ぼっちでダンジョン配信してたら賞金1500億円のデスゲームに巻き込まれたので、のらりくらりと生き残っていきます   作:古野ジョン

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第11話 緊迫の再会

 Mikeは物凄い形相でこちらに歩いてくる。一方、カオリも弓を構えて今にも矢を放たんとしており、場が張り詰めた緊張感に包まれていた。

 

「アイツ……生きてたのか!?」

「タロー殿、下がって。私がやる」

「ま、待て!」

 

 カオリはやる気まんまんと言った感じで聞く耳を持たない。一方、Mikeも唸り声をあげて近づいてくる。

 

「Soldier boy……!」

 

 ん? Mikeは俺の正体を知らなかったはずだが。あの後誰かに教えてもらったのか?

 

「タロー殿、よいか!?」

「覚悟しろ、てめえだけは……!!」

 

 などと考えている間にも、俺たちとMikeの距離はどんどん近くなっていく。まずい、ただでさえ飢えの危機だってのにこんなところで無駄に戦うわけにはいかない。何か、何か方策は――あっ、そうだ!!

 

「はあい、今緊急でカメラ回してるんですけども〜!」

「What!?」

「タロー殿!?」

 

 俺は素早く頭部のカメラとスマホを接続し、配信を始めてしまった。他の二人は困惑しているが、構うものか。

 

『生きてたのかタロー!!』

『え、Mikeがいる!?』

『食われたんじゃなかったの!?』

『Oh, he is alive!』

 

 どこから嗅ぎつけたのか、Mikeのファンからのものらしき英語のコメントもある。二人とも配信中に手荒な真似は出来ないだろう。我ながらナイスアイデアだった。しかもMike効果で視聴者もどんどん増えてるし、広告収入おいちいです!

 

「Mikeさん! ファンが心配してるよ!」

「あ、ああ!?」

『Mike生きてた!!』

『よかった!!』

『何か喋って!!』

 

 日英入り混じったコメントが次々に書き込まれていく。流石にMikeも冷静になったようで、担いでいた剣を下ろした。カオリの制止も無視して、俺はMikeの近くに駆け寄って配信画面を見せてやる。

 

「ま、待てタロー殿!!」

「ほら見て! みんなコメントしてるよ!」

「ああ……本当だ」

「何か喋ってあげて!」

 

 そう促してやると、Mikeはぽりぽりと頭をかいた後、若干照れくさそうに口を開いた。ただの荒くれ者かと思っていたが、意外と人間臭いところもあるんだな。

 

「ま、Mikeだ。俺はこの通り生きてるぞ!」

『キター!!』

『なんでタローのチャンネルに!?』

『よく見たらカオリもいる!』

 

 カメラを使って、Mikeとカオリの二人を映してやる。カオリはデカワニ襲来のあとも配信をしていたが、Mikeのチャンネルはずっと止まったままだったはず。ここで生存報告をしてもらった方がファンも安心するだろう。

 

「ここまでの経緯を説明してあげて!」

「皆聞いてくれ。俺は開会式の後、誰よりも先に湖に向かったんだが――仲間と一緒にワニに食われちまってよ」

 

 あの時、Mikeに煽られて一緒に地底湖の方まで歩いていったらどうなっていたことか。何事も慎重に行うべきというのがよく分かる。

 

『Mikeはなんて言ってるの?』

「あ、そうか。翻訳するよ」

 

 俺は話の内容を日本語に訳した。Mikeはさらに話を続ける。

 

「で、口の中で夢中で剣を振り回してよ。気づいたときには――奴の顎に穴を開けていた」

「穴?」

「そうだ。俺は脱出できたが、穴はすぐに塞がっちまった」

『訳してタロー!』

『あのワニ、再生能力もあるってことか』

 

 鋭いコメントが書き込まれており、なるほどと納得する。デカワニはどう見たって地球の生物じゃない。きっと俺たちの知らない生物学に則った生き物なんだろう。

 

「俺は情けねえよ。仲間は皆食われちまって、配信の機材も壊れちまってよお……」

 

 なるほど、だから生きていたのに配信をしていなかったのか。さっきは鬼気迫る表情だったが、それでもこの間のときより元気がなさそうに見える。ランキング一位まで共に上り詰めた仲間を失ったのだから、それも当然か。

 

「すまんな、Soldier boy。ヤケになったときにお前の姿を見たから、ついやっちまうところだった」

「いや……もういいよ。Mikeさんも苦労したんだろうし」

「タロー殿、その方を許すのか?」

「ああ、今怒ったところで貴重なエネルギーを消耗するだけだ。それよりここを抜け出す方法を考えないと」

 

 カオリはやや不満そうな顔をしていたが、実際怒るような気分でもなかった。この間の件もあるが、ここはいったん忘れることにしようじゃないか。

 

「しかしタロー殿、あのワニをどうするつもりなのだ?」

「そうだなあ。正直、打つ手がないよなあ……」

 

 あのデカワニはかなり手ごわい。その体躯に見合わぬ俊敏な動き、どう猛な性格、そして何より凄まじいパワー。倒すのはともかく、隙を見て先に進むのすら難しそうだ。

 

「まったく、剣だけは無事でよかったぜ……」

 

 Mikeは「錆知らずの剣」をかざしてじっと眺めていた。……待てよ、Mikeがさっき「顎に穴を開けた」とか言ったよな? カオリにも理解できるよう、分かりやすい英語で話しかける。

 

「……なあ二人とも、俺と一緒に戦うつもりはないか?」

「What? 正気か?」

「そうだぞ、あんなワニに勝てるわけがないではないか」

 

 二人とも顔を見合わせ、首をかしげていた。だがしかし、だ。弓使いに剣士、そして俺。この三人なら活路が開ける!

 

「まずは話を聞いてくれ! ――小さなスズメバチだって、人間のことを殺せるじゃないか!」

「はっ?」

「ハチ?」

 

 ますます怪訝な顔をする二人。……しかし、俺たちは共闘の道を選ぶことになるのであった。

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