【完結】途中から星野アクアになりました。   作:大気圏突破

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ちょっと時間を飛ばします。


デスマーチ

 

 

 難航していた東京ブレイドの代替公演だが、ようやく代役が見つかりブレイド役はアクション俳優の葛葉紘汰、最終週に首都圏を離れるアクアの演じる刀鬼には彼の義兄である呉島高虎が選ばれた。そのことを知ったアクアは「(この世界にヘルヘイムの森ってないよな?)」っと若干恐怖し、【今ガチ】で共演したケンゴからは『葛葉さんのサインを貰ってきてくれ』と頼まれている。

 

 

~高知県~

 

 

 ヒロインに唇を奪われること対して定評のあるアクアは、冬に公開される特撮映画の撮影で高知県に訪れている。前の世界ではライダーや戦隊、黄金騎士を愛した彼にとっては是が非でもやりたい仕事だったが現在

 

「うぉ~~~~~~!!!」

 

 

 ナパームで爆破される悪路を走りながら、敵組織の構成員が運転するジープに追われている。

 

「(令和の世でやっちゃいかんでしょ!)」

 

 彼の心の声にツッコミを入れる人は誰もいない、しかも冬映画の撮影なので冬服着用で動きずらく、熱がこもる為、非常に暑く汗が滝のように滴り落ちているが、監督から

 

「冬なのに、汗をかいてどうする」

 

 と言われ、四苦八苦している。今回は東京ブレイドの公演の為に撮影スケジュールを変更してくれた手前があるので強く言えないのが現状である。なお本人は

 

「(スーツアクターの高岩さんだ~、色紙持ってこないと)」

 

 フリルが言ったマゾヒストは割と正解かもしれない。撮影中も共演者の方々に特撮演技とドラマ演技の違いについて指導を受けたり、スーツアクターの岡元さんから「子供の夢を壊さないように、普段からの立ち振る舞いに注意すること」など、アドバイスをもらい役者としてのレベルを向上しようと頑張っていた。

 

 

 

 本日の撮影が終わり、荷物をまとめて東京に戻ろうとしたとき

 

「待て!星野アクア」

 

 彼を呼び止めたのは、最近出番の無かった『無敵要塞ザイガス』であった。なぜ高知県にいるのかを聞くと

 

・数か月前に子供たちに付きまとわれ、一緒にかくれんぼをした

・彼女は軽トラの荷台に隠れていたが、そのまま寝てしまう

・目が覚めたら、目の前に坂本龍馬像があった

 

「東京に帰るのなら一緒にお願いします。あとご飯をください」

 

 結局ザイガスを連れて帰京し、彼女にタクシー代を渡して別れ、翌日の公演をこなしたあとに、高知へとんぼ返り、海岸線をバックに変身ポーズを決める撮影では監督から

 

「ちょうどいい波しぶきが来るまで待ってろ!」

 

 と言われ1時間以上待つはめになり、終わった頃には熱中症で倒れ担架で運ばれた。フラフラになりながらも東京に戻り、刀鬼を演じたがキレが無く、メルトや鞘姫役の片寄ゆらのフォローによって終演を迎えることが出来た。控え室では

 

「アクア大丈夫か!」

 

 メルトが心配してくるが

 

「ダイジョウブ、ダイジョウブ、アクアサンハ、ゲンキだヨ」

 

 ぶっ壊れているが、エナジードリンクを一気飲みして金沢へ向かった。本来なら有馬がアクアのストッパーとして存在しているのだが、彼女は明日のアイドルフェスの為に休んでいるが、ここでも問題が発生している

 

 

「ふざけているのルビー!」

 

 

 レッスン場で有馬の怒号が響いていた。

 

「ふざけてなんかいません」

 

 不貞腐れた態度で返してしまい、有馬は更に血圧をあげてしまい

 

「5月のように不甲斐ないステージにするつもり!」

「そんなことは・・・」

 

 5月のライブでは、ルビーのやる気が見られず、来場してくれたファンの方々を失望させてしまい、アイからも怒られていた。今回のアイドルフェスは汚名返上の意味を込めて行われるが、未だにルビーのやる気が向上しない。

 

「先輩はいいですよね」

「何が?」

 

 顔を下げていたルビーが低い声で

 

「頑張ったらお兄ちゃんが褒めてくれるんでしょ、東ブレが終わったら甘えるんでしょ」

「何言ってるのよ?」

「いいですね。頼れる人が近くにいてくれて」

「だから、今は関係無いでしょ」

「ねぇなんで、お兄ちゃんのこと好きになったの?私のお兄ちゃんなのに」

 

 ルビーは有馬に詰め寄るが

 

「あなた達いい加減にしなさい!」

 

 

 部屋の端にいたミヤコに怒られ、解散となった。1年前はキラキラと輝いていた3人の不協和音が聞こえてくるように感じた。結局フェス前日に彼女たちの心が1つになることはなかった。ミヤコはアクアに連絡を取って、彼から励ましてもらおうと考えたが着信のボタンを押すことはしなかった。

 

 

 所属していた騎手が起こした『岸ダイブ』のせいで競馬ファンが離れ赤字となり、取壊し直前の金沢競馬でアクアは生身でアクションを行い、階段を回転しながら転げ落ちていた。ボロボロの体にムチを打って生傷を作りながら無事にクランクアップとなった。監督から

 

「Vシネマ作る時も呼ぶから準備しておけよ」

 

 という死刑宣告に近いことを言われたが、スルーして東京に向かった。到着までに時間があったのでアイドルフェスにいる3人に向けて応援のLINEを送り就寝した。

 

 

 フェスの控え室は険悪な雰囲気だった。昨晩以降、ルビーと有馬は目を合わせることもなく、MEMに至っては今にも泣きそうな状態でオロオロしている。出演時間も近づき、有馬は彼女の前に立つと

 

「ルビー、今だけは本気になりなさい。私たちは選ばれてここいる。ステージ立ちたいと願い、頑張ってきたのに出れない人達の気持ちも背負っているの」

「先輩・・・でも」

「もし言いたいことがあるなら、全部終わってから聞く、MEM行くわよ」

 

 リーダーの彼女は2人を引き連れ、ステージに立ち、ファンに向けて最大限のアピールを行い、5月の汚名はある程度だが返上することが出来た。しかしルビーの表情は暗く、彼女のことを心配する声がSNSでチラホラ投稿された。

 

 

 自宅に戻ったルビーは母のアイに呼ばれていた。

 

「どうして呼ばれたか、分かるよね?」

 

 口を閉ざしていたが首を縦に振り肯定した。

 

「どうしちゃったの?本当に」

 

 彼女はルビーの目を直視していたが、合わせてくれない

 

「もう辞めたくなったのアイドルを?今まで頑張ってきたのに」

 

 ルビーは首を横に振り、ゆっくりだが口を開けた

 

「違うの、みんなが頑張っているのに私だけ置いてけぼりになって、今までは『私だって負けないぞ』って力が湧くのに何も湧かなくて」

 

 涙を浮かべながら

 

「私だって頑張りたい、でも気持ちが動いてくれなくて、お兄ちゃんや先輩がキラキラ輝いているのに私だけ残されて」

「寂しいの?」

 

 首を横に振り

 

「寂しいけど違うの、今の気持ちを言葉にすることが出来ない。ねぇママ、私どうしちゃったの?星野ルビーなんだよねワタシ?」

 

 感情が追いつかず表情と感情の乖離が起きてしまっている。アイは娘を抱きしめて彼女が落ち着くまで傍にいてあげた。

 

 

 アクアはみたのりお氏とメルトの肩を借りて事務所に到着した。そこにはミヤコがいて二人に感謝の意を込めて頭を下げ、壱護と一緒にアクアを部屋に寝かせた。

 

「アクア、あと1日だけ頑張って」

 

 ミヤコは彼を鼓舞するが返事はなく、親指を上げて『大丈夫』をアピールしていた。

 

「ねぇ壱護、今回のことが終わったらしばらく休ませてあげましょう」

「そうだな8月には仕事も無いし、宮崎旅行に行けなかった分オーバーホールさせよう。前回のようなことは絶対にさせない」

「あとルビーのことも」

「分かってる」

 

 二人は部屋の電気を消して、今後のことに頭を悩ませた。

 

 

 東京ブレイドの千秋楽公演にはドラマの撮影で離れていた姫川大輝が出演することもあり、満身創痍のアクアも最後の力を振り絞って刀鬼を演じることが出来た。公演が始まる前は矢吹ジョーのように真っ白になっていたアクアだが、本番が始まれば役者として最高の演技を魅せることに徹し開催を乗り越えることが出来た。控え室には代役を務めてくれた二人も駆けつけてくれて記念撮影をしてもらったが頼まれていたサインについては完全に忘れていた。

 

 

「帰るわよ」

 

 有馬が着替えが先に終わり、今にも倒れそうなアクアの目の前にやってきた。流石にこの状態で打ち上げに参加するのは不可能で、みたのりおも空気を読んで誘わないでいた。

 

「アクアを事務所まで運んでいきますので、私たちは先に失礼します」

 

 他の演者からも「気を付けろよ~」と言われ二人は出ていった。残された面々は

 

「あの二人、付き合っているんですかね?」

「有馬を彼女にするって、相当なMじゃないと出来ないだろ」

「アクア君って受けだけど、S寄りそうだし案外、有馬さんがMじゃないの?」

 

 本人たちがいない空間で好き放題言われていた。

 

 

 劇場の裏には既にミヤコが車に乗り込んで待っていた。二人を見つけるとパッシングで気づかせて、乗車するように促した。

 

「お疲れ様二人とも、特にアクアは言うまでもないわね」

「おっしゃる通りです」

「副社長、もうこんなスケジュールは組まないでください。アクアが死んじゃいます」

 

 有馬が当人よりも怒り、彼女を非難するが

 

「もうこんなことはさせないわ、アクアしばらく休みにするけど、行きたいところってある?」

「今は何も考えたくないけど、かなと一緒なら何処でもいい」

 

 彼女の膝に頭を預け、今にも夢の世界に足を踏み入れようとしている。

 

「アクア、撮影の現場で言われたわよね『子供の夢を壊してはいけない』って、今スキャンダル的なことを起こすと、冬の映画が取り直しになって事務所に損害を求められるのよ」

「ってことは?」

「流石に有馬さんとの旅行は却下」

「なら行かない、整体にでも行ってくる」

 

 拗ねた子供のような態度をとる彼に対し、ため息を吐いたミヤコは

 

「好きにしなさい。あとルビーのことで相談があるから、明日の2時頃に事務所に来てちょうだい」

「分かった、好き・・に・・・する」

 

 そう言ってアクアは体を起こし、有馬に抱きついたまま離れようとせず寝てしまい、事務所に着くまで彼女を抱き枕の刑に処するのであった。有馬も彼の体温を感じ取って目を瞑り、互いの労を称えるように抱き合っていた。

 




前話でメルトがローションまみれでプリンを顔面キャッチする内容ですが、声優の木村昴さんが深夜の生放送ラジオ番組でやっていたことです。事務所の先輩だった関智一さんの番組で岩崎さんと一緒にやっていました。



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