新生B小町に3人目のメンバーが加入し、苺プロの面々は精力的に動き出した。事務所ホームページにメンバー紹介とインタビュー動画の掲載、アイとアクアが出向く現場に誰か一人を帯同させてお偉いさんに顔見せを行う。またアクアを介してYouTuberのMAYちょのチャンネルに生出演、なお生出演の見返りにアクアを好きな時に呼び出して番組に使っても構わない契約を結ばせている。もちろん無料である。
ジャパンアイドルフェスまで時間がなく、彼女たちのレベルアップも必要である。このことに関しては、ぴえヨンによる体力向上トレーニングと伝説のアイドル星野アイの指導によって形にはなってきた。流石に新曲を作る余裕が無かったので先代の曲をカバーすることに落ち着いた。しかし更なる問題が彼女達にのしかかった。
「嫌よ、アイドルにとってセンターって花形のポジション、私なんかを真ん中に据えたら人気なんて無くなるわよ」
新生B小町のセンターを誰にするかである。当初はルビーが立候補していたが3人の中で、歌唱力とダンスが最下位であるため除外された。なら知名度・歌唱力・表現力の3冠を獲得している有馬に白羽の矢が立ったが本人にやる気が無かった。
「そんな〜、先輩なら十分にセンターを務めることが出来ますって」
「ルビー何を根拠に言ってるの?」
「ピーマン体操でオリコン1位獲って音楽番組に出てたじゃないですか」
「懐かしいです。弟たちがよく踊ってました」
「あんたら、人の黒歴史弄って楽しいか?」
「でも、かなさん、何でそこまで嫌がるのですか?芸能界で活躍していたのならファンもいたのでは?」
人気子役としてデビューし今もこの業界にいるということは固定のファンが存在しているはず。MEMの疑問も当然のことである。
「一発屋の子役が今まで、どうやって生きていたと思う?演技以外のジャンルに手を出しては赤字を作って関係者に損失を出したのに、ギャラだけはしっかり貰っていた。つまるところ有馬かなに客なんていません」
笑顔で自虐し、事務所の隅に泣き崩れてしまった。そんな彼女を慰めようとしたが、この二人には有馬を立ち直らせる言葉を持ち合わせていない。
「有馬ちゃん、現場に行くよ」
勢い良く扉を開けて星野アイが登場し、有馬の手を取って嵐のように去っていった。結局残された二人は『現在出来ることをしよう』と意気込み、お菓子を食べて休憩することになった。
バラエティの撮影現場では、やはりアイが中心となり、有馬は子供の頃に映画の撮影現場で見た彼女と今のアイを見比べて自己嫌悪してしまった。もし自分が天狗にならなければ彼女と一緒にテレビに出ていたかもしれない。家族とも関係が悪化しなかったかもしれない。様々なIFを妄想してしまい惨めな気持ちになってしまう。
撮影も終わり帰りのタクシーは沈黙に包まれていた。その静寂を破ったのは
「有馬ちゃん、ちょっと時間ある?」
「ん?どうしたんですか?」
「運転手さん、あそこのコンビニで降ろしてください」
タクシーを降りた二人はコンビニに入って、各々好きな飲み物を購入して外に出た。
「それを買うだけなら、タクシーを待たせておけばよかったのに?」
「いいの、有馬ちゃんと話したいから」
「?」
どうも要領をつかめない、話があるならタクシーの中で話せばいいのに、わざわざ外に出てまでする話ってなんだろう?
アイと少し歩き、辿り着いたのは誰もいない公園で二人は中心にある東屋に座り、飲み物を開けて乾いた喉を潤した。
「有馬ちゃん、B小町のセンターになるの嫌がっているんでしょ?」
「ルビーから聞いたんですか?」
きっと、アクアかルビーが手を回して星野アイから説得してOKを貰おうという魂胆だと思い、態度を硬直させようとしたが
「アクアとルビーからは何も聞いてないよ」
「え?」
「だって、有馬ちゃんって昔の私と一緒のこと、してるもん」
「えぇ?」
「みんなが『1番上手いからセンターやってよ』って何度も言われると嫌になっちゃうよね?」
「はい」
多分、自分が生まれる前のことだ、デビュー1年も経っていない頃だ
「でも、結局センターやってましたよね?嫌々やってたんですか?」
「ううん、好きでやったよ」
「どうゆうことですか、話が矛盾してますよ」
「アイドルは矛盾に生きるモノだよ」
「はぐらかさないでください」
かなは椅子から立ち上がり怒りを見せるが、少し落ち着いてから再び着席した
「すいません」
「センターをやった理由を聞きたいんでしょ?」
「はい」
「あの景色を見るのが好きになったから」
「景色ですか?」
「そう、1度ねセンターをやった後に他の子に譲ったの、同じライブ会場で曲も一緒なのに目に写る景色がセピア色に見えてね、眼科にも行っちゃった。んでセンターに戻ったら色が戻ったの」
有馬の頭に「?」しか浮かばなかった。どうゆうことだ同じ場所なのになんで色が違うのか?天才と凡才の違い?トップアイドルには見えるモノが違うの?
「分かんない顔してるね」
「はい」
「この景色を独り占め出来るのは私だけ、誰にも譲ってはいけない。チャンスを逃したら二度と手に入らない。私は譲ってもらえたからいいけど、有馬ちゃんはどうしたい?」
「分からないんです」
「ルビーやMEMさんが認めてくれるのは嬉しいのに、今の自分はセンターに相応しいのか分からなくて、人気の落ちた子役がアイドルをやっていいのか?私のせいで二人の夢を潰してしまうのが怖いんです」
「潰れないよ」
「え?」
「夢ってそう簡単に潰れないモノよ、潰れたのならまた膨らませて大きくすればいいの」
「でも失敗したら?」
「私が何回失敗してると思う?数えるのも嫌になるぐらい失敗してる。上に見える星の数とドッコイかもね、それに私の夢ってまだ叶ってないの」
「アイさんの夢ってなんですか?」
「ヒ・ミ・ツ❤」
「もう」
「あら、泣いている演技が多いのに笑っている顔も可愛いね」
「悩んで考えるのが馬鹿らしくなりました。やります新生B小町のセンター、そして誰にも譲りません。ルビーが「私がセンターやる~」って言っても渡しません」
「その意気よ」
こうして、新生B小町のセンターは有馬かなに決まり、二人で事務所に戻ったがレッスン場をお菓子で汚してしまったルビー達を怒るのは別の話である。
~陽東高校~
星野アクアは今日も机にキスをする形で倒れこんでいた。今ガチ終了後、周りからの視線が痛く遠くから「受け」「強気そうに見えてシャイ」など、検索したくないワードが耳に入るようになったのが原因だ、ついでに新生B小町のサポートもしているので彼の体は悲鳴をあげている。
「お疲れのようねアクア?」
「見て分かるなら、そっとさせてくれ」
国民的美少女から話しかけられ、強気で返せるのは彼ぐらいだろう。
「ルビーさん達も頑張っているみたいね」
「まぁ夢にまで見たアイドル活動だから、張り切るのも当然だ」
「アクア、1つ聞いてもいい?」
「なんですか?フリル様?」
彼女が彼の前の席に座り、顔を覗き込むように聞いてきた
「アクアって魔法使いなの?」
「どーゆー意味で聞いてる?」
「あら、性的な方だと思ってるの?」
「いったい、どうゆうことだ」
疲れている体に美少女からの問題発言に血圧を上げていたアクアだが、返ってきたのは意外な言葉だった
「MAYちょの番組に新生B小町のメンバーが出てたでしょ」
「あぁ少し前だけど」
「その時にMEMが「アクアさんって魔法使いなんです。彼にかけられた魔法で私は夢を追うことが出来るようになりました」って笑顔で言うから聞いているこっちが恥ずかしくなったわ」
MEMの問題発言はもう1つあり、「アクアさんって年下なんですけどお兄ちゃんみたいで、背中も大きくて温かくて、遊園地から帰るときにお父さんにおんぶされるような感覚なんですよ」だった。コメント欄は
・これは年上の妹
・こんな妹がほしかった
・いや娘だろ
・アクアはシスコン
など若干の真実が混ざったカオスな状況になっていた。
「なるほど、それで魔法使いか、言い得て妙だな」
「それで、魔法使いのアクアにお願いがあります」
「なにを願う?世界の半分か?」
「私にウエディングドレスを着させてください!」
突然の発言にアクアの頭はいったん思考停止したが、すぐに普及し
「おい、フリル」
「アクア、あなたの次のセリフは『フリルそれはプロポーズの言葉か』という」
「フリルそれはプロポーズの言葉か、ハッ!」
「アクアなら、これに乗ってくれると思った」
「俺は2部より、7部が好きだけど」
「私は4部ね」
この世界でも荒木先生は偉大だ
「んで、どうゆうこと?」
「これよ」
フリルはスマホを取り出して、今回の経緯を説明し始めた。
「ブライダルモデルか?」
「そう、今度完成する式場でホームページやパンフレットに使うモデルを募集してるの、多分苺プロにも話は来てるんじゃない?」
「社長がそんなこと言ってた気がする。つまり俺にも参加しろと?」
「そーゆーこと、顔の知らない俳優との写真を撮るより、気心の知ったアクアなら、いいかなって」
「日付がフェスと被っているな、時間的には大丈夫そうだが」
「お願いします。大魔導士様、辛い日々を送る平民に夢をお与えください」
「上級職になってるぞ、分かった社長に参加することを伝えるよ」
「ありがとうアクア、報酬は私自身で」
「炎上騒ぎになりそうだから、保留にしてくれ」
フリルの圧に押し切られ、アイドルフェス当日にブライダルモデルになるアクア、魔法使いの彼はまだ知らない、今回のことが魔王によって仕組まれた計画であることに、次回をお楽しみ
アイが先輩アイドルとして若者たちを導いてます。多分これが本来の姿なんだと思います。
後半部分はノリと勢いで書きました。
感想や評価を入れてくださり誠に感謝しています。