秀尽学園の非常勤講師、ベレス   作:女主人公スキー

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6.女子生徒に忍び寄る魔手

 ――4月14日、放課後。

放課後暇な雨宮と坂本で、2日かけて聞き込みと調査を行った。

 

 そして今、屋上でベレス、雨宮、坂本、そして猫の姿のモルガナが集まっていた。

かすみは部活動があり欠席。あとで情報は共有する予定になっている。

 

 

 

「――それで、何か証言は得られた?」

 

「いや……口止めされてるのかあいつら口が堅え。

三島のやつにはかなり食い下がったんだがな……」

 

「バレー部に怪我や痣が多いのは確かでした。でも、これだけじゃダメなんですよね?」

 

「それだけなら練習と言い張れるからね……」

 

「三島は『校長や親も知ってて黙認してる』と言ってました。

だから証拠を掴んでも握り潰されて終わりだと……」

 

「学校公認か……ますます『改心』以外、選択肢がなくなってきたね……」

 

「なぁ、もうやっちまっていいんじゃねぇの?

体罰の証拠がなくたって、陸上部潰したのは確かなんだしよ……」

 

「一理あるけど、廃人化のことも考えると……」

 

 

 

 確証が得られない状態で決行することにベレスは難色を示す。

 

 

 

「なぁ、鴨志田にはもう一個噂があるんだけど、そっち方面から攻めてみるってのは?」

 

「噂?」

 

「ああ。高巻と鈴井。この2人に手ぇ出してるって……そういう噂」

 

「……初耳だな。手を出してるってどこまでやってるの?」

 

「そこまでは知らねー。でも、高巻を車で送迎したりしてるのは確かだぜ。なぁ、蓮?」

 

「ああ。この前見た」

 

「俺らが聞きまわってる時に探り入れてきたしよー、何かありそうな気がする」

 

「三島を詰めてる時、タイミングよく鴨志田が来たけど……あれも高巻と鴨志田が繋がってたからかも」

 

「おー、確かにな……。まぁ普通に部員がチクっただけかもだが……どうよ、先生」

 

 

 

 ベレスは少し考えて、口を開いた。

 

 

「男子バレー部の結束は固い、良くも悪くも。ここを崩すのは難しいし、鴨志田先生を刺激しかねない。

女子生徒のほうがもしかしたら取り入ることができるかもしれない。

キミ達男子生徒には話しづらいことでも、私なら……」

 

「なるほど……じゃあ、お任せしていいですか」

 

「うん。キミ達にはこの2日頑張ってもらったしね」

 

「じゃ、今日は解散で……ってことで一言いいスか」

 

「うん?」

 

 

 

 屋上から出ようとしたところで、竜司から声をかけられる。

 

 

 

「モルガナぁ!!」

 

「……なんだよ金髪ヤンキー」

 

「先生から離れろ」

 

「ワガハイは……猫だ。少なくとも今は……だから、断る!!」

 

 

 

 モルガナは3人が話している間、ずっとベレスの腕に抱かれ、胸の感触を頭と背中で味わっていた。

 

 

 

「こいつ……遂に猫であることを認めやがった!?」

 

「堕ちたな……色欲に」

 

「何とでも言え……! ワガハイはベレスの家猫になる。ベレスもそれを望んでる!」

 

「ふざけんなテメー! 俺だって、俺だってなぁ……!」

 

「俺だって……何?」

 

 

 

 ベレスが首を傾げる。

 

 

 

「と――とにかく、先生。モルガナは手放してくれ。そのままじゃ腑抜けになっちまうぞ、こいつ」

 

「えー……やだ」

 

 

 

 ベレスはモルガナを持ち上げると、背中に顔を押し付けて匂いを吸う。

 

 

 

「んにゃぁ~」

 

「変な声出すな! 気持ちわりーんだよ!!」

 

「先生。モルガナは俺が預かります。渡してくれませんか?」

 

「雨宮くん……。確かに、私だとモルガナを甘やかしてしまうか……。分かったよ」

 

 

 

 ベレスは激しく躊躇しながら、腕を伸ばしてモルガナを雨宮へ差し出す。

 

 

 

「先生……手を離してください」

 

「うぅ……」

 

「どんだけ好きなんだよ、猫……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活指導を終えた帰り道。

ベレスは鴨志田に言い寄られているという『高巻 杏』を探して渋谷駅をうろついていた。

 

 

 

「いい加減にしてもらえません!? 本当に体調が……」

 

 

 

 駅前広場で甲高い声がしたので振り返ると、そこに彼女――杏はいた。

 

 

 

「ちょっ……先生それは! 志帆のこととは、話別じゃないですかっ!」

 

 

 

 『先生』と通話していたらしい杏だが、そこで通話が切られたのか、膝を抱える。

 

 

 

「志帆のスタメン……」

 

「穏やかじゃないね」

 

「っ!? ベレス先生……もしかして、今の」

 

 

 

 突然現れたベレスに驚き、口に手を当てる。

 

 

 

「聞いちゃった。というか、聞こえちゃった」

 

「な、何でもないんです。本当に、何でも……」

 

「そうは見えないけど……私で良かったら相談に乗るよ」

 

 

 

 ベレスは尚もうずくまる杏に手を差し伸べる。

 

 

 

「……ここじゃ、ちょっと」

 

「ん……喫茶店にでも行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

「――鴨志田先生に部屋に来いって言われたんです。

それで……来ないと志帆をスタメンから外すって」

 

「部屋に来いって……そういうことだよね」

 

「だと思います……いつものらりくらり躱してるんですけど、今日はしつこくて」

 

「まさかとは思うけど、行かないよね?」

 

「行くわけない! あんなヤツ、志帆のことがなければ近づくのも嫌!!」

 

「……だよね。安心した」

 

 

 

 ベレスは更に質問を続ける。

 

 

 

「ってことは、鈴井さんのことがあったから、鴨志田に近づいたってこと?」

 

「……はい。志帆は、実力的にスタメンに入れるかギリギリらしくて。

『外すかどうか迷ってるんだよな』って言われて……」

 

「やり口が下種い……鈴井さんからは何か聞いてる?

鴨志田先生に何かされた、とか」

 

「いえ、そういうのは何も……。でも、いつも痣だらけで。練習かなりきついみたいです」

 

「そう……鈴井さんからも話聞きたいけど、今連絡取れる?」

 

「いいですけど…………あれ? 出ない……」

 

 

 

 杏はずっと携帯でコールし続けているが、鈴井は出てくれないようだ。

 

 

 

「……まずいな」

 

「えっ?」

 

「ううん、何でもない。話聞かせてくれてありがとう。鴨志田先生のことは、私に任せて」

 

「あ……はい。何か、先生に話したらちょっとすっきりしました。ありがとうございました」

 

「もう遅いし、気をつけて帰ってね」

 

 

 

 そう言って、ベレスは喫茶店を後にしてある場所を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜19時、学校――秀尽学園高校にベレスは舞い戻っていた。

戸締りをする警備員がベレスに声をかける。

 

 

 

「おや、先生……忘れ物かな?」

 

「ええ、ちょっと……」

 

 

 

 職員室に入り、体育教官室のカギを手に取る。

警備員の目を避けて、体育教官室へ。

 

 

 

(まさか、とは思うけど……)

 

 

 

 電気を点けて、辺りを調べてみる。すると……

 

 

 

(……拭き取られてるけど、血の跡がいくつもある)

 

 

 

 もちろん、これだけでは体罰の証拠にはならないが、これは……。

 

 

 

(それに、この匂い――まさか、ここで?)

 

 

 

 何故か、()()()()()()()()()()。行為の痕跡を消すため――としか考えられない。

 

 

 

(鈴井さん……!)

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