表ルート 有馬かなと星野アクアは幸せ者
【爆走!独走!激走!暴走!爆走有馬かな】
遂に恐れていたことが起きてしまった。事務所でアクアから愛の告白を受けた有馬は、教室内で悶々とした日々を過ごしていた。愛しの彼と喧嘩をしたのではなく、ここ最近アクアとのニアミスが多く、こっちの仕事が終わればアクアが収録で居ない。自身の撮影の時にアクアが暇で事務所にいることが多くイチャイチャすることが出来ていなかった。10日間程度なら我慢できるが、それ以降になると眉間に皺を寄せて貧乏ゆすりが酷くなり不機嫌なオーラを撒き散らしてしまう。なお今日もアクア君は外ロケで学校に来ていないのだが
”ピンポーン”
彼女のスマホからLINEの着信音が鳴り、中身を確認すると愛しのアクアからで
『撮影がバラシになったから今から学校に行く、帰りは一緒に事務所へ行こう』
この文字を見た瞬間、彼女の顔は表現できないほどニヤケていたのは間違いない。しかし有馬はもう限界だった。彼への返信に
『今日あーくんの為にお弁当作ってみたんだけど、昼休み屋上で二人で食べよう。人払いはしておくから♥』
と打ち込んで『了解』の文字が返ってきた。最初に言っておくが有馬のカバンに彼への弁当は入っていない。
~昼休み~
アクアが屋上の出入口に足を運ぶと『ドアの修理に伴い立ち入り禁止』と書かれた紙が貼られ、有馬に連絡を取ろうとしたら
『そのまま開けて入って』
とスマホに通知が入ったので、ドアノブに手を掛けて屋上に入った瞬間
「んっ、っちゅっ・・・ふゅぅん・にちゅ・・・・・くぬゅちゅ」
いきなり口内に舌を入れられ唇を塞がれた。彼は引き離そうとするが相手は抱き着いて離れず、更に力を込めるように舌を絡ませ、互いの唾液を交換した
「んっちゅっ・・・・ちゅっ、れろ・・・・はぁ、ちゅにゅうっ、んん・・・はぁ」
「にゅうっん・・・・あーくん、おかえりなさい。れりゅ・んにゅ・・・・んん」
「ちゅっれろ・・・・・・・はぁ、ただいま・・・・ちゅぅうん・・・れろ」
もう二人だけの空間に言葉などなく、時間の許す限り抱き合い、互いの温もりを感じあうのだが有馬は1つだけミスをしていた。
「(小声)ねぇなんでお兄ちゃんと先輩が屋上でディープキスしてるの?」
「(小声)愛じゃないどすか?」
「(小声)何故そこで愛?」
「(小声)ところで私たちはいつまで隠れていなければ?」
そうアクア達の死角になる場所で、ルビー・みなみ・フリルが隠れて二人の逢瀬を見学していた。彼女たちは有馬より先に屋上にいたせいで目撃者になってしまったのである。
「(小声)これ撮影してSNSに流したら」
「(小声)フリルちゃん、流石にそれはやめよう」
「(小声)しかしアクアはんも大胆どしゅうな、学校でこんなにも熱いキスをするはるとは」
「(小声)完全に二人だけの世界だね」
「(小声)今ここで大声を出したら」
その瞬間、フリルの口は二人の手によって塞がれ恋人たちの時間を邪魔することはなかった。なおディープキスをしていた彼等は早退し、その足で事務所に向かいアクアの自室で第2ラウンドが始まるのであった。
【人生100年時代まだまだこれから】
有馬かなと星野アクアの入籍は世間を賑わせたが、彼等を取り巻く大人たちも大賑わいであった。発表前にこのことを知っていた漫画家の吉祥寺頼子(もうすぐ40歳)は頭を抱えていた。SNSに正装した二人のイラストを載せたことで、それなりにバズり今も通知が止まらない状況であるが
「新作のアイデアが浮かばない」
絶賛スランプ中であった。以前執筆していた作品が最終回となり、次回作に向けて構想や資料集めをしなければならないが、題材すら決まっていなかった。漫画家も競争社会であり面白くて読者からの人気が集まれば未成年でもトップになれる世界であり、裏を返せば実績があってもツマラナイ作品を描けば見捨てられる運命である。アイデアが出ないことなど何度も味わったが今回に関しては何も浮かばない、いっそ充電期間にして世界を旅するのもアリだと考えていたが
「(有馬さんとアクア君の物語はどうだろうか?)」
ふと渦中の二人のことを思い出した。二人は幼少期に映画で共演しているが、再び引き合わせたのは自分の作品の実写化である。そこからゴールインまでの道のりを多少の脚色を入れて描けば面白いのでは?それに自分は二人との仲は悪くないし取材も受けてくれるだろう。そう思い二人にコンタクトを取り、インタビューを行ったあとに自宅へ戻り執筆を開始したが
「あれ?なんで私泣いてるの?」
自分よりも半分の人生しか歩んでいない二人がキラキラと輝く新婚生活を送り、それをネタにして漫画を描こうとしている己の不甲斐なさと、このまま独身で生涯を終えてしまうのでは?という恐怖による感情によって落涙していることに気付いた。頑張れ頼子、多分君の王子様は探せば見つかると思う。多分。きっと
【誰だって経験者に頼りたい】
籍を入れてから3年が経ち、産まれた双子も1歳をむかえる頃のことだった。アクアのスマホに着信がありディスプレイには『鷲見ゆき』と書かれていた。彼は電話を受けしばらく会話をして通話を切った
「ねぇ、あーくん」
「ん?」
「今の電話、女の人の名前だったけど誰?まさか、浮気じゃないよね?」
今にも妻が持っていた包丁で襲い掛からんとしたが、アクアは彼女の手を握り、諭すように
「結婚式にも来ただろ?【今ガチ】で共演していたファッションモデルの鷲見ゆき」
「じゃあなんで、あーくんに電話を掛けてきたの?」
「相談したいことがあるんだって、俺達に」
「私にもってこと?」
夫は首を縦に振ると、妻は包丁を下げて目に光を戻した
「なんの相談だろう?」
「私たちにってことは、入籍するから証人欄に名前がいるとか?確か彼氏がいたよね」
「ノブユキな、でもそれなら俺達じゃなくてもいいよな?」
「じゃあ、式場の紹介とか仲人になってくれとかは?」
二人で彼女が何故やって来るのかを予想していたが、何も浮かばず次の日を迎えた。
「おじゃまします」
翌日、鷲見ゆきが二人の自宅に訪れ頭を下げてきた。妻は彼女を招き入れリビングに通した
「アクア君は?」
「今、子供たちを寝かしつけているから少し待っててね」
「ごめんなさい子育てで忙しいときに」
再び彼女は頭を下げようとしたが
「別に問題無いよ、あーくんも育児に積極的だし、周りも助けてくれるから想像していたほど不自由は無いの、それに私が子供たちを見ている時は家事もしてくれるし」
「理想の旦那すぎるでしょ」
「ただ怖いのが子供が大きくなった時に『パパの作るご飯の方が美味しい』って言われることかな?」
「確かにアクア君の手料理、美味しいもんね」
二人してここには居ない旦那のことを話していると
「寝てくれたよ、少し前まで『パパと遊ぶの』って言ってたのに布団に入ったら、ぐっすりだ」
「子供の寝顔を堪能できる時間は短いのよ、もっと味わいなさい」
「すぐに大きくなって、反抗期が来るのかな?」
「今からその心配は早いよ」
二人のやり取りを見ていた彼女は小さく「いいなぁ」と口に出してしまった。
「さて、本題だけど俺達に相談ってなんだ?ゆき」
対面に座ったアクアが彼女に問いかける
「うん、実はねノブユキのことなんだけど、う~んどこから話せばいいのかな?」
「喧嘩でもしたのか?」
「ううん、でも喧嘩になるかもしれない」
言葉を濁す彼女に妻は察したのか
「将来のことね、しかも判断を急ぐタイプかな?」
「えっ!?なんで分かるんですか?」
「芸能界に長くいれば自然と分かるものよ、相手が何を言いたいかなんて」
「だから俺の気持ちも理解してくれているんだね」
「もう、あーくんったら」
ブラックコーヒーを飲んでいる方々へ甘いと感じても販売元にクレームを入れてはいけません。それは正真正銘の無糖です。
「アクア君たちが結婚した時に、ノブユキが『俺達も籍を入れよう』って言ってくれて、その時はまだ判断を保留にしてたんだけど、最近その圧が強くなってきて『アクア達でも大丈夫なんだ、俺達だって大丈夫さ』って」
「ノブユキの野郎」
アクアは久々に額に怒りマークと右手にキングオブハートの紋章を輝かせていたが
「あーくんストップ」
「はい」
妻の言うことには絶対である
「でね、現状を確かめてみようと思ったんだけど、何から手を付ければいいのかが分からなくて、先に結婚したアクア君たちに聞いてみようと思って」
旦那は天井に目を向けて結婚するまでの道のりを思い出し、妻は彼女の手元にある紅茶が減っていないことに気付き
「ねぇ、ゆきさん」
「呼び捨てでいいです。年下ですし」
「まぁいいわ、貴女まさかお腹にいるんじゃなくて?」
「本当なのか?」
彼等の問い掛けに首を縦に振り
「うん、いるよ7週目だけど」
「あーくん、ノンカフェインに取り替えてあげて」
アクアはすぐに淹れ直し
「ノブユキはまだ知らないと」
「うん」
「教えていないってことは理由があるようね?」
「今は半同棲みたいな形で暮らしているんだけど、ノブユキの嫌なところが目についちゃって、このまま入籍していいのかな?って思うようになって」
「まさか子供を」
「それはしないよ、でもねノブユキって一度も家事を手伝ってくれなくて、ダンスチームとの飲み会で午前様になることも多くて、それに収入も少ないのに散財してるから部屋代も7割が私が出してるの」
「ノブユキのやつ、それで籍を入れようって無責任すぎないか?」
アクアのツッコミに対し、隣にいた彼女は
「因みにだけど、二人の収入ってどれくらいなの?」
「私が20万前後でノブユキが7万円をちょっと超えるぐらい」
その言葉に夫婦の二人は頭を抱え、かなは溜息を吐きつつ
「正直に言うわよ『結婚なめんじゃねぇぞ!』」
「かな、ステイ」
旦那は妻の頭を撫でて落ち着かせ
「ゆき、言っちゃ悪いがそれで暮らすって無謀すぎる」
「やっぱそうだよね」
「当然、お腹が大きくなれば仕事を休む上に産後すぐに仕事復帰も無理だ、それにノブユキに育児が出来るとは思えない」
「私たちは事務所のサポートや、あーくんにお世話になった人たちからの厚意で助かっているところがあるけど、そっちは少なくとも家族の手助けが必要になる」
かなは戸棚に閉まってある分厚いノートを数冊持って来て、ゆきに見せた
「これね、私が妊娠中の
「これ全部アクア君が?」
「ぴえヨンさんに頼んで管理栄養士やフードマイスターの人を紹介してもらって、体調に合わせた食材や調理方法、料理のサイズも加味してる」
「それに、私だけでいいのに、あーくんも同じのを食べていたの」
「妻にだけキツい思いはさせたくなかったし、流石にタンパク質が足りなくなるからプロテインは飲んでいたけどね」
ゆきはノートに目線を向けながら
「やっぱ凄いんだねアクア君は」
「愛する妻と産まれてくる子供の為だし、別に辛くはなかったよ」
「少なくとも、結婚・妊娠・出産ってこれぐらい覚悟がいるの」
「やっぱそうだよね」
「とりあえずノブユキに子供がいることを報告して、双方の親に伝えないと話は進まない。紙おむつと乳幼児の服は沢山あるから、その辺は頼ってくれ」
「ありがとう」
ゆきは立ち上がり
「ねぇ二人の子供たちを見て行っていい?」
彼女の問いかけに首を縦に振った二人は、静かに戸を開けて寝ている双子を見せてあげた
「本当に可愛いね!」
「日に日に大きくなっていくから、成長を見るのが楽しみよ」
「お互い、子供の頃に学校行事の時は親が来ないことがあったから、出来るだけ参加したいんだ」
戸を閉めて、玄関に向かった彼女は
「とりあえずノブユキや親に話してみる。籍を入れる時になったら二人に証人を頼むからね。今日は相談に乗ってくれてありがとう」
閉まったドアをみて妻が
「ねぇ彼女どうなると思う?」
「婚姻届を持って二人でやって来るに1万円」
「じゃあ私はシングルマザーに2万円」
「おいおい」
「冗談よ、でも彼女たちの進む道は相当な茨道よ、私たちは頼れる人が沢山いて支えてくれた。あーくんも家事が出来るから、私も安心して子供たちを見ていられる」
妻はアクアに体重を預けるように寄りかかり
「あーくんの積み重ねてきた恩を返してくれる人がいて、私たちを支えてくれた。じゃあ私たちも誰かを支えないと罰が当たるね」
「そうだな」
「そうねルビーやMEMに子供が産まれたら、育児の先輩としてビシバシ鍛えてあげようかしら」
「MEMさんはともかく、ルビーを妻に向かえるって世界を救う勇者じゃないと務まらないだろ?」
「言えてるね」
「今日の晩御飯は何をご所望で?」
「あーくんの作る料理ならなんでもいいよ、美味しいから」
互いを尊敬し、足りないものを補うのが夫婦である。この二人にとっては当たり前のことである。この二人を見て育つ双子はどう成長するのか?少なくともこの夫婦に『険悪』という文字は存在しない。いつまでも末永くお幸せに
日曜日までに、もう1本番外編を執筆するつもりです。
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