独自設定なので現実と違うというツッコミは無しでお願いします。
物語のヒロイン?星野アクアは基本は義理堅く、受けた恩は返せる範囲で返している。彼にとってそれが必然であり、息をするのと同じぐらい当たり前のことである。芸能界においても恩の貸し借りは行われる。今回は彼の性格が招いた物語をご覧あれ。
人気YouTuberのMAYちょは今日、苺プロに訪れていた。遊びに来たのではなく仕事の為である。苺プロは夏に新生B小町の宣伝をする時に、【今ガチ】で共演した星野アクアを介して、彼女たちをMAYちょのチャンネルに呼んでもらい、顔見せやインタビュー生放送をしてもらった。無理に頼み、割り込む形での仕事だったので、苺プロ側としては『スタジオの利用』と『星野アクアを0円で好きな時に使っても良い』という条件を出して吞んでもらった。なおアクアに拒否権は存在しない。
「斉藤社長、事前に話した通り今回は3本撮りさせてもらいます」
来賓用の応接室では、MAYちょと壱護が対面で座り、今日の撮影スケジュールについて打ち合わせをしていた。
「こちらこそ、夏の時にお世話になったから好きにしていいぞ」
「ありがとうございます。社長1つお耳を」
「あくどい顔をして、何を企んいる?」
「実は・・・」
壱護はMAYちょの話を聞いて、少し考えたが
「面白いOKだ。こっちでも準備はするが、何が必要だ?」
「そうですね。では衣装を・・・」
何やら不穏な空気が漂っているのは気のせいだろうか?
今回の撮影は3本撮りだが、同じ内容のテーマを3本に区切って撮影するのではなく
・1本目はアクアをゲストにして【今ガチ】の裏話や撮影秘話を話ながら、後半は商品を賭けたゲーム対決を行うもので、トラブルなく撮影が進み1時間で終わった。
・2本目はアクアの他にB小町の3人を呼んで、アイドルフェス当日の様子やSNSで話題になった、正装姿で全力疾走するアクアに関してのトークがメインになった。なおMAYちょが、ホームページからアクアがフリルをお姫様抱っこする画像を紹介した時、有馬の目から光が消えていたことに、誰も気付いていなかった。
後半のゲームでは、5つのグラスに入ったトマトジュースの1つがタバスコジュースという90年代バラエティを彷彿とさせる内容で
「こーゆーのは、真ん中に置かれているのが安全なんだ」
という謎理論を展開したルビーが
「大丈夫だから、一気飲みでいきます」
ゴクゴクと喉を鳴らして
「ボっフッッ」
盛大に噴き出した。なお映像として配信される時はモザイクが掛かるように処理はされると思う。「面白いから、そのまま使おう」と言った壱護社長の顔面がボコボコに腫れていたのは気のせいだ。
・3本目は冬に公開される【東京ブレイド】についてになるが、連続撮影とルビーが噴き出したタバスコの掃除、黒川あかねが到着していなかったので、2時間の休憩となった。アクアはコンビニへ向かい、未だに別室で「辛い、痛い」とのたうち回る妹の為にカラムーチョと暴君ハバネロを購入していた。
彼が外出中に入れ違いとなる形で、黒川あかねが苺プロに訪れ、トイレの鏡で表情や身だしなみのチェックをしていた。彼女が「よし」と言った瞬間、後ろの個室の扉が蹴破られた。
「あ~か~ねちゃ~ん」
「MAYちょどうしたの?なんか様子が変だけど」
MAYちょが、あかねの肩から巻き付くようにのしかかり
「ねぇ面白いことに協力してくれない?大丈夫ちょっと手を貸してくれるだけでいいの、そうすれば皆が幸せになるの」
それは悪魔のささやきのように甘く、ねっとりとした声で
「ねぇあかね、アクたんの『―――――』でしょ?」
「乗った」
その思考は光を置き去りにして、あかねの口から答えを出した。
「何をすればいいの?というより大丈夫なの?」
「大丈夫、斉藤社長のお墨付き」
「あと何で知ってるの?」
「この前ルビーちゃんが教えてくれてね」
協力者を得たMAYちょは作戦を伝えるが
「それだと、8割の確率で気付かれる。アクアは場の雰囲気を読み取ることに関しては誰よりも長けているの、生半可な作戦だとバレる」
「じゃあ、どうすればいいの?」
彼女たちの作戦会議は収録が始まるギリギリまで行われていた。
事務所に帰ってきたアクアの準備が終わり、3本目の収録が始まった。あかねとアクアはソファーで隣通しに座り、1ミリの隙間なく体を密着させていた。MAYちょは反対側の椅子でインタビューする形となる。とは言っても【東京ブレイド】はまだ製作とキャストが発表されているだけで、役者たちの顔合わせすら行っていないので、二人の役どころと意気込みを語る内容になった。
前半のインタビュー部分が終わり、後半はゲームとなった。お題は【辛子入りの激辛シュークリームを食べた人が罰ゲーム】を受けるロシアンルーレットで、お題は机の上に置かれた10枚の袋の中に入っている。皿の上には3個のシュークリームが乗せられ、じゃんけんの結果選ぶ順番はあかね→MAYちょ→アクアとなった。
各々が選んだシュークリームを手に持って、一斉に口に含んだ瞬間、アクアが噴き出した。
「カラッ!!!ってか、どんだけ入れてるの?バラエティでやっていい量じゃないって」
「はぁ~い、アクたんの負け~」
「残念ねアクア」
二人はかじったシュークリームをテーブルに置いて、敗者を見下していた。スタッフから水を貰ったアクアは呼吸を整え
「兄妹揃って、激辛に引っ掛かるって運が悪いね今日は」
悪態をつきながらも罰ゲームを受ける覚悟をしていた。
「アクたん、じゃあ袋を選んで引いてね」
アクアは適当に左から2番目の袋を手に取って、中身をあけて戦慄した。書かれていたのは
『女装』
この2文字だけだった。その瞬間、彼の脳は高速で演算を始めた
「(どうゆうことだ?もしMAYちょ達がこれを引いたら意味が無くなる。ランダムに入れられた1つなら可能性は無くないが、でもおかしい?まるで俺をピンポイントで狙ったような、まさか?)」
彼が次の言葉を紡ぐ前に
「やっぱり、それを引いたね」
あかねが彼の言葉を遮った。
「アクアって、複数から1つを選ぶ時って左から2番目を選ぶ傾向があるの。知らなかった?」
「あかねが書いたのかよ」
自分の知らない癖を彼女に見破られていた。
「彼女ですから、最愛の人の癖や特徴は理解してるの、あとアクアは『この袋の中は全部女装では?』って思っているでしょ?ホラ見て、これにはタイキックって書かれているでしょ」
あかねはランダムに選んだ1つから、紙を取り出してアクアに見せた。
「本当だ」
「じゃあ、アクア覚悟は出来ているよね?」
後ろを振り返るとメイク道具を装備したB小町に、ミヤコさんとアイが衣装の相談をしている。逃げようとした彼をMAYちょは後ろからホールドした。
「アクたん、往生際が悪いよ、昔から言うでしょ『男は度胸』って」
「今のMAYちょに愛嬌は無いぞ」
アクアの苦し紛れのツッコミに
「大丈夫、私たちは『最強』だから」
“アーーーーーー――――――”
それは獣の咆哮だったかもしれない。
「お兄ちゃんって男なのに肌が綺麗だし、上塗りは控えめにしてアイシャドウは何色がいい」
「そうね、ケバイのにすると全体が台無しになるから薄目の赤でよくない?」
「そうなると、唇と色が被っちゃいます。それでしたら目元を濃くして、口の方を薄くした方がメリハリがあります」
B小町の3人が彼の顔にメイクを施し
「ねぇミヤコさん、アクアってスネ毛の処理してたっけ?この足の長さならスカート姿もよくない?」
「確か処理はしてたと思うわ、でもこっちの白のズボンの方が似合うわ」
「下が白なら上は反対色の黒がいいけど、これはどう?黒地に赤十字がクロスされてて、袖が黄色の縦縞」
大人二人が衣装を選び
「バッグとか持たせた方がいいかな?」
「このままでもよくない?小物は確かにアクセントにはなるけど、今のアクアが持つと逆効果になるし」
主犯格の二人が細部の調整を行っていた。
1時間後、彼女たちに彩られた新ヒロイン【星野マリン】がこの世に生を受けた。
短く無造作だった金髪を整えられ、ナチュラルメイクの顔は海外モデルと遜色なく耽美で、大人たちが選んだ服を見事に着こなしていた。
「「「あっ私負けた」」」
現場にいた数名の女性が自身の敗北宣言を掲げ、壱護が事前に呼んだカメラマンに撮影を頼んだ。
「アクアちゃん、最高に綺麗よ」
「門屋さん、アクアじゃなくてマリンちゃんですよ」
ルビーの言葉に誰もツッコまない。
写真撮影は2時間に及び、終わった瞬間アクアは、事切れるように倒れた。彼の脳がこれ以上の情報量に耐えることを許してくれなかった。アクアを事務所の自室へ寝かせ今日の仕事は全て終わった。
各々が帰路につき、首謀者二人が並んで歩いていた
「いや~あかねの作戦が成功したね」
「アクアのことは理解してるからね、八百長に気づいてくれた時に勝利を確信したよ」
「しかし、少々強引じゃなかった?乳製品で辛みを抑えるって」
「100%アクアが負ける状況を作りたかったからね」
彼女たちに作戦は簡単なモノだった。3つうち1つが不正解ではなく、3つが不正解だった。彼女たちは収録中、手元に置かれた飲み物を乳飲料にしていた。無論ペットボトルではバレてしまうので外から中身が見えないティーカップに注いで、トーク中の合間に飲んでいた。激辛を1口目だけ耐えることが出来れば無防備なアクアが落ちる寸法だ
更に10枚とも『女装』を疑った時も、あかねは知っていた【アクアは端のモノを取らない】これは今ガチを見直している時に気付いた彼の特徴だった。アクアが八百長を疑った時に、自身が別の指令を書かれた紙をみせれば、信じてくれると理解していたから出来た作戦である。
「まぁ、アクたんを騙すのは心が痛いけど、あかねもノリノリだったね」
「新しいアクアが見れて満足だよ、私は」
「まだ先だけど、舞台頑張ってね絶対観に行くから」
そう言って彼女たちは別れた。
MAYちょは自宅に帰り、今日の撮影した映像を編集し3日間かけてチャンネルにアップし
1本目―――24万回再生
2本目―――54万回再生
3本目―――108万回再生(1日に起きに5万回再生上積みされている)
この世の中には変態が多いことが実証されてしまった。社長の壱護は『星野マリン』ソロアーティストプロジェクトを掲げようとしたがアクアの【烈風正拳突き】により頓挫した。
今回の出来事にアクアはしばらくの間、心を閉ざしてしまい、彼女たちの言葉に反応せずロボットのようになってしまい、彼女たちから謝罪を受けるのは別の話である。
香辛料の辛みを乳製品で抑えるのはしってますが、辛子に効くのか不明です。
アニメを見てて思ったのが、アクアって女装させたら固有の層から絶大な人気は得ると思います。髪色と背丈は違いますがブラックラグーンに登場するソーヤみたいになりそう。
とりあえず次回から東京ブレイド編に入る予定で、早ければ日曜日に更新します。
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