「アクアさんは救われるのでしょうか?」
MEMが口にした言葉は全員を困らせた。年長者のミヤコが
「MEMそれってどうゆうこと?」
「いえ、宗教とか変な意味じゃないです」
「じゃあどうゆうことよ?」
有馬が怪訝そうな顔で尋ねると
「私や、かなさん・あかねさんって、アクアさんと出会って助けられたんですよね?」
彼女が全員を見渡して聞いてきた
「それなら私やルビー、ミヤコさんもアクアに助けられてるね、どちらかというと生活面だけど」
「お兄ちゃんに頼っているね割と」
「じゃあ全員ですね」
「でっ救われるって何よ?」
MEMは1度深呼吸して、気持ちを整えると
「だから、あの、出会っていなければ今の姿が無いってことです」
その一言でミヤコを除く面々が思い出していた。
―――アクアによって命を助けてもらった―――
―――アクアさんと出会って夢に向けて再スタートを切ることが出来た―――
―――アクアがいたから役者としての活路が開けた―――
―――アクアがサポートしてくれたから今ここにいる―――
―――お兄ちゃんは怖い時もあるけど優しい―――
理由はどうであれ星野アクアが関わっている
「あと、少し前にMAYちょさんから連絡が来て『アクたんに命を救ってもらったから、プレゼントしたいんだけど、アクたんって何が好きなの?』って」
「あいつ呼吸するように人助けしてない?」
有馬のツッコミはごもっともである
「でもMEM、それじゃあ答えじゃないよね?」
「はい、私たちはアクアさんから貰ってばかりなのに何も返せてないのでは?って思いました。昔読んだ本に、ギバー・テイカー・マッチャ―というのがありまして」
「抹茶?」
「ルビー黙ってなさい」
ミヤコに注意された妹は小さくなり、声を出すのをやめた
「アクアさんって、ギバーという与える者で私たちは貰うだけなのでテイカーになります。そしてテイカーとは距離を取れと書かれていました。でも」
「あいつは私たちを見捨てずにいる」
「アクアって見返りを求めないもんね」
「恩返しをしたいのに出来ないのが、もどかしいんです。今回の旅行でアクアさんにお礼をしたかったのに出来なくて、事務所では明るく振舞ってましたけど心は泣いてると思います」
段々とMEMが涙声になっていく
「あかねさんの動画を作った帰りに、私を背負ってくれたんです。年下なのにお父さんにおんぶしてもらう感じで、暖かくて気持ちよくて、安心出来るんです。アクアさんに出会って私は、もう一度夢に挑戦するチャンスという魔法を掛けてくれたのに」
「MEMちゃん、こっちに来て」
アイが両手を広げてMEMを招き入れようとするが、首を振り
「なんで
涙腺が決壊してしまい、着ていた寝巻を濡らしてしまうのをアイが止めて
「アクアは女の子が悲しい顔をしているのが嫌なの」
「でも、アクアさんがドンドン傷ついていくのが嫌なんです。初めて会ったときは綺麗な手だったのに、この前はボロボロで、舞台の稽古で入院した時も怖かったんです」
アイは泣きじゃくるMEMを子供をあやすように頭を撫でていた
「すいません。アイさん」
「いいのよ、アクアもこんな可愛い女の子を泣かせるなんて罪作りな男だね、かなちゃん」
「なんで私に振るんですか?」
「さぁ?なんでだろうね?」
沈黙を守っていたルビーが口を開き
「しかし、お兄ちゃんが魔法使いってピッタリだね。そのうち箒に乗って飛んでくるんじゃないの?」
「どちらかと言うとアクアは僧侶じゃないの?割と武闘派の面もあるし、自分にバフを掛けて突撃してそうだし」
「少なくとも味方に守られる存在じゃないよね?」
「あのバカのことだし、魔王相手に肉弾戦繰り広げるでしょ」
「いや、マリンちゃんにさせて魔法使いのローブを着させるのはどう?」
全員が女装したアクアを想像し、案外似合っていると思うのであった。
「アイさん、副社長、結局アクアって何が欲しいんですか?せめて豪華な土産でも買っていかないと罰が当たりますよ」
「そうね、ミヤコさんは知ってる?」
「あの子、物欲はあるけど日用品がメインだし」
「黒川ちゃんは何か知ってる?デートしたことあるんでしょ」
今まで一言も発さなかった彼女にキラーパスを出すアイであったが
「知らないです。買い物に付き合ってもらっても私に似合いそうな服とかでしたし」
「いっそのこと『プレゼントは私よ』って言ってみる?」
「それに近いことをやっている漫画家がいるんですが?」
「マジで、アクアってまた女の子を虜にしてるの?」
「虜というよりも胃袋を掴んでいるが正しいような気がします」
どこか遠くの地で5000万部売り上げた漫画家が特大のくしゃみをして、原稿をおじゃんにしていた。
「まぁ、アクアに関してはまた今度にして、次に旅行するときまでに決めちゃいましょう。明日は収録があるから早く寝るわよ」
そう言ってミヤコは部屋の電気を消した。ここまで彼女たちに愛されるアクア君、魔法使いと呼ばれ誰かの幸せの為に奮闘するお兄ちゃん。好きな人には幸せになってほしい。彼の望む願いは彼女たちの心に伝わるのだろうか?そして当の本人のいる自宅では
「もう嫌だ、おうちに帰る!」
灰色の髪の少女が大号泣していた。
最後の台詞は宮崎編に出て来る女の子ですよ。この作品を読んでいる人なら分かると思いますが、私ってシリアスにギャグをぶつけたり、原作本編でムカッとしたキャラを弄るのが好きなんですよね。