ぼっちでダンジョン配信してたら賞金1500億円のデスゲームに巻き込まれたので、のらりくらりと生き残っていきます 作:古野ジョン
「ぐおおおおおおっ!!!」
デカワニは地底湖から飛び出し、その勢いのまま俺に食いつこうとする。今までコイツに挑んだ配信者たちは、そのほとんどがこの段階で餌食となってしまった。だが――俺は跳ぶ!
「はっ!!」
速度を生かして力強く地面を蹴りだし、空中に高く舞い上がる。デカワニはさっきまで俺がいたはずの空間に突っ込んでいき、情けない声を出して驚いていた。
「ぐわっ!!?」
「上だよ、デカワニさん」
「ぐおおっ!!」
無様にも地面に突っ伏したデカワニ、その上あごに着地を決める。ぎょろっとした目を見開いて度肝を抜かれていたようだが、俺は煽るように手招きをして左サイドの地面に飛び降りた。
『タローがおとりだったの!?』
『さっき何メートル飛んだ!?』
『迫力すげええええ』
『ワニこわっ!!』
読み上げ機能を使っているので、逐一コメントが耳に入ってくる。そうだ、囮になったのはこの俺だ。デカワニの注意を引きつけ、それでいて最後まで逃げ続ける。そんな危ない任務を他人に任せるわけにはいかないだろう。
「ぐおおっ、ぐおおおおおっ!!」
「こっち来いよ、爬虫類野郎!!」
俺は地底湖に沿って全速力で走る。あまり遠くまで行ってしまうとカオリが目を狙えなくなるから、出来ればここらへんで止まっておきたい。
「カオリさん、準備はいいか!?」
「いつでも構わない。既に目を狙っている」
「よし、頼むぞ!」
無線越しに聞こえるカオリの声。とても力強くて頼りがいのある返事だな。
「ぐおっ!!」
「ほらよっ!!」
『また避けた!』
『すげえwwww』
『速すぎない??』
再び食らいつかんとするワニの口をひらりとかわした。よし、片目はずっとカオリさんの方を向いているはず。これなら――
「カオリさん!!」
そう叫んだ瞬間、遠くの方から弦の弾けた音がしたような気がした。大穴の方から僅かに差し込む光が矢に反射して、美しく輝いている。その光は綺麗な放物線を描き――デカワニの左目に直撃した。
「ぐわッ!?」
その眼球には痛々しく矢が突き刺さり、赤い血が流れ出ている。デカワニは痛みに耐えられないのか、短い手で片目を抑えようとバタバタと蠢いていた。
「よっしゃ!!」
「Good shot!!」
俺とMikeは大声で叫んだ。これでデカワニの左半分が死角になったはずだ。あとはMikeが剣を突き刺しさえすれば俺たちの勝ちだ。意外とうまくいくもんだな。
「今だMike、突っ込めー!」
「おっしゃ、俺に任せとけーい!」
『Mikeいけええええ!!』
『勝つる!!』
『勝ったな、風呂入ってくる』
イヤホン越しに伝わるMikeの野太い声。あとはジョンコム一位様に任せておけば問題ないだろう。これでじり貧生活ともおさらば――
「Mike殿、wait!(待って!)」
「What!?」
「どうした!?」
か、カオリ!? なぜ止める!? 今がまさに絶好機、千載一遇のチャンスだというのに――
「目が、目が……!!」
言われるがまま、デカワニの片目をじっと見る。なんと眼球だった「モノ」がこぼれ落ちていき、新たな眼球が形成されている。まさか……
「あのワニ、再生しているぞ!!」