とある霊園で喪服姿の女性が墓前に手を合わせる。年は20代で目に映える赤い髪色は見る者を惑わせる。
「もうあれから1年が経つのね、貴方が亡くなってからあっと言う間に時が過ぎていったわ、私ね日本を離れるの、だからこれが最後のお別れだから」
彼女が水桶を持って立ち去り
「カット!」
五反田監督の声が現場に響き渡り、カメラが止まった。喪服姿の女性『有馬かな』は、撮影が終わったことに安堵して、体を伸ばした。
「お疲れ様、今日の撮影はこれで終わりだから」
「ありがとうございます。監督」
「ほら、旦那も迎えに来てるから、さっさと帰りな」
彼が指差す方に目を向けると、最愛の夫であるアクアが手を振り、彼女は駆け足で彼に近づき飛びつくように抱き着いた。
「お疲れ」
「あーくんもお疲れ様」
二人の顔が近づき今にも唇が触れ合いそうになると
「アクア!外でイチャイチャするな、若手達が目のやり場に困ってるぞ!」
五反田監督のツッコミが入り未遂になってしまった。
「監督空気を読んでくださいよ」
妻を抱き寄せアクアが言葉を返すが
「読むのはお前等夫婦の方だ!」
撮影現場には笑いが響き渡り、二人は腕を組んで、その場をあとにした。
彼が運転する車に乗り込み、助手席に座る妻は
「子供たちは?」
「母さんがお守りをしてるよ、多分だけど床に大の字になって倒れているんじゃない?双子だからね」
「アイさんがおばあちゃんって、声に出すだけで笑っちゃうね」
察しの通り、有馬かなと星野アクアは結婚した。しかも今では双子のパパ・ママである。順を追って話そう。
苺プロの社長である壱護はアクアが3年生になった頃からB小町の解散について見当をしていた。早いと思われるが、長々とアイドルを続けるのではなく、最高の状態で止めることで人々の記憶に残ることを良しとしていた。またこれ以上の上がり目を期待出来ないという思惑もあった。ミヤコやアイと話し合い、ルビーの高校生活が終わる翌年の3月に解散ライブを行うことを発表した。無論ルビーは反論したが覆ることはなく、彼女たちはそれぞれの道を進むことになった。
・ルビーはソロアーティスト活動
・MEMは体力の衰えもあり、現場から退くが引き続き苺プロの事務員として働く
そして有馬は
「じゃあ、ライブが終わったらアクアと籍入れるから」
「はぁ?どうゆうことだ、お前ら付き合っていたのか?」
このグラサンだけ、二人が付き合っていることを今まで知らなかったのである。
「籍を入れるって、お前ら未成年だろ?」
「壱護、法律が変わって18歳以上なら、親の同意がなくても出来るのよ」
「そうか、って認められるか、というかアクアはどうなんだ?」
グラサンはアクアの意見を求めるが
「少し早いと思うけど、俺も一緒の意見だ。それにそうしないと外でデートが出来ない」
この二人は変装しても目立つため外でデートが出来ず、事務所内でイチャイチャすることしか出来なかった。それがストレスにもなっている。
「お前らこれからなんだぞ、独身だからこそ応援してくれるファンもいるんだ!」
「壱護・・」
「社長どうしても認めてくれないのなら」
「くれないのなら、なんだ?」
「今度の生放送で公開プロポーズしますが、良いですよね?答えは聞きませんが」
凍てつくような瞳で壱護を睨み付け、室内の気温も体感で3度以上下がった気がした。
「ったく、アイの時もそうだったが、恋する奴は人の話は聞かねぇってことかよ、いいぞ認めてやるよ、ただし条件がある。すぐに子供は作るな!最低でも2年は待て、お前らの予定が詰まっているんだ、それだけでも消化してもらう」
グラサンは諦めたように天を仰いだが、折衷案を二人に呑ませることに成功させた。
「ねぇ、あーくん婚姻届の証人誰にしようか?」
「吉祥寺先生と監督で良くない?俺たちを引き合わせてくれたし」
「でも、それだとアビ子先生が不貞腐れそうな」
二人は既に先の話をしていた。なお婚姻届の証人は2名以上なので、問題なくアビ子先生にも名前を書いてもらった。そこからはミヤコとアイが主導となって、二人の新居探しや家具・家電の購入など諸々の手続きをやってもらい、3月の解散ライブ当日となった。
ライブ会場にはデビューした時から応援してくれたファンが駆けつけてくれて、大盛況で終えることが出来た。控え室ではルビーは泣きじゃくりMEMの胸に涙をこぼしていた。有馬も今までのことを思い出し感慨にふけっていたが
「あーくん撫でて」
アクアに抱きついて、いつも通りイチャイチャしていた。その翌日二人は市役所に出向き婚姻届を提出し、事務所ホームページにも『入籍のご報告』を記載した。当然ネット上では大炎上が起きると思われたがB小町公式応援隊である「猿渡一海」がSNSに投稿した
『推しの幸せを祝福出来ない奴にファンを名乗る資格無し、二人を糾弾することは絶対に許さない』
コメントで、ある程度の火を消すことが出来たのと、ノイジー・マイノリティである【今ガチ】で黒川あかね否定派の面々が、星野アクア擁護に向かったことで沈静化することに成功した。
またこの入籍に際し、いち早く動いたのは二人を巡り合わせた吉祥寺頼子であり、SNSにドレス・タキシード姿の二人のイラストを掲載、また東京ブレイドの作者である鮫島アビ子が、週ジャン公式SNSに、白無垢のつるぎ・紋付袴姿の刀鬼が祝言を挙げている1枚絵を投稿、また雷田とGOAに連絡を取り
「つるぎと刀鬼が結婚する舞台の脚本が出来ていますが、やりますよね?」
それを聞いた二人は口角を上げ、徹夜で脚本の添削と書き直しを行った。もちろん劇団ララライが主体となって入籍から半年後に2週間限定の特別公演が行われ、終演後に観客に向けて挨拶をするときに、二人からプレゼントでブーケトスが行われ怪我人が出てしまったのは言うまでもない。
???「おめでとうアクア、かなちゃん」
藍色の髪を持つ女性が観客席から二人を祝福し、いつの間にか姿を消していた。
アクアは大学には進学せずにタレントの道へ、妻は役者として生きていくことを決めていた。既婚者に仕事が巡って来ないと思われていたが、夫婦共演のCMが2本続けて依頼され、彼が以前広告を務めていた化粧品メーカーからも『好きな人を射止めた香り』というキャッチフレーズで起用されるようになった。
また鏑木プロデューサーが企画した『キスをしないと出られない部屋』では、出場した4組のカップルの中で最下位となってしまう。実は誰よりも早くしていたのだが
「はぁはぁ・・・・・んちゅっ、ちゅぅ・・・」
「ねぇ、あーくんもっと・・・・はむぅ・・・・ちゅうぅ・・・」
「んっちゅっ・・・・ちゅっ、れろ・・・・はぁ、ちゅうっ、んん・・・はぁ」
床に座るアクアの正面に向き、のしかかるように体重を預け
「かな・・・れろっ、んっちゅうぅっ・・・ちゅうっ・・はぁはぁ、ちゅ」
「あーく、んんっ・・・ちゅっれろ・・・・・・・はぁちゅぅうん・・・れろ」
互いの口内で舌を絡め合い、いつまでも続く愛の応酬
「ちゅっ・・・・れ、ろ・・・んくっちゅう、あーくんしゅき・・・んちゅ」
「おれもだよ・・・・ちゅれっ・・・はぁちゅ」
「君たち番組を潰す気か!」
もちろん怒られてしまったが、ちゃんと放送されている。なお一緒に出演していた鷲見ゆき熊野ノブユキのカップルは顔を赤くしてしまい、部屋から出て来た二人を直視することが出来なかった。
アクアが運転する車は、二人の住むマンションに到着し『有馬』と書かれた表札のドアを開けると
「アイばぁば、もっとあそぼ!」
「ばぁば、だっこして!」
「もう、お昼寝の時間でしょ二人とも」
彼の母である星野アイが泣きながら双子の世話をしていた。それは約20年以上前にミヤコが受けた体験を時を越えて経験することが出来た。
「「パパとママだー」」
双子たちは玄関にいる二人を見つけると、駆け足で姉の乃蒼(のあ)はアクアに、弟の蒼磨(そうま)は、かなの方に抱きついた。
「ただいま、いい子にしてたか?」
アクアが娘に尋ねると
「うん、アイばぁばが、あそんでくれた」
妻譲りのニッコリとした笑顔で答えてくれた。
「ばぁばじゃなくて、お・ね・え・さ・んでしょ」
乱れた髪を直しながら、アイばぁばが訂正を求めると
「おねえちゃんは、ルビーちゃんだもん」
孫息子にカウンターをもらい、撃沈するおばあちゃんであった。
お気づきの方もいると思われるが、今のアクアの苗字は『星野』ではなく『有馬』で、彼は婿入りしたのである。別段深い意味はなく彼が「撮影で離れていても、かなと一緒にいたい」という初めてのワガママを口にしたことで彼の苗字が変わることになった。つまり『苺プロ所属の星野アクア』から『苺プロ所属の有馬アクア』に名前が変わったのである。
また籍を入れたタイミングでアクアは自身が星野アイの息子であることを妻に教えたが、驚きもせず「だって、雰囲気がそっくりじゃん」と言われ、特に追及されることは無かった。なお子供はきっちり2年後に産まれるように逆算し、夜の生活を頑張り、その時のアクアは頬がゲッソリするほど痩せてコケてしまったのは言うまでもない。
二人を寝かせ、リビングいる3人は、グッタリしている星野アイが
「子育てってこんなにも大変だったんだ、今になってミヤコさんの気持ちが分かった」
当時のことを振り返っていたアイは。彼女はミヤコにヘルプを頼んだが
「孫の為に頑張りなさい、お・ば・あ・ちゃ・ん」
と返されてしまっている
「母さんがいてくれて助かるよ」
「お義母さんが双子たちの遊び相手になってくれるので、こっちは万全の状態で撮影に向かうことが出来ます」
二人が頭を下げると
「別にいいわよ、可愛い孫の為なんだから、それにかなちゃんが出産で休んでいる時に、代役の女子高生をやるなんて夢にも思わなかったし」
「正直、絶対に浮くと思っていたんだけど」
「あそこまで見事に演じてしまうとね」
「女はいつまでも心は乙女なの」
もうすぐで40歳になるのに、この元アイドルは凄まじいモノである。
「さて、もう帰るから!」
「ご飯食べていかないの?」
「若い夫婦の時間を奪うことなんてしないわよ」
アイは荷物を持って玄関に向かうが振り向いて
「ちゃんと避妊はしなさいよ、3人目の面倒は無理だから」
そう口にして、出て行ってしまった。アクアはやれやれとした顔で立っていると
「あーくん!」
妻のかなが抱きついてきた
「な~に?」
「あーくんは今幸せ?」
「うん、幸せだよ」
彼は彼女の言葉を肯定すると
「じゃあ、今の幸せが霞む程もっと幸せになろうよ」
「そうだね」
かなは目を瞑り、唇を前に差し出すと
「愛してるよ・・・かな」
「私もよ、あーくん」
数えることすら億劫になるほど重ねてきた長いキスをするのであった。
???(ザイガス)「星野ルビーの双子の兄である星野アクア、母のストーカーから受けたナイフによる致命傷で雨宮吾郎の命を失い、別の世界から取り込まれた魂で復活し、本来とは違う道を歩き数多の出会いと別れを経験し、自身の夢である家族を得ることが出来た。彼の人生がこの後どうなるか誰にも分からない。ただ今の彼には守るべき大切な人がいる。この本の余白はまだあるが、まずはここで筆の手を止めよう」
途中から星野アクアになりました。
『有馬かな編 END』
不知火フリルのルートが解禁されました。
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▷読まない
有馬かなちゃんとのENDになりました。書き始めた時は黒川あかねENDにしようと考えていたのですが、アニメを見ていくうちに有馬ちゃんを推すようになり彼女とのハッピーエンドルートに路線変更しました。また投稿されている『推しの子』の小説に彼女と結ばれて終わる作品を探すことが出来なかったので、「じゃあ俺がやってみよう」の気持ちで書きました。まぁ原作で亡骸のアクアと対面するのを見てしまうと幸せにしてあげたいと思うのはエゴでしょうか?
最後に、この作品に感想や評価を書き込んでいただき本当に感謝しています。執筆中の励みになりました。そして不知火フリルENDを書きます。宮崎旅行編で彼女と食事をしている所から分岐を作り、本編とは違う展開にしていきます。昔PSPで発売されたFF零式のように本編クリア後に別ルートが解禁されるような感じです。