ハリー・ポッターと魔法の筋肉 作:ボルシチ
ハリーは困惑していた。
「そうか!お前がポッターか!話はダンブルドアとマクゴナガルから聞いている。いいだろう!俺様がお前を鍛えてやる!」
友人であるハグリッドと遜色ないほど巨大な男が、全身の筋肉を膨張させながらそう言ってくる。まるで岩のような筋肉は、スーツの意味を成さないほどの大きさをしており、もはや張り付いているだけ。
「お前のおかれた状況は実に厳しい!だが!このトーナメントもレスリングと同じだ!最後までどうなるかわからん!これから俺様が生き残る術を教え込んでやろう!」
今ハリーが置かれている状況は確かに厳しい。だが、まさかこの強烈な男の教えを乞うことになるとは思いもしなかった。
「どうしたポッター!困惑しているな!」
「えっ、ああいや…」
「そうか、困惑しているな!無理もない、俺とお前は初対面だからな!ならばこれが一番だ!」
男は一つの瓶を取り出し、机に叩きつける。
「ウォッカを飲め!」
お前は一体何を言っているんだという言葉を飲み込んだ自分をハリーは褒めた。
「え、なんで⁈」
「ウォッカを飲めば大体のことは解決する!」
一体何を言っているのか、ハリーはまるで理解できなかった。
「い、いや!僕はまだ14歳だ!お酒を飲める年齢じゃないです!」
「なんと!そういえばそうだったな!ではこうしよう!」
男はジャケットを脱ぎ、後ろに放り投げる。その手には、杖。
「さあ!どこからでもかかってこい!」
「だからなんで⁈」
ハリーは思わず叫んだ。仮にも自身の指導を受けてくれた男にこういった態度を取るのは本来のハリーならやらないことだが、あまりにも理解が追いつかなかった。
「なんでと来たか。単純な話だ!不機嫌な時は決闘するといいからだ!」
「い、いや…僕は不機嫌なのではなく…」
「さあ来い!お前の全力を見せてみろ!」
「投 げ 飛 ば し て や る!」
もはや通り魔のようなことを言い始めている男、ザンギエフを目の前に、ハリーは何故このようになったのか思い出していた。
***
どうしてこうなってしまったのか。
炎のゴブレットに名前を入れた覚えはない。たくさんの上級生や他校の生徒が名前を入れるのをほんの少しだけ羨ましく思いながら見ていたが、それだけ。決して自分で名前を入れてない。それだけは胸を張って言える。
「ハリー、もう一度問う。ゴブレットに名前は入れたか?」
「入れてません先生!僕は入れてない!」
尊敬する校長、ダンブルドアに問いかけられて思わず食い気味に答えてしまう。それを見てダンブルドアは『わかっている』と言わんばかりに手でハリーを制する。
「わかっておる。少なくとも、儂の引いた『年齢線』を君は超えておらん。痕跡からわかる…が、君自身が他者に頼んで入れてもらうことは可能じゃ。それだと君の痕跡は残らんからの」
「…証拠は、ありません。でも、僕は…」
「うむ、信じておる。とはいえ…このトーナメントに選ばれた以上、棄権することはできぬ。それが魔法契約というものじゃ。そして、今回のトーナメントは非常に危険なものじゃ。今の君では、些か厳しいものがあるじゃろう」
かつて死人が出たほど危険なトーナメントであり、今回は17歳未満のエントリーを禁じた程だ。まだ14歳のハリーでは、まだ経験値があまりにも足りていない。防衛術関連では非常に優秀なハリーだが、それだけで切り抜けられるほど甘いものではないことはハリー自身も理解している。
「君は優秀じゃ。しかし、君の力でも切り抜けられる確率は、あまり高くないじゃろう」
「……」
「今回は不足の事態じゃ。そこで、儂のツテで君の指南役を連れてこようと思っておる」
「…誰、ですか?」
「異国の魔法使いじゃ。魔法使いとしてはかなり異色じゃがの。じゃが、彼ほど強靭な魔法使いを儂は他に知らぬ」
ダンブルドアは苦笑しながら言うが、その意味をハリーは知らない。
「彼は非常に優秀じゃ。彼の教えを受ければ、生き残り、勝ち抜く可能性は大きく上がるじゃろう。アラスターも知識を貸してくれるじゃろうから、彼らの力を借りてトーナメントを生き抜くのじゃ」
「…はい、先生」
「儂も審判員の立場じゃ。直接君に手助けはしてやれぬ。予期せずエントリーされて、周囲が大きく格上である以上、せめてもの手助けじゃ」
ダンブルドアとしても心苦しいのだろう。その瞳にはどことなく悲痛な光が宿っている。
話は終わりだとでも言うように、ダンブルドアは立ち上がる。そんなダンブルドアの背中にハリーは声をかけた。
「あの、先生」
「ん?」
「その、異国の魔法使いとは…どんな人なんですか?」
「おおそうじゃ。気になるじゃろう。彼はかつて留学生としてこのホグワーツにおっての。二年ほどここで学んでおったのじゃ。生命力に溢れておるが、実に勤勉な魔法使いじゃった」
生命力に溢れている、という部分がよくわからずハリーは首を傾げる。ヴォルデモートのように強力な魔法力を有しているのか、と勝手に納得してダンブルドアの話に意識を戻した。
「豪快に見え…いや、事実豪快なのじゃが…非常に繊細な魔力コントロールができての。加えて、頭脳明晰故に教えるのも上手い。きっと、君の助けになるじゃろう」
「…その方の名前は?」
「ザンギエフじゃ。ロシアの魔法使いじゃよ。ああ、言語は問題なく通じるから心配せんで良いぞ」
ザンギエフという名前以外、ほとんど情報はない。だがダンブルドアがここまで言うのだから、信用していいのだろうと考えた。
ただ、この時の判断が間違いだったのではないかと思うほど、強烈な男が来るのをこの時のハリーはまだ知らない。
***
「最初の課題はなんだ?」
結局あの後、一度投げ飛ばされてクッション魔法で無傷で済んだハリーの前に、ザンギエフは腰掛ける。先ほどとあまりにも態度が違いすぎて困惑してしまうが、考えるだけ無駄だと察したハリーも教室の空き椅子に腰掛けた。
「…ドラゴンです。一人一頭。ドラゴンから卵を奪うのが、課題になります」
「ドラゴンか。なるほど、いい課題だ。奴らは実に強い。生半可な魔法では時間稼ぎすらできんだろうな。俺も対峙した際は実に心躍る闘いだった。それでポッター、お前はどうドラゴンを相手する気だ?」
「杖は持ち込める。杖で箒を呼んで…それで」
「箒か、いい手だ!だがドラゴンの種類によっては、空が縄張りの奴もいる。奴らのリングで戦うということも、理解しているか?」
「それは、もちろんです。でも、今から有効な魔法を学ぼうとしても碌に役に立たないと思って。それに、課題まで時間もない。それなら、今の僕の武器…『飛ぶのが得意』ことを活かせと、ムーディ先生が」
「ふむ、さすがは元闇祓い。策については、申し分ないな!」
ハリーの飛行術はホグワーツ内でもトップレベル。さすがにビクトール・クラムに勝てるとまではハリーも思ってはいないものの、自信は持っている。魔法自体がほとんど効かない相手ならば、通じる手はこれしかないと思っていた。
ザンギエフも策としては申し分ないと言っている。ならば、ザンギエフは自分に何を教えるのだろうと疑問に思うと、ザンギエフは突如立ち上がった。
「ならば俺が教えることは、当初から変わらんな!」
「先生は、何を教えてくれるんですか?」
「魔力の使い方だ!」
再びハリーは首を傾げる。
「え……僕、魔法使えますけど」
「わかっていないようだな。では、実践してやろう。杖を抜けポッター!」
ザンギエフは立ち上がり、ハリーと向き合う。突然のことでうまく理解できなかったハリーだが、言われたように杖を抜く。ハリーと対峙したザンギエフも構えるが、その手に杖はない。
「さあ!どこからでもかかってこい!」
「で、でも…先生は杖を持って…」
「構うな!さあ、お前の全力を見せてみろ!」
ザンギエフは依然として杖をしまったまま。このまま魔法を放ってしまうと、ザンギエフは魔法を防ぐ術がない。
だが、手加減すれば大したことにはならないだろう。そう考えて、ハリーは杖をザンギエフに向ける。
「『エクスペリアームス-武器よ去れ』!」
「ふんっ!」
放たれた魔法の塊はザンギエフに一直線に向かっていくが、ザンギエフは魔法の塊を筋肉だけで弾く。その様を見てハリーの目が点になった。
「え?」
「どうした!この程度ではあるまい!俺が杖を持っていないから手加減したな⁈」
「えっ、ああいや…」
「構うな!全力を見せろ!」
筋肉を膨張させながらザンギエフは構えた。
ここまで言われてハリーも腹を括る。杖を再度ザンギエフに向けた。
「『ステューピファイ-麻痺せよ』!」
「ぬうん!」
失神の呪文は、またもや筋肉によって弾かれた。
今の魔法にはハリーの全力を込めた。全身全霊かと言われたら少しだけ手加減したかもしれないが、それでも全力と言えるレベルの力だ。まさか生身で受けて何も起こらないとは思いもしなかった。
「いい一撃だ!なかなかやるではないか!」
「せ、先生!なんともないんですか⁈」
「無論だ!」
「す、すごい…」
巨人やドラゴンなど、体格の大きい生物は得てして魔法は効きにくい。ドラゴンはそこに強靭な鱗もあるため、ほぼ効かないに等しいだろう。
ザンギエフの体格は確かに規格外に大きい。身長はハグリッドよりもやや低いものの、鍛えに鍛え抜いた筋肉はまるで岩山。威圧感という意味ではハグリッドを凌駕している。これほどの筋肉があれば、魔法も効きにくいのかもしれないが、このトーナメントで勝ち残るために筋肉を鍛えるのであれば、明らかに時間が足りない。
それに、先程ザンギエフは『魔力の使い方』と言った。きっと魔法の効きにくさもそれに関係していると考えたハリーは、ザンギエフに問いかけた。
「先生。魔力の使い方を教えるって…今の、その…魔法を弾いたものが、先生が僕に教えたいことですか?」
「その問いに答える前にポッター、一つ問う。魔法は、どういった要素が絡み合って発現するものだ?」
「えっと…魔力、杖、呪文ですか?」
「概ねその通りだ。だがお前も知っての通り、世界には無言呪文や杖なしで魔法を扱う魔法使いもいる。つまり、極端な話『魔法使いは魔力の扱いさえ長けていれば魔法を使える』のだ」
魔法は魔法使いの魔力によって引き起こされるものであり、呪文や杖は魔法を使いやすくするためだけのもの。つまり、極端な話『魔力』さえあれば魔法自体は使える。
「で…それが?」
「魔力というのは、人の肉体を活性化させる。つまり、魔力の使い方を覚えれば無言呪文や杖なし魔法の習得も早まる!そして今回のトーナメントでは魔法だけでなく、知恵と肉体も問われる!知恵はアラスター・ムーディが貸しているのなら、俺は肉体を鍛えてやる!」
「は、はあ…」
「魔力も筋肉と同じだ!ただ鍛えればいいのでない!使い方を覚えねば意味がない!『アクシオ-来い』!」
ザンギエフは杖を使わずに教室隅に置かれていた小さな黒板を呼び寄せ、続けてチョークも呼び寄せた。ザンギエフの体格が大きすぎるせいで黒板とチョークがやたら小さく見えるが、ザンギエフは気にすることなくチョークで何かを書き始める。
「いいかポッター!魔力というのは、魔法を使える者は必ず持つエネルギーだ!無論、魔力の強弱には個人差があるがな。だが、強弱に関わらず魔力の扱いというのは本人の技量が問われるものだ!魔力の扱いは鍛えれば誰でも上達する!センスの有無もあるが、それ以上に継続的な努力が必要だ!」
ザンギエフが見せたのは、人のシルエットと魔力の流れについてだった。魔法と魔力の関係性だけでなく、魔力が肉体に作用する要素が書かれており、いまいちよくわかっていなかったハリーにも即座に理解できるような書き方をされている。
「魔力は肉体を活性化させ、身体能力を向上させるだけでなく防御力も向上させる…先生がさっき僕の呪文を弾いたのはこれですか?」
「そうだ。常に俺たち魔法使いの体内に巡っている魔力を瞬間的に全身に纏わせ、肉体の魔法への抵抗力を爆発的に高めたのだ。さすがに『死の呪い』を防ぐことはできんだろうが、『服従の呪文』や『磔の呪い』の効力を著しく落とすことは可能だ。うまく鍛えれば、『許されざる呪文』にすらも抵抗できるようになる」
「すごい…で、でも…ここまでなるにはすごい時間が必要なんじゃ。最初の課題まで時間もありません。僕がここまでなれるとは…」
「察しがいいなポッター!最初の課題まで時間がないお前では、ここまでなることはほぼ不可能だ!だが、あることに絞ってやればちゃんとした武器となる!例え付け焼き刃だったとしても、手札を増やすことは必要だ!」
ザンギエフは再び黒板に文字を書き込む。チョークがもはや豆粒に見えるほどの剛腕で黒板をいじる姿は少々シュールで、ハリーは内心で少しだけ笑ってしまう。
「次の課題までに、お前は箒での魔力の流れを把握してこい!箒に乗る際の魔力がどう動き、流れているか。そして自分がどう魔力を流せばより速く飛べるか、細かい動きができるか考え、身につけろ!課題までの期間にクィディッチの練習があるだろう!その時はそのことに集中して飛ぶことだ!」
トーナメントがあるため、今年は寮対抗クィディッチはない。しかし、腕が鈍らないように練習だけは可能となっていた。その時に箒での魔力の流れを把握してこいとザンギエフは言った。
確かにそこまで意識したことはない。もしこれがわかったのなら、きっと次の課題で生き残れる可能性が高くなり、クィディッチ選手としても成長できる。そんな予感がハリーにはあった。
「はい、先生」
「よし!ではまず基礎を叩き込んでやる!」
ザンギエフは筋肉を膨張させながらサイドチェストの構えを取った。
「俺様の筋肉を見ろ!」
ダンブルドアでも間違うことがある。
もしかしたらこれがそうなのかもしれない。ハリーはそう思った。
***
「や、やった…」
岩に囲まれたフィールドでハリーは息を切らしながらも金の卵を手に入れた。ザンギエフの指導によって魔力の操作が大きく上達したハリーは、箒である『ファイアボルト』をさらに上手く操り、ドラゴンであるホーンテールですら翻弄するほどの飛行技術を見せつけた。元々素晴らしい飛行技術を持っていたハリーだが、箒に乗る時の魔力の流れを把握し、瞬間的に魔力を強く放出することで自由自在に箒を操った。
歓声に包まれる闘技場の中心で、ハリーは金の卵を掲げる。不正をして名前を入れたと思われていたハリーだったが、今この場では誰もがハリーの無事と試練通過を喜んでいた。
しかし、その空気を切り裂くような声が響く。
「しまった…!」
ハリーはドラゴンを倒していない。卓越した飛行技術でドラゴンを撒いただけ。本来箒の飛行でドラゴンを撒くなどそうそうできることではない。あの世界最高のシーカーと言われるビクトール・クラムですらそうできないだろう。だが、ハリーはホグワーツ周辺の環境をうまく利用し、ドラゴンの視界から巧みに抜け出して卵を確保した。そうそうできることではないが、ドラゴンそのものはほぼ無傷。つまり、出し抜かれたことに気づいて戻ってきたのだ。
「ドラゴンが戻ってくるぞアルバス」
「うむ、わかっておるアラスター。ハリーは無事に課題をクリアした。なら、あのドラゴンは…」
「俺がドラゴンを止めようダンブルドア」
観客席にいたダンブルドアの隣にいた大男、ザンギエフが立ち上がる。
次の瞬間、闘技場にドラゴンが戻ってきた。動こうとするハリーだが、慣れない魔力操作で既に体力が限界。うまく動けずに地面の足に足を取られてよろめいてしまう。
その隙を見たドラゴンは大きく口を開けた。炎が来る、とハリーは直感した。
だがその瞬間、ドラゴンの顔面に大きな岩がぶつけられた。
「よくやったぞポッター!」
その声と共に闘技場に降り立ったのは、筋骨隆々の大男ザンギエフ。ハリーとドラゴンの間に立ち、ハリーを庇うように前に出てきた。
「素晴らしい飛行技術だった!未熟ながらうまくやったな!」
「せ、先生…」
「下がれ。あとは、俺がやる!」
そう言ってザンギエフはジャケットとメガネを後ろに投げた。
「さあドラゴン!どこからでもかかってこい!」
挑発するようなザンギエフに怒ったように、ドラゴンは雄叫びを上げる。そして大きく口を開くと、強烈な炎を放ってきた。
「甘いわ!」
杖を振るって岩石を呼び寄せ、盾のようにして炎を防ぐ。ドラゴンの炎といえど、岩石を簡単に焼き尽くすことはできない。岩石越しに熱気が伝わってくるが、ザンギエフは構うことなく岩石を魔力の込めた腕で弾き飛ばした。
「ぬぅん!」
弾き飛ばされた岩石は炎を突き破って真っ直ぐドラゴンへと飛んでいくが、ドラゴンは咄嗟に身体を動かすことで岩石を避ける。しかしその避けた先に、ザンギエフが猛突進していく。
「『フリペンド-撃て』!」
杖で自分の腕を撫でるようにして、魔法の力を腕に乗せる。魔法の効果を全て腕に乗せた一撃がドラゴンを穿った。
本来魔法を弾くほど強靭なドラゴンの鱗だが、魔法の力とザンギエフ自身の腕力の衝撃は消しきれない。体勢を立て直しきれていないこともあり、ザンギエフの一撃はドラゴンの顔を地面にめり込ませた。
「なっ⁈」
「驚くのは早いぞポッター!ここからが本番だ!」
ザンギエフは瞬時に移動してドラゴンの尻尾を掴むと、全身に魔力を激らせる。
「筋肉が輝く!」
ザンギエフがドラゴンの尻尾を掴むと、闘技場の中心でドラゴンの尻尾を掴んだまま回転し始め、ドラゴンを振り回し始めた。
なんだこれ。
「全力!全開ぃ!」
回転の勢いを利用して、ドラゴンを真上に放り投げる。空はドラゴンの縄張りだが、突然放り投げられたことと回転による思考力の低下でドラゴンはうまく飛ぶことができない。
そんなドラゴンに向けてザンギエフは飛ぶ。魔力を込めた跳躍により、常人よりも遥かに高く跳んだザンギエフはその剛腕をドラゴンの顔面に叩きつけ、その勢いを利用して回転しながらドラゴンの顔面を掴む。そして回転しながらドラゴンと共に闘技場へと落下していく。
「ボルシチダイナマイト!」
強烈な勢いと共に、ドラゴンの顔面が地面に叩きつけられた。
さすがのドラゴンも、直接頭が硬い地面に叩きつけられたとなれば、相当なダメージを受ける。あの凶暴なホーンテールが目を回して闘技場にぐったりと倒れ込んだ。呼吸はしているため、死んではいない。恐らく重度の脳震盪を起こして動けないのだろう。
そんなドラゴンに背を向け、ザンギエフは拳を天に突き上げた。ドラゴンを圧倒したザンギエフの姿に、観客達は皆大いに盛り上がり、歓声に包まれた。
本来ならハリーはここにいる存在ではない。そんな中で見事金の卵を確保し、無事生還したハリーとしては目の前の光景に何とも言えない気持ちになった。
「……なんでこうなったんだっけ」
「ポッター!」
「は、はい!」
岩陰に隠れていたハリーは突然呼ばれて驚きながら岩陰から出ていくと、突然ザンギエフに抱えられた。また投げ飛ばされるのかと身構えそうになったが、ザンギエフはハリーの体を肩に乗せてハリーのことを目立つように担ぎ上げた。
「お前たち!無事に試練を乗り越えたポッターに万来の喝采を!」
ザンギエフの言葉に、闘技場は歓声に包まれた。
ハリーは突然のことで少し呆然としてしまうが、すぐに笑顔になって金の卵を掲げた。
「よくやったなポッター!」
「は、はい!先生、ありがとうございました!」
「ふん!まだまだお前の試練は終わっていないぞ!この後の試練も気を抜くなよ!」
「もちろんです先生」
「よぉしいい返事だ!よし!祝盃をあげるぞ!」
「ウォッカを飲め!!!」
ダンブルドア先生。やっぱりこの人変ですよ。
相変わらず何を言っているのかまるで意味がわからないザンギエフに抱えられたまま、ハリーは恩師に真顔を向ける。
そして当の恩師もどこか遠くを見つめているような表情が、あまりにもお祭り騒ぎの空気に合わないものであったのに気づいていたのは隣にいたアラスター・ムーディとセブルス・スネイプだけだった。
ザンギエフ
学生時代にホグワーツに2年間留学し、在学中はレイブンクロー寮で魔法を学んだロシアの魔法使い。留学後はロシアの魔法学校を卒業し、NEWT試験を特例で受験して無事受験科目全てをパスするくらいの秀才。アルバス・ダンブルドアとは留学中に知り合い、多少魔法の手解きを受ける。
本人は筋肉を魔法と同じくらい大きな武器と考えており、ロシアの厳しい自然の中で鍛えあげた筋肉は魔法を使わなくとも非常に強力。ロシアの魔法学校在学中にレスリングに目覚め、趣味としてレスリングを独学で鍛える。鍛えた筋肉とレスリング技、そして魔法を組み合わせた(真っ当な魔法使いからしたら)異端な戦闘をする。しかしルール無用のシンプルな殺し合いでは不死鳥の騎士団員すらも凌ぐ戦闘力を有している。魔力の使い方に長けており、魔力によって強化した身体能力でいろんな敵を投げ飛ばす。
極寒のロシアでも上裸で寒さを耐えるようなことをしてる。そしていろんな獰猛な魔法生物に勝負を仕掛け(仕掛けられ)ているせいで、その体は生傷だらけ。もっとも、本人は気にしていない。
杖
材質 スギの木
杖芯 ドラゴンの心臓の琴線
長さ 34センチ
弾力 しなやか
得意魔法
プロテゴ 筋肉に盾の呪文を纏わせ、スト6のパリィのようにあらゆる呪詛を退ける。
フリペンド 腕に纏わせることでチョップやパンチの威力を格段に上げる。ドラゴン相手でも不意打ちならダメージを与えられるくらいの威力を持つ。
ボルシチダイナマイト
ザンギエフで投げられるのはイラつくけど投げるのは楽しいよね。