【完結】途中から星野アクアになりました。   作:大気圏突破

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仕事のリフレッシュ休暇が水曜日まであるので、最低でも1日1話投稿できるようにします。


鬼の居ぬ間に

 

 

 

 初顔合わせには意味がある。基本は出演者やスタッフの名前を覚えてもらう自己紹介だが、テレビやネットなどで固まってしまった役者のイメージと、目の前にいる本人と見比べてギャップを埋める確認作業でもある。

 星野アクアのイメージは当初『近寄りがたいモデル上りのイケメン』だったが、【今ガチ】やアイドルフェスにおける全力疾走、例の女装動画により、情報が渋滞してしまい、受け手側が混乱する事態に陥っている。

 

 

「なぁアクア、あの二人はなんで、あんなに喧嘩腰なんだ?」

 

 彼の隣に立つ鳴嶋メルトが話しかけてきた。彼も今回の舞台に呼ばれた演者の1人である。

 

「多分、俺が原因だ」

「?」

 

 

 時を少し戻そう。ミヤコさんの運転する車がララライ本社に到着し、二人を降ろした。有馬の膝枕で多少回復したアクアは彼女に礼を述べて入口を通過した。途中『今日あま』で共演したメルトと合流した。あのドラマ以降、彼にも思うことがあり独学で演技の勉強を行い、アクアも彼の相談相手として書籍や映画など演技力向上につながる作品を教えたが、漫画以外を読まないメルトにとって活字だけの本は、言語が理解できない魔導書であった。

 

 

 集合場所の広間に着くと、先乗りしていた黒川あかねが3人を出迎えてくれたが、ここで問題が発生した。

 

「あんた、うちの役者に何してくれるの?」

 

 先制パンチは有馬からだった。

 

「なんのこと?」

 

 黒川あかねは、まだ状況が掴めていなかった。

 

「舞台の為にアクアを朝まで付き合わせるってバカなの?しかもこんな体調管理の難しい寒い時期に睡眠を疎かさせるなんて、プロとしての自覚はあるの?」

「それは・・・久々に熱くなっちゃって」

「それなら今日ここで話せばいいでしょ」

「そうだけど」

「アクアは優しいから怒らないよ、その優しさに甘えるだけの彼女って、本当に彼女って呼べるの?」

「そんなの、かなちゃんに言われる筋合いはない」

「どうだか?結局アクアを利用しているだけじゃないの?」

 

 口喧嘩の勝者が有馬になりかけた時

 

「かなちゃんだって、アクアを利用してるよね?」

「どうゆうことよ?」

「ルビーちゃんや鏑木プロデューサーから聞いたよ、『今日あま』の時に役者として実績の無いアクアを空いている役にねじ込んだでしょ?」

「それが何よ!」

「『今日あま』の最終回だけは評価良かったよね?しかもアクアのいる苺プロに籍を入れたよね?何も知らない第三者から見れば、アクアを使って今の場所を手に入れたに見えなくもないよ」

 

 

 『争いは同じレベルの者同士でしか発生しない』というが、龍虎の争いを止める者は誰も居ない。雰囲気的に“アクアにやらせよう”となったが、総責任者の雷田が登場したことで闘いの空気は霧散した。

 

 

 雷田の自己紹介から始まり、まずは表舞台には立たない面々の紹介となり、劇団ララライ代表兼演出家の金田一敏郎、脚本家のGOAがそれぞれ挨拶を行い、演者たちも自己紹介をしていった。今回はアクアも含めてだが外部からの人間も多く、鏑木さんのお気に入りやこれからの成長を担う役者が集まっていた。そして最後に

 

「起きろ!姫川っ!」

 

 

 金田一の怒号で、床の上に布団を敷いて寝ていた姫川大輝が目を覚まし

 

 

「あ゛~~~、この芝居で主演の・・・なんだっけ?とりあえずよろしく、じゃあお休み」

 

 適当な挨拶で、もう1度布団に潜りこみ寝ようとしていた彼を、金田一は近くにあったダンベルを彼のお腹の上に落として現実世界に叩き起こした。

 

 

「(あれがフリルの言ってた姫川さんか、自由な人だな)」

 

 彼の名誉為に記すが、劇団ララライの看板役者で男優賞も受賞している。月9ドラマでも主演を務めるほどの実力者で、今回の舞台の為にスケジュールを確保するだけでも大変だったらしい。アクアとは住む世界が違う住人であるが、あの出で立ちを見るとギャップに落胆してしまう。

 

 

 本来なら今日は顔見せで終わる予定だったが、舞台に立つキャストの殆どが揃っていたので、本読みも行うことになった。各々がチームを作り特定の場面を台本を持ちながら練習を始めた。

 

 

「今回は面白い子たちが揃ったね」

 

 雷田がみんなを眺めながら金田一に話しかける。

 

「今回は初めての2.5次元だ、不安もあるが、それ以上にアイツらの熱意が上回っている。なら俺たちは熱意の火を炎にするだけだ」

「あかねちゃんと有馬かなちゃんによる同世代の天才対決に、鏑木ちゃんの推していたアクア君も楽しみな存在だね」

 

 雷田が若手たちの活躍に期待していたが、金田一は違った

 

「あの二人は幼少期編からのライバルだから、今回の舞台でお互いを高めあってくれればいい、だがあの星野は違う」

「違うって?」

「一言で表すなら『異質』だ、それ以上の言葉が見つからない」

 

 金田一は背もたれに体重を預け、天井を見上げていた。

 

「『異質』ねぇ?あぁ鏑木ちゃんが言っていたことなんだけど、アクア君って『心が震える』仕事をしたいんだって」

「どうゆうことだ?」

「作品に自分求める『心』があれば、過去の栄光なんて要らないって」

「『こころ』ねぇ、ホントにアイツ16か?」

 

 

 

 アクアのグループには、有馬・黒川・姫川・メルトがいて、演じる場面は姫川演じるブレイドが刀鬼と出会うシーンだった。作中ではここが初対面でブレイドは、彼に勝負を挑むが敗北を喫する。実力差を知ったブレイドが今後浮上するために必要な場面である。

 

 

「お前が噂の刀鬼か、俺と戦え!」

 

 姫川は近くに置いてあった木刀を本番で使う刀に見立てていた。

 

「あんな奴、さっさとやっつけましょうぜ」

 

 有馬の台詞が続き、メルトも合の手を入れていた。アクアは音にならない呼吸を行い、事前に作り上げた刀鬼のイメージを自身に取り込み、没入させた。『今日あま』の頃は没入に時間が掛かったが、アイのトレーニングにより瞬時かつ深く出来るようになった。

 

 

「(主体は朽木白哉、他者を見下すのではなく路傍の石のように興味を持たない。感情の起伏を抑え無駄を嫌う)」

 

 

「抜け」

 

 アクアの閉じていた目が開き、丸めた台本を姫川に向けて、低音かつ太く台詞を発した。たった2文字に過ぎないが周囲にいた面々は、彼の作り出す雰囲気よって動くことが出来なかった。対峙した姫川は背中に冷たい汗を感じ台詞を続けたが、ぎこちなくなってしまい、全員が現実に戻されてしまった。

 

 

「星野、お前すげぇな、ホントに舞台未経験か?」

 

 姫川がアクアに近づいてきた

 

「事務所の先輩方が優秀ですからね、色々と指導されましたから」

 

 今のアクアに、さっきのような不気味な雰囲気は無かった。いつも通りの彼がそこにいた。

 

 

 有馬は車の中で顔を青くしていた後輩が、役者としてここまで成長していることに喜んだが、同時に自分が長年かけて積み上げていたモノが簡単に抜かれてしまう恐怖を感じた。同様に黒川もアクアの不気味な雰囲気に飲まれてしまい二の句が継げなかったことを悔やみ、メルトに至ってはレベルの違いを実感し、アクアから進められた本を嫌わずに読めばよかったと後悔していた。

 

 

 なお当のアクアは

 

「(気持ち悪い~~~)」

 

 体調不良がぶり返し、トイレへ駆け込んでいた。

 

 

 

 

 

 稽古も日数を進めると固有のグループが出来るようになり、劇団ララライ組・アクション担当組・鏑木組と分かれるようになった。別段グループごとに壁は無いので、外様を排除するような悪い雰囲気もなく、和気あいあいだが、馴れ合いのようなぬるい雰囲気にはなっていない。

 

 

 

 黒川とアクアはコンビでいることが多く、互いの疑問をぶつけあい答えを導き出すようにしている。アクアはどうしても気になっていることがあり、椅子に座る二人に近づき疑問を投げつけた。

 

 

「すいません。鞘姫の性格は、舞台化にするにあたって変更したのですか?」

「あぁこれね、原作よりも好戦的にしてるよ。でも仕方のないことなんだ」

 

 GOAは顔を曇らせて次の言葉を言いうのをためらっていた。

 

「星野、お前だいたいの検討はついているだろ」

「えぇ、確証はありませんが」

「間違ってもいい、言ってみろ」

 

 アクアは1回深く呼吸して、ノートに書きこんだことを脳内から引き出していた

 

「尺の問題ですね。東京ブレイドは『新宿クラスタ』の面々が主役を張ります。俺や黒川は彼らを引き立てる敵役です。漫画なら時間の制約は無いので『渋谷クラスタ』にも焦点を当てることが出来ますが、舞台でそれをやってしまうと、圧倒的に時間が足りなくなってしまう。無理に詰め込めば観客が混乱をしてしまう」

「65点ぐらいだな」

「星野君が言うように、約2時間の舞台で全部詰め込むのは不可能になる。『原作のままにやればいい』では僕たち脚本家は要らなくなってしまう」

 

 GOAはやや自嘲的になってしまい、深いため息を吐いた。

 

「星野、今回お前たちの『渋谷クラスタ』はブレイドたちを輝かせる為の演出装置にすぎない。それは理解してるな?」

「もちろんです」

「なら下がれ、だが疑問に思ったことはドンドン言いに来い」

「ありがとうございます」

 

 

 自身の予想は正しかった。二人から離れたアクアは黒川たちの所へ戻り、今回のことをノートに書きこんだ。有馬・メルト・姫川はそれを後ろから覗き込んでいたが

 

「なぁ有馬、右上に羅列されている漢字なんて読むんだ?」

「分からないわよ、アクアって偶に字を崩して書くから、読めなくなるの」

「あ~そういえば、撮影の現場でもメモ書きしてるの見たけど、全く読めなかった」

 

 

 外野の声など聞こえないのかアクアは、顎に手を当て考察を続けていた。思考の海を漂うアクアを釣り上げたのは黒川で後ろから抱きしめて首筋に軽く噛みついたが、有馬が無理に引きはがしてしまい、キスマークのように赤く残ってしまった。

 

 

 

 舞台稽古5日目、今日は原作の鮫島アビ子先生がやって来たが、彼女の放った一言が現場を大混乱へ陥れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「台本、全部書き換えてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




鮫島アビ子先生のダブル歯磨きを見たせいで、あるネタをやりたくなりました。もちろん書きますし、脳内でアビ子先生ヒロインルートが朧気に出来てしまったので、時間があれば本編と関係ない番外編で書く予定ですが、みたいですか?
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