ぼっちでダンジョン配信してたら賞金1500億円のデスゲームに巻き込まれたので、のらりくらりと生き残っていきます   作:古野ジョン

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第4話 スーパー配信者・Mike

 いよいよコンテスト当日になった。開始時刻は今日の正午だ。

 

「……よし」

 

 リュックサックに必要なものを全て詰め込んだ後、かんかんに照り付ける太陽に目をやる。招待状には「長期のダンジョン攻略に向けた装備を」との記載があった。実際のコンテスト内容はともかく、何かさせられるのは間違いないな。

 

「じゃあ皆、これから広場に行くよ。頑張りまーす!」

『応援してるぞー!』

『ちゃんと見てるからなー!』

『で、賞金は山分けですか?』

『←いつまで言ってんだ』

 

 スマホで配信を行いながら、広場に向かって歩き出す。既に多くの配信者たちが集まっており、まるで誰かが大規模なオフ会を企画したような様子である。

 

「Hello, soldier boy!」

「Hi!」

 

 道の途中で、顔なじみの配信者に声を掛けられた。俺はいつも迷彩服のような恰好なので、英語圏の配信者からはsoldier boy(ソルジャー・ボーイ)の名で覚えられている。ソルジャーってのはカッコいいけど、ボーイって年齢じゃないよな。もう二十七歳だし――

 

「いでっ!」

 

 スマホの画面を見ていたら、道行く他の配信者にぶつかってしまった。顔を上げると、そこにいたゴツイ体格の白人がよろめいていた。……顔に見覚えがあるな。

 

「What!? Watch where you're going!!(ああ!? 気いつけろや!!)」

『外人に怒られたww』

『それMikeじゃね?』

『えっ? マジだ……』

『Mikeを吹き飛ばすとか体幹ヤバくて草』

 

 配信画面を見るとコメント欄が騒がしい。そうか、この人がMikeか。あのジョンコム一位を誇るスーパー配信者、Mikeその人じゃないか!

 

「あー、大丈夫ですか?」

「てめえ……俺を誰だと思ってんだ?」

『タローって英語話せるんだ』

『かっけー!』

 

 いや、あまり英会話は得意ではないのだが。そんなことより、どうやらMikeはご立腹のようだ。お仲間らしき周りの奴らもこっちにガンを飛ばしている。コイツら、たしか十数人はいるグループだもんな。

 

「すいません、自分の不注意で」

「てめえ日本人か? こんなところに何の用だ?」

「何って、コンテストに出るんですけど」

「アッハッハッハ! こんなチビでもランカー配信者なんだってよ! 雑魚の日本人が来る場所じゃねえってのにな!」

 

 Mikeが笑った途端、仲間たちも馬鹿にするような目でこちらを見てきた。たしかにコイツらから見たら背は低いかもしれんが、こんな道端で馬鹿にされる筋合いはない。

 

「なんか……一位の配信者なのに口が悪いんですね。お育ちが悪そう」

「ああ!? もう一回言ってみろ!!」

『意外と気性荒くて草』

『さっきから英語で分からん』

『悪口言われてそうなのは分かる』

『マザー○ァッカーって言ってみて!』

 

 そんなこと言ったら殺されるわ! だけどせっかくならもっと煽り散らかしてみよう。人気配信者だろうが、俺にかかれば配信のネタだ。

 

「言っておきますけど、僕はずっとカメラ回してるんで。あなたの言動も世界中に垂れ流しですよ」

「What!? これだから日本人はずる賢くて嫌いなんだよ!!」

「普段はデカブツを仕留めてるのに、こんな『チビ』にムキになっちゃうんですね」

「クソガキ、舐めてんじゃねえ!」

「おおっと」

 

 次の瞬間、Mikeの右拳が飛んできたが――身をよじってうまく回避する。流石に普段からデカい獣を相手しているだけあって、スピードはあるな。だが動きが洗練されているとは思えない。

 

「みんなー、317位のぼくが1位の人にいじめられてるよー! えーんえーん」

『煽りスキル高くて草』

『日本語だから伝わってねえだろw』

『なんで今のパンチかわせた??』

 

 次々に飛んでくる拳を避けながら、コメント欄を盛り上げようとMikeのことを煽ってみた。Mikeは次々にパンチを繰り出してくるが、一向に当たらない。カッコ悪いなあ。

 

「おいMike、早くやっちまえよ!」

「そんなチビ瞬殺だろ!?」

「う、うっせえ! 的が小さくて当たらねえんだよ!」

 

 あまりに仕留められないので、お仲間さんたちもイライラし始めてしまった。いつの間にか周囲には他の配信者たちが集まっており、俺たちの様子を撮影している。Mikeにはアンチも多いと聞くし、俺みたいな奴に手こずっている光景はさぞ愉快に見えるんだろうな。

 

「この◯ャップめ、いい加減に――」

「はっ!」

 

 痺れを切らしたMikeが、勢いをつけて特大のパンチを繰り出そうとしたその瞬間――俺は地面に伏せた。空振りした勢いのまま、Mikeは俺と入れ違うように地面に突っ込んでいく。

 

「いでえっ!!」

「あらー、かわいそうに……」

『全然かわいそうとか思ってなさそう』

『Mikeって意外としょぼいな』

『←むしろタローが強いんじゃ……??』

 

 まあ、勝負アリかな。俺はすっと立ち上がり、再び広場の方に向かって歩き出す。

 

「じゃあな、Mikeさん。コンテスト頑張ろうね」

 

 そんな台詞だけを残して、再びスマホの画面に注目した。お、なんだか急に視聴者数が増えたな。英語のコメントもちらほらある。さっきの様子を撮影していた誰かの配信から流れて――

 

「死ねや!!」

「へっ?」

 

 振り向いてみると、俺の目の前には――長さ1メートルを超える大剣を振るう、目を血走らせたMikeの姿があった。

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