秀尽学園の非常勤講師、ベレス   作:女主人公スキー

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お待たせしました。長いので時間のある時に読んでください。


23.美少女怪盗参戦!?

 パレス潜入の翌日、6月17日(金)。

出勤時に真を見かけたベレスは声をかける。

 

 

 

「おはよう新島さん、身体は大丈夫?」

 

「先生、おはようございます。はい、問題ありません」

 

「そっか、良かった。それで、今日時間はある?」

 

「ありますけど――」

 

 

 

 真の返答の直後、雨宮が背後から現れる。

 

 

 

「先生、おはようございます」

 

「おはよう、雨宮くん。ちょうどよかった……新島さんと雨宮くん、放課後に生徒会室に来てくれる?」

 

「生徒会室に? 内密の話ですか」

 

「うん。今後の作戦会議をね。一応、一昨日の夜にこっちで考えては来たけど、二人の意見も聞きたい」

 

「分かりました。では、放課後に」

 

 

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

 

 

 同日、放課後。

雨宮と真は生徒会室でベレスを待つ。少し遅れてベレスが入ってきて、扉の鍵を閉める。

 

 

 

「待たせたね」

 

「いえ……作戦会議をするんですよね? 金城の改心に向けて」

 

「そう。でもその前に新島さんを鍛える時間が欲しい。だから雨宮くん、パレスの攻略は21日からにしてほしい」

 

「分かりました」

 

「新島さんに予定がなければ、明日からメメントスに潜ってもらうけど……どうかな」

 

「問題ありません。よろしくお願いします、先生」

 

 

 

 ベレスは真に明日渋谷駅で待ち合わせることを伝えて、話題を変える。

 

 

 

「さて、金城のパレスの攻略に関してだけど攻略自体は今まで通りで構わない。いつやるか、どのメンバーで行くかも雨宮くんに任せる。予定が合えば私やシェズも手伝う」

 

「分かりました」

 

「問題は改心。金城をただ改心しても、それで半グレの組織が崩壊するわけじゃない。

金城が自首して、そこから芋づる式に――となるかもしれないけど、ならないかもしれない。

 

金城が殺されたり、監禁されたりして組織がそのまま続く可能性がある。そうならないように組織ごと潰す必要がある」

 

「組織ごと……具体的にはどうやって?」

 

「一番いいのは幹部を全員改心すること。でもパレス攻略と平行してやるには時間が足りなすぎる」

 

「そうですね……となると?」

 

「それがこれから話す作戦だよ。一昨日の夜、私と『クロード』で考えた」

 

 

 

 ベレスが呼ぶと、紋章の光と共にクロードが現れる。

 

 

 

『よう、お二人さん。初めまして、でいいのかな? 蓮とか言ったか、お前は姿は見てるはずだが』

 

「ああ、斑目に予告状を送った日に黒い仮面と戦っているのを……少しだけ」

 

『改めて自己紹介させてくれ。俺はクロード。レスター諸侯同盟ってとこで盟主をやらせてもらってる。

ベレスとは今は敵同士となるが、こっちの世界じゃノーサイドだ。暇つぶしに協力させてもらうことにした。よろしくな、二人とも」

 

「ええ、よろしくね」

 

「よろしくお願いします。先生、作戦について聞かせてください」

 

 

 

 雨宮に促され、ベレスは頷いて口を開く。

 

 

 

「結論から言えば、パレスと現実の両方で同時に動くことが今回の作戦になる――」

 

 

 

 ベレスとクロードから、作戦の概要が語られる。それを聞きながら、細かい疑問点を潰し改善できる所は直していく。

 

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 

「作戦は理解できました。ただ……また黒い仮面が襲ってきた場合、俺達じゃ対処できません。その点が問題ですね」

 

「あと1人ぐらいメンバーが増えれば、時間稼ぎぐらいは出来るんじゃない?

私はその、黒い仮面を知らないけど……というか、本当なの? 正体があの明智くんって……」

 

「本当だよ。今からメンバーを増やすのは現実的じゃないな……。その辺りはまた考えておくとしよう」

 

 

 

 ベレスは時計をちらと見て、会議を切り上げることを決める。

 

 

 

「今日はこれで解散だ。20日にまたこの場を設けて結論を出そう」

 

「分かりました。メメントスは明日からですよね。渋谷駅で待ち合わせでいいですか?」

 

 

 

 ベレスが頷くと、真は生徒会室から一足先に出て行った。続こうとする雨宮をベレスが呼び止める。

 

 

 

「7月には期末試験に備えて、今日勉強会をしようと思ってる。キミに予定がなければだけど」

 

「――是非お願いします。ここで、ですか?」

 

「うん。教材は持ってきてるから、早速はじめよう」

 

 

 

 

 

 

・『永劫(ベレス)』COOP RANK 3→4

 

 

 

 カリカリと鉛筆の走る音が静謐な音に響き渡る。雨宮は鉛筆を置いて、15分ほどで解いた問題集をベレスに手渡す。

 

 

 

「どれどれ……うん。すごいね、全問正解だ」

 

「よしっ」

 

 

 

 雨宮はグッと机の下でガッツポーズを取る。

 

 

 

「ここまで出来るなら、試験対策は必要ないかもね。もう私が教えなくても……」

 

「ありがたいお言葉ですが、俺と先生との時間はこれからも必要です」

 

「試験結果が上位である限り、この関係(取引)は続ける……そういう約束だったね」

 

「はい。続けてもらわないと困ります」

 

 

 

 ベレスはふう、と息を吐いて人差し指を立てる。

 

 

 

「次は学年1位を狙ってみてほしい。できる?」

 

「お望みとあれば、いくらでも。ただ……1位を取ってこれまでと同じじゃ達成しがいがありませんよね?」

 

「ん……何かご褒美が欲しいということ? 何がいいの?」

 

「そうですね……」

 

 

 

 顎に手を当てて考えた雨宮は、何度か頭を振りながらおずおずと提案する。

 

 

 

「学年1位を獲れたら――二人きりの時だけ、俺のことを雨宮くんではなく『蓮』と呼んでほしいです」

 

「それでいいんだ……分かった。構わないよ」

 

「出来れば、俺も先生じゃなくて名前で呼びた――」

 

 

 

 雨宮が言い終わる前に、雨宮の額にデコピンが飛ぶ。

 

 

 

「学年1位如きでそれは生意気すぎる。却下だね」

 

「如きって……でもそれ以上となると――」

 

「全国模試でそれなりの結果を出すぐらいじゃないと許可できない。諦めて」

 

「……分かりました」

 

 

 

 ベレスは立ち上がって、持ってきた教材を鞄に納めていく。

 

 

 

「勉強はこのあたりで切り上げて、メメントスに行こうか」

 

「また、ペルソナに技の伝授を?」

 

「それはまた今度。今日は別の怪盗としてのスキルを身につけてもらう」

 

 

 

 生徒会室を後にして、渋谷駅からメメントスへ入る。

浅い階層で、ベレスは何かを探して回る。10分ほどかかって見つけたそれはカギつきの宝箱だった。

 

 

 

「フォドラの兵種「盗賊」の『カギ開け』のスキルを教えるよ。いつもはあらかじめ作っておいたキーピックで開けるけど、それがなくなった時に使えると思う」

 

 

 

 ベレスは針金を取り出して、キーピックのような形に成形していく。

 

 

 

「フォドラの鍵ならこれで簡単に開くけど、こっちは技術も進んでいるし針金だけじゃ簡単には開かないと思う。

私でも70%ぐらい。今のキミの【器用さ】なら……40%ぐらいかな。器用さを磨けば精度は上がってくるはずだ」

 

「40%でも、ないよりはいいですね。やってみても?」

 

「もちろん」

 

 

 

 雨宮は見様見真似で針金を成形し、いつもの要領で宝箱を開けようとする――が、失敗。

二度目も失敗し、三度目でようやく成功し中のアイテムを手に入れる。

 

 

「キーピックがないからと言って、何度も挑戦するのはやめたほうがいい。シャドウに見つかる危険性もあるし、時間的効率もよくない」

 

「はい、肝に銘じておきます」

 

「私が同行していれば、私が代わりに開けてもいい。成功するかは保証できないけどね」

 

「助かります」

 

 

 

 その後、いくつかの宝箱を見つけては開錠に挑戦し成功と失敗を繰り返してメメントスから脱出した。

外に出てみれば、既に夕方だった。

 

 

 

「……もうこんな時間か。四茶まで送っていくよ」

 

「だったら、ルブランまで来てください。コーヒー淹れますよ」

 

「キミが? じゃあ、御馳走になろうかな」

 

 

 

 ルブランに着くと既にCLOSEDの札がかかっており、中で惣治郎が待っていた。

 

 

 

「遅えぞ。何をやって……あ、ベレス先生!?」

 

「すまない、試験対策に勉強を見ていて遅くなった」

 

 

 

 ベレスがぺこりと頭を下げると、惣治郎は慌てた様子でカウンターから出て応対する。

少し雨宮のことや世間話をしたあと、惣治郎は店へ戻っていった。

 

 

 

「それじゃ、1杯だけもらおうかな」

 

「はい。少しだけ待ってください」

 

 

 

 雨宮は慣れた手つきでコーヒーを淹れていく。カウンター席でベレスはじっとそれを眺める。

 

 

 

「手つきだけなら惣治郎さんと遜色ないね」

 

「形から入るタイプなので――お待たせしました。どうぞ」

 

 

 

 差し出された雨宮謹製のコーヒーを、ベレスはゆっくりと口につけ味わう。

 

 

 

「美味しい。惣治郎さんにはまだ及ばないけど」

 

「ありがとうございます。カレーも練習中なので、良ければ今度是非」

 

「それは楽しみだ」

 

 

 

 ベレスは席を立ち、ルブランを後にする。雨宮も玄関までベレスを見送った。

 

 

 

「今日はありがとうございました」

 

「こちらこそ。試験結果、期待しておくから……頑張って」

 

「はい」

 

 

 

【【コープ『永劫』のランクが4に上がった。雨宮が『カギ開け』のスキルを習得した。

また、探索時にベレスが同行していると代わりにカギ開けを使ってくれるようになった(3回まで)】

 

 

 

 

 

 

 同日、その帰り道。

ベレスの自宅アパート近くの公園に、見慣れない高級車が止まっていた。

そのそばから男女の諍いらしき声が聞こえてくる。

 

 

 

「いいから乗れよ。お前のことは好きにしていいって言われてるんだ」

 

「やめてください! 私はあなたのモノじゃない……!」

 

「お前も奥村さんに『俺に従え』って言われてるんだろうが。口答えするなよ」

 

「いやっ……引っ張らないでください!」

 

 

 

 男は女性を無理矢理車に乗せようと腕を引っ張っている。

 

 

 

(あれは……3年の奥村さんか。相手は……誰だろう。権力者か金持ちの息子っぽい身なりだけど……)

 

 

 

 奥村春。真ん中分けのショートボブが特徴の「ゆるふわ」な女子。3年生で成績は中の上ぐらい。

大手外食チェーン店を展開する「オクムラフーズ」の社長令嬢だ。そのせいか、友人はあまり多くないようだ。

 

 そういった情報はベレスも知っている。会話の内容と併せてそこから推察すれば、男が恐らく父親から宛がわれた婚約者か何かだと察せられた。

教師としてすぐにでも助けたいところだが、今は金城に目をつけられている状況だ。

 

 

 

(トラブルを増やすわけにはいかないな……かと言って見て見ぬふりもできない。どうするか――)

 

 

 

 ベレスは辺りを見回せば、公園の公衆トイレが目に入る。

 

 

 

(……ちょうどいいか。奥村さんにバレなければ彼らにもバレないという証明になる)

 

 

 

 ベレスは二人を横目に公衆トイレに入り、服を着替える。

今回の作戦で、ベレスはパレスではなく現実で動くことになる。その時いつもの格好で行くと金城達に警察で証言されてしまう。

それを避けるために、まったく違う人物に変装しなくてはならない。

 

 黒髪のウィッグ。胸にはさらしを巻き、身体のラインが出にくいズボンを履く。

さらに顔を隠すためにサングラスとフードを被る。本番ではここまで徹底して別人を演じる予定だ。

 

 ただ、今はウィッグとさらししか持ち合わせていない。なぜ持ち歩いているかと言えば、金城たちに絡まれた時に追跡を躱すためだ。

ベレスの身体能力なら必要ないし、そもそも渋谷にこの期間近づくつもりもないのだが。

 

 

 

(思ったより胸がきつい。呼吸がしづらい……慣れておかないと本番でしくじりそうだ)

 

 

 

 女子トイレから出てきたベレスは、中性的な男装の麗人といった様相だった。

よく見れば女性だと分かるが、少なくともベレスとすぐに認識されることはないだろう。

 

 

 

(あとは声を低くすれば大丈夫かな……行こう)

 

 

 

 春と男を見ると、今まさに車に連れ込まれようとしている所だった。

ベレスは急いで二人の元に向かい、男の肩を掴む。

 

 

 

「手を離せ」

 

「えっ……?」

 

 

 

 春が驚いた様子で振り向く。

ベレスは肩を掴んだまま、男を春から引き剥がす。

 

 

 

「何だお前は!? 俺はこの女の婚約者なんだよ……! 関係ないやつはすっこんでろ!!」

 

「婚約者か……とてもそうは見えないな。どう見ても彼女は嫌がってるし、誘拐犯に見えたよ」

 

「誘拐犯だと……お前、誰にものを言ってるか分かってるのか。俺は――」

 

 

 

 男が何かを言う前に、男の襟首を掴んで車の中に放り込む。

 

 

 

「誰か知らないが、ろくでもない人だということだけは分かるよ。彼女に相応しくないということも」

 

 

 

 ベレスは春をお姫様抱っこで抱き上げる。

 

 

 

「きゃっ」

 

「行こう。彼と一緒に行かないことで不都合が生じるなら、わた……俺のせいにすればいい」

 

「は……はい」

 

 

 

 ベレスは春を抱いたまま、早足でその場を去る。

当然男も追って来るが、路地裏に回ってあっという間に振り切った。

 

 

 

「ここまで来れば大丈夫かな。怪我はない?」

 

「だ……大丈夫です! あの、ありがとうございます。是非お礼をしたいので、お名前を聞いても?」

 

「――名乗るほどの者じゃないよ。それより家まで送ろう。彼がまた来ないとも限らない」

 

「そう……ですね。でしたら、タクシーで行きましょう。呼びますね」

 

 

 

 春が背中を向けてスマホを操作する。その顔は赤くなっていたが、ベレスは認識できない。

数分待つとタクシーがやってきて乗り込んだ。車内で世間話を交わし、話題は父親と婚約者の話に及ぶ。

 

 

 

「……なるほど。父親が勝手に決めた婚約者なのか」

 

「はい。父は大手飲食店の社長で……政界進出を目指してるんです。そのためのコネづくりといって……」

 

「要は政略結婚か。この時代にもあるんだ……大変だね。もちろん、結婚したくはないんだよね?」

 

「それは……はい。お父様に協力したい気持ちもありますが……あの人はちょっと」

 

 

 

 そうこうしているとタクシーが春の自宅近くに近づき、春が停止位置を運転手に指示する。

 

 

 

「今日はありがとうございました。これでこのままタクシーで帰ってください」

 

 

 

 そう言って春はベレスに一万円札を差し出す。

 

 

 

「気を遣わなくていいのに。当たり前のことをしただけだよ」

 

「どうか受け取ってください。私にできることはこれぐらいしか……あの、本当に名前は教えて頂けませんか? ちゃんとしたお礼がしたいのですが……」

 

「……着いたよ。奥村さん」

 

 

 

 ベレスは先に降りて、春の手を取ってエスコートする。

春は再び顔を赤くしながら、(……そういえば私、まだ名乗ってないような)と疑問を浮かべる。

 

 

 

「奥村さん。家の問題に介入はできないけど、アドバイスぐらいはできるから。困ったことがあったら次からは相談してほしいな」

 

「えっ? あの、それって……」

 

 

 

 ベレスはぐいっと春に近づいていく。鼻先が触れそうな距離で二人が見つめ合う。

春の顔の紅潮は最高潮に達する。

 

 

 

「まだ分からない?」

 

「はわわ……えっと……ごめんなさい」

 

 

 

 ベレスは咳ばらいをして、声をもとに戻す。

 

 

 

「これでも? ウィッグとさらしも外そうかな」

 

「ウィッグに、さらし? って……あ――その青い眼。それにその声は……」

 

 

 

 春は後ずさってベレスを上から下まで観察する。

 

 

 

「えーっ!? 嘘っ、そんな、まさか……ベレス先生ですか!?」

 

 

 

 ベレスは頷いて、黒髪のウィッグを取り外すと鮮やかな緑髪が外気に触れる。

 

 

 

「うん。目立つ容姿だから、変装して接触させてもらった。トラブルになったら面倒だしね」

 

「それは分かりますけど……そんなぁ……初恋だったのに……

 

 

 

 ベレスが「何か言った?」と訊き返すと春はぶんぶんと首を振った。

 

 

 

「そういうわけだから、お金は受け取れないよ。それじゃあね」

 

「あ……はい。ありがとうございました、先生……」

 

 

 

 再びタクシーに乗り込むベレスを、春は呆然と見送る。

自分を助けてくれた人が女性、それもよく見知ったベレスだと分かっても尚――頬の紅潮は治まらない。

 

 

 

「はう……あんなの反則だよ……先生」

 

 

 

 婚約者と自分を引き剥がしたこと。お姫様抱っこされたこと。あと数センチ近づけばキスされそうなほど近くで見た整った顔。

 

 

 

「女同士って……アリなのかな?」

 

 

 

 春はぼそっと呟いて、頬を染めたまま自宅に戻る。

その夜はなかなか寝付けず、寝たら寝たでベレスの夢を見ることになった春だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、6月18日(土)。

この土日で真を仕上げて、カネシロパレス攻略に移行する。

 

 予定通り真と渋谷駅で待ち合わせする。ベレスが駅に着いたころには真が既に待っていた。

 

 

 

「待たせたかな」

 

「いえ、今来たところですよ。私達2人で行くんですか?」

 

「今日はシェズとかすみにも来てもらう。明日はシェズはバイトがあるらしいから、かすみだけ来る予定」

 

 

 

 もうすぐ来ると思う、と呟くベレスが何者かの視線を感じて振り向く。

 

 

 

「どうしました?」

 

「……気のせいかな。何でもないよ」

 

 

 

 数分待った後、シェズとかすみが遅れてやってきた。

 

 

 

「待たせたわね」

 

「すいません、遅くなりましたっ」

 

 

 

 二人の到着を確認して、ベレスはイセカイナビを起動しつつ場所を移動する。

その間もどこからか視線を感じたが、微かすぎて特定はできない。

敵意や害意は感じないので、ひとまず無視してメメントスへ向かう。

 

 

 

「ここがメメントス……」

 

「とりあえず最初は浅いところで戦闘指南。慣れてきたら実力の近いところで実戦経験を積もう」

 

「分かりました。それじゃ早速――」

 

 

 

 その時、背後から「なっ……にこれぇ……」という声が聞こえた。

振り返ると、口を両手で押さえた奥村春が立っていた。

 

 

 

「あらま、巻き込んじゃったみたいね」

 

「……奥村さん?」

 

「せ、先生……これは一体? 私、ベレス先生を駅で偶然見かけて近づいたら、ここに――」

 

()()? ()()()()()に?」

 

 

 

 今回、4人が待ち合わせた時間は早朝の朝6時だ。イセカイナビは人のいる場所で、誰かに見られていたりすると巻き込んでしまう。

それを回避するために比較的人の少ない早朝を選んだのだ。

 

 

 

「確かにおかしいですよね。特別な用事でもなければ、こんな時間に渋谷には来ないはず」

 

「そ、それは……というかその声、生徒会長さん? その格好は一体……!?」

 

「それは後で説明するわ。ねぇ奥村さん、なんでこんな時間に渋谷駅に? 店もまだ閉まってる時間帯よ。答えてくれる?」

 

「えっと……それは、そのぅ……」

 

 

 

 春がしどろもどろになっているところ、ふとかすみがベレスの鞄に目を向ける。

 

 

 

「あれ、先生のカバン何かついてますよ」

 

 

 

 かすみがベレスのカバンの側面についていた何かを取り上げる。それは小型のGPSのようなものだった。

 

 

 

「あ、それは――!」

 

 

 

 春が何かを言おうとして口を塞ぐ。全員の目が春に向かう。

 

 

 

「奥村さん、もしかして昨日これをつけたの? 怒らないから正直に答えて」

 

「……そうです。あの時、先生は変装していて名前も名乗らなかったから……もう会えないと思って」

 

「変装って……あんた何してんのよ」

 

「実は昨日――」

 

 

 

 ベレスが昨日あったことを話す。

 

 

 

「そんなことがあったのね……。だからといって、発信器をつけるなんてどうかと思うけど」

 

「うーん、確かにストーカーっぽいと言いますか……それ、いつも持ち歩いてるんですか?」

 

 

 

 かすみが訊くと春は大きく頭を振る。

 

 

 

「ち、違うの。本当は杉村さん……婚約者のほうにつけようと思ったんです。なるべく会いたくないので……」

 

「なるほどね。でも、使わずに終わって……それで先生に使った、と」

 

「う、うん……ごめんなさい、先生。どうしても会いたくて、GPSの反応を辿って渋谷駅で見ていたんです」

 

「月曜になったらいくらでも会えるのに……?」

 

 

 

 首を傾げるベレスに、シェズは溜め息を吐いて指摘する。

 

 

 

「あんた、乙女心が分かってないわねー。ピンチに颯爽と助けてくれた人よ? 一刻も早く会いたいと思うのは当たり前でしょ?」

 

「そうなんだ……?」

 

「あ……もしかして奥村先輩、ベレス先生のこと――」

 

 

 

 何かを察したかすみが言葉を言い切る前に、春が話を遮る。

 

 

 

「あ、あの……! そろそろ説明してくれませんか。ここはどこで、その服装は何なのか」

 

「そうだね……仕方ないかな。ここは――」

 

 

 

 ベレスは簡単に春にメメントスと認知世界について説明する。そして自分たちが怪盗団(の協力者)であることも。

 

 

 

「怪盗団……!? 先生や新島さんが!?」

 

「この場だと私だけよ。先生たちや芳澤さんは協力者」

 

「というか先生、全部話してしまってよかったんですか?」

 

「良くはない。でも誤魔化すのも限界があるし……それに真の実戦演習にも目標が欲しかったところだから、ちょうどいい」

 

 

 

 ベレスが春をちらと見て発した言葉に真は首を傾げる。

 

 

 

「目標……ですか?」

 

「うん。その婚約者――杉村だっけ? 今回の締めに改心するのはどうかな。思い付きだけど」

 

「杉村さんを改心……」

 

「もちろん、奥村さんの気が進まないならやらない。でもこのまま放っておいたら、いつか強硬手段に出るかもしれない」

 

「改心以外に、何か穏便に済ます方法があるならそのほうがいいです。どうですか、先輩」

 

 

 

 かすみの問いかけに春は考え込み……答えを出す。

 

 

 

「……お願いしたいです。私の力じゃ彼を止められない……父がこの結婚を強力に後押ししてますから。時間稼ぎは出来ても、いずれ結婚させられてしまう気がします」

 

「話を聞く限り……それこそ、親子の縁を切って逃げ出すぐらいのことをしないと無理そうね。でも、そこまではしたくない。でしょ?」

 

 

 

 真の問いに春は頷く。

 

 

 

「うん。お父様のことを憎んでるわけじゃないから……」

 

「それじゃ、正式な依頼というわけね。掲示板に依頼は――載せないほうがいいかしら。お父さんの目に止まったらまずいかも」

 

「それがいいと思う。決行は明日。怪盗団で全会一致をとらないといけないし」

 

 

 

 方針が決まったところで、それまで黙っていたシェズが口を挟む。

 

 

 

「それで、この子はどうするの? 流石に連れていけないわよね」

 

「そうだね。奥村さんは帰ってもらって――「嫌です!!」

 

 

 

 突然春が大声を出したことで空気が凍る。

 

 

 

「嫌って……奥村さん、戦えないでしょ? 悪いけど、足手まといは「じゃあ戦います」

 

「奥村先輩……戦うって武器もないのにどうやっ「斧なら使ったことあります。薪割りとかで」

 

「……だそうだけど。どうすんのよ、ベレス」

 

 

 

 シェズに問われたベレスは春に向き直って諭す。

 

 

 

「奥村さん。シャドウとの戦いは文字通り命懸けだ。生半可な気持ちで戦えば怪我じゃ済まない」

 

「……はい。無理を言ってるのは分かってます。それでも私、先生のそばにいたい。力になりたい」

 

 

 

 春は大きく深呼吸して、跳ね回る心臓を抑えつけて――口を開く。

 

 

 

「私、ベレス先生のことが好きです」

 

 

 

 春の告白に、シェズ、真、かすみの3人は驚いたり顔を紅潮させたりと反応を返す。

が、肝心のベレスは眉根を少し動かしただけで表情は変わらない。

 

 

 

「元から綺麗だなとか、素敵だなとは思ってました。優しくて、教え方も上手で……今まで出会った教師で一番好きな先生。

でも女性だし、恋愛対象じゃなかった……昨日までは。私、普通に男の子が好きだったのに――先生のせいですよ」

 

「……」

 

「この気持ちが報われなくてもいいんです。教師と生徒ですし……といっても、諦めるつもりはないですが。

でも、先生のことをもっと知りたい。先生が怪盗団に関わってるなら、私も怪盗団に入りたいです。ダメ……ですか?」

 

 

 

 ベレスはしっかりと春と向き合って、答えを返す。

 

 

 

「まずひとつ。奥村さんの気持ちに応えることはできない。ごめんね」

 

「……はい」

 

「そして、怪盗団に入るのも現段階では許可できない。たぶんリーダー……雨宮くんも同じことを言うと思う。

ペルソナが使えないとシャドウと戦っていくのは難しい。いくら斧や銃が使えてもね」

 

「――ですよね」

 

 

 

 春は俯き、目じりには涙を浮かべる。ベレスは「まだ話は終わってないよ」と言って言葉を続ける。

 

 

 

「ペルソナの覚醒――それが絶対条件だ。きっかけはどれも『理不尽な悪への反逆』だった。

杉村のシャドウと相対することで覚醒する可能性は否定できない……だから」

 

 

 

 春は顔をあげて、ベレスをじっと見上げる。

 

 

 

「同行は許可する。ただし、戦闘に参加はさせない。私の指示を守って、そばから離れないこと。

実際にシャドウとの戦いを見て、恐怖を感じたりやっていけないと思ったらすぐに帰ってもらう。

そのうえで、明日ペルソナが覚醒しなければ諦めること。それでいいなら、ついてきて」

 

「――はいっ。ついていきます、どこまでも!」

 

 

 

 春は涙を拭って、ベレスが差し出した手を取った。

 

 

 

「本当にどこまでもついていきそうで怖いわね……」

 

「すごい人ですね、奥村先輩……色んな意味で」

 

 

 

 

 

 

 

「来て、ヨハンナ――『マハフレイ』!!」

 

「いい感じです、先輩! はぁぁぁ!!」

 

 

 

 ようやく真の実戦演習が始まった。矢面に立つのは真とかすみ。ベレスは春を守りながら、魔法での支援に徹する。

今回モルガナは不在の為、シェズは閃影(短距離ワープ)と無間の瞬動を駆使していち早くダンジョン構造の把握に努める。

 

 

 

「戻ったわ。ここから東に次の入口」

 

「分かった。あと1回戦ったら次の階層に移動しよう」

 

 

 

 真たちとシャドウの戦いを春は食い入るように見つめている。時折、「わぁっ」とか、「痛そう……」と小声で呟きながら。

そして、シャドウの放つ魔法の流れ弾が飛んできた時には、これ幸いとばかりにベレスに抱き着いていた。

 

 

 

「はぁ……いい匂い

 

「奥村さん、離れて。動きにくい」

 

「あ、ごめんなさい。つい……」

 

 

 

 春は慌ててベレスの身体から離れるが、ベレスの体温を感じられないことに不満を覚える。

 

 

 

「手を繋いでもいいですか? ちょっと怖いので」

 

「怖いのなら帰ってもいいけど」

 

「ちょっとだけ、です。先生のそばなら全然怖くありません」

 

「そう……左手なら構わない」

 

 

 

 一瞬の躊躇もなく春はベレスと手を繋いだ。それもいわゆる恋人握りで。

 

 

 

「なんなの……何を見せられてるの」

 

 

 

 満面の笑みを浮かべる春を、真は複雑な表情で眺める。

その時、倒れていたシャドウが起き上がって真に襲いかかってきた。

 

 

 

「しまっ――」

 

「――『リザイア』」

 

 

 

 間一髪のところで、ベレスが魔法を放って事なきを得る。

 

 

 

「新島さん、戦いに集中して」

 

「……はい。すみません」

 

「奥村さんも戦闘中は静かに見守ってほしい」

 

「分かりました。ごめんね、新島さん」

 

「いえ、いいの……今のは私が悪い」

 

 

 

 真は頬を叩いて、再び臨戦態勢に戻る。

 

 

 

「あと1回、お願いします! 芳澤さんもまだいけるわね?」

 

「もちろんです! 行きましょう、先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

・『道化師(シェズ)』COOP RANK 3→4

 

 

 

 あの後、昼食休憩を挟みながら何回か戦闘を繰り返し、夕方に解散となった。

そして夜にLINEで春の婚約者の改心について全会一致を取った。

 

 雨宮はスマホをポケットに仕舞い、ルブランから外出しようとしたところで電話がかかってくる。

 

 

 

「……シェズさん? もしもし」

 

『蓮? 今どこにいるのよ。ルブラン?』

 

「ええ。何か用ですか」

 

『夜のバイト増やしたいのよね。何かない?』

 

「まだ増やすんですか。花屋に牛丼屋に……もう3つ目ですよね」

 

『あんたもそれぐらい掛け持ちしてるでしょうが。ねぇ、何かないの?』

 

 

 

 雨宮はしばらく黙り込むが、現状思いつくものはない。

 

 

 

「そう言われても……昼ならコンビニは紹介できますけど」

 

『昼はパレスやらメメントスのためになるべく空けといて、ってベレスに言われてんのよね。夜勤は募集してないの?』

 

「今は空いてないそうです。残念ながら」

 

『そう……今そっちに向かってるから、ちょっと考えといて』

 

 

 

 雨宮は踵を返して、ルブランのテーブル席に座り少し考える。

 

 

 

「……あぁ、そうか。俺は無理だけど、シェズさんなら出来るバイトが一つあったな」

 

 

 

 雨宮は立ち上がり、店の公衆電話からいつものように電話をかけ、面接希望者がいることを伝える。

担当者は「代理の者を向かわせるのでお待ちください」と言って電話は切られた。

 

 しばらくすると、シェズが店内に入ってきた。

 

 

 

「邪魔するわよ。蓮、何か思いついた?」

 

「はい。家事代行のバイトを紹介します。女性限定で、メイド服を着て夜に主に男性の部屋で掃除や洗濯といった家事をするバイトですね」

 

「それって……言っちゃ悪いけどデリヘルみたいなもんじゃないの?」

 

 

 

 シェズは呆れた様子で疑問を投げかける。

 

 

 

「一応そういった行為は禁止です。とは言え、密室で行われることで運営会社も関知できないので――ないとは言い切れないですが」

 

「でしょうね。まぁ私なら返り討ちにできるし、関係ないか。で、面接は?」

 

「もう連絡しておきました。あと30分ほどで来ると思います」

 

 

 

 しばらく世間話をしながら待っていると、店内にメイド服の女性が入ってきた。

 

 

 

「どうも~。べっきぃです」

 

「川上先生」

 

「その名前で呼ばないで。今日は採用担当の代理で来たわ。その人が?」

 

 

 

 シェズは立ち上がってぺこりと頭を下げて名を名乗る。

 

 

 

「シェズといいます。今日はよろしくお願いします」

 

「あら、礼儀正しい。外国人と聞いてましたけど、日本語もペラペラですね」

 

「他にも接客系のバイトをやってるので……」

 

「そうなんですね。私と違って若くて美人だし、すんなり採用されると思います」

 

 

 

 言いながら、川上は自分の言葉で落ち込んだのか深いため息を吐く。

 

 

 

「川上先生もまだまだ若くてお綺麗ですよ」

 

「お世辞をありがとう。シェズさん、会社からメイド服を預かってるの。着てみてくれる?」

 

「分かりました。トイレ借りるわよ、蓮」

 

「どうぞ」

 

 

 

 5分ほど経って、メイド服姿のシェズがトイレから出てきた。

 

 

 

「思ったより動きやすいですね。それで、どんなことをするんですか?」

 

「掃除、洗濯、料理の提供。基本的にはそれだけ。あとはお客様との世間話とか……」

 

「卑猥な行為を要求されたり、実際にされたら?」

 

「拒否して構いません。あと一応、ボイスレコーダーと防犯ブザー、催涙スプレーは会社から支給されるからうまく使ってください」

 

 

 

 川上は自分のメイド服からそれらの支給品をシェズに見せる。

 

 

 

「自衛するしかない、と。でも、そういうの支給するのはいい運営なんですね」

 

「そうですね。まぁ性風俗業と誤解されることも多いので……その辺りの対策は力を入れてるみたいです。

でも膝枕とか、寝かしつけとかその程度は我慢して受け入れろと言われてます」

 

「うーん、まぁそのぐらいなら」

 

「それと、お客様のことは基本的に『ご主人様』と呼ぶ。お客様のほうでご希望があればそっちが優先ね。

さて……それじゃたぶん採用だと思うので、実際の仕事の研修に入りましょうか。雨宮くん、いい?」

 

「はい」

 

 

 

 3人は揃って屋根裏に上がる。

 

 

 

「まず、基本的に掃除用具や料理道具は現場にあるものを使ってください。持ち込みは自由ですが、すべて自腹になります」

 

「なければ?」

 

「掃除の場合はタオルぐらいはあるでしょうから、水拭きで対応。あるいはお金をもらって粘着クリーナーを買ってくる、など。

料理の場合は可能な範囲で出来る料理を。どうしても無理ならお金をもらって出前を頼んでも構いません」

 

「なるほど……」

 

 

 

 川上は勤務時間、交通費など細かい条件などを実際の作業と共に説明していく。シェズはその内容をメモに取る。

 

 

 

「色々説明したけど、一番大事なのは愛想のいい接客。これに尽きます。リピート指名がないと稼げないので。

ちょっとあざといぐらいがちょうどいいかも。自分が一番かわいいと思う顔で――」

 

 

 

 川上、もといべっきぃは目をかっ開いて、おちょぼ口にして人差し指を頬に当てる。

 

 

 

「川上先生、それマジでキツいんでやめてくださいって言いましたよね」

 

「なんでよっ!? かわいいでしょうが」

 

「普通にしててください。ダウナーなところが川上先生の魅力なんですから」

 

「そ、そう……?」

 

 

 

 川上はほんのり耳を紅潮させて、普通の表情に戻る。

 

 

 

「仕事内容は理解できました。合否は、改めて会社から……ですかね」

 

「あ、はい。そうですね。電話番号だけ教えてもらえます? あとで担当にかけてもらうので。あとメイド服は一旦預かります」

 

「分かりました。今日はありがとうございました、川上さん」

 

「べっきぃです。今の私はべっきぃなんです……! それじゃ私は帰りますね」

 

 

 

 川上は階段を下りて、ルブランの出口に向かう。雨宮とシェズも見送りのために同行する。

川上は店を出る前に振り返って、雨宮に問いかける。

 

 

 

「ご主人様……私からシェズさんに乗り換えたりしませんよね?」

 

「しませんよ。そんな薄情なこと」

 

「私を指名するにしても、べっきぃさんの指名を減らすようなことはしないでしょうね。こいつはそういう奴よ」

 

「そうですね……金がいくらあっても足りないのでやりませんけど」

 

 

 

 川上はルブランを退店して、その場には雨宮とシェズが残される。

 

 

 

「ありがとね、蓮。決まったら指名してくれてもいいのよ?」

 

「しませんよ。ベレス先生なら借金してでも指名しますけど」

 

「誰も聞いてないっての……じゃ、帰るわね」

 

 

 

 そう言って、シェズは出入口の扉に手をかける。

 

 

 

「それと――心配ないと思いますけど、いろんな客がいると思うのでくれぐれも気をつけてくださいね」

 

「そうね。警戒はしておかないと」

 

 

 

 シェズは手をひらひらと振って、ルブランから出て行った。

 

 

 

【コープ『道化師』のランクが4に上がった。戦闘中シェズがサブにいる時、たまに「ヒートライザ」を使って支援してくれるようになった】

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、6月19日(日)。

引き続き、メメントスに集まる。今日はシェズがいない代わりにモルガナが参加し、車と戦力として活躍する。

朝は真の戦闘能力の引き上げを仕上げ、昼から婚約者(杉村)の改心を目指す。

 

 

 

「猫がしゃべって……(バス)に!?」

 

「猫じゃねーし! オマエが新入り候補のハルか。いいか? 素人なんだから無茶するなよ」

 

「はい、分かってます」

 

 

 

 春は頷いて、ベレスの手をしっかりと握り締める。ベレスが春を見れば、にっこりと笑って首を傾げる。

 

 

 

「……新島さん、運転お願い」

 

「あ、はい」

 

 

 

 真が運転席、かすみが助手席に、ベレスと春が後部座席に座りメメントスを進んでいく。

朝の訓練を終え、昼。何階層か通り抜けたあと、モルガナが鼻をひくつかせる。

 

 

 

「近いぜ……気を引き締めろよオマエら!」

 

 

 

 シャドウを躱しながら車を飛ばしていると行き止まりに黒い空間と出くわし、勢いのままそこに飛び込む。

空間の中心には黒い瘴気をまとった杉村の姿があった。

 

 

 

『なんだお前ら。この僕の空間に無断で入って来るな』

 

「私達は怪盗団よ。その歪んだ欲望を奪いに来た……大人しくしなさい」

 

『怪盗団、お前らが……? 女だらけだな。ツラも悪くない……ん?』

 

 

 

 杉村は怪盗団の中に春の姿を見つけると、つかつかと歩み寄る。

 

 

 

『春、なんでお前が怪盗団と一緒なんだ? まさか、この僕を改心するつもりか?』

 

「そ、そうです。あなたと結婚なんかしない……! あなたなんかに会社は渡さない!」

 

 

 

 春は啖呵を切りながら、後退りベレスの背中に隠れる。

 

 

 

「会社を?」

 

「詳しくは聞かされてないんですが――彼の祖父が政治家で、私との結婚で父が後継者として指名される。

その見返りに、空席になる社長の席に杉村さんが座る――そういう約束みたいです」

 

「何よそれ……奥村さんに相談もなしに、そんなことを勝手に?」

 

 

 

 真は杉村をキッと睨みつけるが、杉村はやれやれとばかりに溜め息を吐く。

 

 

 

「男のやることに踏み台()が口を出すなよ。お前らはただ()の後ろについて、俺を支え悦ばせるだけでいいんだ」

 

「「は?」」

 

 

 

 杉村の放言にシェズと真の声が被る。

 

 

 

「女の存在意義なんて、男に尽くすことしかないだろ。春、お前は()の道具として生きていけばいいんだ。余計なことを考えるな」

 

「よ、余計なこと……? 何を言ってるんですか、この人……」

 

 

 

 ドン引きするかすみと対照的に、ベレスは動じる様子はない。

 

 

 

「こういう手合いはよくいるよ。別に珍しくもない」

 

『ふん、僕をそこらの有象無象と一緒にするな。奥村さんも僕の能力は認めているんだ。僕がちょっとアドバイスしただけで株価が上がったこともある。

オクムラフーズは僕の手にかかれば世界有数の企業になるだろうね。会社の無能どもは使い潰して、僕の栄光のスパイスになってもらおう』

 

 

 

 そこから杉村は自分の有能エピソードを自慢げにべらべらと喋り続け、春に詰め寄る。

 

 

 

『春、お前に何ができるんだ? 才女でもない、社長令嬢という価値しかないお前が僕を拒んで、会社にどんな貢献が出来る? 出来ないよな。

お前の資産的価値は若さとその身体だけだ。それを捧げろよ……この有能な僕に! それがお前に出来る唯一の会社への貢献なんだよ!!』

 

 

 

 杉村は御高説を垂れ流して、春の腕を掴もうと手を伸ばす。

しかし、その手をベレスが振り払う。

 

 

 

「気安く奥村さんに触れるな」

 

「先生……」

 

 

 

 ベレスはいつの間にか隣に並んでいた春の手を取って、背中を押すように語りかける。

 

 

 

「奥村さん、言いたいことがあるなら吐き出したほうがいい。彼はシャドウで、本人じゃない。本心ではあるけど」

 

「……はい!」

 

 

 

 春は力強く一歩踏み出して、杉村の前に立つ。

 

 

 

「確かに、私は何の力もない平凡な女です。だから、会社のためになるならと政略結婚には納得してました。

でも、あなたはダメ。有能な自分以外は踏み台や道具としか思っていない……」

 

『その道具を効率よく使えるのが僕だ。道具は使われてこそ道具だろう?』

 

「違います。人は道具じゃない……劣ってようが優れてようが、人は人です。それが分からない人を社長になんかさせない……」

 

 

 

 春は怒りというよりは、可哀想な人を見るような表情で杉村を見ていた。その目を見て、杉村は激昂する。

 

 

 

『あくまでも僕を拒むのか。そうやって逃げるのか、自分に与えられた役割から。裏切るのか、父と会社を!!』

 

「いいえ、逃げでも裏切りでもありません。その逆……戦うんです。自分と父と、会社のために。

私は平凡だけど、下の下の男(クズ)に都合よく使われるような安い女じゃない――!」

 

『戦う? お前が? はははははっ!! なら……死ねよ』

 

 

 

 杉村がその本性を剥き出しにする。人としての形は崩れ、悪魔の――インキュバスの姿に変わる。

 

 

 

『でも殺したら流石にまずいからな……命乞いをさせてやるよ。最っ高に不様なのをな!!』

 

「もう誰の言いなりにもならない――私の役割は私が決める。神様にだって、私の自由は奪わせない!」

 

 

 

 決意を新たにした春の頭の中で声が聞こえてきた。

 

 

 


 

 

ようやく覚悟を決めたようね? 宿命の家のお姫様。

 

そう、自由は求めるものじゃない。自らの手で掴むモノ。

 

そして、それには代償がつきもの。背負う覚悟はできたかしら?

 

……我は汝、汝は我……

 

美しい裏切りで、自由の門出を飾りましょう。

 

 


 

 

 

 春に芽生えた反逆の心に呼応して服装が銃士風の怪盗服に変わり、黒のドミノマスクのような仮面が顔を覆う。

家に縛られていたかつての自分と決別するべく、仮面を剥ぎ取る。

 

 

 

「行こう、共に。――来て、『ミラディ』!」

 

 

 

 中世の貴婦人を思わせる豪著なドレスを着た、首のない虚空に目の仮面を構える女銃士のペルソナが春の背後に顕現する。

春はインキュバス(シャドウ杉村)に向けてパチンと指を鳴らす。

 

 

 

「――『サイ』!!」

 

 

 

 念動のエネルギーがインキュバス(シャドウ杉村)に刺さり、僅かの間怯む。

春は振り返って、ベレスに向かって叫ぶ。

 

 

 

「先生、私戦えるようになりました!」

 

「うん。でもまだ戦える身体になっただけだ。無理はしないで」

 

「はい!!」

 

 

 

 ベレスは春に精巧な斧のレプリカを渡す。認知によって本物の斧へと変化したそれを、春は両手で握る。

 

 

 

「杉村さん。あなたのその歪んだ欲望は、この美少女怪盗――」

 

 

 

 独特なポーズをキメる春だったが、共に戦わんとする仲間の姿を見て言い直す。

 

 

 

「もとい、私達美少女怪盗団が頂戴します!

 

「は!?」

 

「え、もしかして私も勘定に入ってます?」

 

 

 

 春の奇行で一瞬、場の緊張が緩む。その一瞬を突かれ、インキュバス(シャドウ杉村)が真に近づく。

 

 

 

『そこの女、僕に傅け(『セクシーアイ』)

 

 

 

 真は一瞬抵抗を見せるが、あえなく洗脳されて拳をかすみへと向ける。

 

 

 

「新島先輩!? うわっ!!」

 

 

 

 かすみは持ち前の柔軟な身のこなしで躱すが、攻撃に転じられない。

 

 

 

「奥村さん、戦闘中にふざけるのは……」

 

「ご、ごめんなさい。でも、私なら何とかできます!」

 

 

 

 春は再びペルソナ『ミラディ』を呼び出す。

 

 

 

「――『エナジードロップ』っ」

 

「はっ!? 今何を……」

 

 

 

 インキュバス(シャドウ杉村)は真を治療してみせた春を見て苦い顔をするが、すぐに頭を切り替える。

 

 

 

『無駄な抵抗だな……()()()()()()()は、洗脳にはあらがえない。次はお前だ、春――』

 

 

 

 インキュバス(シャドウ杉村)は春に向けて『セクシーアイ』を放つ。

 

 

 

「私はあなたの言いなりにはならない、と言ったはずよ。そんなの効きません」

 

 

 

 言いながら、春は念の為目を伏せる。予想通り、目を合わせなければ洗脳されないようだ。

 

 

 

「皆、下を向くか目を閉じて戦って。先生、シェズさん! 指示をお願いできますか?」

 

 

 

 格下という言葉から、恐らくベレスやシェズには効きが弱いのだと春は推察した。

 

 

 

「分かった」

 

「任せなさい」

 

 

 

 春、真、かすみは目を閉じ、3手に散開してインキュバス(シャドウ杉村)に迫る。

 

 

 

『馬鹿が……目を閉じて戦うなんて芸当、出来るわけねぇだろ!!』

 

 

 

 インキュバス(シャドウ杉村)雷撃(ジオンガ)を放つ。狙いはやはり春。

 

 

 

「春、大きく左に避けて」

 

「!! はいっ!」

 

 

 

 春は名前呼びにぱっと表情を緩めながら、言われた通りに動く。わずかに掠り態勢を崩すが直撃は回避する。

すぐに態勢を立て直し、再びインキュバス(シャドウ杉村)に向かっていく。

 

 

 

『はぁっ!? くそが、ならまとめて――『バッドビート』!!』

 

 

 

 三つ又に別れた衝撃波が春、真、かすみそれぞれを襲う。が、その攻撃もベレスとシェズの早い指示で回避ないし軽減される。

 

 

 

『何で……目を閉じた状態でそこまで動ける!? 恐怖とかあるだろ普通は!!』

 

「私達は先生とシェズさんに全幅の信頼を置いているから。自分以外は信用しないあなたとは違う。だけど――」

 

 

 

 春は意を決して目を開く。

 

 

 

「私だけはあなたを見てあげます。人を正そうとする者がその人と向き合わないのは、違うと思うから」

 

『馬鹿が……!! お前を堕として、それで俺は勝つ!! 改心(洗脳)されるのはお前らだ!!』

 

 

 

 春はまっすぐインキュバス(シャドウ杉村)を見据えながら、仮面に手をかける。

 

 

 

俺の奴隷になれ、春(『セクシーアイ』)!!』

 

「あなたなんかに堕ちないっ! 私は、私のまま生きる――『ミラディ』!!」

 

 

 

 インキュバス(シャドウ杉村)の『セクシーアイ』が直撃するが、春に芽生えた反逆心がそれを跳ね除ける。

そしてその反逆心の象徴と言える『ミラディ』が、豪著なスカートから銃火器を取り出してスキルを発動する。

 

 

 

「――『ダブルシュート』!!」

 

 

 

 2発の銃弾が続けざまに急所に命中(クリティカル)して、堪らずインキュバス(シャドウ杉村)は膝をついてダウンする。

真とかすみがインキュバス(シャドウ杉村)に銃口を向けて追い詰める。

 

 

 

――HOLD UP!――

 

 

 

「覚悟はいいかしら? 不遜なシャドウとはお別れしなきゃ、ね」

 

『ま、待て春……俺が何をした? 婚約も契約も俺の意志じゃない。お前に乱暴したわけでもない。俺を改心しても何の解決にもならないだろ!?』

 

「そうかもしれない……だからこそ、これは決別のために必要なことなの。あなたを変えて、私も変わる。流されるだけじゃなく、抗える私に。そのための儀式として――」

 

 

 

 春は斧を持ち上げ、上段に構えてインキュバス(シャドウ杉村)を見下ろす。

 

 

 

「生まれ変わってもらいます――杉村大志さん」

 

 

 

 春は真とかすみ、そしてベレスに目配せをして、インキュバス(シャドウ杉村)へ総攻撃を仕掛ける。

 

 

 

「や、やめ――「やぁぁぁっ!!」

 

               ……ぐぇ「まだまだぁっ!!」

 

        がはっ「最後は任せるよ」

 

 

 

 

 

 大きく飛び上がった春が、両手で持った斧を思い切り振り下ろす。

 

 

 

 

「――Adieu(アデュー)

 

 

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 

 シャドウ杉村は人の形を取り戻し、オタカラを吐き出して現実の杉村へと戻っていった。

春は振り返って、ベレスの両手を掴んでぶんぶんと振り回す。

 

 

 

「先生! 私、怪盗団に入っていいですよね?」

 

「うん。その資格はある。けど私の一存では決められないから、月曜に改めて集まろうか」

 

「ふぅ……そうですね。作戦のことを考えても、戦力が増えるのは有難いわ」

 

 

 

 春は、ベレスは両手を握りながら、突然荒い息を吐いて膝をつく。

 

 

 

「……覚醒による疲労だね。今日は帰って休もう。奥村さんの戦闘訓練はまた今度にする」

 

「その時は……二人きりでお願いします!」

 

「……元気じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、6月20日(月)。

ベレスは春を連れて、再び生徒会室で雨宮と真と作戦を詰めるために集まっていた。

 

 

 

「――というわけで、奥村さんも怪盗団に入りたいそうだ」

 

「戦力が欲しいとは思ってましたが、昨日の今日で……流石先生ですね」

 

「私の手柄じゃないよ」

 

「奥村春です。あなたが怪盗団のリーダーさん?」

 

 

 

 春がぺこりと頭を下げ、雨宮と向き合う。

 

 

 

「2年の雨宮蓮です。加入の意志は承りました。この後集まるので、正式にはそのあとで」

 

「分かりました」

 

「集まる場所ですけど、先生。屋上も雨宮くんの屋根裏も、渋谷の連絡通路もこの人数だと目立つと思いませんか?」

 

「……そうだね。奥村さんを入れるともう10人になる。どこかアテが?」

 

 

 

 ベレスが訊き返すと、真は頷いて答える。

 

 

 

「シンプルにメメントスでどうでしょうか。改札口(コンコース)なら安全に話もできると思います」

 

「なるほど……そうしようか」

 

「惣治郎さんを取り込めればルブランをアジトに出来るんですが……今は難しいですね」

 

 

 

 雨宮も了承し、アジトに関しては改めてメンバーにも了承を得ることにして、話は作戦会議に切り替わる。

 

 

 

「それで、作戦ですけど……奥村さんが加入すれば凡その問題はなくなりますね」

 

「うん。あとは細かいところを詰めていこう」

 

「なら、クロードさんも呼んでください」

 

 

 

 ベレスは頷いてクロードを呼び、詰めの作戦会議をはじめる。

所在なさげに立っている春が、おずおずと4人へ声をかける。

 

 

 

「私、出てたほうがいいですか?」

 

「居てもいいわよ、別に」

 

「本当? じゃあ……」

 

 

 

 春はベレスの隣に腰掛けて、椅子をベレスにぐっと近づけて寄りかかる。

 

 

 

「……近くないですか、奥村先輩」

 

「先輩はやめて。怪盗団じゃ新入りなんだし」

 

「そうではなく、先生にくっつきすぎだと言ってるんですが」

 

「そうかな? 別に普通ですよね、先生?」

 

 

 

 春はベレスを上目遣いで見上げて確認する。

 

 

 

「――少し暑いから、離れてくれるかな」

 

「はい、分かりました!」

 

 

 

 春はベレスの言われるがまま、椅子を少し離す。

 

 

 

「……先生。なんなんですか、彼女は」

 

「一言でいえば――キミの同類……かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生っ!!」

 

 

 

 ベレスが業務と雑事を終わらせ、渋谷駅へ向かおうと学校を出ようとした時に春に声をかけられる。

 

 

 

「一緒に行っていいですか?」

 

「構わないよ」

 

「手、繋ぎたいです。ダメですか……?」

 

「それぐらいなら……」

 

 

 

 ベレスが差し出した手を、春はしっかり感触と体温を確かめるように握る。

 

 

 

「先生のこと、もっと知りたいです。異世界のこと、こっちに来てからのこと。道すがら、聞かせてくれませんか?」

 

「面白い話じゃないけど……それでもいいなら」

 

 

 

 ベレスは春と歩きながら、傭兵時代から士官学校の教師をしていた頃の思い出を語って聞かせる。

そうしているうちに渋谷駅に着き、一足先にメメントスで待とうと話をしていると駅前に一台の車が止まる。

 

 

 

「あの車は――」

 

「杉村さんのですね……改心したんですよね?」

 

「うん。一度くらいは話をしたほうがいいんじゃないかな。どうしても嫌なら、逃げてもいいとも思うけど」

 

「いいえ、もう逃げません。ちょっと行ってきますね、先生」

 

 

 

 春はぺこりと頭を下げて、トコトコと杉村の車のほうへ向かっていく。

杉村も春に気付いたのか、車から降りて春を出迎える。

 

 

 

「……杉村さん」

 

「春……いや、奥村春さん。改めて君の意志を確認したい。僕と結婚するつもりがあるのかどうか」

 

 

 

 春は黙って頭を下げて、口を開いた。

 

 

 

「ごめんなさい。結婚したくありません。私は奥村の娘ですけど、父の道具じゃなくて意志のある人間です。

父に何かあれば会社を継ぐ立場にあります。よく知らない人に会社を託すことはできません」

 

「そう、か……。分かったよ。君との婚約を解消しよう……ただし、今すぐにというわけにはいかない。理由は分かるね?」

 

「はい。あなたの祖父と私の父が無理矢理結婚させようとするかもしれませんから。特に父は、絶対に認めないでしょう」

 

 

 

 杉村は頷いて、悔いるように俯いてぽつぽつと語る。

 

 

 

「僕はクズだった。人を見下して、女性を奴隷のように扱って……。でも、これからはまともになれるように思う。濁っていた心が、少しは綺麗になった気がする」

 

「……改心されたんですね」

 

「そうなるかな……。そんな今の僕とでも結婚するつもりはない、と考えていいんだね?」

 

「はい。今の杉村さんなら、以前の私ならきっと結婚を承諾していたと思います。でも、今は――」

 

 

 

 春が背後をチラッと見ると、ベレスが首を傾げる。

 

 

 

「私――好きな人がいるので!」

 

 

 

 春は満面の笑みを浮かべて杉村を振った。




杉村の下の名前の捏造とか存在しないスキルがあったり
後半の戦闘でモナの存在を忘れてたりもしますが大目に見てください。

春が本編でこれぐらいの時期に参戦してくれたら……という思いで書きました。
SやTでは最初から参戦してるので春が好きな人は絶対にプレイしてください。
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