フィレネの花と騎士の誓い ファイアーエムブレムエンゲージ 作:kim
キムランはセリーヌの騎士となってから、戦場での戦いだけでなく、備品管理や食事の用意、その他の雑用等、全身全霊を捧げていた。
「セリーヌ様のためなら……!」と剣を手に汗だくで訓練し、夜遅くまで物資を運ぶ日々。
しかし、疲れが限界を超え、訓練中に視界が揺れ、膝をつく。「セリーヌ様…まだ…」と呟きながら倒れると、ルイが「キムランさん、大丈夫ですか!」と駆け寄り、クロエが「キムラン、無理しすぎだよ!」と涙目で彼を支えた。意識が遠のき、キムランは深い闇に沈んだ。
目を覚ますとテントの中。頭に冷たい濡れタオルが置かれ、横にはセリーヌが静かに座っていた。
「セリーヌ様!?」と驚き、心臓が跳ねる。慌てて起き上がろうとするが身体が動かない。
「いけません!セリーヌ様! 移ってしまいます!」と声を荒げる。
セリーヌは穏やかに微笑み「あら? ジャンは『キムランは過労やね、働きすぎや』と言ってましたよ。過労が私に移るかしら?」とジャンの真似をして軽く笑う。
その無垢な笑顔にキムランは一瞬息を呑むが「ですが! セリーヌ様が看病なんて…主を守るべき臣下がこんな目に…臣下失格です」と悔しさで拳を握り、俯いた。
セリーヌは柔らかく目を細め「私は守られるほどか弱く見えますか?」と優しく問いかける。
キムランが「え…?」と顔を上げると、彼女は静かに続ける。
「臣下が姫を、民が王を守る……私はそうは思いません。王族も平民も共に一つの卓を囲み、平和という紅茶を味わい、笑顔が咲き誇る未来を築くために、ルイもクロエも。そしてあなたにも、私と共にあってほしいと願っています。」
その言葉に、キムランはハッとする。胸の奥で何かが弾け、幼い頃の記憶が鮮やかに蘇った。「あの時……!」と目を閉じ、過去へと想いを馳せる。
10年ほど前、フィレネ辺境の貧しい村は不作で飢えていた。キムランは母と弟妹を支えようと、痩せた畑を小さな手で耕していた。
「家族を守りたい…でも俺、どうしたら…」と涙を堪える日々。村人たちは「もう終わりだ…」と嘆き、笑顔が消えていた。
そんな時、馬車の音が響き、村がざわつく。「イヴ女王様とセリーヌ様だ!」「王家が助けに来てくれた!」と声が上がる。
イヴ女王が「フィレネの民を見捨てません」と宣言し、隣には幼いセリーヌが立っていた。彼女は小さな体で籠を抱え「皆が元気になれるように」と土にまみれながら物資を配る。
キムランは遠くから「王女様と……セリーヌ様?」と目を丸くする。セリーヌが近づき、「ねえ、お茶好き?」と小さなカップを差し出す。
「これ飲むと元気になるわよ」と微笑む。キムランは「ありがとう…」と受け取り、震える手で飲む。花とレモンの香りのする温かい紅茶が冷えた体を包む。
「何で王族なのにこんな事してるの? 泥だらけじゃん?」と不思議そうに聞く。
セリーヌは目を輝かせ「王族も平民も関係ないわ。私はみんなが同じようにご飯を食べてお茶を飲んで、笑顔がぱっと咲き誇る未来になったらなって思うの!」と答える。
キムランはハッとし、「笑顔が…ぱっと咲き誇る…?」と胸が震えた。彼女は「もっと持ってくるね!」と走り出し、その小さな背中にキムランは涙が込み上げる。「セリーヌ様…こんな優しい人が…!」
村人たちが物資を受け取り笑顔になっている。イヴ女王が「セリーヌ、戻りなさい」と呼ぶと、彼女は「またね!」とキムランに手を振る。
「ありがとう、イヴ女王様! セリーヌ様!」と村人が見送る。
キムランは走り寄り「笑顔がぱっと咲き誇る未来のために、俺も強くなって手伝うよ!」と叫んだ。声が震え、涙が溢れる。セリーヌが振り返り、「え…?」と驚きつつ小さく頷き優しく微笑む。
その夜、家族と久しぶりに温かい食事を囲み「俺、セリーヌ様の騎士になる…あの未来を一緒に作りたい!」と目を輝かせた。
キムランは目を開ける。セリーヌが「無理せず元気でいてくださいね」と優雅に笑う。その笑顔に、あの日の光景が重なる。「俺は初めからセリーヌ様を守るためじゃなくて、一緒に笑顔が咲き誇る未来を作るために騎士になろうとしたんだった…!」と胸が熱くなり、涙がこぼれる。「はい、セリーヌ様!」と声を震わせ、決意を新たにした。