【心の】改心してほしい悪人を募集中【怪盗団】
1:名前を入れてください ID:
特別な力で悪人に限り改心する(心を入れ替えさせる)ことができます
改心が必要な悪人が身近にいる人は是非書き込んでください
その際写真はいりませんが本名をはっきりと書いてください
2:名前を入れてください ID:
またこの糞スレか
3:名前を入れてください ID:
心の怪盗団(笑)
ダサすぎワロタ
4:名前を入れてください ID:
中学生は暇そうでいいな
・
・
・
「蓮、例のスレッド見てんのか?」
「ああ、でもまだこれといったものはないな……」
4月17日、放課後。教室で雨宮はスマホを弄りながらスレを眺めていた。
坂本もスマホを取り出してスレッドを探し当てて読み始めた。
「くっそー……むかつくぜ。ダサすぎとか中学生とかよ」
「そりゃ信じられるわけないからな……腹立つからって反論とかするなよ?」
「しねーよ」
スレッドではほとんどが>>1への罵倒や嘲笑で埋まり、大した盛り上がりもなく過去ログに送られる。
そのたびにベレスが改造スマホでスレを建てる……というのを1日に5回ほど繰り返している。
「ホントに来んのかねー」
「ベレス先生は、3日以内に来なければ『改心』は今回で終わりにしろと言ってたな」
「マジか……まぁでも言ってることは正しいしな」
雨宮はスマホをカバンに仕舞うと、帰り支度を始める。
既に帰り支度を終えていた坂本はしつこくスレッドを更新するが、何も実のある書き込みがなく諦める。
「今日はミリタリーショップ行くんだよな。先生の知り合いの。
蓮は昨日、診療所に行くっつってたけど薬は買えたのか?」
「ああ、いくつか買ってきた。結構高かったから、そんなには買えてないが」
「今日もモデルガン買わないといけないしな。武器と防具の類も置いてるらしいぜ?
まぁ、武器はレプリカだけど、パレスなら問題なく使えるだろ」
「よし、じゃあ行くか……」
*
夕方、ベレス先生は部活動の指導を終えて帰路についていた。
昨日から、鴨志田にはなるべく接触しないように立ち回っているのもあって、少し疲弊していた。
(久しぶりにお酒でも買って帰るか)
コンビニでビールと食料品を買いこんで、自宅のアパートに帰る。
夕飯を食べて、洗濯物を片付け、明日の授業の準備をして……気付けば21時を回っていた。
冷蔵庫からさっき買ったお酒を取り出して晩酌をはじめる。
(1人は淋しいな……士官学校での生活が懐かしい)
士官学校では寮生活だったのもあってあまり孤独は感じなかったが、現代日本では強く感じる。
交友関係の広いベレスだったが、このアパートの住人は繋がりを求めないタイプが多く交流はほぼない。
(1人で飲んでても楽しくない……)
ふと、自分の右手に宿る炎の紋章が目に入る。
そういえば、パレスの外では試してなかったなと思い至る。
「『エーデルガルト』」
『……
紋章が輝いたと思うと、炎の紋章がセイロスの紋章に変わってエーデルガルトが現れる。
「淋しくて……」
『私、皇帝なのだけど……』
「まぁまぁ、晩酌に付き合ってよ。聞きたいこともあるし」
エーデルガルトに仕事の愚痴や鴨志田とのことなどをお酒を飲みつつ語るベレス。
『貴女は自分が異性を惹きつける魅力があることを自覚しなさい。
岩井という男にしても少し気を許しすぎね。いつか痛い目を見るわよ』
「肝に銘じておくよ。それにしても、
『今回は大目に見るけれど、くだらないことで呼ばないで頂戴よ?
まぁ、貴女とこうして会えることは嬉しいことだけれど』
エーデルガルドが照れからか、後半は顔を背けながら呟く。
「ふふ……でも、たまにはいいよね?」
『仕方のない人ね……。それと、あくまで今の私の
だから外では出さないこと。普通に捕まるから』
「分かった。それと今エーデルガルトを出してる状態で他の生徒も呼べたりする?」
『それは無理ね。紋章に依存してるから、1人しか呼べないはずよ。
他に呼びたい生徒でもいるなら、代わるけれど』
「呼べるのはベルナデッタとリンハルトか……。ベルと久しぶりに会いたいかも。いい?」
『好きにしなさいな』
「それじゃ、またね。……『ベルナデッタ』」
右手の紋章が、セイロスの紋章からインデッハの紋章に切り替わる。
すると、ぼさぼさの紫のショートヘアの女の子、弓使いの『ベルナデッタ』が現れる。
『ひょえ!? 何ですかここっ……え、先生!?』
「久しぶり、ベル。ここは……キミから見たら異世界の私の部屋だよ」
『先生、見つからないと思ったら異世界に!? こ、こっちでは何を?』
「こっちでも教師をやってるよ。色々話したいことがあるんだ――」
*
翌日、4月18日。
朝、ベレスは昨日の夜立てた5ちゃんねるのスレッドをチェックする。
「これは……」
【心の】改心してほしい悪人を募集中【怪盗団】
1:名前を入れてください ID:
特別な力で悪人に限り改心する(心を入れ替えさせる)ことができます
改心が必要な悪人が身近にいる人は是非書き込んでください
その際写真はいりませんが本名をはっきりと書いてください
・
・
・
46:名前を入れてください ID:
信じてないけど誰も頼れないから書く
結婚詐欺で300万騙し取られた
問い詰めたら「あれは貰った金だから返せない」とか
「そもそも結婚するなんて言ってない」と言われてそのまま逃げられた
(確かにはっきりとは言ってなかったけど結婚を匂わせることはしょっちゅう言ってた)
警察にも相談したけど民事不介入と言われ
弁護士には全額取り返せない可能性が高いと言われた
名前は確か■■■■
免許証に書いてあったからたぶん本名
ちな江東区在住、被害者は知ってる限りでもう1人いる
とりあえず改心してお金だけは返してほしい
なんてあり得んわな
48:名前を入れてください ID:
なんかガチっぽいの来て草草の草
50:名前を入れてください ID:
はよ改心()してやれ
(一応、裏取りは取っておくべきか)
ベレスはスマホを捜査して探偵事務所に電話をかける。
(八神さん、起きてるかな……)
八神隆之。
去年、神室町で不良生徒がトラブルを起こした際に、親身に相談に乗ってくれた探偵だ。
当時はまだ探偵業を始めたばかりだったが、色々と頼りになる人だったのを覚えている。
『……はい、八神探偵事務所ですけど』
「もしもし、八神さん? 去年お世話になったベレスだよ。覚えてる?」
『ベレス……ああ、あんたか。何、また生徒がトラブったの?」
「いや、今回はそうじゃないよ。ちょっと調べてほしいことがあるんだ」
『なんだ普通の依頼か。いいよ、何?』
ベレスはさきほどの書き込みのメモを見て、依頼内容を告げる。
「■■■■っていう結婚詐欺師が本当にいるのか調べてほしい。
とりあえず江東区に被害者が1人いる」
『居場所の特定はいらないの? いるかどうかの裏取り調査だけ?』
「うん、お願いできるかな……それと、このことは内密にね」
『それはもちろん。了解、調べてみるよ。たぶんすぐ終わると思う』
「助かるよ。それじゃ、依頼料は振り込んでおくから」
ベレスは電話を切ると、急いで朝の支度をはじめ学校へ向かう。
*
朝、校門前で竜司が駆け寄ってくる。
「先生、見たか?」
「うん。放課後、動けるメンバーで行こう。その頃には裏取りも取れてるはず」
「裏取りって……そんなことまでしてんすか」
「ガセだったら時間の無駄だしね。ほらHR始まるよ、坂本くん」
「っす、また放課後に!!」
そして放課後、渋谷駅でかすみを除く4人で落ち合う。
「いよいよ活動開始だな……心の怪盗団!!」
「坂本、声大きいって……でも、気持ちは分かる」
「ベレス、裏取りってのはできたのか?」
「取れた。実在するのは間違いない。行こうか」
「はい、行きましょう」
イセカイナビ入力し、メメントスへ侵入する。
改札を抜けて、最初のエリア『思想奪われし路』に足を踏み入れる。
中は地下鉄の線路内を思わせるようなダンジョンになっている。
「この階層にいるのは間違いないな。探してみようぜ」
モルガナが鼻を鳴らして4人へ知らせる。
「結構広いね……徒歩で探すとなると時間がかかりそうだ」
「シャドウもいるんだよな? 夕方までに帰れっかな……」
「そんなお前らに朗報だ。とっておきの乗り物を用意しておいた」
「えっ、乗り物? どこにあるの? 見当たらないけど……」
杏がキョロキョロと周りを見回すがそれらしいものはどこにもない。
「いや、あるぜ……ここにな! モルガナ、へん……しんッ!!」
モルガナがポーズをキメると、なんとモルガナがその面影を残した車に変わる。
「車……いやバスか? ちょっと小さいけど」
「なんだそりゃ、あり得ねえ!?」
「大衆の認知を利用した裏技だな。猫はバスになれるって認知が大衆には深く根付いてるんだ」
「なるほど……去年の夏に金曜ロードショーでやってたアレだね」
「ちなみに自力では動けないんで運転は頼むぜ」
「微妙に不便だな……師匠って免許持ってんの?」
「ペーパーだけど……まぁ私が運転するしかないか。モナ、お邪魔するよ」
ベレスは運転席に乗り込み、ハンドルを握る。
続けて、他の3人もモルガナに乗り込む。助手席に雨宮、後部座席に杏と竜司が座る。
「さぁ、待ってろよ悪党! 出発してくれ師匠!!」
「待って、これATじゃなくてMT……!」
*
運転に苦戦しながらも、ベレスはメメントスを縦横無尽に探索する。
シャドウも何体か倒したが、カモシダパレスのシャドウより少し強くベレスが矢面に立つことになった。
「疲れてませんか、
「問題ないよ。でも、今後のことを考えれば私以外も運転できるようにしておいたほうがいい」
「……疲れたんですね?」
「まぁ……そうとも言うかな。ここ暗いし、結構神経使うんだよね」
「じゃあ、俺が運転代わりますよ。無免許ですけど、マスターの運転見てやり方は理解しました」
「お前すげーな」
ベレスと雨宮は座席を交代し、雨宮の運転で探索を再開する。
雨宮の運転はベレスに比べてスマートで、揺れやブレーキも少なかった。
「これなら、最初からジョーカーが運転でよかったかな……」
「ま、
「お、おう。なんつーかこう……ワイルド?」
「フォローになってねーぞ、オマエら……」
しばらく進むと、先が見通せないがどこかに繋がりそうな行き止まりを見つける。
「ここだぜ。間違いない」
「準備はいい? みんな」
「「「はい」」」
「よし、メンバーはモナ以外の4人で行こう。モナは車の状態で待機」
「了解。初仕事だ、気合い入れてけよ!」
モルガナカーのまま、真っ暗な空間に突入して座席扉を開けて転がり込む。
中では20代後半ぐらいの青年が、瘴気のようなものを纏わせて立っていた。
「キミが■■■■? 結婚詐欺で金を騙し取られたっ人がいるんだけど……」
「俺は結婚詐欺なんてしてねーよ。結婚するなんて一言も言ってねーし。
金も勝手にアイツらが勘違いして貢いだだけだろ? 返す必要なんかないね」
「仮にそうだとして、勘違いさせるきっかけを作ったのはお前だろう」
雨宮が反論するが、■■■■は聞く耳を持たない。
「だったら何だよ。勘違いさせるのが犯罪か? だったらお前らだって犯罪者だぞ。
仮に悪意を持って勘違いさせたとして、俺の内心をどうやって証明すんだよボケ。
俺は無罪だ、勘違いしたあいつらが悪い。勉強代と思って泣き寝入りすりゃいいんだよ!!」
「けっ……確かにお前は司法じゃ裁けないかもな。
でも、その歪んだ欲望の芽を俺らが奪えば……お前は自分から金を返しに行くことになる」
竜司が銃をつきつけると、■■■■はその姿をシャドウに変える。
「やれるものならやってみろよ!!」
赤黒い肌に、額に生えたツノ。地獄のオニのような風貌のシャドウがベレス達に襲い掛かる。
「こいつは強い。皆は下がって」
「で、でも……」
「ゲームで例えればLV20ぐらいはある。キミ達はまだLV3から5ってところ。勝てると思う?」
オニの攻撃を捌き、躱しながらベレスが問いかける。
「……分かりました。俺達にできることは?」
「そうだね……銃と魔法による援護は許可しよう。当たらなくてもかまわない」
「「「了解!!」」」
生徒たちと会話を終え、ベレスは攻勢に転ずる。
ちなみにベレスの推量では、オニとベレスのレベルにほとんど差はないと見ている。
だとしても、技量の差や手数の多さから油断しなければ負ける要素はほぼない。
ベレスはわざと隙を作り、オニの大技を誘発する。
「死ねッ」
「甘い」
ベレスはひらりと躱すと、そのまま横薙ぎにオニの身体を斬りつける。が――
「浅い……」
「はっ、俺に物理攻撃は効かねぇよ。耐性持ちってやつだ」
「なるほど……強敵だ」
「今のが全力なら、お前に勝ち目はねぇ。大人しく命を差し出しな!!」
オニは猛然とベレスへ襲い掛かるが、ベレスはオニの猛攻をすべて回避し、流していく。
「くそ……!」
(1人でも勝てるけど、ここは慣らしのために切り札を切っておこうか)
ベレスは手の甲を表にして、前に差し出す。
「何を……!?」
「『リンハルト』」
ベレスの手の甲の炎の紋章が光、セスリーンの紋章へ変化する。
そして、そこに深い緑髪で気だるげな表情で礼服を着た青年、『リンハルト』が現れた。
『先生、突然呼び出してなんですかこの状況……』
「久しぶりだね、リンハルト。悪いけど一緒に戦ってほしい」
『いいですけど……昼寝の途中なんですから、手短にお願いしますよ』
「わかってる。行くよ」
ベレスは剣を手にオニへと向かい、リンハルトはその後方で魔導書を構える。
「剣は効かねぇって言っただろうが!」
オニは防御の態勢をとって、ベレスの攻撃を耐えた後の反撃を用意する。
「そうでもないよ――『風薙ぎ』」*1
ベレスがオニを通り過ぎる風のように薙ぎ払うと、オニは身体をよろけさせる。
それを見て、リンハルトが魔法を発動させようとする。
「倒しきらないでね」
『何ですかそれ、めんどくさいなぁ……『エクスカリバー』』*2
リンハルトが魔法を唱えると、敵を切り裂く旋風がいくつも生み出され、一斉にオニへ襲い掛かる。
「ぐおお……お、俺は何を……!?」
オニが混乱して、前後不覚に陥る。
それを見て、ベレスは生徒たちへ声をかける。
「今だよ」
「は、はいっ! 行くよカルメン――『アギ』!!」
「来いキッドォ!! 『ジオ』!!」
「やれ、アルセーヌ――『エイハ』」
3人が同時に攻撃し、オニの撃破に成功した。
シャドウとしての力を失った■■■■は、力なくその場に倒れ込む。
「……気付いちまったんだ。行き遅れの焦ってる女と遊びで付き合った時にな。
こいつら、ちょっと結婚ちらつかせただけで金をいくらでも持ってくるって……。
最初は数万円で満足してたが、そのうちエスカレートして……止められなくなった」
「サイテー……」
「きっちり金を返して、誠心誠意謝ることだ」
そう言って、ジョーカーが■■■■の懐から欲望の芽を奪い取る。
奪い取った欲望の芽は潜入道具の一つ「煙幕」に代わる。
「ああ、そうするよ。これからは、心を入れ替えて生きることにする――」
■■■■はそう言い残して、姿を消した。
*
【朗報】心の怪盗団、ガチで本物かもしれない
1:名前を入れてください ID:
この前、結婚詐欺で300万騙し取られたって書いた人だけど
今日、相手が家に来て土下座して謝りに来た
絶対そんなことする奴じゃないのに
しかも銀行口座みたら300万振り込まれててマジでビビった
改心すごすぎワロタ
ありがとう心の怪盗団
2:名前を入れてください ID:
嘘乙
3:名前を入れてください ID:
怪盗さん自作自演はまずいですよ
6:>>1 ID:
いやマジなんだって
これ銀行の通帳な
(画像)
8:名前を入れてください ID:
うわマジじゃん
11:名前を入れてください ID:
そんな画像いくらでも用意できる定期
お前ら騙されるなよ
翌日、4月19日。
お昼休み、屋上で弁当を広げていると雨宮とモルガナ、竜司がやって来た。
「先生、例のスレ見た?」
「うん。無事に改心できたみたいだね」
返事しながら、ベレスは手を合わせて「いただきます」と小声でつぶやく。
「ああ、この調子で鴨志田の野郎も改心してやろうぜ!」
「先生、そろそろパレスも攻略しますよね?」
雨宮が購買で買ったやきそばパンを頬張りながら、ベレスに確認する。
「明日からね。とりあえず今日一日は身体を休めておいて」
「分かりました」
「待ってろよ鴨志田ぁ……!」
竜司はコンビニ弁当を開けて、歯を使って割り箸を割る。
「それはそうと、スレ立ては今後も続けるんですか?」
「そうなるかな。活動実績は途切れないほうがいい」
「ってことは小者の改心も今後も続けるって事すか」
「そのつもりだけど、それについては考えがある。
パレス攻略中は、メメントスの改心依頼は私とかすみとモルガナでやっていこうと思う」
ベレスは2段目の弁当箱に手をつけはじめる。
「別動隊ってことですか」
「パレスもメメントスもってなると負担が大きいからね。
怪盗をやることを否定はしないけど、キミ達の本分は学業なんだから、そこは疎かにしちゃいけない」
「うっ……先生が先生みてぇなこと言ってる……」
「先生だからね」
ベレスは2段目もぺろりとたいらげ、3段目の弁当箱に手をつける。
「いやどんだけあるんだよ!? 食いすぎだろ先生」
「これでも抑えてるほうだよ。フォドラに居た頃は昼に別々の生徒と6回食事をしたこともある」
「化け物じゃねぇか!!」
ベレスの大食いエピソードに引きながら、昼休みは終わっていった。
*
その日の夜。
掛け持ちの塾講師の授業を終えた帰り道。
その途中にある公園のベンチでどこかで見たことある女性が座り込んでいた。
「お腹へった……」
「……シェズ?」
剣こそないものの、あの片目の隠れた紫髪と現代日本にそぐわないあの格好は。
カモシダパレスで戦い、生徒を助けたあのシェズで間違いなかった。