ISSOC ──IS特殊作戦群──   作:雪瀬 恭志

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初投稿です。
インフィニット・ストラトスへの恩返しのような感じで気ままに更新します。
俺達にパワードスーツのロマンを魅せてくれてありがとう。


ISという”異”

 

「おーい……」

 少年の声にも少女の声にも聴こえる、その声の主は手を挙げると、その虚ろな瞳で眼の前に広がる蒼を見る。

「ここは危ないぞぉ……」

 眼の前に広がる蒼。その先の、鳥のようにも見える不思議な、羽ばたいて見える朧げなものに向かって呟く。羽ばたくもの──渡り鳥たちはそんな声の主に一切目もくれず、ただ眼の前の目標に向かって飛翔する。

「……飛んでいけ──」

 

「──い! おい!! カレン!! 生きてるよな!?」

 

「ぇ……あ……なた……は……」

 次の瞬間、キーン……! と鳴る耳鳴りに、はっ、とカレンは顔を動かすと、男勝りな声の主は「良かった……頭部外傷なし……! 軽い脳震盪か……!」と同時に喜びを露わにする。

「おい! 動けるか!? 動けるよな、中尉!」

「ぇ……あ……ぅ」

「そんなに焦っても意味ないですよ」

 よいしょ……っと、と身体に一瞬の無重力が生まれると、カレンと呼ばれた人物は、長い銀髪を後ろで結った人物に担ぎ上げられ、カレンは地面を見る。乾燥した地面はひび割れて枯れ草一つなく、それはまるで、脱水症状と意識混濁状態に陥っているカレンの状態を表しているかのようだ。

『──おい! 何をやってる……!! さっさとカーボンを回収してこい!!』

『り、了解!』

 すると通信機から流れてくる声と大尉の声。その怒号を聞きながら、カレンは周囲を見渡すと、段々と周囲の状況がわかってくる。

 草木の少ない荒野、その遠くに見えるのは幾つもの戦闘車両。隊列を組んで履帯を鳴らすその群れは、ある一定の位置で止まると、砲塔を旋回させ、狙いを定める。

 

 刹那、かしゅしゅッッ……!! という圧搾音のような音が響き、戦闘車両の頂から閃光が疾走る。

 

 キイイィィン……!! 

 

 矢継ぎ早に鉄の鳥──航空機が、まるで流れるかのように戦闘車両の後方から宙を舞う。そして、その後ろについていくのは、騎士のような装甲を四肢に持ち、背中に大型のスラスターユニットを装備したタイガーストライプの茶色い機体。その数、七機。

 その騎士の姿を見ると、カレンは、どくっ、と心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。

 

 ──知っている。これは”IS”だ。

 

 IS──正式名称を『インフィニット・ストラトス』というこれは、日本国の天才科学者であるタバネ・シノノノが開発した宇宙用パワードスーツであるが、宇宙用とはいったものの、現在は大気圏内用として運用されるに留まっている代物だ。

 

 そして現在現れた、その大柄な騎士のような見た目のISは『ファング・クエイク』といい、同時に我が国の主力を担う機体と言えるものでもある。

 

「あい……え……す」

 

 

 

「遅いぞ!!」「水とメイト! 急いでくれ!!」「大丈夫か!?」

「ぅ……」

 深く掘られた塹壕の中で、彼女は先程よりも朧げに周囲を見る。そのサンドカラーのヘルメットと戦闘服を着た兵士が行き交う中で一人、こちらに歩いてくる人物がいる。

「おい」

 恐らく男性──否、確実にそうだろう。壮健な顔立ちに幾筋もの傷痕を持った人物は、こちらに早足で歩いてくると

「何事だ」

「た、大尉!」

 敬礼。大尉と呼ばれた男性はため息を付くと、「──現状を説明しろ、ルーク」と、敬礼をした人物の傍らで自身の片腕を掴んで揺れている、銀髪のポニーテールの人物に話しかける。

「……現状は、演習行動中にバカが一人、戦闘不能になった。……以上であります」

 男性特有の低い声にフェミニンな女顔、そして細くしなやかな体つき──装備も軽装備である──も相まって、どこか”不思議”な印象を受ける人物であるルークは淡々とその質問に答える。

「ほら、水だ……。ゆっくり飲め……」

 ルークは処置を受けているカレンを一瞥すると「演習はこのまま実施しますか? サンデル大尉」と一言。

「当然だ。今回は我ら米国とフランスの共同軍事演習だ。この程度で終わりにしてしまっては面子が丸潰れだ」

 サンデルはそう答えると「それに、あれを見ろ」と自身が見ている景色を指す。

「あれは──」「あ……れ……?」「──ッ」

 

 そこには四つの多方向加速推進機(マルチスラスター)と多数のウェポンラックを持った、ネイビーカラーのISが。編隊飛行をしながら現れた、フランスの国章が右脚部にあしらわれている五機のISは、三機が着地、二機が空を飛行し、そして両手でクラウス社製の自動小銃『レッドバレット』を携え進行を続ける。

 

「『リヴァイヴ』……」

 

 リヴァイヴ──正式名称を『ラファール・リヴァイヴ』というそれは、世界シェア三位を誇る大手メーカー『デュノア』社が開発・生産した量産型ISの名で、各国が試作開発・実験中の第三世代型ISより前世代のISのため性能面では劣るが、その汎用的・多機能な性能や機能性から、主に仏──フランス軍などに正式配備されているISである。

 

 そして重装騎士のような見た目のIS二種、四方合わせて数十機が、戦闘車両ら、そして戦闘機群と入り乱れる光景はまさに”異質”そのもので、そのサンドカラーとネイビーの色合いもまた、灰色が主である兵器のカラーリングの常識とはかけ離れたものであったため、周囲の兵士が、ざわ、ざわとざわめく。

 

「これが……『白騎士事件』の……」

 

 ISが発表された十年前、当時は各国もISについて疑問をいだいていた。

 そんな中、突如として起こったのが、ざわめきの中で兵士が呟く『白騎士事件』である。

 それは突如、各国のミサイル設備が一斉にハッキングを受け、日本国に向けて放たれたが直後、『白騎士』という正体不明のISによってそれらすべてが斬り伏せられた事件である。

 

 これによって各国は、ISの重要性と同時に、本機達の前では現行兵器はほぼ対応不可能という二つを知ることになる。

 

「これが、俺達が乗ることになるIS……」

 タタタンッ、タタンッ、という子気味の良い、ISと歩兵部隊の自動小銃の音を聴きながら、カレンは呟く。

 

 

 午後の共同軍事演習。渡り鳥が、そんな彼らをまじまじと不思議そうに見つめていた。

 

 

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