秀尽学園の非常勤講師、ベレス   作:女主人公スキー

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5.炎の女帝

「――『サンドリヨン』!!」

 

 

 

 

「――『キャプテンキッド』ォ!!」

 

 

 

 

「――『エーデルガルト』」

 

 

 

 

 ――戦況は一変した。

まず、かすみに振り下ろされた剣は、かすみのペルソナ『サンドリヨン』がギリギリで受け止めた。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 シェズの目が驚愕に見開かれる。

が、呑気していられる状況ではない。新手が迫っている。

 

 ベレスの手の紋章が別の形(セイロス)に変わったかと思えば、

そこから白い髪に紫の瞳、赤い豪著な装束を身にまとう少女がベレスの傍らに現れた。

 

 

 

「かすみを助けて」

 

 

 

 短くベレスが彼女――エーデルガルトへ願いを告げる。

 

 

 

『任せて、(せんせい)

 

 

 

 エーデルガルトもそう短く応え、シェズのほうへ駆けていく。

シェズは展開の激変に動揺しつつも、ベレスから脚を離して再び戦闘態勢をとろうとする。

 

 

 

「逃がしません――『コウハ』」

 

「うぐ!?」

 

 

 

 かすみの放った破魔属性魔法(コウハ)はシェズの弱点だったようで、態勢が崩れる。

その隙をエーデルガルトが逃すはずもなく。

 

 

 

『失せなさい、下郎』

 

 

 

 エーデルガルトは巨大な銀の斧を思い切り横薙ぎに振る。

 

 

 

「ちっ……!!」

 

 

 

 崩れた態勢からでは躱しきれず、シェズは両腕を前に出し致命傷だけは避けた。

 

 

 

『なかなかセンスがあるわね、貴女。弱点も突けるなんて、運も良い』

 

 

 

 エーデルガルトはかすみへ振り返ると、そう言ってウインクをしてみせた。

 

 

 

「えっ、あ、はい! ありがとうございます!」

 

 

 

 かすみは見知らぬ少女にぺこりと頭を下げる。

この城の本当の城主はこの少女なのではないかと思うほど、高貴な雰囲気がある。

 

 

 

『……貴女、何か失礼なこと考えてない?』

 

「い、いえ。そんなことは、全然っ」

 

『そう? それにしても悪趣味な城ね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、竜司もまたペルソナを覚醒させる。

 

 

 

「どきやがれッ――『ジオ』!!」

 

 

 

 竜司のペルソナ『キャプテンキッド』が放つ電撃魔法(ジオ)シャドウ(バイコーン)へ炸裂する。

弱点を見事に尽き、敵に動揺が走る。

 

 

 

「先輩っ、猫さん!」

 

 

 

 かすみが、シェズとエーデルガルトの戦いの最中に銃をこちらに投げて寄越す。

モルガナは目の前に転がった銃を見て、痛みをこらえながら立ち上がる。

 

 

 

「ワガハイはっ、猫じゃねええええ!!」

 

 

 

 そう叫びながら、スタンガンをでぶっ放す。

 

 

 

「オマエも根性見せろ、切り抜けるぞ!」

 

「言われなくとも……!」

 

 

 

 肩で息をしながらも、雨宮も立ち上がる。

 

 

 

「やるじゃねぇかモルガナ。これで――形勢逆転だ! 『ジオ』!!」

 

 

 

 

≪HOLD UP!≫

 

 

 

 

「ま、待て。分かった、この場は退こう。だから――」

 

「逃がすかよ。いいなお前ら、総攻撃だ。んで――鴨志田をぶっ飛ばす!!」

 

 

 

 

「「「総攻撃タイムだ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

『それにしても悪趣味な城ね……』

 

 

 

 そう言いながら、エーデルガルトは周りをきょろきょろと見回す。

それを隙と見て、シェズはエーデルガルトへ襲い掛かる。

 

 

 

「その首、もらった!」

 

「あぶないっ」

 

 

 

 かすみが叫ぶが、エーデルガルトは防御の構えすら見せない。

エーデルガルトの首を、シェズの剣が捉えるが――斬った感触はなく()()()()()

 

 

 

『残念、私に実体はないわ。物質として存在するのは武器だけ』

 

「何それっ!?」

 

『そんなことより、自分の心配をしたほうがいいわね』

 

「何を――はっ!?」

 

 

 

 背後から、傷の癒えたベレスが猛然と迫る。

 

 

 

「くっ……!」

 

 

 

 ギリギリで剣を弾き、その勢いを利用して大きく3人と距離を取る。

 

 

 

「3対1は流石に……」

 

「退いてくれるなら見逃すよ。私は別にあなたに恨みはないし。

でも、かすみを殺そうとしたし……退かないなら容赦はしない」

 

「チッ――ここは退くわ。また会いましょう、灰色の……いえ、ベレス」

 

「やっと名前で呼んでくれたね。嬉しいよ」

 

「うるさい。なんか調子狂うわねあんた……じゃあね」

 

「またね。出来れば会いたくないけど」

 

 

 

 ベレスは小さく手を振る。その姿を忌々し気に睨むと、シェズは踵を返す。

 

 

 

「『無間の瞬動(ワープ)』」

 

 

 

 そう呟くとシェズは光と共にどこかへと消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 危機を脱したベレスはほっと一息ついた。

 

 

 

(せんせい)、敵はまだ残っていてよ』

 

「うん、分かってる」

 

 

 

 雨宮たちのほうを見れば、敵はすべて片付いていた。

残っているのは、パレスの主――カモシダだけだ。

 

 

 

「使えん兵共め……それにあの女、勝手に退きやがって……!」

 

「よぉ鴨志田……さっきは好き勝手言ってくれたな。是非お礼がしてぇんだが、いいか?」

 

「クズが……!! ここは退かせてもらう、ぞッ!」

 

 

 

 カモシダはジャンプ一回で中央階段を昇り切ってしまう。

 

 

 

「待ちやがれっ――うぐっ!?」

 

「坂本くん!」

 

 

 

 ベレスが膝をついてうずくまる竜司に駆け寄る。

 

 

 

「くそ、頭がいてぇ……なんか身体もだりぃし、何で……」

 

「無理もねぇ。覚醒直後にあんな大立ち回りしたんじゃな」

 

 

 

 気が付くと、カモシダの姿は消えていた。

 

 

 

「かすみは大丈夫?」

 

「私もちょっと、だるい感じが……」

 

「そう。モルガナ、脱出しよう。もう兵士の目もないし、今のうちだ」

 

「そうだな……お前ら、ついてこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 城の外――

 

 

 

「雨宮くん、モルガナ。とりあえず傷を治すよ……『ライブ』」

 

「ありがとうございます……ベレス先生は大丈夫ですか?」

 

「問題ないよ。それにしても、危ないところだった……」

 

 

 

 ベレスは改めて全員無事に脱出できたことに安堵し、ほっと息を吐く。

そして、かすみに向き直り少しムッとした顔で詰問する。

 

 

 

「かすみ……どうして来たの。大人しくしてって言ったのに」

 

「す、すみません。どうしても気になっちゃって……だって、学校がお城ですよ?」

 

「気持ちはわかるけど……はぁ、もういいよ。かすみのおかげで助かったところもあるし」

 

 

 

 ベレスはそう言って、かすみのおでこを指でピンッと弾く。

 

 

 

「痛いです、先生……」

 

「とりあえず反省はして。危うく死ぬところだったんだから……」

 

「はい……」

 

 

 

 かすみはしゅんとして肩を落とす。

 

 

 

「ところでよ、先生……こちらの人はどなた?」

 

 

 

 竜司がエーデルガルトを指差してベレスに問う。

 

 

 

『人を指差すなんて、失礼よ? 教育がなってないわね、(せんせい)

 

「キミと違って担任教師じゃないから……これから指導するよ」

 

『あらそう』

 

「この子はエーデルガルト。私のいた世界での教え子で、()()()()だよ」

 

「「「「皇帝陛下!?」」」」

 

 

 

 3人と1匹の声が見事に重なる。

 

 

 

「道理で高貴な雰囲気があると……!」

 

『そう見えたのなら幸いね。まだ皇帝になったばかりだし、まず世界も違うわ。

そんなにかしこまらなくっても大丈夫よ』

 

「あの……彼女はペルソナなんですか? どうも違うように見えるんですが」

 

 

 

 雨宮がエーデルガルトを見て疑問を呈する。

 

 

 

『それは違う、と断言するわ。だって、()()()()()()()()し』

 

「ですよね。私のペルソナは『我は汝、汝は我』って言ってました。

よく分からないですけど、要するにもう1人の自分、みたいなことですよね、これ?」

 

「そうだぜ。詳しい説明は後でベレスに聞いてくれ。パレスについてもな」

 

「はい。お願いしますね、ベレス先生」

 

「はいはい……。ねぇ、エーデルガルト」

 

 

 

 ベレスがエーデルガルドへ向き直って質問する。

 

 

 

『何かしら?』

 

「キミは無制限に呼び出せるのかな? それとも……」

 

『無制限は無理ね。さっきも言ったけど、私に実体はないの。

物質として存在してるのは武器だけ。だから武器が壊れたらもう呼び出せないと思う」

 

「なるほど……他の生徒も呼べるの?」

 

『私みたいに紋章があって、あなたを強く慕っている生徒(支援A)なら呼べると思うわ。

そうね……『リンハルト』や『ベルナデッタ』あたりかしら。

『フェルディナント』はまだそこまで仲良しじゃなかったようだし、たぶんダメ。

 

紋章を媒介に呼び出しているみたいだし、紋章のない『カスパル』や『ドロテア』、『ペトラ』は残念だけど無理ね。

あと『ヒューベルト』も……もっとも、彼は紋章があっても来ないでしょうけど」

 

「ふふ、確かに。分かった……ありがとう、エーデルガルト。また呼んだら来てくれる?」

 

『もちろん。それじゃ、また会いましょう。(せんせい)

 

 

 

 そう言ってエーデルガルトはフッと消え、ベレスの紋章も元に戻った。

 

 

 

「さて……帰ろうか。坂本、部員の顔はちゃんと覚えてる?」

 

「当然。とりあえず今日は解散して、明日聞き込みだな」

 

「じゃあ、解散!」

 

 

 

 各々、校門を潜って現実世界へ戻っていく。

その姿をベレスとモルガナがじっと眺める。

 

 

 

「モルガナはどうするの?」

 

「ワガハイか? そうだな、特に決まってないが……」

 

「家に来る?」

 

「えっ? い、いやそれは……」

 

 

 

 口ごもるモルガナをベレスは黙って抱きかかえる。

 

 

 

「じゃあ、決まりだね」

 

「なっ、ワガハイは何も……あっ、柔らかい感触がっ」

 

「~♪」

 

 

 

 ベレスは鼻歌を歌いながら、モルガナを連れて現実世界へ戻っていった。

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