ぼっちでダンジョン配信してたら賞金1500億円のデスゲームに巻き込まれたので、のらりくらりと生き残っていきます   作:古野ジョン

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第7話 開会宣言

『なに!?』

『タロー大丈夫!?』

『死んだ!?』

 

 広場だったはずの地面はどんどん沈んでいき、二十メートルほど落下したところで停止した。鮨詰めになっていた配信者たちは次々にバランスを崩し、転んでいた。

 

「なんか地面が落ちたみたい。何が起こっているのか分かんない」

『どゆこと??』

『トラップ??』

 

 状況を把握しようと周りを見回すと、俺たちは大穴に囚われたような状況になっていた。断崖に囲まれ、簡単に脱出出来そうにない。

 

「どうなってんだカイルー!」

「説明しろー!!」

 

 次々にヤジが飛ぶ。すると、またも俺たちの前方に立体映像が現れ――説明を始めた。

 

「驚かせてしまって申し訳ありません。さて、ここが『ゲーム』のスタート地点です」

『また英語だ!!』

『やっぱりゲームとか言ってる』

 

 カイルはさっきから「ゲーム」という言葉をよく使っている。今日の集まりはコンテストだか大会だかと聞いているが、そもそもそれが勘違いということだろうか。

 

「この島が太平洋に出現して七年。皆様はここを『ダンジョン』と呼び、我々のサイトで配信を行ってきました」

「何が言いたいんだー!!」

「俺たちをここから出せー!!」

 

 配信者たちが次々に文句を口にするが、カイルは気にも留めていない様子。

 

「たしかにこの島はとても魅力的です。既知の生態系とは異なる独特な生物たちに、我々人類の科学を超越したアイテム。皆様がこの島を訪れたのも理解出来ます」

 

 カイルは何が言いたいんだ? 今更ダンジョン配信の歴史を述べたところで何があると言うのだろう。

 

「しかし――所詮、今まであなた方が配信されてきたのはダンジョンの()()にしか過ぎません。ハンバーガーで言えばバンズだけ」

「何だと!?」

「馬鹿にすんのも大概にしろー!!」

 

 それを言うなら「饅頭の皮だけ」とかの方が適切だと思うのだが……。とはいえ、「表層」とはどういう意味だろう?

 

「――さて、ここで『ゲーム』の説明させていただきます。ルールは極めて簡単」

 

 カイルの声色が変わった。配信者たちも一斉にざわつく。そうだ、ここからが重要なんだ。

 

「皆様にお願いしたいのは――この先にある地下ダンジョンの攻略です」

「ち、地下ダンジョン?」

『そんなのあるの??』

『聞いたことねえ』

『賞金の説明まだ!?』

 

 視聴者たちも一斉に困惑している。俺たちが知っている「ダンジョン」は、地上にある森や川といった自然だけ。そんなおとぎ話のような地下迷宮など初めて聞いた。

 

「この先の地底湖を超えると地下への入り口がございます。その先、奥の奥まで潜りますと――最下層に『ボス』が待ち受けておりますから、それを討伐していただきたい」

 

 配信者たちのざわつきがさらに激しくなった。地下にダンジョンがあり、その最下層にボスが待っている。そんなゲームのようなことが起こり得るとは――にわかには信じがたいが。

 

「もちろん、報酬もございます。一番最初に最下層に辿り着き、ボスを討伐していただいたチャンネルには――10億ドルを差し上げます。私が今まで築き上げた全財産です」

「「うおおおおおおおっ!!」」

「「カイルっ! カイルっ!」」

 

 ざわめきが歓声へと変化して、カイルへのコールまで起こっている。やはり金の話になると盛り上がるようだ。

 

『賞金キター!!』

『←うれしそう』

『←よかったなww』

 

 コメント欄も賞金の話をしていることに気が付いたようで、大いに盛り上がりを見せている。……が、それより気になるコメントがあった。

 

『負けたらどうなるの?』

 

 たしかに気になる。一番乗りでゴールした配信者はそれでいいが、負けた奴らはただの無駄足じゃないか。

 

「負けたらどうなるんですかー!?」

 

 さっきと同様に、大きな声で叫んでみる。また気づいてくれたのかどうかは知らないが、再びカイルのシルエットが反応した。

 

「このゲームに『負け』や『リタイア』は存在しません。勝てば10億ドル。しかし――私は、このゲームをクリアできる人間はほぼいないと思っています。正確に言えば、ここにいる人間のほぼ全てが生きて帰れないでしょう」

「!?」

「何言ってんだ!?」

 

 生きて帰れない……だと!? たかだか配信者のコンテストに10億ドルも費やす意味が分からなかったが、もしかして命が消し飛ぶようなとんでもなきイベントなのか!?

 

 浮かれていた配信者たちも、カイルの発言の異常さに気が付いたようで大騒ぎしている。負けは存在しない、という発言の意味とは――

 

「あなた方に与えられた選択肢とは――勝ってここを抜け出すか、その前に倒れてゲームオーバーか。実質的にはその二択です」

『はあ!?』

『何言ってんだコイツ!?』

『死ぬか勝つかしかない……ってこと?』

『デスゲームじゃんそんなの』

 

 ……参加賞だけ貰って帰るつもりだったが、もしかしてとんでもないことに巻き込まれたのかもしれない。まずい。こんなぼっち配信者が勝てるわけがない!

 

「では、ここにゲームの開会を宣言いたします。皆様の健闘をお祈りして、私からのメッセージとさせていただきます」

「待て!!」

「帰してくれー!!」

「なんでこんなことさせるんだー!!」

 

 悲鳴……いや、命乞いに近い叫びがあちらこちらから聞こえてくるが、無情にも立体映像はそこで消え失せてしまった。配信者たちは周りと顔を見合わせて困惑するばかり。

 

「どうすんだよこれ……」

「俺なんか半袖で来ちゃったよ」

「ボスってのは何なんだ?」

「食い物とかどうすれば――」

 

「Shut up!!」

 

 その時、一段と大きな声が大穴中に響き渡った。その声の主は――集団の最前列で開会式に臨んでいたMikeだった。

 

「俺は行くぞ!! 10億ドルは俺たちのもんだ!!」

 

 Mikeが大剣を掲げて歩き出すと、その仲間たちも堂々とした顔つきで後ろをついていく。やはりジョンコム一位の度胸は伊達ではない。

 

「お前ら、賞金を俺たちに取られていいのか!?」

 

 Mikeが煽るようにして大声で叫ぶ。すると他の配信者たちも、だんだんと地底湖の方に歩き出した。

 

「……Mikeが行くならついていこうかな」

「お、俺も賞金欲しい!!」

「そうだよな、行ってみないと分かんないよな」

 

 インフルエンサーかくあるべし、といった感じだな。皆を巻き込んで次々に大きなムーブメントを作る。人格はクソだが、ここは配信者として見習うべきところか。いつの間にか320組のうちの半分くらいが、Mikeの後に続いているようだ。

 

「お前ら、俺についてこい!!」

「「「うおおおおおっ!!!」」」

 

 威勢のいい声が耳をつんざく。さて、俺はどうしようかな。

 

『タローは行かなくていいの??』

『賞金取られちゃうよー!!』

『なんか危ない気がする』

 

 コメント欄もいろいろ言っているが、ちょっと様子を見ることにしようかな。ファーストペンギンは勇ましいけど、シャチに食われるだけかもしれな――

 

「「「うわあああああっ!!!」」」

「へっ?」

 

 大絶叫に驚き、思わず顔を上げる。地底湖から水しぶきが上がり、緑色の鱗のようなものが現れる。俺たちの先にあったのは、体長30メートルはあろうかという巨大ワニに食い散らかさられる――Mikeたち先頭集団の姿だった。

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