ヒゲのせいで、仕事の為に残ったアクアは台所に立っていたが、献立が決まらず悩んでいた。今までは何かしらの理由があったからこそ調理が進んだが、今回はその理由が見つからない。
「マジでどうしよう?」
彼が頭を抱えていると、目の前に小さな羽虫が飛んでいた。流石に調理器具で始末する訳にはいかず、近くに置いてあったフレッシュジャンプを丸め、飛んでいる虫に対して横スイングした瞬間
「ベブシッ!」
彼の目の前に突然、灰色の髪で黒い服を着た少女が現れ、顔面を強打された。彼女が倒れ床をのたうち回ると今度は壁に激突してしまう、痛みに耐え兼ね立ち上がろうとすると足元に落ちていたペットボトルを踏んで背中から受け身が取れずに倒れてしまい、その衝撃で壁に飾ってあった額縁が外れ、角の部分が鼻と口の中間に直撃して、ようやく落ち着いた。
「(誰?この子?)」
アクアがフリーズしていると
「もう嫌だ!おうちに帰る~」
少女は泣き出してしまい、救急箱を取りに行くのであった。
「で?お前は何者だ?いきなり現れるなんて」
「さぁ、何者かね?教えたところで君に理解できるかい?」
治療を終え、顔を真っ赤に腫らした椅子に座る少女は足を組んでいたが、さっきの顔面強打が原因で服が埃だらけで汚れてしまい、昔アクアが着用していた胸に『右に同じだ』と書かれたシャツを着ている。
「あんな登場して、そんな服じゃ威厳なんてないから」
「うるさい!というか、もう少しマシな服はないのか?」
彼女がプンプン怒ってアクアを糾弾しているが
「だって、ちびっ子が着れそうな服なんて持ってないし、あとあるのが赤地に白い星がついてあるやつしかないし」
「いいよそっちで、何でこっちを選んだ」
「なんとなくかな?」
アクアの言葉を聞いて盛大に溜息を吐くのであった
「まぁよい、しかし私が現れて驚かないとは」
「というか何者?おうちの分からない迷子じゃないよね?」
「今の貴様に説明しても理解は出来ない」
「ふ~~~ん、じゃあ聞かない、とりあえず110番しておくね。名前は?」
「人の世界における記号に縛られる存在ではないのでね、名付け親になってくれてもよいぞ」
少女は人を見下すような目で見つめてくるが
「じゃあ『ゲロしゃぶ』と『ふーみん』どっちがいい?」
「なめているのか貴様」
「なら、お前のことは『無敵要塞ザイガス』って呼ぶから!」
「断固拒否する!」
「いいじゃん、ザイガスに無敵がついてカッコイイだろ」
「嫌だ!」
結局この押し問答で1時間使ってしまい、ザイガスは既に疲弊してしまった。彼女のプランとしては、アクアの前に現れ意味深な台詞を残して去るつもりだったが、彼のペースにハマってしまい計画がとん挫してしまった。だが最後の悪あがきをしようと
「星野アクアよ」
「何で、俺の名前を知ってる?」
「知っているさ、今まで視てきたから、貴様が何故この世界にいるのか知りたくないのかね?」
それは彼女の持つエースカード、これで
「別に」
某女優が舞台挨拶で繰り出したカウンターが炸裂した
「そうか知りたいか!えっ?今なんて言った」
「知りたくないよそんなこと、知ってなんになる?」
ザイガスは狼狽え
「知りたいだろ?だってお前は・・・」
「俺の過去・前世?について知っているみたいだが、興味が無い。知ったところで『へぇ~そうですか?』ぐらいにしか思わないし、なら知る価値なんてない。」
「なら、父親のことはどうだ?気になるだ・」
彼女が最後の言葉を紡ぐ前に
「てめぇ、その言葉は俺にとって1番嫌いなワードだ、もしそれで俺をおちょくるなら」
「潰すよ!」
「(何者だコイツは?なんなんだ、分からない。何を考えて、違う何も考えていない生粋のバカだ)」
脳内でパニックを起こす彼女を見て
「過去を振り返らないと言えばカッコイイが、そんなんじゃない。俺は今を後悔なく生きるために全力を尽くしている。この世界にいる理由なんてどうでもいい、まぁ母親がアイドルで父親知らずなんて10週で打ち切られる漫画みたいじゃん」
「お前は何者だ!」
「星野アクア!星野アイの息子でルビーのお兄ちゃんだ」
覚悟の決まった彼の言葉を聞いて、椅子に深く座りこんでしまい頭を下げてしまった。
「(このバカに何を言っても無駄だ、魂が強すぎる私の及ぶ領域ではない)」
「さて、どうするのザイガス?家の番号が分かれば電話するけど」
「いや、いいもう帰るさ、私も暇ではない」
「ふ~ん」
「1つ聞きたい、もし私が神に近い存在だったらどうする?」
アクアは彼女の質問に少し頭を悩ませ
「自分から神を名乗る奴に、まともな奴はいない。俺の知ってる神は自称した結果、生き死にを繰り返し100回以上土管から復活した」
「どんな神様だ」
「天才だぜ、半裸や全裸で変身するし」
彼の頭の中では有名な『ヴゥン』が浮かんでいた
「そんな神がいてたまるか」
「日本には八百万の神々がいるんだ、もしかしたらいるんじゃないの?」
アクアが窓の外を見ると大量のカラスが訪れ、彼女は窓を開けて消えるように出て行ってしまった。なお彼のシャツを着たままで、彼女の服は洗濯機で乾燥中である。
彼女は誰もいない道を歩き、さっきまでのことを振り返っていた。雨宮吾郎の魂が存在していた肉体に宿った彼は自身の範疇を超えるバカであること、だがその魂の輝きは強く見るものを引き付ける。彼に好意を寄せる女性はそんな光に魅入ってしまい、深い愛を望んでいる。彼の過去をちらつかせイニシアチブを握るつもりだったが、彼のペースに呑まれてしまった。
「さて、次は星野ルビーと母親の所へ向かうか」
誰も聞かない独り言、彼女の口が発した瞬間、光に包まれるが、そこは宮崎ではなく自分がさっきまで立っていた道であった。
「あれ?」
彼女はもう1度同じように念じるが、光ることすらしない
「何故だ!どうして?」
慌てふためく彼女は、ある推論を考えた
「まさか?星野アクアがつけた名前が原因?そんな馬鹿な」
彼女の推論は概ね正解していた。名前を記号と言ったが、名前とは現世に繋ぎ止める呪いである。彼が彼女に言った『無敵要塞ザイガス』が魂に書き込まれてしまい、今まで使役することが出来た能力の殆を失ってしまった。アクアの家から消える時に使ったのが最後の力であった。今まで近くにいたカラスも居なくなり、暗い夜道に場違いな少女の叫びが響き渡る。
翌朝、朝食を済ませたアクアは今日の仕事先に向かう準備をしていた。今回はモデルとしての仕事で、1日中掛かる内容である。無論相手方も彼の怪我の件を知っているので無理なことはさせないよう斉藤社長から注意を受けている。
「おや、アクア君じゃないですか?怪我はもう大丈夫ですか?」
現場の控え室で見知らぬ男性に声を掛けられた。この業界ではよくあることだが、アクアの脳内では『あれ?この人・・・』と答えを出そうと悩んでいたが、
「あぁ、そういえば見たことなかったですね」
イケメンが四角いメガネを装着し、髪型を少しイジると
「みたさん」
「あなたが私のことをメガネで判断していることが、よく分かりましたよ」
「すいません」
「まぁいいでしょう。君も撮影ですか?」
「えぇ、みたさんもですか?珍しいというか」
「まぁ新たなジャンルに挑戦ですかね。ララライも暇ですし」
彼と近況報告するような会話で時間を潰していたが、急にスタッフが駆け込んできて
「すいません。今日の撮影バラシになりました!」
スタッフの話を聞くと、今日呼んでいた他のモデルやカメラマン、メイクさんがインフルエンザを発症させてしまい、上層部の判断により今回の撮影が急遽中止となり、後日に行うことになった。
「やれやれ、とことんツイてないね」
「どうゆうことですか?」
アクアは今までのことを話し
「それは災難でしたね。どうしますこれから?」
「どこかで飯食って、家に帰りますよ」
「なら、途中まで送ります。君とは話してみたかったので」
「お言葉に甘えさせてもらいます」
アクア君、再び災難に巻き込まれるでした。
アニメを見たのですが、ツクヨミを見てムカついたので徹底的にギャグで酷使させます。