ハリー・ポッターと魔法の筋肉 作:ボルシチ
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やはり筋肉は全てを解決するのか。
「おい、そこのお前」
今日も今日とてハリーを投げ飛ばし、筋肉と魔力を鍛えた後に一人で図書室で読書をしていたザンギエフに、一人の男が近寄ってくる。そちらに視線を向けると、特徴的な眼帯…もとい魔法の義眼をつけた老人がいた。
「お前がザンギエフだな」
「うむ。そういうお前は誰だ」
「わしはアラスター・ムーディ。元闇祓いだ」
「ほう!お前がムーディか。会えて光栄だ」
ザンギエフは本を置いて立ち上がると握手しようと手を差し出してくる。しかしムーディはその手を取ることなくギロリと目を向けてきた。
「ポッターを鍛えていると聞いている。随分と独特な特訓をしているようだな」
「おうとも。魔法族である前に我々は人間だ。ならば、人間としての強さと魔法族としての強さ、両方を鍛えることは当然のことだろう」
「つまり、筋肉と魔力だ!」
上腕二頭筋を膨張させながら言うザンギエフにムーディは苦い顔をする。
「ふん、筋肉なんぞ鍛えおって。それは自分の魔力が弱いと認めていることに他ならんと思わんのか?」
「思わんな。魔力の成長に限界がある以上、他の強みも鍛えることは自明だ」
「魔法使いとしては異端だなお前は。それより、貴様がポッターを鍛えていることについてだが…」
ムーディは不機嫌そうに手に持った杖で地面を突く。その瞬間空気が変わり、周囲の音が消えた。
「ほう…防音魔法の結界か。杖のワンアクションで出すとは、さすが闇祓い」
「元だ。既に引退しておる。それよりも、ポッターに付け焼き刃の技術を教えるのは辞めろ」
「ほう?」
「下手なものを覚えると、咄嗟の時に本来できることができなくなる。最後の試練までの期間、お前は何もするな」
ムーディの有無を言わさない雰囲気にザンギエフは目を細める。
確かにムーディの言わんとしていることはわかる。付け焼き刃の技術は場合によっては本来の技術を損なわせる可能性があるのは言う通りだ。生死のかかった瞬間ではこの一瞬が命取りになる。
「ふむ、なるほど。確かにムーディの言う通りだ」
「納得したのなら行け。これ以上ポッターに…」
「だが断る!!!」
ザンギエフの言葉にムーディは苛立ちを募らせるように眉間の皺を深くした。
「貴様…自分が何を言っておるか理解しているのか」
「無論だとも。確かにムーディの言うように、付け焼き刃の技術というのは咄嗟の一瞬を奪いかねない。だが、俺が教えているのは普段の魔法の使い方をより良くするだけのもの。咄嗟の時にどうこうなるものではない」
魔力の扱いは魔法の使い方を上手くするだけのもの。咄嗟の瞬間であろうと、本来の技術が損なわれるものではない。時間がないこと自体はザンギエフも理解していたため、付け焼き刃であろうと使える技術…魔力の使い方のみを教えることに注力したのだ。
「それにポッターの覚えはいい!これ以上俺が新たに教えることは……いや、まだあったな」
「何?貴様、今からポッターに何を教えるつもり…」
「俺様のプロレス技をまだ奴には教えられていない!!!」
お前は一体何を言っているんだ。
「俺としたことが!こうしてはおれん!今すぐポッターに俺様のプロレス技を教えてやらねば!」
「いや、わしはそう言うことを言ってるのでは…」
「助かったぞムーディ!早速奴に俺のプロレス技を叩き込んでやらねばな!」
ザンギエフは読んでいた大量の本を杖を振って棚に戻していき、そして柱だそうとした。
「話を聞けこの筋肉ダルマ!『インカーセラス-縛れ-』!」
「むっ!」
ザンギエフの足が縛られて動きが封じられる。魔力を纏わせた足は動きを止められたが、倒れることはない。
「何をする!」
「余計なことをするなと言っておるのだ!」
「余計なものか!寧ろ一番重要とも言えるだろう!」
「人の話を聞かんな貴様は!」
「聞いているとも!だがムーディの理論と俺様のプロレス技を教えることは別段関係がない!俺様のプロレス技を中途半端に覚えたところで、魔法戦そのものには何も関係ないのだからな!」
ムーディの理論は『中途半端な技術を教えてハリーの動きを悪くさせるようなことをするな』というもの。だがザンギエフがプロレス技を教えようが、ハリーの動きが悪くなることはない。なぜなら、魔法戦においてプロレス技を使うことなどないからだ。ザンギエフとしては自分のプロレス技の素晴らしさを伝えることが本来の目的であり、ハリー自身がプロレス技を使うかどうかは二の次。いつか使えるようになればいいとは思っているものの、彼がそれを使うかどうかは大した問題ではない。そしてハリーが仮にプロレス技を覚えたとしても、魔法戦で役立てることができるのはザンギエフ以外いないため、ハリーの動きが悪くなる要因にはなり得ない。
つまり、ムーディの理論ではザンギエフのプロレス技を教えることを止めることはできないのだ。
「では行ってくる!ムーディよ、会えて光栄だったぞ!」
そう言って去ろうとするザンギエフを見て、ムーディは杖を向けた。そして魔法を放とうとしたが、無駄だろうと諦めて杖を下ろす。
「筋肉ダルマ。ポッターに余計なことをするなよ。余計なことをすれば…」
その先の言葉が続くことはなかったが、ザンギエフの大胸筋がピクリと反応する。
「む?」
何か違和感を感じた。
ザンギエフが振り返ると、ムーディが蛇のような目で睨みつけてきていた。そして、ほんの一瞬だが蛇のように舌を出すのが見えた。
(……?)
ザンギエフはムーディとは初対面。それ故に今の態度にどんなものなのかは知らない。しかし今の態度に何か違和感を持った。どんなところに違和感を持ったのかは全くわからないが、何かを訴えるようにザンギエフの大胸筋が引き攣りを起こしている。
「…とにかく余計なことをするなよ!」
それだけ言ってムーディは帰っていく。
その後ろ姿を見送り、ムーディがいなくなったところで大胸筋の引き攣りがなくなる。一体なんなのだろうと考えるが、ムーディ自身が初対面である以上、考えても答えは出なかった。
***
最後の試練当日。
ホグワーツ敷地から少し離れた場所に築かれた迷宮の前に、多くの生徒達が集まっていた。
「ふぅ…」
「緊張しているようだな、ポッター」
試練直前で緊張しているハリーのもとに筋骨隆々の大男、ザンギエフが現れる。
「…はい」
「緊張するのは無理もない。だが心配するな!」
「鍛えた魔力と筋肉があれば、お前は最強だ!!!」
ポージングをするザンギエフにハリーは思わず笑ってしまう。
ザンギエフの特訓は意味不明に思えてしっかりと意味のあるもの。知識としてはムーディが貸してくれたが、ザンギエフは短期間で使える魔力の操作方法を教えてくれた。このおかげで、ハリーは全ての試練でほんのわずかではあるが、余裕を残して通過することができた。
「…ありがとうございます、先生」
「うむ。できることなら、俺様のプロレス技をもっと教えてやりたかったがな!」
「僕には使えませんよ」
「お前も俺様と同じくらい筋肉を鍛えれば使えるぞ?」
「いつになるんですかそれ…」
あまりにもふざけた会話。だがこのふざけた会話がハリーの肩の力を抜いてくれた。
「そういえば、ムーディはどこにいるのだ?」
ハリーに知識を貸してくれたムーディ。その姿が控え室にない。恐らくいるだろうと思っていたのだがおらず、ザンギエフとしてはやや違和感を感じていた。
「あ、ムーディ先生は試練の方でセッティングがあるらしいです」
ザンギエフの大胸筋が再び引き攣る。
「…ほう?」
「先生?」
「……いや、なんでもない」
ムーディはホグワーツの教師陣だ。試練のセッティングに駆り出されることになんら違和感はない。だがザンギエフの大胸筋は何故か引き攣った。
(違和感…?なんだ、俺の大胸筋はムーディに何か違和感を感じているのか?)
どんなところに違和感があったのか。正直なところ全くわからない。しかし
ハリーは盛大に咽せた。
「いよいよ最後の試練じゃ!」
迷宮前の広場に集まった観客達を前に、ダンブルドアが声を上げる。ダンブルドアの声に、観客達の歓声や演奏が止まった。
「ムーディ先生がこの巨大な迷宮の中に、優勝トロフィーを隠した!最後の試練は優勝トロフィーを見つけ出して触れることで、優勝が決まる!迷宮に入る順番は、ここまでの得点順位の上からになる!まず第一位、ミスター・ディゴリー!」
名前を呼ばれ、彼の父親であるエイモス・ディゴリーがセドリックの腕を掲げた。尤も、セドリック本人は恥ずかしそうにすぐに腕を下ろしたが。
「そして同率一位のミスター・ポッター!第三位はミスター・クラム!第四位はミス・デラクールじゃ!この順番に迷宮の中に入ることになる!試練の続行を諦めて救出を要請するときは、空に向かって赤い花火を打ち上げるのじゃ。迷宮外で巡回している先生のうち誰かが救出に向かう!では選手諸君、わしの側に」
ダンブルドアは選手を自分の側に来させると、声を少し潜め、選手達に語りかける。
「迷路にはドラゴンも水魔もおらんじゃろう。じゃが、これまで以上に厳しい試練が待ち受けておる。迷宮の中では人が変わる。優勝トロフィーを探すうちに、自分を見失わぬようにな。どんなことが待ち受けていようとも、己を見失わないことを第一に考えて動くことじゃ。それが諸君らの助けになる。このことを努努、忘れるでないぞ」
ダンブルドアの言葉に選手達は神妙な顔で頷く。
「では選手諸君、位置につくのじゃ!」
選手達が出発位置につく。ハリーの出発位置にはムーディが相変わらず不機嫌そうな顔をして立っていた。
「あとはお前自身の問題だ。やれることをやれ」
「はい。先生、ありがとうございます」
「ふん」
不機嫌そうに返事をしながらも、ムーディはハリーの肩を叩いた。
そういえば、ザンギエフはどこだろうとハリーは視線を巡らせる。すると、観客席の一番後ろで腕を組みながらこちらを見るザンギエフの姿を見つけた。ザンギエフはハリーの視線に気づくと力強く頷き、彼の逞しい岩のような上腕二頭筋を膨張させてきた。相変わらずのザンギエフに苦笑しながらも、ハリーは迷宮の入り口前に立つ。
迷宮は薄暗く、霧が立ち込めている。視界が悪い中探すのは骨が折れそうだと考えながらも、ハリーは杖を手に取った。
その瞬間、背後で大砲が鳴り響く。
スタートの合図だ。
「…よし」
ハリーは迷宮に足を踏み入れる。少し歩いて振り返ると、ムーディがこちらを見ていた。そして体に隠れるように、小さく指で方角を指し示した。
ハリーは小さく笑うが、その背後でダンブルドアとザンギエフが目を細めているのが見えた。どうしたのだろうと考えているうちに、迷宮の入り口が閉じて音が聞こえなくなる。
「……ふう」
杖を構えつつ、魔力を整えながらハリーは迷宮を進んで行った。
「レダクト-粉々-!」
ハリーの魔法がセドリックを縛り付ける根っこを破壊した。
絡み付く根っこを引きちぎり、半泣きになったセドリックを助け出す。
「あ、あの……ありが、とう」
「いいんだ」
「…は、はは…きつい試練だな」
「……うん、そうだね」
「ハリーは、落ち着いてるね…僕なんて、すぐ恐怖で我を忘れちゃったのに」
「魔力を常に意識するんだ。そうすれば、自分にだけ意識が向く。意識が安定すれば、我を忘れない」
「ザンギエフの教え、かい?」
ハリーは頷く。常に自分の魔力が安定するようにしていたことで、自分の精神も同時に安定させられていた。筋肉のことしか頭に無さそうなザンギエフだが、なんだかんだでザンギエフの教えは非常に役立っていた。
「はは…僕も、もう少しザンギエフの話を聞いておけばよかった」
「それ以上に意味わからないことが多いけどね」
「…それもそっか」
そう言って二人は笑う。
突如、風が吹き荒れる。ハリー達が走ってきた方向から迷宮が閉じようとしているのが見えた。
「走れハリー!」
「うん!」
二人は走り出す。走る先には、優勝杯。
辿り着いた先で、セドリックは声を上げた。
「君が取れ!助けられた借りがある!」
「一緒に取ろう!そうすれば、ホグワーツの優勝だ!」
「っ!わかった!1、2の、3!」
二人が優勝杯を取った瞬間、浮遊感に包まれる。
暫しの浮遊感の後に地面に叩きつけられ、優勝杯を放り出してしまう。目を開くと、薄暗い墓場。
「つぅ…移動キー、か?」
セドリックが起き上がると、優勝杯からは移動キーと同じ気配がする。それに先程の浮遊感は移動キーのものと同じだ。まず間違いないだろう。
周囲を見渡すと、暗いがそれなりに広い墓場であることがわかった。ただ暗いこともあり、とても不気味だった。何故こんな場所に飛ばされたのかはわからないが、移動キーである以上、帰りの移動もできる。ハリーを呼んでさっさと戻ろうとハリーを探した。
「ハリー!」
「……ここ、知ってる。夢で来た場所だ!」
「ハリー!どうしたんだ?」
ハリーは何か探すように周囲を見渡しているが、セドリックとしては早くこんなところから帰りたいという思いが強かった。
ふと、明かりが目に入る。小屋から人が出てきたのだ。その瞬間、ハリーは額を抑えて蹲りながら呻き声を上げた。
「何者だ」
セドリックは咄嗟に杖を抜く。
小屋から出てきたのは、みすぼらしい服装とやや禿げ上がった頭の男。その腕の中には布に包まれた胎児のような『何か』。
「それ以上近寄るな。そこにいろ!」
「如何なさいますか、ご主人様」
『殺せ』
「アバダ・ケタブラ」
男の杖から緑色の閃光が走る。
咄嗟に出た失神の呪文が緑の閃光とぶつかり合って弾け飛ぶ。
セドリックの意識はそこで途切れた。
「エクスペリアームス-武器よ去れ-!」
「アバダ・ケタブラ!」
ハリーとヴォルデモートの魔法がぶつかり合い、金色の閃光が弾け飛ぶ。ザンギエフ直伝の魔力操作でいつもより強く魔法を放てている自覚はある。しかし、さすがは闇の帝王。復活したばかりだと言うのに凄まじい魔力はハリーの全力の魔法でもびくともしない。
(このままじゃ…!)
このまま撃ち合えば、間違いなくハリーが負ける。それほどまでにヴォルデモートの力は強かった。
劣勢を感じ取った瞬間、ハリーとヴォルデモートの杖が共鳴する。光のドームが二人を包み込み、ヴォルデモートの杖から守護霊に似た何かが現れた。
一つは、いつかの夢で見た老人。残りの二つはハリーの側に来ると、人の顔になった。
その顔は、写真でしか見たことがない両親の顔だった。
『ハリー!この繋がりを切ったら、移動キーの下へ行きなさい!父さん達で時間を稼ぐが、長くはもたない!わかったね⁈」
父、ジェームズ・ポッターの霊魂はハリーにそう告げる。
初めての父との会話だが、感激している余裕はない。ただハリーは父の言葉に頷いた。
『ハリー、繋がりを切りなさい。
「彼⁈」
「コンフリンゴ!」
突如、爆発の呪文が死喰い人達を襲った。突然のことでほぼ全員が防ぐことができず、まともに爆発を受けて地面に転がる。
その爆発にほんの一瞬気を取られたヴォルデモートに気づいたハリーは、
「ハリー!」
彼、セドリックの伸ばす手を取った。
「アクシオ-来い-!」
ハリーの手を取ったセドリックが移動キーの優勝杯を呼び寄せ、墓場から立ち去った。
ヴォルデモートの声だけが、ハリーの耳に残っていた。
*
浮遊感の後、地面に叩きつけられる。
息絶え絶えのまま、二人は歓声を他人事のように聞いていた。
生きている。その事実だけが今の二人の胸中に渦巻いていた。
「ハリー…だい、大丈夫、かい?」
「セドリックこそ…僕、てっきり殺されたかと…」
「はは…ザンギエフの、おかげだよ。いつでも、攻撃呪文で…反撃できるようにって…ただ、咄嗟だったせいで失神の呪文が跳ね返って、頭に直撃したんだ…」
セドリックの言葉の通り、セドリックは額に大きな傷ができており、そこからは固まり始めている血が流れていた。ザンギエフのスクワットの時、咄嗟の反撃をやらされていたおかげで死ぬことは免れたが、弾けた呪文が跳ね返ってきて完全に失神してしまったらしい。
「よかった…本当に…」
「ハリー!セドリック!無事か?」
ダンブルドアが二人に駆け寄ってくる。ぐったりしながらも、ハリーはダンブルドアに言うべきことを言わねばと口を開いた。
「先生…あいつが…ヴォルデモートが、戻ってきた」
「何⁈」
「先生、本当です。僕も見た、確かにヴォルデモートだ」
「……奴と対峙して帰って来れたのじゃ。もうよい、今は休むのじゃ」
ダンブルドアの言葉に安心したのか、セドリックは気絶するように眠ってしまう。
ハリーは額の痛みがまだ引かない。痛みに呻きそうになったところで、ムーディがハリーを無理矢理立たせた。
「来い、ここは人が多い」
「先生、でも…」
「大丈夫、わしがついとる。わしがいる。今は来い」
半ば無理矢理ハリーを引きずるようにして、ムーディは会場から去ろうとする。
しかし、その進路を塞ぐような巨漢が一人。
「待て、アラスター・ムーディ」
「今は貴様に構っている余裕はない。わしはポッターを休ませる。どけ」
「ならば、俺とポッターの友人であるウィーズリーも連れていくことだ。今、ポッターをダンブルドア以外の誰かと二人にするわけにはいかない」
「こんな時に貴様と言い争う暇はない。とっととどけ」
ムーディがザンギエフをどかそうと杖でザンギエフを押すが、岩石のような肉体は動かない。
「貴様…」
「俺とウィーズリーがいても、何も問題はあるまい?なあ?」
「……先生?」
「ポッターは消耗しておる。貴様のようないるだけで消耗する奴といられるか!さっさとどけ!」
「では俺は呪文以外の何も喋らんと約束しよう」
ムーディの殺気がどんどん強くなっていく。だがハリーは何故ムーディがここまで苛立っているのか、そしてザンギエフがここまでして行かせたくないのかわからなかった。
「…ポッターを静かな場所に連れて行くのは良い。しかし、
「黙れ!貴様と話している暇などっ…⁈」
突如、ムーディが痙攣し始める。
「ぬぅ、おお⁈」
「ムーディ先生⁈」
「ポッター、離れろ。
ムーディの痙攣はますます激しくなる。それどころか、顔や全身がぶくぶくと波打ち始めていた。
「先生、どうなってるんですか⁈」
「誰かは知らんが、こいつはずっと変身していたのだ。ムーディにな」
「えっ⁈」
「俺の筋肉が教えてくれた。ムーディの違和感をな」
お前は一体何を言っているんだ。
「最初はわからなかった。そもそも俺はムーディと初対面だからな。だが、ムーディが義足である以上、義足で歩く時の重心の移動が義足着用者特有のものになる。それに、闇の魔法というのはどう足掻いても痕跡を残す。俺の筋肉がそれに気づいた」
筋肉が気づくという意味がわからない言葉を除けば、とりあえず納得はできる。確かにムーディが義足になってからしばらく経つ以上、義足に慣れていないということはない。加えて、闇の魔法特有の気配に気づくことができた。とはいえ、重心はザンギエフでなければ気づくことはできないし、魔法の痕跡についてもザンギエフを除けばダンブルドアしか気づくことはできないだろう。
「おおおお!こんな時、にぃ…!」
「誰かは知らんが、うまくやったな。よもや旧知の仲であるダンブルドアすらも騙すほどとは。恐れ入ったぞ」
「…ぬぅおお!こうなれば…まとめて道連れだ!俺が英雄として迎えられる前に、派手に散らしてやろう!アバ…」
「
偽ムーディにザンギエフの剛腕が叩きつけられ、偽ムーディは会場にまで吹き飛ばされた。その際に手に持っていた杖も折れた。
「な、なんだ⁈何事だ!」
吹き飛ばされた音で周囲がざわつく。
吹き飛ばされた偽ムーディはすでに変身が解けており、その姿は変わっていた。服装こそムーディのままだが、頬がこけているやや痩せた男の姿がそこにはあった。
「…バーティ・クラウチJr.…!なぜ貴様がここに⁈」
「ふっ、ははは!今更俺を捕まえようとも無駄だ!あのお方は戻られた!俺は英雄として迎えられるんだ!エクソパルソ!」
「プロテゴ-守れ-!」
クラウチJr.が懐からもう一本の杖を取り出して放った爆発魔法をダンブルドアが防ぐが、その瞬間クラウチJr.は迷路に向けて走り始める。
「俺はあのお方の下へ戻るのだ!」
「俺様から逃げられると思ったか⁈」
突如、
「はぁ⁈」
咄嗟に爆発魔法で破壊したが、破片を受けてバランスが崩れる。
バランスが崩れた瞬間、ザンギエフは走り出した。全身に凄まじい魔力を激らせながら突進してくるその姿は、まさに暴走列車。
「っ⁈ステューピファイ-麻痺せよ-!」
「
全身に
「ひぃっ⁈」
満面の笑みで猛突進してくる巨漢がいたら誰でも恐怖するだろう。
ハリーとダンブルドアは数秒後にクラウチJr.がプロレス技の餌食になることを察した。
「行くぞぉぉ!!!」
暴走列車の如く突進したザンギエフは勢いをそのままにクラウチJr.に突撃し、クラウチJr.の足を抱えながら勢いを利用して大きく飛び上がった。
「シベリアンエクスプレス!!!」
クラウチJr.は顔面から地面に叩きつけられた。
凄まじい衝撃と激痛。加えてポリジュース薬の長期間服用の反動で、クラウチJr.は完全に意識を飛ばした。死んでいないか心配になるが、呼吸はある。ただ、白目を剥いて痙攣しているあたり、かなり致命的なダメージがあるのは間違いないだろう。
「ダンブルドアよ!」
「ザンギエフよ、助かったぞ」
「おうとも!それでダンブルドアよ」
「こいつは誰だ!!」
誰かもわからず渾身のプロレス技を仕掛けるあたり、ザンギエフらしいと心から思うハリーだった。
その後、最低限の治療を施されたクラウチJr.はアズカバン送りとなった。
また、ハリーとセドリックの証言からヴォルデモートが復活したという話が広まったが、魔法省大臣であるコーネリウス・ファッジが日刊預言者新聞に圧力をかけ、それを嘘だと報じた。ハリーとセドリックだけでなくダンブルドアも復活を証言したが、情報戦では政府トップには勝てない。何より、2人とも生きて帰ってきたことで証拠がなかった。
そしてザンギエフはというと、ホグワーツで一通りプロレスの布教をして一部男子に熱烈な支持を得ると、ロシアに戻っていった。
「いいかポッター!どんな時もお前の魔力と筋肉を信じろ!これらはお前自身だ!常に信じ、鍛え上げることを忘れるな!!!」
魔力はともかく、筋肉はどうなんだろう。
そんなことを思いつつ、豪快に笑いながら帰路につくザンギエフを見送るのだった。
炎のゴブレット、終了。
読み終わった皆様はこう思ったはずです。
お前は一体、何を書いたんだと。
自分でもそう思ってます。
全身にプロテゴを纏うだけ。ただ、鋼の如き筋肉と合わさることで凄まじい防御力を発揮する。死の呪い以外の許されざる魔法にも強い効果を発揮するため、ザンギエフは愛用している。要するにスーパーアーマー。
魔力を込めたただのラリアット。受けると大体杖が折れる。
不死鳥の騎士団は…やるかどうかまだわかりません。
でもアンブリッジにスクリューしてほしい。