【完結】途中から星野アクアになりました。   作:大気圏突破

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 仕事中に考えていた展開と全く違うことになった。なんでだろう?


人生は巡るモノ

 

 

 結局、夜中の話し合いから3日が経過したがルビーの状態は回復することは無かった。一応部屋から出て3人で食事はしているが特に会話もなく、食べ終わったらそそくさと部屋に戻ってしまう。無論アクアやアイは何もしなかった訳ではないが、強固に作られた壁は厚く乗り越えることは出来なかった。

 

 

 事務所内でミヤコにこのことを報告したアクアは自室で頭を悩ませていた。彼にもそれなりに人脈はあるので今回の件について意見を求めたが有力な回答は無かった。特にフリルからは「引導を渡すのも1つの手段よ!」と返されている

 

 

「(もう時間が無いな、生放送を辞退させる選択肢も取らざる得ないか?)」

 

 

 そんなことを考えていると有馬がノック無しに入室してきた

 

「あーくん、ただいま」

「おかえり、かな」

 

 今日の彼女はドラマの撮影で朝早くから現場入りし、自身の役目を果たしてきた。無論ここに来たのは頑張った自分を労ってもらうためである。アクアに”ギュッ”っと強く抱きしめてもらうと最高に気分がハイになると言っている。

 

「お疲れ様」

「あーくん、もっと強く」

「これ以上強くすると、傷つけてしまうからダメ」

 

 ブラックコーヒーを飲んでいる方々へ、安心してください。砂糖なんて入っていませんよ

 

「優しいあーくん大好き」

 

 彼女の体温を感じながら互いに心を落ち着かせ、アクアはこれまでのことを話した

 

「相当マズイね」

「正直なところ解決の糸口が見つからないのが現状だね」

 

 ベッド上に座り、足を投げ出す有馬のふくらはぎをマッサージしながら喋るアクアは続けて

 

「最悪は生放送を見送ることも検討しないと」

「今のルビーを舞台に立たせたら放送事故よりも恐ろしいことが起きそうね」

 

 ふくらはぎから足裏のマッサージになり、うつ伏せになった有馬は痛みと心地良さが同居した感覚に陥りスヤスヤと寝てしまった。エアコンの風で寝冷えと喉を痛めさせないように薄手の毛布を掛け部屋の電気を暗くした。

 

 椅子に戻ったアクアは、スマホを見ると姫川から連絡が届いていることに気付いた

 

 

〜翌日〜

 

 姫川に指定された店に行くと、既に座っていて彼は競馬新聞を読み込んでいた。

 

「悪いな、急に呼び出して」

「何の用ですか?札幌記念は前走G1組が好走してますよ」

「全頭対象じゃないか」

 

 ギャンブラーの叫びは割と響くので周りから注目されてしまう

 

「じゃあ本題はなんですか?言っちゃ悪いですが時間が無くて」

「妹のことだろ?」

「ご存知で、誰から聞いたんですか?」

「鳴嶋だよ、あいつを責めるなよ、あんな奴でも心配してるってことだから」

 

 目の前に置かれたコーヒーを飲み干したアクアは

 

「八方塞がりですね。推しても引いても駄目」

「1つ聞いて良いか?」

 

 彼が持っていた新聞を畳み

 

「なんで妹の為にそこまで躍起になるんだ?」

「どうゆう意味ですか?」

「この業界は移り変わりが多い、足を止めてしまった奴は新しい波に呑まれる。そうならない為に努力して力をつけていく」

 

 姫川はアクアの目を見据え

 

「お前の妹は目標が見つからず足を止めている。何故手を貸す?」

「家族の為に動くのは不純な動機ですか?」

 

 アクアは少しムッとした態度で彼を睨むが

 

「俺には分からないな、両親は5歳の頃に地獄へ行っちまった。俺だけを残して」

「すいません」

「謝るな、施設で友達も出来たし、金田一のおっさんにも世話になってる。だからこそ身内に対する情が分からない」

 

 そんな彼をアクアは

 

「いつか家族が出来れば分かるんじゃないですか?人って守るものが出来た時に大切なことを知るみたいですから」

「年下に説教されるなんて、恥ずかしいな」

「お金も借りているも含めてですよ」

 

 互いに笑い合い、ルビーのお兄ちゃんも久しぶりに笑顔になった。

 

 

 しばらくしてアクアのスマホが鳴り、ディスプレイには『BLACK RX』と書かれ、すぐに通話ボタンを押すと

 

『今大丈夫か?』

「はい、なんのご用件でしょうか岡元さん」

 

 映画撮影でアクアにヒーローの心得を教えたスーツアクターの岡元氏だ

 

『えす・えぬ・えふ、だっけ?そこに子供がヒーローに会いたいって書いてあるんだ』

 

 アクアは姫川に検索でヒットしそうなワードを伝え、当該ページを開いてもらった。書かれていたのは白血病の子供が特撮ヒーローに会いたいという内容で、既に先輩方が向かった話もある。

 

『俺の言いたいことが分かるよな?』

「いいんですか?登場するの冬映画ですよ」

『馬鹿野郎!ヒーローに早いも遅いもあるものか、困っている一般市民を助けるのが務めだろ』

「分かりました」

『俺の事務所にベルトがあるから、すぐに取りに来い』

 

 アクアは電話を切り、姫川に先程の会話のことを伝えた。

 

「星野これ北海道だぞ!」

「ついでにリフレッシュでもしてきますよ!!すいません俺の分はここに置いておきます」

 

 アクアはすぐにタクシーを拾い、大先輩のいる事務所へ向かいベルトを貰った。代金を支払おうとすると

 

「ガキに財布を出させる程、落ちぶれちゃいない、さっさと仕舞え」

 

 自宅に戻ったアクアは、飛行機のチケットを手配しようとした瞬間「ルビーも連れて行くか、1日中家にいちゃ駄目だよな」と思い2枚購入した。

 

 彼女の部屋の前に行き

 

「ルビー明日、外で飯食いに行くから準備しとけよ」

「・・・予算は?」

「全部俺持ちだから、気にするな」

「・・行く」

 

 決して騙してはいない、食べに行く場所が少し遠いだけである。

 

 

~翌朝~

 

 アクアの行動は早かった。朝5時には起床し身支度を済ませると、母のアイにルビーの着替えと空港まで運転を頼み、二人は東京から新千歳空港へ舞い降りた。無論ルビーは未だに寝ぼけたままで、涎を垂らしながら薄目になっている。決して作者がここまでの描写を書くのが面倒で飛ばした訳ではない。

 

「お兄ちゃん、ここどこ?」

 

 この妹はようやく目を覚まし、アクアへ問いかけた。

 

「北海道の札幌だな、タクシー乗り場はどこかな?」

「なんで私、北海道にいるの?」

「さっきまで一緒に飛行機に乗ってただろ?」

「そうだっけ」

「さぁ、行くぞ」

 

 アクアは彼女を連れ、タクシーに乗り込むと運転手に行き先を伝え、ようやく一息ついた。

 

「ねぇなんで、ここに来たの?」

「用事とリフレッシュだな、ミヤコさんも休養を勧めていたし」

「私なんか置いて行けば良かったのに」

「今だけはマイナス思考はやめてくれ、先に用事を済ませる」

 

 二人を乗せたタクシーは子供が入院している病院へ辿りつく、病室は既に先輩ヒーローから聞いていてアクアはドアをノックする前に

 

「お兄ちゃん、外にいてもいい?病院あんまり好きじゃなくて」

「ごめん知らなくて、あの広場に集まるか?」

「うん、終わったら教えて」

 

 アクアは入室し、中にいた子供に持ってきたベルトをプレゼントした。親は来てくれたことに感謝していたが、子供が冬の映画まで頑張ることが出来るのか分からないと答え、「お兄ちゃんが変身するところ楽しみにしててね」と伝え、しばらく一緒に居てあげた。

 

 

 ルビーは広場のベンチに座り、アクアが戻って来るのを待っていた。『天童寺さりな』の頃、殆ど病院にいたせいで、この空気がトラウマになっている。無論『せんせ』と一緒に過ごした思い出もあるから、全てが悪い訳ではないが『せんせ』は居ない。時間を潰そうとスマホを取り出した瞬間

 

「ママ~~、うそじゃないでしょ、Bこまちのるびーちゃんがいるよ!」

 

 パジャマ姿の小さい女の子が、母親らしき女性と一緒にやってきた

 

「本当ね、昨日お手紙出したのに、もう来てくれるなんて」

 

 二人の会話についていけないルビーは、しどろもどろになるが

 

「ねぇ、るびーちゃん、カリンにあいにきてくれたんだよね。きのう『あいたい』っておてがみ、かいたんだ」

 

 ルビーは足りない頭を総動員し、この子が自分のファンであることを導き出した。母親の方に顔を向けると

 

「カリン、ちょっとルビーちゃんとお話があるから、待っててくれる?」

「うん!」

 

 二人で少し離れ母親が口を開いた

 

「私が言おうとしていることを察してくれると助かります。流石に昨日出したファンレターを見て、ここに来た訳ではないのは重々承知しています」

「兄の付き添いで、来ただけでして」

「お兄さんの?病気ですか?」

「いいえ、ヒーローに会いたい子供がいるって」

「あぁ、あの子ね、カリンの話し相手になってくれる優しい男の子よ」

 

 

 母親が教えてくれたのは、自分の娘はB小町のファンで星野ルビー推しであること、出演した音楽番組やYouTubeを何度も再生してくれている。いつかライブを生で見たいと言っていたが

 

「退形成性星細胞腫ですか?」

「そう、カリンの病名で、もう長くないの、だから『あいたい』という手紙を書いたの、まさか届く前に来るなんて」

 

 母親は涙ぐみながら

 

「星野ルビーさん、すいませんが今だけは娘に思い出を作らせてくれませんか?」

 

 少し逡巡するが

 

「分かりました」

 

 ルビーはベンチに座るカリンの隣に腰を降ろすと

 

「カリンちゃんは、私のどこが好きになったの?」

「えっとねぇ、えがおが、とってもキラキラして、かがやいて、おひめさまみたいに、キレイだったの」

「お姫様?」

「うん、るびーちゃんをみてると、げんきになれるの」

 

 彼女の言葉を聞いた瞬間、自身が前世で入院していたとき、母のアイを見て元気を貰っていたことを思い出した。

 

「(そっか、いつの間にか私ママみたいなアイドルになれていたんだ、皆に夢や元気を与えることが出来ていたんだ)」

「カリンね、いつか、るびーちゃんのライブにいくのが、たのしみなんだ、だからがんばってなおすの」

「頑張ってね」

「うん、それでねカリンも、るびーちゃんみたいなアイドルになるの、それでみんなにげんきをあげるの」

 

 目の前にいる女の子はキラキラとした笑顔で未来を語り、ルビーに夢を伝えた。

 

「こんどのてれびに、るびーちゃんでるんでしょ?カリンおうえんするから、がんばって」

「ありがとうカリンちゃん、お姉ちゃん十分過ぎるほど元気を貰ったよ」

「ママ~、るびーちゃんといっしょに、かめらとって~」

 

 ルビーとカリンは2ショット写真を撮り、母親から1枚メールで送ってもらった。すると

 

「ルビー、ごめん遅くなって」

 

 ヒーローになってきたアクアがやってきて、小さなファンとの交流会は終わりを迎えた。病院を後にしてタクシーに乗り込むと

 

「お兄ちゃんごめんなさい。わがまましちゃって」

「ん?何かあったのか?」

「秘密だよ、私とあの子の」

「なら聞かないでおく、さて何を食べるかな?」

「運転手さん、凄く高くて美味しい店ってあります。代金はお兄ちゃんが支払いますから」

「おい、ルビー!」

 

 

 結局、お土産代込みで10万以上吹き飛んでしまったが、星野ルビーは完全復活した。北海道から帰宅した翌日には事務所に出向き、有馬やMEM、斉藤夫婦に土下座で謝罪し、今まで腑抜けていたことを謝った。そして事務所に届いた1枚のファンレターを大切に仕舞った。

 

 

「(やれやれ、何があったか知らないが一件落着かな)」

 

 アクアは事務所の自室で今回のことを振り返っていると、有馬がノック無しで入ってきた

 

「かな?」

「あーくん、ルビーを助けてくれたことには感謝なんだけど、何も言わずに遠く行くなんて寂しいよ」

「ごめん」

 

 彼女は、椅子に座るアクアの正面に立つと、いつものように抱き着き

 

「これは、私に寂しい思いをさせた罰だよ」

 

 と言って、彼の首筋に強く嚙みついた。

 

「い゛ぃ~」

 

 アクアは痛みを我慢するが、無理に離そうとはせず、有馬の頭を押し付けるように抱いて

 

「咎は受けるよ、かなに寂しくさせた俺の罪だ、これで気が晴れてくれるなら俺は全てを受け入れる」

 

 噛む力が段々と弱くなり、アクアも手を離すと

 

「ばか」

「こんな馬鹿を好いてくれる、かなのことが好きだよ」

 

 少しの間しか離れていなかったが、互いの愛を再確認した二人であった。




元ネタというべきか、仮面ライダーに会いたい子供のあれです。犬飼さんの事務所の対応が素晴らしかったです。ルビーを復活させるにはこれしかなかったです。


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