星野アイをストーカーの魔の手から守った、星野アクアは腹部を刺され、病院へ搬送されたが命を落とした。そのはずだったのに彼の心臓に鼓動が戻った。その場にいた医者たちは驚くが、すぐに治療を再開し、彼を助けることに成功した。しかし目を覚ましたアクアはアイたちに関わる記憶を失っていた。絶望と希望、この天秤はどちらに傾く。
~アクア?視点~
「(どうやら、俺の名前は星野アクアマリンというらしい、斉藤壱護という男の話を聞くと、星野アイの自宅に来たストーカーを撃退したが、腹を刺されて病院へ運ばれた。そして目が覚めたら「あなたは誰ですか?」だから、現場はパニックだった。アイさんは倒れるし、医者から質問攻めにされるし、大変だった。だって俺に星野アクアとしての記憶なんて無いよ、30半ばのサラリーマンだぞ)」
アクアは退院した。腹を刺されて一度心臓が止まったのに、1週間で完治してしまった。彼を見ていた医者たちは、この出来事に対して明確な答えを導き出すことが出来なかった。もし信心深い人がいるなら【神の起こした奇跡】というが、分からない。
斉藤ミヤコが運転する車に乗せられたアクアは助手席から、街並みを観察していた。無論風景が珍しいのではなく、現状を確認する為の情報収集である。
「(どうやら日本みたいだけど、変な違和感があるな、そもそもB小町というアイドルっていたか?でも住所や建物は俺が知っているモノがあるし、車も国内で有名なメーカーだ、病院の売店でも驚いたが、ヤンジャンがなくてミドジャンという雑誌があった。中身は俺の知ってる漫画だった。どうなっているんだ?この世界にプッチ神父でもいるのか?)」
この男、アクアになる前はアニメや漫画などのサブカルチャーに精通し、友達付き合いもせずに娯楽を享受していた。ギャンブルも破産しない程度にはやっていた。
「(とりあえずは、しばらくはこの世界に慣れることが先決だよな、それに彼女たちの言う「アクア」という人物についても調べないと、記憶が戻ってくれれば、俺以外の人達はハッピーエンドだ、まずは隣の美人さんに聞いてみるかな)」
「すいません。ミヤコさん」
「どうしたのアクア?気分でも悪いの?」
「違う、今って西暦何年?」
「もうすぐで、2011年になるよ」
「え?11年?」
「そうよ、アクアもルビーも来年は3歳になるし、ちょっと早いけど幼稚園も決めないとね」
「(チョイ待て11年って、東北の地震があった年じゃねぇか、過去にタイムスリップしてるのか俺?)」
アクアは驚いていた自身が暮らしていた世界より10年以上前にタイムスリップしていたことに、彼は必死に過去の記憶を探る。
「どうしたの?やっぱ具合悪いの?スグに病院へ引き返すよ」
「大丈夫、ねぇ今って、何党が政権で総理大臣は誰?」
「確か、民生党で総理は神田直人(かんだ・なおと)よ、前の総理が不甲斐なくて、スグに変わっちゃったの」
「(誰だよ、神田って、民主党じゃないのかよ)」
「じゃあ、まだ凱旋門賞って日本人は勝ってないよね?」
「凱旋門?あぁ競馬の、いや3年前に横村騎手が勝ったよ、結構話題になってね「インタビューでホクトが背中を押してくれた」って」
「(勝ってるのかよ)」
質問を続けるアクアを見ながら、ミヤコは昔のことを思い出していた。双子たちが産まれてアイの代わりに世話をしていた時に、この子たちが立ち上がって流暢な日本語で喋るから、当時は気味悪がったが、今のアクアをみると納得出来る気がする。記憶を失っても、前を見続ける姿は子供のすることではない。
「ところでミヤコさん、どこに向かってるの?」
「あなたの家よ、とは言っても前に住んでいた所は危険で引き払っているから、違うところよ」
「ねぇアイって言う人が、お母さんなんだよね?ミヤコさんじゃないよね」
「そう、アイがあなたのママよ、産まれる時は大変だったんだから」
「にしても、若すぎない?見た目が10代のように見えるんだけど」
「アイは20歳だから、16歳の頃に産んでいるわ」
「16で?ということは、少なくとも15の頃に男と身籠ることをやっているのか?犯罪じゃ」
アクアの急な発言に驚いたミヤコは、ハンドルを持ち直した。
「どこで覚えたの?そんな言葉?」
「売店にあった、アダルトジャンプという雑誌でね、結構過激だったけど面白かったよ、カバンの中に入っているから見る?」
「捨てなさい、アイに見つかったら泣くわよ、彼女」
「善処します」
「もうすぐで家に着くわ、アクアこれからの生活は大変だと思うけど、あなたはアイの子供だけど、私も育てのママなんだから頼ってもいいのよ」
「普通に頼ります。ミヤコさんが今のところ、1番信用出来るし」
「ありがとう、さぁ降りて、アイとルビーが待っているわ」
ミヤコと共に車を降りて、二人の待つ新居へ向かった。
「おじゃまし、」
「アクアーーーーー」
彼がドアを開けて「お邪魔します」と言おうとした瞬間に、アイに抱き着かれた。その後ろにはルビーが立っていたがミサイルのように突撃してきた。
「お兄ちゃん「アクア」お帰りなさい」
「え~っと、ただいまでいいのかな?」
「そうよ、ここは私たちの家なんだから」
「これから、お世話になります。アイさん」
アクアがアイから離れて深々とお辞儀をすると
「ねぇ、そんな他人行儀な挨拶なんて嫌だよ、家族なんだよ」
悲しい顔をして両手でアクアの肩を掴む
「アイ、落ち着きなさい、アクアも困っているでしょ?」
ミヤコが近づき、アイを諭そうするが、アクアが手で制する。
「今の俺に、星野アクアとしての記憶は無い、それでも家族として俺を受け入れてくれるなら、あなた達と一緒に生きていきたい」
アクアの発言にアイは肩に置いた手を離して、彼に抱き着いた。
「バカ、記憶を失ってもアクアはアクアなんだよ、私のお腹から産まれた大切な子供なの、今までのことを忘れたのは悲しいけど、新しい思い出を沢山作っていこう」
「ありがとう。「母さん」」
「あら、マミーって呼ばないの?」
「そう呼んでいたの?」
「アイ、嘘を教えるのはやめなさい」
玄関で起きた台本無しのドラマにアクアは、この世界に来て初めてホッとした気分になった。記憶が戻れば、俺がいなくなるかもしれないが、少なくとも家族たちを悲しませないように頑張っていこうと思う。
新・星野アクア
雨宮吾郎の魂を持つアクアが菅野良介の凶刃によって、1度は死んでしまうが、アイの幸せを願った彼は、自身の魂を生贄にすることで復活するが、アクアの体には別の世界から来た人間の魂が憑依されました。基本は真面目だが空気を読んでボケに回る時もある。