今を生きる為にガチになります。略して今ガチ
時は少し遡る。【今日あま】が終わった直後、苺プロに鏑木プロデューサーが訪れ、斉藤壱護と机を挟んで話込んでいた。無論世間話ではなく、仕事に関してである。
「アクアを恋愛リアリティショーに使いたい?いったいどういった風の吹き回しだ?鏑木」
「特に意味は無いよ、強いて言うなら面白そうだからかな?」
「お前がそんな人間じゃないことは、百も承知してる。何が目的だ?」
「信用が無いな、本音を言うと内定させていた一人が飛んでね、代役を探していたんだ」
「アクアはお前専用の代打じゃないぞ」
机を叩き怒りを露にする壱護だが、そんな彼を見て
「それについては謝罪するが、面白いというのは本心だ」
「目は確かか?アクアのギャグセンスは結構寒いぞ」
正しいが酷い言い草である
「そっちの面白いじゃなくて、未知の可能性を感じたって言えば正しいかな、星野アイのように」
「確かにアクアはアイを見て育ったからな、だがアイとアクアは全く違うぞ」
「それは理解してるよ、彼女は唯一無二の存在だ」
「何故、アクアに固執する?言っちゃなんだが、アクアより顔が良いイケメンだって抱えているだろ?」
「確かにいるが、打ち上げの時にね」
「恋愛リアリティショー?男女でワゴン車に乗って世界を旅する作品ですか?」
「アクア君、何を見て育ったんだ?まぁ今はシェアハウスで共同生活するのがメインだけど、こっちは共同生活ではなく放課後に集まった学生というテイストでやっているんだ」
「はぁ」
「あら、あんまり興味ないのかい?」
「いえ、リアリティショーは好きですよ。海外で男女別れて無人島生活をしているやつは、男性側は得意分野を言い合ってサバイバル生活を満喫してましたけど、女性陣の常に上から目線で醜態の擦り付けあいは、人間の本性が見えて、何度も見ても笑えます」
「君、本当に15歳か?」
嘘です。30半ばのオタクサラリーマンがこちらの世界にきて、約12年経つので中身は鏑木プロデューサーに近い存在である。
「じゃあ質問を変えよう、君が仕事を選べる立場だったら、どんな仕事をしたい?」
鏑木からの質問に考え込むアクア、確かに今は与えられた仕事をこなす日々だが、選べる立場となれば話は別だ、役者の世界はギャンブルと考える彼は
「そうですね。【心が震える】仕事をしてみたいですね」
「心が震える?どうゆう意味だ?」
「ここは明日も分からない業界ですからね、そりゃ1円でも高いギャラの仕事を選ぶのが人としての選択ですが、ギャラが安くてもいい、名も知らないマイナー監督で上映数も少なくてもいい、でもそこに自分の求めている【心】があるのなら、過去の栄光なんて簡単に捨てますよ」
「やっぱ面白いね君は、今回の話は心に留めておく程度にして、今日は楽しんでくれ」
「【心が震える】か、アクアらしいな」
「15の子供が言うことじゃないよ、あとこれは愚痴なんだが、最近の役者って無難なんだよ」
「個性が無いってことか?」
「平均点60~70点で上手い演技をするんだが、ただそれだけなんだよ。だがアクア君はパラメーターの1部がぶっ飛んでいる気がしてね、今回の起爆剤だと思ってる」
「起爆剤が核爆弾になるかもしれないぞ、鏑木」
「そうなれば、もっと面白くなるね」
彼もまたギャンブラーなのである。しかし鏑木は相手を射抜くように目を鋭く細め、低い声で
「それに斉藤社長、アクア君の売り込みに迷っていますよね?」
「分かっていたか?なまじ顔が良くて演技も出来る」
「器用貧乏になりかねない、大切に育てるのはいいが、過保護になれば時期を逃す可能性もある」
「とりあえずアクアに話は通す、決断はアイツに任せる」
「いい結果を期待してるよ」
話を終えた鏑木は足早に去って行き、部屋には壱護だけが残された。ソファーの背もたれに体重を預け
「(アクアのことを考えれば、世間に名前を売るチャンスになるが、恋愛リアリティショーは立ち振る舞いによっては炎上する可能性もある。多くの芸能関係者が消えていった。この話を蹴っても問題無いが、鏑木のことだ、搦め手を使って嫌がらせする可能性もある。だが鏑木は1つ見当違いをしている。そこに気付いていない今なら、十分に勝機はある)」
その後、アクアに出演の打診があったことを話すと、即答で「いいよ」と返ってきた。彼曰く
「今の俺は、ネットドラマの1シーンに出ただけのモデルでしかないし、名前を売るチャンスだと思ってる。【思い立ったが吉日、その日以降は凶日】って言うでしょ?」
「いいのかアクア、お前の経歴に傷がつく可能性もある」
「傷つくことを恐れたら、何も出来なくなるよ」
赤ん坊の頃からアクアの近くにいて、大怪我を負って記憶を失っても悲観せずに、強く生きている。子供が頑張っているのに大人がマイナス思考じゃ笑われてしまう。
壱護はアクアのことを【非常識だが、常識を理解しているから非常識になれる】と評している。アイとは別ベクトルでイカレている。人は可能性の獣である。アイやアクアに首輪をつけても意味はない、ならリードを手放し、大草原に解き放てば面白いことが起きる。この二人は大草原すら飛び越えて天に昇ることもある。壱護は寝るのを惜しんで、考えた説得の言葉を口にはせず、アクアの博打に賭けることにした。
~今からガチ恋始めます初日収録日~
鷲見ゆき―――高校1年生・ファッションモデル
熊野ノブユキ―――高校2年生・ダンサー
黒川あかね―――高校2年生・女優
森本ケンゴ―――高校3年生・バンドマン
MAYちょ―――高校3年生・YouTuber
今回出演する5人が教室に集まって、各々自己紹介をしていた。しかし1人足りない、そのことに気付いたノブユキは周りをキョロキョロしているが、誰かが入って来る様子もない、教室の角には作り物の胸像が置かれていたがスルーしていた。スタッフを呼ぼうと立ち上がった瞬間
“バゴ――ーン”
角に鎮座されていた胸像が内側から破壊され、中から金髪イケメンの男が現れた。
「すいません。朝の4時からスタンバイしてて寝てました。星野アクアです。高校1年で役者をやってます」
どうやらこの男は今回の台風の目になる予感がする。出演者・スタッフ一同であった。
今ガチ編の冒頭までたどり着きました。お気づきですが、この今ガチには「MEMちょ」は登場しません。「MAYちょ」とはアニメ2期に登場した劇団ララライの「化野めい」でYouTuberとして出演させます。なのでララライには所属していません。
MEMちょの役割を彼女にやってもらいますがB小町には加入しません。なおMEMちょは登場しますが職業と年齢は変更させてもらいます(若干性格も変わります)
ご都合主義でアイが生存したことによるバタフライエフェクトだと思ってください。