「(どうやら俺は、子役として活動していたみたいで、映画出演もしていた。タイトルは【それが始まり】というモノで、調べると天才子役と呼ばれる【有馬かな】という少女と共演していた。映画を撮った監督は俺が退院したあと、スグに自宅へ駆け付けた、生きていることに対して喜んでいたが、オッサンに抱き着かれるのは気持ち悪かった。なお記憶を失ったことも伝えてあるが「そんなこと関係ない、お前は今を生きている」と言われ、気持ち悪いオッサンから多少気持ち悪いオジサマにランクアップした。)」
「なぁ早熟、お前役者をやるのか?」
多少気持ち悪いオジサマこと五反田監督に問いかけられた。
「ん~どうだろう?映画を観たけど、今の俺にあの演技力があるのか分からないし」
「まぁやるんなら、俺のところで使ってやるよ、お前は教え甲斐がありそうだし」
「その時は真っ先に連絡するよ監督」
監督の家を後にしてアクアは自宅へと歩を進めた。彼は小学3年生になっていた。なおこの世界では東北の大震災は起きてなかったが、政府がグダグダだったので政権交代した。
母のアイはアイドルを引退した。壱護社長が言うには「アイドルとは芸能界に慣れる為の脚掛けにすぎない、成長して得意分野に巣立っていくモノだ、30を超えてもアイドルにしがみつくのは、みっともない」と言ってた。アイはマルチタレントとして活動し、テレビをつければ基本、どこかの番組で出演している。
アクアはこれからのことを考えていた。壱護社長も子役をやることに賛成し、母も「また一緒に共演出来るね」と喜んでいた。アクアとしては平凡な日常生活を享受して生きていくことを望んでいたが、周りからは期待されている。記憶を失う前に出演した映画を観たが「凄いな」としか言えなかった。ついでに共演した有馬かな、について褒めているとルビーがプンプン怒っていたのが気になる。嫌いなのだろうか?
そんなことを考えながら家に到着した。アイは撮影でルビーは友達のところへ遊びに行き、家にはミヤコさんがいた。
「アクアおかえりなさい」
「ただいまミヤコさん」
「五反田監督のところ?」
「うん、役者をやるなら使ってやるって」
「あら監督直々からスカウトなんて、良かったじゃんどうするの?」
アクアはミヤコさんと話している時が落ち着く、20代の女性に母性があるのは失礼だろうか?しかし本当のことである。
「やってみたいという気持ちはあるけど、不安かな」
「ねぇアクア、あなた「今までの星野アクアなら、こんな行動をしよう、みんなが喜ぶことをしよう」って思ってない?」
「え?」
「常に顔色を窺っているわよ、多分アイも気づいているんじゃない?」
「ミヤコさんには敵わないな」
「ねぇアクア、そんな自己犠牲な生き方って楽しい?そりゃ誰かの笑顔の為に動くのは大切なことだけど、自分を大切に出来ない人に、そんなこと出来ないわ」
「うん」
「過去の為に動くのじゃなくて、今を生きなさい。あなたがこの家に帰ってきた時の言葉は嘘だったの?」
「違う」
「なら、見せてあげなさい【今の星野アクア】を」
「ありがとうミヤコさん」
ミヤコさんとの会話でようやく踏ん切りがついたアクアは1つ聞いてみた。
「ねぇ実はミヤコさんが、俺の母親ということは無いよね?」
「何を言うの?」
「いや明らかに20代の女性にしては、年相応以上に貫禄があるし、俺もミヤコさんと話している時が、素でいられるというか、母性を感じるような」
「バカなことを言ってないで、宿題でもしちゃいなさい」
「じゃあもう1つ」
「何よ」
「俺とルビーの父親って誰なの?」
それは禁断の質問だった。
「私にも分からない。アイに何度も問いただしたけど、口を閉ざしてね」
「DNA検査をしても父親が分かる訳じゃないしね」
「戸籍上は私たち夫婦の子供で、アイは義姉だから問題になることは無いと思いたいけど」
「人の口に戸は立てれない、意外なところから漏れる可能性があるから注意しないと、マズいよ【現役タレント、未成年時代に双子を出産】って」
「やめて頂戴、それを考えると頭が痛くなるから」
「それに、俺たちを襲った犯人も捕まっていない」
「まぁ、今住んでいるここは侵入するのは難しいわ、でも」
「相手を殺めるならどこでもいい、移動中・食事中、なんなら番組の収録中にも出来てしまう。安心して寝ることも出来ない」
「とりあえず、アイたちの警備はしっかりするわ、あなたも夜道を1人で出歩くなんてしないでね」
「3年生に言う台詞じゃないよ、ミヤコさん」
アクアの不安は別のところで杞憂となっていた。
【カミキヒカル氏の遺体発見】
朝のワイドショーがこぞって、速報として放送された。数年前から行方不明になっていた俳優のカミキヒカル氏が干上がったダムの底に捨てられていた乗用車の中で、もう1人の男性と共に遺体となって発見された。彼の体には目立った外傷などがなく、捜査をする警察も事故の線を考え、カミキヒカルが暴力団などの反社会的組織と繋がりが無かったか、調べている。
朝のニュースを見ていたアクアは「俺みたいなこともあるのに、命を捨てるとは虚しいね」と思っていたが、隣に立っていたアイの顔が引きつっていたのが気になり
「どうしたの母さん?」
「え?あぁ大丈夫、何でもないよ」
「そう?ねぇカミキヒカルってどんな人だったの?共演したことある?」
「う~ん覚えてないね」
「ふ~ん、そうなんだ」
「アクア、そろそろルビーを起こしてきて、遅刻するよ」
「分かった」
アクアを別室に行かせたアイはチャンネルを握り、ソファーにうずくまった。
彼女の心情を察するモノは家の中にはいないが、天に旅立ったアクアとルビーの父親の為に手を合わせるのであった。
「バカ、なんで死んじゃったの」
カミキヒカルと良介は退場させました。こいつらが居ていい世界ではないからね、最初はアイの殺害を失敗した良介が錯乱して、カミキを襲う展開にするつもりでしたが、二番煎じになる為、誰かに処分されたというテイストにしました。