ぼっちでダンジョン配信してたら賞金1500億円のデスゲームに巻き込まれたので、のらりくらりと生き残っていきます   作:古野ジョン

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第5話 弓使い

 振り向いた瞬間、目の前には振りかざされた大剣。しかもこれ、ただの剣じゃなく――Mikeが配信で自慢していた「鯖知らずの剣」じゃないか!

 

「なっ……!」

 

 もちろんかわそうと試みるが、コイツの馬鹿力で振り下ろされればそのスピードは段違いだ。このままだと脳天をかち割られてしまうな、などとやけに落ち着いた思考を巡らせていたそのとき――甲高い音が響き渡った。

 

「いでぇっ!?」

 

 Mikeの情けない声が響き渡った。剣があらぬ方向へと弾き飛ばされ、カランカランと音を立てて地面に転がっていく。

 

『なに!?』

『タローが何かしたの?』

「俺はなんもしてねえ!」

 

 コメント欄の皆も何が起こったのか理解出来ていないようだ。身を低くして周囲をきょろきょろと見回すと――俺たちの近くに、矢のようなものが転がっていた。

 

「なんだこれ……?」

 

 もしかして、コイツがMikeの剣を? 振り下ろしている最中の剣を弾き飛ばすなど、普通の矢ではない。配信画面に映せば視聴者の誰かが情報を教えてくれるかもしれないので、スマホを手に近寄ってみる。

 

『なんだこれ?』

『普通の矢だよな』

『矢に自信ニキおらんのか』

 

 反応から見るに、特別な矢というわけではなさそうだな。たまたまここに矢が落ちていただけかもしれない。うーん、だとすればどうして――

 

『タロー!!』

『矢が消えてる!!』

「へっ?」

 

 コメント欄から慌てて視線を移すと、さっきまで矢だったものがキラキラと光を放ち始めた。そして天に昇っていくようにして消えていく。……Mikeの剣と同じく、人類のものじゃなさそうだな。

 

『なんだこれ……』

『この矢もダンジョン産かな』

『カオリの矢だ!!』

 

 カオリ? 人名だろうか。聞いたことはあるような気がするが……どちらにせよ、さっき矢を放ったばかりなら近くにいるはず。どこだ――

 

「!」

 

 道の周囲を見回してみると、森の中から俺の目を真っ直ぐ見つめる女がいた。えんじ色の弓道着に身を包み、片手には弓を携えている。黒い長髪、黒い目、凛々しい顔立ち。直感的に、コイツがカオリだと理解した。

 

『やっぱりカオリだ!』

『かっけええええ』

『結婚してくれー!!』

 

 視聴者たちの反応を見ても、やはりカオリなる人物であることは間違いなさそうだ。この島にいてこれだけの有名人だということは配信者なのだろう。

 

 周囲にいたギャラリー達はいまだにざわめいており、カオリの存在には気づいていない。俺は誰にも見られぬようにそっと森の方を向いて、ペコリと頭を下げた。

 

「……」

 

 顔を上げると、カオリは無言のまま森の中へと消えて行った。見ず知らずの俺を助けてくれるとはな。日本人っぽいし、同胞のよしみということだろうか。

 

『タロー、そろそろ時間じゃないの?』

「おっと、そうだった! ありがと!」

 

 コメントに促され、再び広場の方へと歩き出す。Mikeとカオリ。特徴的な二人だったな。コンテストでもライバルになるかもしれないな。

 

 この時、俺はまだ気が付いていなかったのだ。この二人が、ライバルどころではなく「デスゲームの対戦相手」となることを――

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