今ガチの鏑木プロデューサーは語る。
アクア君をオファーを出した時は、ある程度の期待はしていたよ、顔が良くて演技も出来る。状況判断に優れているから自身の立ち位置を理解して動く、彼を中心にカメラを廻せば、他のキャストにスポットライトを当てて本人は後ろに下がることが出来る。高1の子供には出来ない芸当だよ、序盤はコメディ路線で番組を支え、例の事件のあとは自身が恋愛の中心にいたから、映像としても面白かったよ、まぁ最後のキスシーンは過激ということで上から怒られたが、こちらとしても彼を起用したことで大きな利益があったから、お返しをしないと罰が当たるね。
今ガチが終わり出演者やスタッフが集まり、お疲れ様会が開かれた。各々が収録の思い出を語る中、アクアは考え事をしていた。黒川あかねから向けられた特大の愛についてである。他人から強く愛されたことの無いアクアにとって、今回のことを飲み込むことが出来なかった。
「どうしたの?アクア」
彼女がアクアの隣に座り、体を密着させてきた
「これからのこと、考えてた」
「当ててあげようか?」
「ん?」
「アクアって、他人から愛される経験が乏しかったから、今の状況に困惑している。俺は黒川あかねの愛に応えることが出来るか?どう?」
「超能力者かよ」
「私ね、アクアが最後に隣に居てくれれば最高なんだ」
「いきなり浮気を容認か」
「違うよ、周りの女の子に目を奪われても、私の存在に気付いて、私を選ぶってこと」
「深く愛されて幸せ者だね俺は」
「だからアクアのこと、もっと教えて」
「現在進行形でヤバいことが1つある」
「なになに」
彼女がニヤニヤしながら更に体を寄せてきた。
「あかね、【俺が女装してアイドルに加入させられそうになっている】ってどうやって解決すればいい?」
「なにそれ?」
どうやら、あかねの脳内キャパシティはこの一文でオーバーフローした。
ことの発端は数日前の苺プロで起きたことだった。ダンスレッスンを終えた二人が部屋に戻ってきたが、ルビーの顔が険しくイライラしているのが見て取れた。レッスン内容に不満があったのか、ミヤコとの話を途中で終わらせ、有馬に尋ねた。
「かなさん、ルビーどうしたの?」
「いや、アクアが気にすることじゃないんだけど」
「?」
彼の頭にクエスチョンマークが浮かんだが、何も思いつかない。するとルビーが大声で
「アイドル活動したい!!」
と大絶叫が事務所に響き渡った。
「みんなの前で歌って踊りたい、テレビに出て有名人になりたい、武道館で大歓声で自分の名前がコールされたい。アイドル活動やりたいの」
「あぁストレスの爆発ね」
「まぁ分かるよ、デビューも決まっていなくて毎日レッスンの日々じゃ、不安になる」
「かなさんは、大丈夫なの?」
「私はほら、仕事の無い期間が長かったから大丈夫、ウンダイジョウブ」
かなも自虐しながら自身にダメージを負って部屋の隅で体育座りしている。
ルビーの言い分も分かるが、これはしょうが無い、3人目が見つからないのが実情である。当初は二人組で活動する案もあったが、二人の実力差が如実になってしまった。有馬が上でルビーが下である。芸能界で長く揉まれた経験はここでも発揮されたのである。なお妹はクラスメイトから『寿みなみ』をスカウトしようと話を進めたが、ミヤコさんの実力行使によって阻まれたのである。
「仕方がない、最後の手を使う」
ルビーが立ち上がり、懐から1枚の写真を取り出す。
「この子を3人目として新生B小町に加入させます。事務所の問題もありません」
「どれどれ、あら可愛いというよりもカッコイイ子ね。事務所も大丈夫って、この子フリーなの?」
「いいえ、苺プロに所属しています」
「こんな子いた?」
「ええ、ロリ先輩の目の前にいます」
「目の前?副社長とアクア・・・アクアッ!!?」
有馬は写真とアクアを見比べ、脳がショートしていたが火事場の馬鹿力で持ち直し
「どーゆーことよアクア、あんた女装趣味でもあるの?いやまさか、今まで男だと勘違いしていたのは私で本当は女の子、ちょっと確かめるから服全部脱ぎなさい」
アクアの服を脱がそうと、詰め寄りズボンに手を掛けたが、彼の脳天唐竹割りによって正気を取り戻した。
「ドアホ!雑誌の企画で男性モデルを女装させる企画があったんだよ」
「え?」
「この時、メルトもいたよ、だけど俺以外のモデルの出来が酷すぎて、企画自体が無くなったんだよ」
「じゃあこれは?」
「撮影してくれたカメラマンが好意でくれたんだ。『こんな良い写真を現像しないなんて私が許さない』って」
「お兄ちゃんなら、ダンスは出来るし歌も私より上手い、それにこの美貌なら私より人気が出る」
「ルビー言ってて悲しくならない?」
「うん、悲しい・・・でも背に腹は代えられない」
「さぁお兄ちゃん、星野マリンとして新生B小町に」
ルビーが次の言葉を語ろうとした瞬間、彼女の体は宙を舞った。その光景を見ていた女優の有馬かなは後年、我々取材陣に「ドンッて鈍い音がしたのですが、ルビーの頭が事務所の天井に直撃し、ゆっくりと落ちてきました。近くにいたアクアの拳からは、真っ白な湯気が出ていて、あの時の眼光は今でも忘れませんわ」と述べている。
「そんなことがあって、妹が俺にアイドル活動をさせようとしている」
「アクア、その写真貰える」
「駄目に決まってるだろ」
「じゃあ、私の目の前でやってくれる?」
「難易度跳ね上がってるよ」
アクアは、あかねの脳と心が再起動するまで、体を寄せ合い頭を撫でながら彼女が復活するのを祈ったが会が終わるまで続くのであった。
会が終わり、女の子たちは安全の為に女性スタッフが同乗するタクシーに乗って帰宅となったが、あかねが窓から顔を出して、アクアの口に『おやすみのキス』をしたのは言うまでもなく、ケンゴとノブユキからは「結婚するときは、いつでも駆けつける」と言ってくれて、彼らと別れた。
あかねは自宅のベッドに身を預けて、とても心地良い気持ちだった
「(キスの瞬間のアクアって目をギュって瞑るんだけど、だんだん薄目になるのも良かったし、舌を絡ませた時も最初は抵抗するのに次第に受け入れてくれる。アクアと抱き合う形になった時も倒れないように支えてくれて、顔が赤くなるの可愛いかった)」
彼女の愛は天井知らずで、当分どころか一生落ちることはないと思う。
~陽東高校~
「今ガチ、終わってしもうたね、ねぇルビーちゃん身内のキスシーン見てどうやった?」
「あの日、事務所で起きたこと知りたい?」
いつも明るい顔のルビーが引きつり暗くなっていた。
「私も興味あるけど、教えてくださる?」
撮影が休みの不知火フリルもやってきた。なぜか手には包帯が巻かれていて、尋ねると『ガラスのコップを落として素手で拾って怪我をした』みたいである。
~最終回放送日の苺プロ~
「ア・ク・・・・・あ」
まず星野アイがぶっ壊れてしまい、完全にフリーズして動くことが出来なくなった。息子のキスシーンでもダメージがデカいのに、それが舌と舌が絡み合うディープなキスならクリティカルである。
「やってくれたわね、黒川あかね(なんで、胸がざわつくの?私はアクアに恋愛感情なんて無いはずなのに、この気持ちは何?大切なモノを奪われる感覚に近い?アクアが大切なの私は?)」
有馬かなは胸を押さえつけ、画面を睨めつけている。その目は最愛の友の敵を討つように鋭く、冷たいモノであった。
「あらあら、お熱いことで」
このメンバーの中では副社長のミヤコだけが平常心を保っていた。ルビーが尋ねると
「子供の成長を実感出来たってことかしら、それにアクアがあんな表情するなんて、もし黒川さんがアクアの伴侶になったら、アクアも毎日楽しい日々を過ごすじゃないの?」
やはり年長者は強かった。結局アイと有馬が復活するまでに2時間を要し、もう1度キスシーンを見たアイは「アクアが取られた」と泣き出す始末であった。
「結構大変やったね~、ルビーちゃんは大丈夫やったの?」
「私は大丈夫というより、心がチクッとした感じかな」
「確かに、あのディープキスは強烈でしたね、さっきアクアが外のベンチに座っていたけど、彼を見ようと普通科の女子たちも遠目から観察してたし、しばらくは動物園のパンダみたな扱いになるのでは?」
ルビーは、兄が遠くまで行ってしまったことに心を痛めるが、自身のアイドル活動についても不安があり、しばらくは安眠出来ない日々が続きそうである。
今ガチ編の設定
・MEMちょを出さなかった理由
初期段階では出すつもりだったが、物語を組み立てている時に「これって原作を言葉と行動を少し変えているだけだよね」」と思い、元々ボツ案にしていたモノを再構築した際に、星野アイが生きているならYouTuberじゃないMEMちょが存在しても良いと思い、今ガチで彼女の役割をアニメ2期に登場していた「化野めい」を「MAYちょ」として起用しました。理由はキャラデザが好みだったからです。
・デートで星野アイの起用理由
最初は重曹ちゃんで話を考えましたがボツにして、不知火フリルと水族館を考えました。彼女は視聴者側とカメラ側の視点を見ることが出来るので、ある程度文書を固めていたのですが、パソコンの前に座った途端「星野アイと制服デート」という単語が浮かび、親の視点が必要だと思い、アクアの成長を目の前ではなくカメラ越しで知ってしまったことに対する罪悪感も入っています。
・アクアの精神
状況においての最大利益を求める。自分が家事を手伝えばルビーがアイに甘える時間が増える。仕事終わりに家事は大変だから負担を軽減させて仕事を頑張ってもらおう。の精神で生活していたせいで自己犠牲が強くなりました。
とりあえず、次は新生B小町の結成まで書ければと思います。
感想や評価を入れてくださり誠に感謝しています。