【完結】途中から星野アクアになりました。   作:大気圏突破

58 / 64
仕事中に「アクアとフリルでシガーキスさせたら最高の1枚になるよね」と思いましたが未成年じゃ無理ですよね


続・休まない馬鹿を強制的に休ませる部屋

 

 

 ある旅人の話をしよう。彼は独りで世界中を歩き様々な人達と出会った。白い帽子が似合う探偵・紛争地域でおでんをこよなく愛する医者・宇宙を目指す高校生など様々だ。そんな彼が出会ったのは粗暴な見た目で口も悪く常にアイスを咥えていた。旅人は次の目的地を決めていなかったので、粗暴なこいつと奇妙な共同生活を送ることになった。世界に対して互いに居場所の無い二人は、時にはいがみ合い・時には笑い合って協力して日々を過ごし、しばらくすると旅人の心に消え去っていた夢の炎が再び燃え始めました。彼は

 

「一緒に行こう!」

 

 と手を差し出すが

 

「お前だけで行け」

「どうして?」

 

 旅人が問いただすと

 

「俺の時間はもう無いんだ」

 

 彼は引き出しから出した診断書を旅人に渡すと

 

「おい!これって、入院してなきゃダメだろ早く救急車を」

「もういいんだ」

「よくないだろ!だってお前」

 

 旅人の目から涙がこぼれ落ちるが

 

「俺はお前に合うまで世界を憎く思った。だけどお前に会えたことで灰色の世界に色がついた。お前がいたおかげで、ただ死んでいく人間が満足できる人生を迎えることが出来た。俺にとって得だった間違いなく」

 

 床に倒れた彼を抱きかかえるが既に世界から旅立っていた。

 

 旅人はまた旅を再開させた。だが独りでは無かった。アイツが常に持っていたメダルを形見として受け取り、見せることが出来なかった外の世界を二人で巡る旅を始めよう。

 

 

 アクアパパは布団で横になるフリルに物語を聞かせていたが

 

「寝てしまったのか?」

 

 スヤスヤと寝息をたてる娘(同い年)の顔を見て、ゆっくりと頭を撫でた

 

「(普段はあんな言動で惑わせてくるのに、寝顔は可愛い天使だな)」

 

 立ち上がり部屋の電気を消して、彼はソファーの上で横になり目を閉じたが眠ることが出来なかった。別段緊張している訳でもない

 

「(フリルは俺に父性を求めているのか?まぁこの歳で芸能界に身を置くってことは、なにかを犠牲にしているんだろう?大半は家庭を犠牲にする。俺ん家はミヤコさんたちが居てくれたから今がある。あの人には生涯足を向けて寝ることは出来ないな)」

 

 アクアは恩人のことを思い、まどろみながら夢の中へ落ちていき朝を迎えた。

 

 

「それで早朝のお題がこれね」

 

 起きた二人は朝食を済ませ談笑をしていると、指令の書かれた紙が投げ込まれた。中身はジグソーパズルの組み立てであるが

 

「アクアこのパズルのピース全部白いんだけど」

「牛乳パズルかよ」

 

 全面が白で統一されたパズルで絵柄や写真もなく、形だけを見て組み上げる代物で宇宙飛行士が忍耐力をつけるために行うこともある。

 

「とりあえず、外枠から終わらせよう」

「そうね」

 

 二人は黙々とピースを選びはめていくが

 

「ねぇアクア!?」

「なに?」

「暇だし、何でもいいから話して」

「なにがお好みで?」

 

 彼が問いかけると

 

「私、アクアのこと何も知らないから、アクアのこと教えて」

「そっちから質問して、それに答えるから」

「なんでもいいの?」

「公序良俗に反しなければなんでもいいよ」

「なんでもいいの?」

「耳が詰まっているのか?」

「アクアが膝枕で耳かきしてくれるの?」

「あとでやってやるよ」

「えっ?本当に」

「俺は嘘はつかないよ、多分

 

 アクアのカウンターに戸惑うフリルだが、気を取り直して

 

「じゃあ、好きなスタンドは?」

『5部のスパイスガール』

「尊敬する人物」

『決して約束を破らない人』

「許せない行為」

『人の努力を嘲笑うことと遅刻をすること』

「初めてのキスは?」

『今ガチで黒川あかねに奪われた時』

 

 この質問に答えたときフリルの体がビクッ動いたが、彼女は気にせずに続け

 

「好きな異性のタイプは?」

『返事を返してくれる人』

「どうゆうこと?」

『「ただいま」と言ったら「おかえり」って言ってくれる人だね』

「ドキッとする異性の仕草は?」

『不意に見せる笑顔やロングヘアの人がうなじを見せるところ』

「エモいを感じるシーン」

『エモいって何?』

「心が揺さぶられるでいいわよ」

『じゃあ恋人同士で行うシガーキス』

「やってみる?」

『あいにく嫌煙家なんでね』

 

 パズルも3分の2が組み上がり一息ついた二人は休憩と称して昼食にした。

 

「アクア1つ気になるけど、約束を破って遅刻をする人って」

「くそ最悪だね」

 

 普段見せない憎悪に満ちた顔でフォークをトマトに突き刺し、口に運ぶ

 

「約束や時間を守るのって1番大切なことだ!いくら100点の解答でも制限時間が過ぎれば紙屑に過ぎない。0点でもいいから時間内に出すのが礼儀だと思う、それに早く出せば間違えていても修正が出来る」

「もしかしてアクアって、あの漫画家のことが嫌い?」

 

 フリルはジェスチャーでベレー帽を被り、指で〇を作り目に当てると

 

「大っ嫌いだね!!いくら漫画の神様って呼ばれようが、編集者を泣かせる人なんて最悪だよ、昔読んだ本だけど『分かりました先生を信じて、締め切りを催促しませんので自由に書いてください』って言った編集がいたんだけど」

「どうなったの?」

「3か月連続で原稿を落として編集者は責任をとって仕事を辞めた。しかも本人は悪びれもせずに責任転嫁だもん」

「酷いねそれ」

「出来ない約束は断るが、出来ることなら可能な限り守る。プライドという訳じゃないけど破ってしまうと自分が自分でいられなくなってしまう」

「つまり女装も出来る約束ってことね」

「フリルは俺に何をさせたいんだ?」

「役所から貰う紙に名前と住所を書いて判子を押してほしい」

「強引な女の子は嫌いじゃないよ、さぁ終わらせるか」

 

 コーヒーをイッキ飲みして二人はパズルの続きに着手するが

 

「(フリルのやつ、なにさっきから視線をチラチラ向けて来るんだ?言いたいことがあれば、いつもみたいに言えばいいのに、じゃあ)」

 

 

「フリルってドレス姿もいいけど白無垢も似合いそうだよな」

「えっ?」

 

 突然の質問に彼女は普段見せない顔をさらけ出す

 

「アクアなにを急に?」

「8月の時はドレス姿だったけどフリルの和装も見てみたいなって、檀さんに掛け合って見る?」

 

 彼にとっては今までのお返しの意味を込めて、だったかもしれないが彼女は違った

 

「(いきなり何、こんなこと言い出すなんて?さっきもそうだけど私のことを受け入れてくれるの?)」

「どうしたの?黙って?」

 

 目の前にいる彼は普段のように問い掛けるが

 

「ううん何でもない、それにしても白無垢が見たいなんて意外ね」

「そう?綺麗な女の子が着るなら近くで見てみたいじゃん」

「綺麗って(普段口にしてくれないのに、どうして?それに近くって)」

「フリルは綺麗じゃん。否定する要素なんてどこにある?」

 

 アクアのトークは更に続き

 

「それに学校で話しているときも聞き上手だし、こっちのことを察して明確な答えをくれるし、一緒のクラスになって最高だって感じたよ!」

「ありがとう褒めてくれて」

「正直フリルが居なかったら、俺の人生荒んでいたと思う。高校に入る前にバスの中で会っていなければ今の俺はここには存在していなかったと思う」

「去り際に『チャオ』って言う人、初めてみたわ」

「忘れてくれ若気の至りだ」

 

 少し顔を赤くさせながらも返答するが

 

「俺って結構前はなんでも1人でやろうって抱え込んでいたけど、周りには頼れる人が沢山いるんだなって、視野が狭かったから気付かなかった」

「そうね頑張って疲れて学校で机とキスしてるのが当たり前の光景だし」

「人の背中でトランプタワーをやる女優が目の前にいるけどな」

「あれはUNOよ」

「似たようなもんだろ!」

 

 それは教室内で繰り広げるいつもの会話であったが、フリルは急にアクアがこんなことを言い出すことに驚いていた。内心ドギマギしながらもパズルを完成させた二人は互いに伸びをして背骨を鳴らした。

 

「時間的には、あと1つありそうだな?」

「そうね」

「フリル顔が赤いけど、どうした?」

「大丈夫よ」

 

 アクアは立ち上がり彼女の近くに座ると

 

「さっきこれを見つけてね」

 

 彼の手には耳かきが握られ

 

「えっ?アクアまさかだけど」

「はい、どうぞお嬢様」

 

 布団の上に座ったアクアは自身の膝に手をポンっと叩き、フリルに頭を乗せるように促した

 

「流石に恥ずかしいんだけど」

「いつものフリルはどうしたのかな?」

「もう、アクアのばか」

 

 観念したのか膝の上に頭を乗せてフリルは横になった

 

「優しくしてね」

「キズモノにはさせないよ」

 

 アクアは優しく丁寧に耳かきを使い、真綿を扱うようにこそばゆい感覚で彼女の皮膚を痛めないように、ゆっくり動かしていく、そこには耳掃除を嫌がり緊張する子供ではなく、大好きな人の膝の上で甘える女の子がそこにいた。

 

「アクアパパ気持ちいいよ」

「そう、ゆっくり力を抜いて、目を閉じていいから」

「うん」

 

 彼女にとって懐かしい感覚だった。少し前までは『アクアを救おう』と思っていたのに、自身がアクアに救われている。これは毒だけど体を蝕むモノではなく、段々と体内に浸食してしまう快楽を伴う遅行性の毒、だから彼の周りの女の子はアクアを欲してしまう。私も欲しい、星野アクアという薬物は人をとことん駄目してしまう。

 

アクアパパならワガママを言っても怒られないよね?

泣いている時には優しく頭を撫でて抱きしめてくれるよね?

怖くて眠れない時はずっと傍にいて添い寝をしてくれるよね?

 

「寝ちゃったよ」

 

 アクアは自身の膝で寝息をたてる女優を起こさないようにするが

 

「ちょっと待って残り時間まで、ずっとこの姿勢?」

 

 そうです。頑張れアクア、足が痺れても動こうとするなよ彼女が起きてしまうから

 

 

 

 しばらくして目の前ドアが開かれフリルの目が覚めると、知っている顔が現れた

 

「鏑木さんの企画でしたか?」

 

 目の前にいる妻子持ちのプロデューサーに話掛けると

 

「少し違うな、苺プロとの共同企画さ」

「どうゆうことですか?」

「アクアを休ませる為よ」

 

 ドアの陰から副社長のミヤコが顔を出して説明をしてきた

 

「アクアってオフの日でも休まずに動いちゃうでしょ?だから強制的に休ませる為にここに入れたってこと、ついでに横にいる不知火さんも仕掛け人よ」

 

 隣に目を向けるとウインクしながら舌を出す女優がいた。アクアは盛大な溜息を吐いて目の前にいる大人二人に

 

「MEMさんが紅茶を淹れた時点で変だと思ったけど、じゃあこれっていつ放送されるの?」

「あぁこれ、今放送されてるよ!」

「そう、YouTubeでも24時間生放送があるように、うちのバラエティチャンネルを使って生放送しているのさ」

 

 鏑木はスマホを見せると、今の部屋の状況が映し出され、コメント欄には

 

・膝枕って普通逆だろ

・アクア君はパパじゃなくてママでしょ

・アクアは私の母になってくれる人間だ

・照れるフリルちゃん可愛い

・5回戦でキューバを選ばない軟弱者

 

 など若干カオスになっていた。

 

「汚い大人だな」

「あら、貴方もあと少しで大人の仲間入りよ」

 

 ミヤコのカウンターにダメージを受けるが

 

「鏑木さん1つ質問ですが、もし俺がフリルを襲っていたらどうしてました?」

「アクア君はそんなことしないでしょ、まぁ逆のパターンの可能性が高かったし」

「左様ですか」

「アクア!」

「なんですかミヤコさん」

「貴方は前よりブレーキが出来るようになったけど、まだまだ無茶をして周りをヒヤヒヤさせるの。休みの日ぐらい何もせずに休養にしてほしいのに誰かを助けている。それがアクアの良い所だけど悪い所でもあるの。休むことだって仕事なの」

「わかったよ」

 

 アクアは立ち上がり、後ろにいるフリルに手を差し出し

 

「フリルもありがとう。気を使ってくれて」

「感謝には及ばないわ、それにプライベートのアクアも見れたことだし、膝枕までしてくれるなんて」

「次は逆でお願いするよ」

 

 そう言って部屋を後にした。東京ブレイドの公演まで時間は限られているが束の間の休息を得て回復したアクア君は周りの人たちに感謝をしつつ本番までの日を過ごすのであったが

 

「不知火フリルもアクアのことが」

 

 とある役者の心に1つ影を落とすのであった。

 

 

 




 水曜日に投稿する予定でしたが、残業が長引いてしまい執筆時間がありませんでした。次話も頑張っていきますが遅くても日曜日までには投稿出来るように頑張ります。

 感想を書き込んでいただき本当に感謝しています。執筆の励みになります。時間が許す限り返答していきます。今回も読んでいただき誠にありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。