「(アクたんは凄いな~、颯爽と現れて人助けしちゃんうんだもん。もしあのときに私が告白していたら彼氏になってくれたのかな?でも今のアクたんには彼女がいるし、考えるだけ野暮か)」
もしもの物語を思っていたが、時間を巻き戻すことは出来ない。安堵によるものなのか、瞼が重くなって寝てしまった。
「おい!起きろ、いつまで寝てるんだ!」
彼の声で起こされた彼女は、ゆっくりと背筋を伸ばして
「あれ寝ちゃったの?アクたん、もうお粥出来たの?」
「お粥?なんのことだ、それにアクたんって、昔の呼び方じゃないか」
「え?」
彼女は目をこすり、前にいるアクアを凝視したが、さっきまでと雰囲気が違うことに気づいた。特徴的だった金髪はそのままだったが、全体的に大人びていて時間が進んだように感じていた。しかも寝る前とは着ている服も違う。
「メイ、どうしたんだ?」
「あれ、今って2月だよね?」
「何寝ぼけているんだ?6月だぞ、それに今日は俺達の結婚記念日じゃないか」
「え?私たちの?」
突然の告白に驚いていると、アクアの後ろから小さい影が出て来て
「ママどうしたの?」
彼をそのまま小さくしたような、女の子が心配そうな目で見つめてきた
「ママはまだ、起きたばかりで頭が働いてないんだ。琥珀も手を洗って朝ごはんにするよ」
「は~い」
そう言って女の子は台所に歩いていった。
「琥珀?」
「おいおい、娘の顔まで忘れるって、どんだけ疲れていたんだ」
「あははは、ごめんってもう大丈夫だから」
彼女は空笑いをしていたが、内心はパニック状態で
「(え?私とアクたんが結婚して、娘がいるって何?ドッキリなの?でもこんなドッキリをやる理由はないし、スマホは2029年?あぁこれは夢だ、きっと体調不良で引き起こした夢なんだ、じゃあ好きにしてもいいよね)」
「ア~クたん」
そう言って彼の腕に抱きついていた。
「おいどうしたよ?大丈夫か?」
「ねぇ今日は昔みたいに呼んでいい?」
目の前のアクアは少し考えたが
「いいけど、琥珀の前ではやめてくれよ」
「え~なんで、いいでしょ夫婦仲良くするのが娘に対する1番の教育だよ」
「なら、いつもバッチリだな」
彼が彼女を見つめ顔を近づけるが
「パパ~、ママ~早く食べようよ!おばあちゃんが来ちゃうよ」
「分かった」
「子供ってある意味、欲望に素直だね」
「どっちに似たんだか?」
「アクたんの方でしょ」
しばらくして部屋のチャイムが鳴り、アクアがドアを開けると星野アイが入って来た。彼女の見た目は全然変わってなく、むしろ若がっているように見えた。すると
「アイおばあちゃんだ」
娘が彼女の前に飛び回り
「琥珀ちゃん、アイおばあちゃんじゃなくて、アイお姉さんでしょ」
額に怒りマークをつけて、今にも怒りそうだったが
「だって、パパのママってことは、おばあちゃんでしょ?お姉ちゃんはルビーちゃんだよ」
子供の方が1枚上手だった
「(え?アイさんが、アクたんのママって、ナニコレ?確かに少し似てるけど)」
許容範囲を超える情報に脳内はパニックになり
「じゃあ琥珀は私が面倒見るから、早く準備してデートに行ってきなさい。別に夜遅くなってもいいよ、琥珀が弟が欲しいって言ってたから」
「母さん!」
アクアが怒ると、完璧で究極だったアイドルは颯爽と孫を連れて消えてしまった。
「何惚けてるよ、俺達も行こう」
「うん」
外は初夏の陽気だったが、彼女は旦那の腕に絡みつくように腕をまわして密着していた
「どうした、今日はやけに甘えん坊だな?」
「
「左様ですか」
夫婦はデートを満喫し、時間を忘れて楽しんだ。彼女もアクアの知らない一面を見れて笑っていた。街の大型ビジョンにはニュースが映し出され、不知火フリルのF1レーサーデビューが報道されていた。
少し歩いていると懐かしい景色が映りこみ
「まだあったんだな、この学校」
「見てアクたん、あれ鏑木さんじゃない?」
「本当だな、まだここで恋愛リアリティショー撮っていたんだな」
彼女たちの声に気づいた鏑木は、アクアの方に近づいて
「【今ガチ】史上、最高の年の差夫婦がこんなところに何の用だ?」
「アクたんとデート中で~す」
「お熱いことで、まぁ君たちのお陰で、このコンテンツも長生き出来るようになっているから、足を向けて寝れないけど」
「えぇ今も昔もメイを思う気持ちは変わりませんよ」
「本当かい?まぁいいさ、どうする久々に教室行ってみるか?」
「いいんですか?」
彼が尋ねると
「撮影に使ってない所もあるし、なんなら君たち夫婦が来たというサプライズも映像として使えそうだ」
「そんなんだから、娘さんに嫌われるんですよ」
「アクア君、君も次期に味わうことになるよ」
そう言って二人を教室に案内し、中にいた出演者たちから当時のことに関して質問攻めにあったのは言うまでもない。
ひと段落ついて空になった教室の椅子に座り、アクアが溜息をついた
「どうしたの?私より若いのに疲れたの?」
「違う、当時のことを思い出してね」
「色々あったね。ゲームやったり、箱の中身を当てたり」
「黒川の為に動画作って死にかけたり」
「あっという間だったね」
「あぁ最終回の時もメイが告白の台詞をすっ飛ばして、俺にディープキスするから、ビックリしたよ」
「あははは、じゃあさぁここで、もう1度やってみる?」
そう言って、彼の顔に近づくが
「鏑木さん、カメラばれてますよ!夫婦の営みを盗撮して楽しいですか?」
「あともうちょっと、だったのに何で気付いたの?」
「内緒です」
二人は学校を去り家に帰宅した。
「あら早かったのね?もう仕込んで来たの?」
「母さん、そういうことやめてくれ」
「何シャイなこと言ってるの?アクアが番組でプロポーズを受けた時には2児の母をやってたんだから」
「そうじゃなくて」
「まぁいいわ、琥珀ちゃんも寝ちゃったし、夫婦の営みの邪魔になる私は去るわ」
そう言って玄関のドアを閉めて帰っていった。彼女はアクアの背中に飛び乗り
「おいメイ!」
「ねぇアクたん、私と結婚して後悔してる?」
「どうした急に?」
「だってアクたんの周りには若くて美人が多いじゃん、その中から私を選ぶなんて」
「後悔なんてしないさ、俺はメイのことが大好きなの、その気持ちはこれからも変わらない」
「ありがとう。アクたん」
今日何度もお預けされた接吻はようやく1つに重なった。
琥珀を別の部屋に寝かせ、二人は同じベッドの中で横になっていると
「ねぇアクたん」
「どうした?」
「琥珀が弟が欲しいって」
「うん」
「叶えてあげようか?」
「妹になるかもな」
そう言って二人は抱き合い、愛を育んだ
「(そう、これは夢なんだ、次に目を開けた時には現実に戻る。だから今だけは)」
そう言って目を閉じてしまった。
「んんん~~~~、よく寝た。ほら横にアクたんは居ないでしょ」
MAYちょは腕を伸ばして、体勢を整え、夢の内容を思い返し
「(それにしても私に娘がいて、アクたんのママが星野アイって、凄い展開ね)」
ふと、その時に気付く
「(あれ?ここって学校?それに着ている制服もこれって?)」
彼女が手に持っていたスマホを覗き込むと
「(確か壊れていたはずなのに、日付が6月ってまさか)」
「MAYちょさん、そろそろ撮影が始まるので、外に出てください」
「MAYちょ行くぞ!」
さっきまで最愛の夫だった彼がやってきて声を掛けてくれた
「うん、今行くよ」
―――さぁ塗り替えに行こう―――
―――夢を現実に―――
プロットも骨組みも考えずに、勢いだけで執筆しました。夢オチは嫌いですが、見た夢を叶えに行くエンドなら可能だと思い作りました。
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