ浜は分かるが、何でお前がここにいんだよ」
一つ咳払いをして場の空気をリセットさせた俺は、そう雪ノ下に問いかける。
「……そうね。偶然と言ったほうがいいかしら?少し手癖の悪い泥棒猫がいたからあとを追いかけていたのだけれど、その過程でたまたま由比ヶ浜さんと鉢合わせだけ━━
「それがねヒッキー!ゆきのん。あたしが歴史の畑山先生がどこにいるかわからない〜ッて言ったら一緒に行ってくれるって!」
不敵に笑みを作りながら髪をかき上げて語る雪ノ下。そこにかぶせるように自分の飼い犬そっくりな人懐っこさで元気に真実を暴露する由比ヶ浜。それに対して雪ノ下は居心地が悪そうに顔を赤く染めてそっぽを向けていた。
あの〜雪ノ下さん?そういう照れ隠しは普通。パートナーの俺にするもんではないんですかね?
あぁ〜貴方。泥棒
そうやって照れる雪ノ下に抱きつく由比ヶ浜の百合ップルな光景を見て思う。なるほど、コレがN◯Rと言うやつですね。
………自分で言っててキモいな。
取り敢えず、貴重な昼休みを犠牲にして歴史の課題を出すことにした俺たち。雪ノ下曰く、歴史教師の畑山教諭は今頃2年の教室に捕まっているだろうと言う。
いや、何で分かるのユキペディアさん流石に怖いよ。
俺がドン引くと、畑山教諭はこの学校1の小柄で生徒たちからは愛ちゃんの愛称で慕われるマスコットのような扱いを受けている。そのせいか、授業が終わってもしばらくは呼び止められるだろうと雪ノ下は説明する。
流石の名推理。でもやっぱり、それで他のクラスの時間割までも把握している時点で十分恐ろしいのよ。
「それじゃあ俺は教室に課題取りに行ってくるから、先行っといてくれ。」
そう言って踵を返す俺を、由比ヶ浜と雪ノ下が呼び止める。
「どうせなら一緒に行こうよ」
「このまま貴方を放置したら、そのまま戻ってこない可能性もあるわね、監視のためにも一緒に行ってあげるわ。」
「信用無いんですね俺。」
「あるわけ無いでしょう」
「あッははは。素直じゃないなぁゆきのん」
「……なんのことかしら由比ヶ浜さん。」
仲の良い百合ップル二人の背を眺めて肩をすくめたあと、ゆっくりと後を追う。すると二人は、さり気なく俺の隣に並ぶように歩調を合わせると一緒に歩き出す。
緩やかに進む時間。コレが“本物”なのかまだ答えは出せないが、少なくとも俺は……。この瞬間、この空間が心地良いと、大事だと思えるようになっていると……そう、信じたい。
さて、そうこうして俺の課題を回収後、2年の教室に向かっていた道中。
「2年って事は、いろはちゃんの学年だよね〜。ひょっとしていろはちゃんのクラスかなぁ〜」
「いいえ、それは無いわ。四限目が歴史の2年クラスは、一色さんとはまた別のクラスよ」
「だから何で分かんの?怖いよユキペディア。」
等と、そんな他愛もない話に花を咲かせる。そうしていればあっという間に件の教室に到着する。
「失っ礼しま~す!畑山先生居ま━━
ガラガラッと教室の戸を開け由比ヶ浜が元気に声をかけたその瞬間だった。
昼の陽光以上の強烈な白い光が、教室から溢れ出す。
「ひゃああッ!!」
「のわぁッ!?」
「コレは一体!?」
突如の出来事に俺達は三者三様に声を上げる。そんな中で教室の中から発せられる声を俺は聞き逃さなかった。
「皆!教室から出て!!」
「ッ!雪ノ下!!由比ヶ浜!!」
何かマズイと嫌な予感に駆られた俺は、咄嗟に二人へと手を伸ばす。二人の腕をしっかり掴んだ瞬間、光は一層強く輝き世界を真っ白に塗りつぶした。
✕ ✕ ✕
そして話は今に戻る訳だ。
光が収まり、開けた視界に映ったのは学校の廊下ではなく大理石でできた巨大な大広間のような場所。そこに俺たちと同じ学生服の男女の集団が一塊に密集していた。其処からほんの少し外れた場所に俺たち三人は居た。
両手に掴んでいるこの感触も偽物ではない。それを確かめるようにひとしきりニギニギしてようやく安堵のため息が漏れる。
「ひ、ヒッキー……///」
「比企谷君……いい加減、放してくれないかしら///」
「!!ッ あぁっひぃや……その、なんか……すまん」
冷静になると、俺は二人の二の腕を握り続けるという変態的行動を取っていたことに気づく。俺達はそれぞれ別の方向へと顔を背ける。そしてそのまま再び、状況確認の為に周囲を見渡す。決して気を紛らわせるためとか、二の腕のふにふにとした感触を忘れるためとかでは決して無い……断じて無い。
大理石の柱に壁、天井や壁に描かれたルネサンス時代を思わせる絵画、壁画の数々。
美的感覚が平均以下の俺でも、それらすべてが素晴らしい芸術品である事は見るより明らかだ。しかし、俺のひねくれた感性が告げている。それら全てに共通して描かれる中性的な顔をした美しい人物。そいつの放つ存在感がとても胡散臭い。薄ら寒くあるぐらいだ。
……いいや、俺なんかが芸術品の鑑定をしたところで同仕様もない。今は状況確認が最優先。首を振り再び視線と思考を回す。見たところ何処かの修道院っぽい様相から、ここが教会のような場所だと仮定する。
そして、俺達がいる円形の舞台。その周囲をぐるりと囲う法衣を纏う集団。祈りを捧げるような姿勢で俺達を興奮気味に仰ぎ見ていることから無関係とは言わないだろう。
俺もラノベを嗜むオタクの端くれ。エモエモの実の能力者だ。今の状況がどういうものか、なんとなく察しはつく。だが……。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
異世界召喚……。まさか自分達が当事者になるなど夢にも思わないだろう。
全く、何のエモさも感じない。まじで、どうしてこうなった……。
俺がこれから起こりえる可能性に熟考していると、俺の隣で座り込んでいた雪ノ下が急に立ち上がる。
「コレはあなたたちの仕業かしら?」
「ちょっバカお前ぇ!」
「ゆ、ゆきのん!」
雪ノ下はいつもの調子で、さっきイシュタルと名乗った法衣集団で、一番偉そうなじっちゃんに高圧的に声を掛けた。
近くにいた2年生集団も、唐突に自分たち以外の声がしたため俺たちに注目している。何とも居心地の悪い視線だぁ。慣れてないからあんま見んといてください。
「あなたは、3年の雪ノ下さん!?それに由比ヶ浜さんに比企谷君まで!!……どうしてあなた達が」
遅れてこの人。畑山先生が俺達の存在に気づき驚愕している。彼女等からすれば当然の疑問だが、今はそれどころじゃないので一先ず捨て置く。
「いいえ、あなた方を呼び出したのはエヒト様です。」
「そう、ならそのエヒトって言う責任者を出しなさい。」
「それは不可能です。何故なら、エヒト様は我等が崇める創世の神。そう安々とお目にかかれる御方では御座いません。」
「神?あなた、人を馬鹿にするのも大概にしたらどうかしら?そんな戯言で私たちが納得する━━ッ
「ストップ!雪ノ下!スト〜ップ!!」
「むぐッ!?」
このまま話を続けさせたら話が拗れる気がした俺は、由比ヶ浜と一緒に雪ノ下を取り押さえる。
しかし、雪ノ下らしく無い単略的な行動に俺は訝しむ。こういう場合彼女であれば、相手から情報を出来るだけ引き出してから自分の有利になるよう場を整え、その後皮肉という名の言葉のナイフで相手の心をズタズタに引き裂くのだ……結局皮肉は言っちゃうのかよ。
どっちにしろ、いきなり目立つ行動を起こすのは雪ノ下らしくもない。その理由は、考えるまでもなく彼女に触れている俺と由比ヶ浜は理解する。
「ゆきのん……」
その手足は小刻みに震え、強張っている。手なんて拳を握りすぎて白くなっているくらいだ。
雪ノ下は、自分の恐怖を押し殺して自分がわざと目立つように立ち回った。自分へと法衣集団のヘイトを集め、他の奴に万が一害意が及ばないようにしたのだろう。
しかし、その裏でその真意は別にある。
雪の下が俺と由比ヶ浜にしか聞こえないくらいの小さな声で囁く。
「比企谷君……貴方は、何もしないで……」
「「ッ!!……。」」
そう。俺が何かしでかす前に、彼女はその行動を先取りしたのだ。俺ならこうするだろうという行動を、俺にやらせない為に。
だから俺は……
「……一先ず、説明してくれませんかね?何処か落ち着ける場所で……。このままじゃ話も何もないでしょう?」
「えぇ、勿論ですとも。皆様どうぞこちらへ……ご案内いたしますぞ。」
在り来りな言葉を返すことしか出来なかった。
アニメ何千回見たと言っても、小説はまだ読み込み甘いから違和感を感じる人がいるかも知れませんが、追々消せていければいいなぁと思います!!m(_ _)m