フィレネの花と騎士の誓い ファイアーエムブレムエンゲージ 作:kim
クロエの「ラブラブ大作戦」の失敗から数日、リュール軍のキャンプは重い空気に包まれていた。
セリーヌとキムランは訓練でも食事でも目を合わせず、言葉を交わさない。戦場では息の合った連携を見せるが、日常では壁があるかのように距離を置く。
ルイはテントの外で槍を磨き「これはまずいですね……。セリーヌ様とキムランさん、戦場では頼もしいのに、こんな距離ができてしまうなんて」と呟く。
クロエがウェーブのかかった長い髪を揺らし「私があの時しくじったせいだよ……。セリーヌ様とキムランの笑顔、取り戻したい! ラブラブ大作戦パート2を考えなきゃ!」と目を輝かせる。
ルイは首を振って「それはどうでしょうかね。無理強いは逆効果かもしれませんよ」と慎重に返す。
二人の優しい思いは届かず、どうしていいか分からないままだった。
その時、敵襲を知らせる鐘がけたたましく鳴り響いた。
「敵だ!」とルイが立ち上がり、槍を手に持つ。クロエも「ペガサスで上空から見るよ!」と素早く飛び立ち、キャンプは混乱に包まれる。
異形兵の軍勢が近郊の村を襲いながら接近し、リュール軍は迎撃の準備を急ぐ。
ルイは「セリーヌ様を!」と叫び、クロエは上空から「敵がこっちに来るよ! セリーヌ様とキムラン、大丈夫かな?」と心配そうに呟く。戦場に向かう中、二人のすれ違いが頭をよぎっていた。
戦闘が始まり、ルイとクロエは敵を倒しながらセリーヌと合流する。セリーヌは「ルイ! クロエ! 二人とも無事で良かった…!」と安堵の声を漏らし、ライブを使い2人を癒し、剣と魔法で異形兵を退ける。仲間を守る姿は頼もしい。
だが、キムランがいないことに気づき、心がざわつく。
「キムランは…どこ?」と口に出さずとも、心臓が締め付けられる。あの倉庫での言い争いが頭をよぎり、「もし何かあったら…」と不安が膨らむ。それでも冷静を保ち、敵を撃退しながら仲間を支えるセリーヌの瞳には、微かな揺れがあった。
敵をなんとか退け、リュールのもとに皆が集まる。
リュールが「皆さん!怪我はありませんか?」と確認する中、セリーヌはキムランの姿がないことに気づき、小さく息を呑む。
顔が青ざめ「キムランが…!」と心の中で叫ぶ。
あの日の「あなたは何も知らないくせに…!」という言葉が耳に残り「あんな喧嘩したまま終わったら…謝れなかった私が…許せない!」と涙が溢れそうになる。
喉が詰まり、手が震え「探しに行こう!」と立ち上がろうとした瞬間、遠くから血と汗にまみれたキムランがアルフレッドに支えられよろよろと現れた。
アルフレッドが「彼が真っ先に道具屋さんなどの非戦闘員を守りに行っていたんだ! 一人で敵を引きつけてね。僕が合流した時にはボロボロだったよ」と語る。
キムランは息を切らし「セリーヌ様の未来を……守りたかった」と呟き、膝をつきそうになる。
セリーヌは「キムラン!」と叫び、駆け寄って彼の手を両手で握る。
「私、あなたを失ったら…!」と涙目で震える声が、抑えきれなかった想いを吐き出す。
キムランは「セリーヌ様のためにも、俺は死にません」と返すが、倉庫での気まずさがよぎり、二人の間に微妙な空気が流れる。
キムランは傷だらけの体を起こし、意を決して目を上げる。
「セリーヌ様、何があったか分かりませんが…俺はセリーヌ様が大好きです!!」と顔を真っ赤にして叫ぶ。
息が上がり、心臓がバクバクしているのが分かる。
セリーヌは「え…?」と一瞬驚き、目を丸くする。だが、その言葉が胸に突き刺さり、視界に映る傷だらけのキムランの姿が心を揺さぶった。
血と汗にまみれ、それでも自分と民のために立ち上がる彼を見て、突然何かが腑に落ちる。彼女は深呼吸し、瞳を潤ませてキムランの手をぎゅっと握り返す。
「嬉しいわ……本当に嬉しい。キムラン、ここ何日かごめんなさい。私、心の中で何度も何度も自分に問いかけたの。あなたがあの村で『手伝うよ』って笑ってくれた初恋の人だって思い出したの、そしたら胸が震えて……ドキドキして、どうしていいか分からなかった。でも、言えなかったのは……そのときめきが、幼い頃のあなたに感じた物では無かったからよ」
セリーヌは一瞬目を伏せ、声を震わせて続ける。
「ずっと、そのドキドキは初恋の記憶のせいだって思ってた。でも、今のあなた……、傷だらけでも私や民のために戦ってくれるあなたを見て、やっと分かったの。私は今のあなたに惹かれてる。この気持ちは、昔の思い出なんかじゃなくて、今ここにいるあなたに! こんな近くで感じてるものなの。キムラン、私もあなたが大好き!!」
と顔を上げ、頬を赤らめて告白する。温かい涙が一筋こぼれ、その瞳に優しさと決意が宿る。
周囲が「おお!」とどよめき、クロエが「やったー!」と飛び跳ねて叫ぶ。ルイも静かに微笑み、「良かったですね」と呟く。
セリーヌは「もうっ!」と頬をぷくっと膨らませ、キムランをちらりと睨むが、すぐに目を細めてくすっと笑う。「本当に…あなたって、困った人ね」と小さく呟き、照れ隠しに彼の肩を軽くつつく。
その仕草は優雅なのにどこか無邪気で、長い髪が揺れるたびに愛らしさが溢れる。
キムランが「え、俺ですか……?」と慌てると、セリーヌは「ふふ、そうよ。ほんと困った人……」と目をキラキラさせてからかうように返す。
そして「でも……大好きだから、仕方ないわね」と頬を染め、そっとキムランの手を握り直す。その小さな手の温もりに、優しさと甘さがぎゅっと詰まっていた。
キムランは「セリーヌ様が俺を……? ずっと笑顔が咲き誇る未来を一緒に作りたかった、こんな嬉しい事!」と胸が熱くなり、セリーヌの手をぎゅっと握り返す。
セリーヌも「キムランが大好きって言っちゃった..….! 今のあなたに気付けた…胸が熱いよ」と心の中で呟き、二人は見つめ合って笑顔になる。戦場の危機が、切なさを甘い絆に変えた。