ぼっちでダンジョン配信してたら賞金1500億円のデスゲームに巻き込まれたので、のらりくらりと生き残っていきます   作:古野ジョン

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第16話 豪快

「おらあっ!!」

「ぐわっ!!!?」

 

 遠くからでもはっきり聞こえてくる、デカワニの驚いた声。そこにあったのは――噛みつこうとしている顎を下から豪快に蹴り上げる、Mikeの姿だった。

 

「Mikeさん!?」

「二度同じ手は食らわねえってんだ! もういっちょ!」

「ぐわああっ!?」

 

 自らの数十倍もの体長を誇る怪物に真っ向から挑み、しかもちゃんとダメージを与えている。こんな芸当は誰にでも出来ることじゃない。……流石としか言いようがないな。そうだ、カオリは――

 

「Mike殿!!」

「おうよっ!」

 

 無線から二人の声が聞こえたかと思えば、キラキラと輝く矢の軌跡が目に入った。直線に近い軌道のまま、デカワニの口元に向かい――素早くしゃがんだMikeの真上を通過し、歯茎に突き刺さった。

 

「ぴぎゃあああっ!!?」

『うまい!!』

『ナイス連携!!』

 

 Mikeが隙を作りだす合間に、カオリは距離をとっていた。そして硬い歯ではなく、その根元――すなわち歯茎――を狙って矢を放ったというわけか。さっき手を組んだばかりだというのにこの連携とは、二人の能力の高さには恐れ入る。デカワニは痛みでじたばたと蠢いている。いや、本当に痛そう。

 

「ぴぎゃっ、ぴぎゃああっ!?」

「Mikeさん、一旦――」

「強攻するぞSoldier boy!」

「何!?」

 

 とりあえず態勢を立て直そうとしたのだが、Mikeは再びデカワニの方に突っ込んで行った。そして歯茎に突き刺さったままの矢を踏みつけ、しなった反動で一気に飛び上がり、顎の上に着地する。

 

「おりゃあああ!!」

『Mikeが行った!!』

『大丈夫!?』

『タローも行けって!!』

 

 あの巨体に踏みつけられても折れないとは、さすが「命食いの弓矢」だ――などと感心している場合ではない。どっちみち単身で突っ込ませるわけにはいかないんだ!

 

「Mikeさん!!」

 

 俺はやっとデカワニに追いつき、ひょいっと尻尾に飛び乗った。痛みで暴れるデカワニに振り落とされないように気をつけながら、頭部に向かって背中をひたすら走っていく。

 

「はっ、はっ……おっと!」

『めちゃくちゃ揺れるじゃん!』

『よく落ちないなタロー……』

『ワニの背中ゴツイな』

 

 Mikeはなんとかデカワニの顔面に捕まっているものの、立っているのがやっとのようだった。顎に突き刺しても口内まで貫くだけだし、剣を突き刺すなら胴体の方が良いはず!

 

「Mikeさん、こっち!」

「わ、分かってる……!」

 

 なんとか取りついたはいいが、Mikeもここまでデカワニが暴れるとは思っていなかったようだ。体に登ることには成功して、後は突き刺すだけなのに――もどかしい。

 

『どうすんのタロー!?』

『Mikeが落ちちゃう!』

 

 分かってる、分かってはいるんだが……って、うん? 何をやっているんだMikeは? 剣のグリップを握って、こちらに向けるようにして――

 

「お前がやれ、Soldier boy!」

「何!?」

「俺はお前に剣を投げる! 受け取れっ!」

「そんな無茶な! それに――そしたら、あんたは仲間の仇を討てないじゃないか!」

 

 必死にデカワニの体表を掴み、歯を食いしばって耐えているMike。どんな筋肉をしているのか、既に片手で剣を持って放り投げようとしている。

 

「いいんだ! このクソッタレを倒せない方が……よっぽど恥だ!」

「!」

「このまま倒れたら仲間に顔向け出来ねえ! だから――お前に託すぞ、Soldier boy!」

 

 しんどいだろうに、Mikeはニッと微かな笑みを浮かべた。自己中心的で目立ちたがり屋。そんな印象だったが――実は仲間思いで冷静な判断も出来るとはな。なるほど、俺はジョンコム一位という座の凄さを理解していなかったようだ。

 

「分かった、投げてくれ! 仲間の仇は代わりに討ってやる!」

「流石だぜ! よっしゃ、いくぞ――」

 

 ……その時だった。デカワニが咆哮をあげるようにして、頭部を持ち上げたのだ。流石にMikeも予想していなかったようで、剣を投げようとした手先が狂ったようだ。

 

「しまっ――」

 

 剣は予想していたよりもずっと高い軌道で飛んでくる。跳べば取れるか? いや、この不安定な足場で跳躍すればワニの背中から落ちてしまう。それに剣に塗られているのは神経毒。うっかり俺の身体に突き刺さることがあれば、それこそ――

 

「Soldier boy!!」

「へっ?」

 

 その瞬間、金属同士がぶつかり合う甲高い音を聞いた。目に映るのは、何かに弾かれるようにして軌道を変える大剣。そのまま、グリップが俺の手中に収まるようにして――剣が落下してきた。

 

「何っ!?」

 

 疑問に思う間もなく、慌てて剣を掴み取る。デカワニの頭部の方向を見やると、そこには弓を構えたカオリ。……まさか、矢を放って剣の軌道を変えたというのか?

 

『何!?』

『さっきから何が何だか』

『タローいけー!!』

 

 コメントの読み上げでハッとする。そうだ、まだ終わっていない。これを突き刺さなければ戦いは終わらないんだ!

 

「デカワニ、覚悟っ!!」

 

 そして俺は迷うことなく、しっかりと両手で――デカワニの背部に、Mikeの剣を突き刺したのだった。

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