綱手の兄貴は転生者   作:ポルポル

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仇為す者は

 ―――おいで、お兄ちゃんだよ。

 

 とでも言いたげに、マダラは優しく微笑んでいる。

 畳間はその笑みに、かつての―――前世の幼少期を思い出し、懐かしさと温かさと、同時にもどかしさを覚えた。

 

「……ナルト」

 

 ―――口寄せの術。

 

 小さな蛞蝓を呼び出した畳間は、それをナルトの肩にそっと置いた。

 

「ネジに張り付けろ。そしてシズネの下へ向かえ」

 

「……え? なんでだってばよ?! あいつ、敵なんだろ!! だったらオレも―――」

 

 騒ぐナルトの肩に、シカマルが手を置いて、引き戻す。

 

「ナルト、ここは五代目に従うべきだ」

 

 そしてシカマルは恐ろしそうに、マダラを見上げた。

 

「―――あいつは……、ヤベぇ。オレ達がいても、邪魔にしかならねェ。……それは、お前でも(・・・・)だ、ナルト。確かに、お前は強ェよ。オレ達同期の中でも、最強だ。上の世代にだって通用する、オレ達の出世頭だ。けどな……ここから先は本当に―――五代目やカカシ先生クラスじゃねえと、通用しねェ。オレ達クラスの忍びがいくらいたって、ダメなんだ。オレですら分かるんだ。お前だって、ホントは分かってんだろ……。それに、これ以上はネジが死んじまうぞ。もたもたしてる時間はねェはずだ」

 

「……だったら、シカマルが……この蛞蝓(なめくじ)、連れてってくれってばよ。オレは、おっちゃんと―――」

 

「おい、落ち着けよナルト! さっきペインに突っ込んで行ったときから思ってたけどよ……。お前、なんかおかしいぞ」

 

「……」

 

 シカマルに己の短慮を指摘されたナルトが、考え込むように俯いた。アカリに言われたことが、ナルトの脳裏を過る。 

 そんなナルトの頭を優しく撫でた畳間は、鋭い視線を、マダラへと向ける。

 

「ナルト……」

 

 ナルトの名を呼んだ畳間は、ナルトから手を離し、背を向ける。あ、とナルトが名残惜し気に声を零した。畳間がナルトを呼んだその声音は、ナルトが今まで聞いたことが無いほど、穏やかで、優しかった。ゆえにこそ、燃え上がろうとしてたナルトの心が、鎮火する。

 

「……大丈夫だ。任せておけ」

 

 畳間は背中越しに、微笑んだ。

 その言葉は、ウラシキとの戦いの時も、聞いた。あのときは確かに大丈夫で―――ウラシキは、打倒された。だが今回は―――。

 

「……ナルト」

 

 そして、畳間がナルトの名を呼んだ。

 ごくり、とナルトが生唾を呑み込む。なんとなく、これから話される畳間の言葉は、絶対に、聞き逃してはならないものだと、感じたがゆえの緊張だった。

 

「……お前は必ず、立派な忍者に成れる。オレをも超えた、立派な忍者に」

 

 畳間はシカマルへも目線を向ける。

 

「シカマル。シカクに伝えよ。オレにもしものことがあれば、岩隠れを頼れ。状況によって選択肢は変わるだろうが―――必要なら里を捨てて、霧にいるカカシと合流し、再起を図るんだ。そして―――マダラ復活の報を各里へ飛ばし、五大国で団結し、立ち向かえ。決して、木ノ葉だけで相手取ろうとするな。必ず、忍界すべての力で立ち向かうんだ。それが出来ないのなら―――」

 

 仮に畳間が敗死し、木ノ葉が陥落した時、砂と岩がどう動くかは、正直なところ分からない。しかしこれまでの友好が本物であったなら、きっとオオノキは助けてくれる。そして今疲弊はして戦えないとしても―――霧隠れは必ず、木ノ葉の力となってくれるはず。

 雲隠れは静観を、あるいはこの機に乗じて火の国を狙うかもしれない。だが、うちはマダラという強大な力の復活を前に、手を取り合うことも出来ないのなら―――。

 

「どのみち、忍の世は、滅びる。さあ―――二人とも、行きなさい」

 

 畳間の言葉に、ナルトとシカマルが瞳を揺らす。

 土壇場―――ゆえに、迷っているのだろう。こんなことは、今まで無かった。こんなことは、授業では学ばなかった。現実感が、薄かった。

 ゆえに―――本当は自分たちにも何かできることがあるのではないか、何か力になれる(すべ)があるのではないか、残って共に戦うことこそが、正しいのではないか、と、一生懸命に考えている。だが―――現実は非情である。そんなものは無い。彼らは物語の主人公ではない。今はただ守られるべき、若き火の意志だ。

 そんな子供たちの様子に、成長の嬉しさと、同時に幾ばくかの不安を抱いた畳間は、一息ついて、続けた。何かを―――懐かしむように。

 

「ナルト、シカマル。お前は―――お前たちはまだ、若い。その歳で焦ることは無い」

 

 そして畳間は静かに、笑った。

 

「―――いずれ、『その時』は来る。それまでその命……取っておけ」

 

 畳間が瞑目する。

 

(―――猿の兄貴。ダンゾウさん。トリフさん。カガミ先生)

 

 畳間と共に二代目に付き従い、そして畳間に後を託して逝った者達の名を、声を、顔を、その意志を、畳間は思い出す。

 

(オレにも、来たようだよ。―――『その時』が)

 

 眼を空けた畳間の顔には―――仙術の隈取。

 

「……ほう。さすがだな、イズナ。よもや仙術を……」

 

 写輪眼を以て畳間を天高くから見下ろすマダラが、そのチャクラに気づき、感嘆の声を漏らした。

 兄として、純粋に感心しているのだろう。かつての弟の成長を喜んでいるのだろう。だが―――畳間にとってそれは、死神の笑みにしか映らない。

 ゆえに畳間はかつて愛したその男を、殺意を持って鋭く見据える。

 

「『今』立ちふさがる障害は―――オレが、地獄へ持ってゆく。五代目火影の名の下に―――この命に代えてでも」

 

 ―――五代目火影の名の下に、里の家族を守る。それが今、オレのやるべきこと。それが―――そして来たる(・・・・・・)『その時』。二代目火影がその命を賭して繋いだこの命を、使うときだ。

 畳間の言葉に、その真意に気づいたナルトが震えながら、口を開いた。

 

「なに、を―――。それじゃあ、そんなの―――。縁起でも、ねえってばよ? だって……、そうだろ!! なんでそんなこというんだってばよ!! それじゃあ、おっちゃん、まるで―――」

 

「―――ナルト、それ以上はよせ。―――行くぞ!! オレ達に今できることは、五代目の遺した意志を、皆に伝えることだ! 違うか!!」

 

「でも―――! でも―――っ!! おっちゃん……! おっちゃん―――っ!!」

 

 唇を震わせるナルトの瞳から、一粒二粒と、涙が零れ落ちる。

 ナルトの脳裏を過るのは、楽しかった幼少期の記憶。一緒に遊んで貰った日々。大きな家で鬼ごっこをした、かくれんぼもした。はしゃぎ過ぎて義母に怒られたとき、庇ってくれたときがあった。そして一緒に怒られて、一緒に落ち込んで、一緒にお風呂に入った。アカデミーの入学式には泣いて喜んでくれた師、下忍になった日の夜は、やっぱり泣いて喜んで、たくさんのお祝いの言葉をくれた。プールに入れて貰った日もあった。祭りの日に肩車をしてもらい、高い景色を見せて貰った。誕生日にはたくさんのプレゼントをもらった。たくさんの、本当にたくさんの―――暖かな思い出があった。

 

「いやだ……いやだってばよ!! そんな……、だって! おっちゃんは、おっちゃんはいつだって最強なんだ!! 鬼鮫も、大蛇丸も、ウラシキも、みんな、みんな倒しちまった! 今回だってそうだ! そうだろ!? おっちゃんはつえェんだ! オレなんかより、ずっとずっと強いんだ!! おっちゃんはオレの―――っ! オレの……ッ、憧れなんだってばよッ!! おっちゃんみたいになりたくて、オレは―――!!」

 

 我儘をいう義息子。その愛が、畳間に伝わってくる。

 その心を感じて、オレが居なくなっても大丈夫だろうかと、畳間は不安を抱く。

 オレが居なくなってもこの子は大丈夫と、畳間は信頼を抱く。

 オレが居なくなった後、この未だ未熟な子が、どれほど大きく成長を遂げてくれるか―――その輝かんばかりの未来を夢見て、畳間の中には熱い思いが込み上げる。そしてその未来をこの眼で見られないことに、一抹の寂しさを感じる。

 

(叔父貴もきっと、こんな気持ちで―――)

 

 霧隠れ撤退戦―――意地を張って、我儘を言った。師の言葉を受け取り、歯を喰いしばって背を向けた。その去って行く背を感じたあの時の師はきっと―――同じような気持ちで。

 千手畳間という不出来な弟子の未来を、信じたのだろう。

 

「―――行け、ナルト。……決して、振り返るな(・・・・・)(未来)を向いて―――()へと、走り続けろ。お前の夢が叶うのを、オレはずっと……見守っている」

 

 きっと、生き残ることは出来ないだろう。それはマダラに勝てたとしても(・・・・・・・)だ。今の消耗しきった畳間がうちはマダラという伝説に打ち勝つということは―――勝てるだけの力を出すということは。すなわち―――八門遁甲における死門を開くことと同義。

 

「ナルト!! 行くぞ!!」

 

「―――おっちゃん……ッ!!」

 

 ぐ、と唇を噛みしめたナルトが、遂に駆けだした。ナルトもまた、チャクラを多く使い、疲労は溜まっている。

 

(許せアカリ。……先に逝く)

 

 畳間は跳躍し、マダラの向かいの木の幹の上に立った。

 相対するは―――木ノ葉の創設者にして伝説の忍び、うちはマダラ。そして、木ノ葉隠れ五代目火影、『初代(柱間)の再来』千手畳間。

 

 マダラは目の前に立つイズナを、目を細めて見つめる。そのうちに抱く感情が何なのかは分からないが―――マダラはゆっくりと、口を開いた。

 

「―――茶番はもう良いのか?」

 

 穏やかに、しかしぞっとするような声だった。

  

「ああ。待たせてしまって、悪かったな」

 

 これから、命を捨ててでも討つべき敵。

 少なくとも畳間はそう思っているが―――マダラには、そんな様子は感じられない。

 兄を待たせる仕方のない弟―――それ以上には、感じていないのだろう。それはつまりマダラにとって今の千手畳間の『力』が、取るに足りないものだということを示していた。

 

「なに、構わんさ。既に、長い時を待った。少しくらい、どうってことはない」

 

 本当に、穏やかな声音だった。かつての―――共に一族の集落で暮らした頃の、優しい兄の声。それが、恐ろしい。一体何を考えているのか、畳間にはまるで分らなかった。

 

「……何故、木ノ葉を襲わせた」

 

「……なに?」

 

 畳間の問いに、マダラは小首を傾げる。

 

「この里を見ろ。この惨劇は―――あなたの手下が……ゼツが、ペインを操り、やったものだ。もともとは―――あなたが造った里だろう。どうして、こんなことが出来る」

 

「ふむ……」

 

 マダラは腕を組み、肩を竦ませた。

 

「ペイン、というのが誰かは知らんが……」

 

 そう言いつつも、マダラはそれが長門のことだろうとあたりを付けている。

 そして、続けた。

 

「木ノ葉の襲撃は、オレが指示したものでは無いが―――。この里がこうなったのは、その程度だったから、としか言えんな。少なくとも……オレや柱間がいれば、こうはなるまい。長門がどれほど成長したかは知らんが……里を襲撃され、ここまで壊滅させられたといことは、木ノ葉がその程度だった(・・・・・・・)からだろう」

 

 ぴきり、と畳間の中に怒りが蓄積する。

 鋭く目を細めた畳間を見て、マダラは笑った。しょうがない奴だ、とでも言うように。それがまた畳間の神経を逆なでするが、同時に好都合であった。

 どこまで言ってもこの男は―――畳間を、弟としてしか、見ていない。

 

「イズナ」

 

 マダラが、畳間を呼ぶ。

 

「オレは千手畳間だ」

 

 強い意思を―――拒絶の意志を以て、畳間が名乗る。だがマダラは小さく笑う。

 

「千手……畳間、か。それは、その肉体の名だ。お前の魂は、チャクラは、確かに我が弟イズナのもの」

 

「……」

 

 畳間は眉を寄せる。

 マダラは畳間を見ているようで、見ていない。その先にいる、イズナの幻影を見ているのだ。

 

「イズナ。共に来い。共に……、我ら兄弟の力で、新たな世界を共に造ろう。一度裏切った(万華鏡写輪眼を持ち逃げした)ことは、水に流してやる。イズナ。共に来い」

 

 そして、マダラは語る。

 究極幻術・無限月読。全尾獣のチャクラを一つにし生み出す膨大なチャクラと、月の光を利用し、全世界の人間を平和という幻術の中へ落とすことで実現する、究極の平和。

 人はもはや、自らの力では平和という理想を実現し得ない。それが人を見限ったマダラの至った、唯一無二の平和への道であり、夢の先だった。

 畳間は訊ねる。

 

「あなたの話す理想は、確かに一理あるものだ。人とは、争いをやめることの出来ない獣の名だ。幻術によって争いという思想そのものを消し去れば、より早く、より簡潔に、かつ完璧に、忍びの世の憎しみは消滅し、永劫の平和が訪れる」

 

「その通りだ、イズナ。さすがは我が弟。よく分かっているではないか。では―――」

 

「―――だが」

 

 手を差し伸べようとするマダラを、畳間は言葉で制す。

 

「マダラ。あなたは今、『尾獣のチャクラを集め、利用する』と言ったな。ならば―――人柱力はどうなる」

 

 何を今更、とマダラが呆れた様に眉を上げる。

 

「尾獣を抜かれた人柱力は例外なく―――死ぬ。お前も、それくらいは知っているだろう」

 

「今代の九尾の人柱力は―――オレの、義息子だ」

 

「―――それが?」

 

「―――自分の子供を犠牲にする親がどこにいるッ!!」

 

 興味も無い、という様子のマダラに、畳間の怒声が飛ぶ。解放されたチャクラが、周囲の木々を軋ませるが―――マダラは涼しい顔で、その圧を受け流した。

 

「平和のための、致し方ない犠牲、というものだ」

 

「ならば貴様はオレの敵だ。―――子供たち()に仇為す者は許さん」

 

 ―――里に仇為す者は許さん。

 

 それはかつて、マダラが柱間に敗れ、その命を一度絶たれる際に、柱間がマダラに伝えた言葉だった。

 マダラはそれを聞いて、眉根を上げる。

 

「……柱間に毒されたか。仕方ない……」

 

 畳間が戦闘態勢を取る。

 しかしマダラは腕を組んだまま、少しだけ、笑った。柱間の真似事―――『おままごと』をしている弟が、可愛く見えたのかもしれない。だがそれは、兄への反逆を許す理由にはならない。

 マダラは組んでいた腕をほどいた。そして写輪眼を万華鏡へと変化させ、チャクラを解放する。

 

「このうちはマダラ()が。聞き分けの無い弟に―――少しだけ、灸を据えてやろう」

 

 どん―――と、里に衝撃音が響く。

 畳間が蹴りつけた木の幹は破壊され、畳間は瞬時にマダラへと肉薄した。

 先ほどはペインを吹き飛ばした程の拳が、マダラへ向かって放たれる。

 

「―――ふむ。威力は中々だ」

 

 畳間の拳は、マダラの掌に吸い込まれ、容易にその場に留められた。 

 畳間は掴まれた腕を起点に跳躍。マダラの頭部へ向けて回し膝蹴りを放った。

 しかし畳間の姿勢が崩れ、マダラを狙った蹴りは宙を切る。掴まれていた手を、マダラが勢いよく下へ降ろしたのである。

 上下逆さになった畳間は、その体勢でマダラの胸部へ膝蹴りを放つ。それがマダラの胸部へ届こうかというところで、膝の下を掴み取られ、膝蹴りは止められる。

 

 ―――火遁。

 

 畳間が高速で印を結び、口を膨らませ―――凄まじい勢いでマダラに振り回された畳間は、後方の樹界へと激突した。木々が圧し折られる音が大きく鳴り響く。

 多くの木々を貫通し、畳間は地面に激突した。少し遅れて放たれた畳間の火遁が、周囲の木々を燃やした。

 

 ―――水遁・爆水衝波。

 

 畳間が吐き出した多量の水が燃え盛る木々の火を鎮火させ、そして集まる。にわかにその形は龍へと至り、マダラへと殺到する。

 

「火遁は、少し精進が足りんな。うちはであるならば、もっと鍛えておけ」

 

 畳間が放ち、そして鎮火した火を見下ろして、マダラが言う。そしてマダラは印を結ぶ。その終わりは、虎。

 

「兄が手本を見せてやろう」

 

 ―――火遁・豪火滅失。

 

 マダラが吹き出した火遁は、畳間の水龍を蒸発させ、多量の蒸気を輩出しながら、しかしその勢いをそのままに、畳間の周囲の木々を燃やし尽くす。

 

(言いつけ通り、逃げたか。良かった)

 

 畳間は土遁を発動し、木々を土の中へと埋もれさせることで、これ以上木々が燃え上がることを防いだ。周囲にはもう、子供たちの気配はない。ナルトとシカマルは、きちんと役割を果たしてくれたようだった。

 

 ―――水遁・水断波。

 

 口を膨らませ、そして窄めて放った圧縮された水の刃が、高みから見下ろすマダラへと放たれる。

 マダラは苛立たし気に眉をあげ、その場から飛び降りた。

 木々が切断され、地へと落ちていく。

 空中のマダラを両断せんと首を動かす畳間だったが、マダラは水断波を須佐能乎で受け止める。そして、その体は宙へと跳ねた。

 

(水断波が須佐能乎を貫通する前に、須佐能乎を微妙に動かして、威力を殺したのか―――)

 

 戦国時代を生き、千手柱間と並び最強を謳われた忍者。その身につけた戦闘技術は、この時代のどの忍びよりも高い。

 

 降り立ったマダラが、僅かに苛立たし気に、畳間を見る。

 

「……おい」

 

 マダラが言った。

 

「イズナ、どうしたというんだ。それは、扉間の術だろう」

 

「千手扉間は、オレの師だ。彼の技術を、思想を、遺志を―――オレは受け継いだ」

 

「……」

 

 マダラは不愉快そうに、眉根を寄せる。

 

「扉間は……お前を一度、(あや)めた男だぞ」

 

「だからどうした」

 

「……」

 

 マダラが深く、ため息を吐いた。

 

「……扉間め。純粋な(・・・)イズナを、その姑息な話術でたらしこんだか。殺してやった(・・・・・・)が……もう少し、痛めつけてやるべきだったな」

 

「……なに?」

 

 聞き捨てならない言葉が、畳間の耳に届いた。

 

(殺してやった―――? 誰を? 千手、扉間を。マダラは今、そう言った。確かに言った。だが、千手扉間が……叔父貴が亡くなったのは―――。つまり―――)

 

 誰と戦ったのかも分らぬまま、事切れていた扉間。その体に残った大きく、鋭利な傷跡。しかし見当たらない凶器。記憶を失っていたダイ。すべての謎が、一本の線で繋がっていく。

 そして畳間は遂に―――霧隠れ撤退戦。語られぬ死闘。その真実に―――辿り着いた。

 

「マダラァああああああ!!!」

 

 畳間が怒号を以て、マダラへと突撃する。

 千手扉間は―――角都との戦いで意識を手放した畳間に忍び寄った、うちはマダラという魔の手を、その炎によって振り払ってくれたのだ。畳間が敬愛した師は、その最期の時まで、不肖の弟子を案じ、その未来を守るために、戦った。

 

「ほう」

 

 マダラが楽し気に、喉を震わせる。

 

「今のは良い踏み込みだった。体術は及第点だ。良く鍛えたな、イズナ」

 

 畳間の拳を回し受けで流したマダラが、畳間へと囁く。

 畳間は言った。

 

「―――オレに体術を叩き込んでくれのは、千手扉間だ」

 

「……」

 

 む、と楽し気だったマダラの顔色に影が差す。

 マダラは回し受けに使った腕を更に回し、畳間の腕を絡め取る。

 畳間はマダラの側に引き寄せられ、その顔に、マダラの膝蹴りが飛んできた。畳間は片手を顔とマダラの膝の間に挟み込み、その膝を受け止めようとするが―――掌のガードの上から凄まじい衝撃が突き刺さった。

 掌ごと膝蹴りを受けた畳間の身体は跳ねあがり、仰け反りながら宙を舞う。

 

「が―――」

 

 口の中を切ったのか、口の端と鼻から血を流しながら、痛みに呻く畳間は、仰け反るままに眼球を下へ動かして、マダラへと視線を送る。

 だが、マダラの姿は、既にそこには無かった。

 

「―――がッ」

 

 仰け反り宙を舞う畳間の横腹に、マダラの蹴りが突き刺さる。

 畳間は胃液を吐き出しながら、吹き飛ばされ、土遁によって盛り上がった地面に二度、三度と激突しながら、転がっていく。

 

「オレとしたことが……。少し灸が過ぎたか」

 

 痛みに悶え、震えながら立ち上がる畳間を、マダラは腕を組んで心配そうに見つめている。

 次の瞬間、畳間は螺旋丸を掲げ、マダラの後ろに立っていた。

 

 ―――飛雷神・螺旋丸。

 

 先ほどマダラの膝に触れた時、飛雷神のマーキングを付けておいたのである。そこを起点に飛んだ畳間が、無言で螺旋丸をマダラの背中へと叩きつける。

 

 ―――だが、マダラは横に僅かにずれることで、それを難なく躱した。そして伸び切った畳間の腕はマダラに掴み取られ、畳間は振り回されるように、前方へと投げ出される。

 畳間は前転しながら勢いを殺し、途中で体勢を変え、体の向きをマダラへと向け直し、掌を地面に擦り付け、滑りながら停止する。

 畳間が再びマダラへと襲い掛かる。

 

「飛雷神とはな……。扉間が好む、姑息な手だが……」

 

 飛雷神の術は扉間の得意な術で在り、イズナに致命傷を負わせた術だ。それをよりによって(・・・・・・)イズナが使うことに、マダラは良い気がしないのだろう。その表情は不快気に歪んでいる。

 

 ―――畳間の攻撃を、避けながら。

 

 マダラの写輪眼は素早く、不気味に動き回り、畳間の動き全てを追っている。

 そして時折、『ここが隙だぞ』と教えるかのように放った蹴りで、畳間は蹴り飛ばされる。当然畳間もガードをするが、その強力な蹴りはガードごと、畳間を蹴り抜いた。

 

「が―――ハッ……」

 

 うつ伏せに倒れた畳間が肘をついて起き上がろうとして、血反吐を吐いた。

 

 しかし畳間は立ちあがり、駆けだした。

 

 ―――飛雷神の術。

 

 時空間を跳躍しての、奇襲。

 マダラはすぐさま上体を横に逸らし、畳間の攻撃を避けながら、裏拳を放った。

 畳間はそれを写輪眼で見極め、須佐能乎を部位展開し、マダラの腕を圧し折らんと手刀を放つ。

 だがマダラは同じように須佐能乎を以て己が腕を覆った。

 畳間とマダラの須佐能乎の腕が激突し、衝撃波が生まれる。

 

 見つめ合う二人。

 畳間は唾を吐き出すように口を窄めた。

 

 ―――天泣。

 

 しかし畳間の放った天泣は、さらに展開された須佐能乎によって容易に防がれる。

 畳間は須佐能乎を纏い、マダラの腕と押し合っていた腕を一度下方へ潜らせてから、勢いよく上へと動かした。

 須佐能乎を纏ったマダラの腕が上方へと跳ね上がり、開けた空間に、畳間はもう一方の腕を突きだし、掌を広げる。

 

 ―――挿し木の術。

 

 発射された挿し木は、上半身を大きく傾けたマダラには避けられた。そしてマダラがその勢いのまま放った飛びまわし蹴りを受け、畳間は吹き飛んだ。直前で須佐能乎を纏い防御していなければ、肩の骨が砕かれていただろう。

 

「よく防御したな」

 

 マダラはえらいぞ、と言いたげに、吹き飛び倒れ込んだ畳間へ笑い掛ける。

 畳間は立ちあがり、マダラは笑みを浮かべる。良く立った―――そう、褒めるように。

 

 瞬身。畳間が加速し、マダラへと拳を振るう。

 正拳―――跳ね上げられる。正拳を引いての、膝蹴り―――横へ受け流された。崩された体勢を利用しての後ろ回し蹴り―――仰け反る形で避けられる。その勢いのまま放った裏拳―――腕で防がれる。

 そしてマダラの放った回し蹴りに、畳間は再び蹴り飛ばされた。

 

 ―――その、繰り返し。

 

 再び蹴り飛ばされて地に転がった畳間を見ながら、マダラはこきり、と首を鳴らした。

 

(蘇生後の、ウォーミングアップのつもりか……。これほどまでに力の差が―――)

 

 畳間が悔しさに歯を喰いしばった。

 

 ―――実際には、ここまでの力の差は無いだろう。

 だが、今は状況が悪かった。畳間は影クラス―――しかも、大規模攻撃を行える忍者との三連戦の後だ。背後には常に、守らなければならない者がいて、必要以上のチャクラと集中力を消費してしまっている。

 畳間が万全の状態であれば、ここまで一方的に、遊び感覚でいなされるような戦いには、ならなかったはずだ。

 

 畳間は再び駆けだした。

 時折虚実を混ぜ、飛雷神の術による強襲も仕掛け、須佐能乎によるカウンターを試み、挿し木や天泣を用いた奇襲すらも行った。今ある手札全てを切って、マダラを打ち倒さんと戦った。

 

 ―――だが、そのすべてが通用しない。威力が足りない。速さが足りない。読みが足りない。今の畳間では、うちはマダラという伝説に通用するだけの力を、発揮できない。ただ一方的に、嬲られた。

 いや―――嬲る、という意識すら、マダラには無いのだろう。やんちゃな弟に、指導をしてやっている。ただ、それだけ。幼い頃にそうしていたように、マダラは今、構ってちゃん(・・・・・・)な弟の望み通りに、稽古を付けてやっているのだ。

 

「―――っ」

 

 畳間は再びマダラに殴り飛ばされて、宙を舞った。あたりに、血が飛び散った。

 マダラは追撃を仕掛けず、静かにイズナを見守っている(・・・・・・)

 

 それでも―――畳間は立ちあがる。

 大きく動く肩。荒い息遣い。腫れあがった顔。流れ落ちる血液。

 それでも―――畳間はマダラを睨みつけることを、止めなかった。

 

「イズナ。そう、意固地になるな」

 

 畳間は荒い息をする。

 

「先も言ったが……共に、夢の先へ行こう。お前がそう言えば、それで終わりだ。すべて、水に流すとも」

 

「ナルトを……九人の人柱力を、殺してか」

 

「結果的に死ぬだけだ。わざわざ殺すことは無い」

 

「同じだろうが―――ッ」

 

 震える足を抑えつけて、畳間は再び立ち上がる。

 

「……ふむ」

 

 困ったように、マダラが息を吐いた。

 

「―――マダラ様」

 

「ゼツか。何の用だ」

 

 マダラの傍の地面から現れたゼツが、マダラへと声を掛ける。

 今楽しいところなのに邪魔をするな、と言いたげに、マダラの声音は不快気だった。

 

「始末した方が、よろしいかと。こいつは―――」

 

「―――黙れ」

 

 ゼツが畳間を速やかに殺すことを進言し―――マダラが放ったチャクラによって、ゼツは口を噤んだ。

 

「二度は無い」

 

 マダラが冷たく言った。そこに込められた殺意は、本物だった。ゼツはマダラの言葉通り黙り、地面へと消えていく。そのうちに、何かしらの思いを隠して。

 

「さて、イズナ。繰り返すが―――そろそろ、決めたらどうだ? 無限月読の世界は、完璧なものだ。望むなら、すべてが手に入る。親も、家族も、恋人も、兄弟も、何もかもだ。お前の好きなように、世界を変えられる」

 

 業腹だが、とマダラは続けた。

 

「お前が扉間を慕っているというのなら、無限月読の世界にて、共に在れば良い。……そうだ。お前の恋人の―――山中の娘。思えば呪印の反応がないが……、どうも死んだらしい(・・・・・・・・・・)な? 寂しかろう、辛いだろう。だがな、イズナ」

 

 マダラは良いことを思いついたと言わんばかりに、微笑んだ。

 

「無限月読の世界であれば―――あの娘との再会も叶う。あの、八門遁甲の小僧はどうだ? まだ生きているのか?」

 

「―――」

 

 畳間がぴたり、と止まる。

 これは効果のあるワードだったかと、マダラは笑う。

 

「そうか。辛かったな(・・・・・)、イズナ。友を失うというのは、辛いことだ。だが―――」

 

 マダラが続きを口にしようとして―――。

 

 ―――畳間の拳が、マダラの頬を殴り抜けた。

 

「―――速い」

 

 仰け反り殴り飛ばされ、頬の痛みを感じながら、しかしマダラは余裕をもって冷静に、畳間の動きを認識していた。

 続けて畳間が放ったのは、仰け反るマダラの腹部を狙う蹴り。マダラはそれを両腕をクロスさせて防ごうとして、畳間の身体が一瞬にして位置を変える。

 

「―――飛雷神か。それに……影舞踊」

 

 仰け反り飛ぶマダラの背後にぴたりと張り付いた畳間は、瞬時に地面を両手で叩きつけ、マダラを蹴り上げる。

 そして上空に打ち上げられたマダラの傍に、畳間は再び、飛雷神の術で姿を現した。

 

 畳間が鋭い蹴りを放つ。

 須佐能乎を部分展開させ、畳間の蹴りを受け止めようとしたマダラだったが、しかし畳間の蹴りは須佐能乎ごとマダラを蹴り飛ばした。

 そして、飛んでいくマダラのすぐそばに、飛雷神の術で移動し、再びマダラを蹴り上げる。

 

「―――あれは」

 

 畳間の戦いを遠方から見ていたリーが、目を見開いた。それは八門遁甲の第五門を開いたときにリーが使える、裏蓮華の動き。

 飛雷神の術による、疑似的な高速連続攻撃を行い、マダラが上空へと打ち上げられたとき、畳間はマダラの上に飛んだ。

 そして拳を握り締め―――。

 

「―――あんたは、狂ってる」

 

 ―――振り下ろす。

 

 凄まじい勢いで地面に叩きつけられたマダラの身体が、地面にめり込んだ。

 土が噴水のように噴き上がる。

 そして―――何事もなかったかのように、マダラが立ち上がった。ぷっと、血を吐き出す。

 

「ははははは! 今のは中々に効いたぞイズナ!! どこまで(ひら)ける!? しかし―――まさかお前が、八門遁甲を会得しているとはな!」

 

 畳間の攻撃が効いた様子の無いマダラは高らかに笑い、そして次に真剣な表情で、畳間を見つめる。

 

「だがな、イズナ。禁術を不用意に使うべきではない。それに―――残された時間は少ない。今一度、よく考えろ」

 

「―――」

 

 畳間が歯を喰いしばる。今出せる全力で、このザマだ。

 なにせマダラは完成体の須佐能乎も、輪廻眼の能力も使っていない。ただただ体術のみで、畳間を圧倒して見せている。

 

 ―――それでも。やるしかない。やらなければならない。

 

 畳間が駆け出す。

 

 ―――オレは。

 

 畳間が殴り飛ばされ、血が噴き出る。

 

 ―――木ノ葉隠れの里の。

 

 畳間が蹴り飛ばされ、血反吐を巻き散らす。

 

 ―――五代目、火影だ。

 

 そして畳間は倒れ、動かなくなった。その瞳から、徐々に光が消えていく。

 

「「―――おとうさん!! 負けないで!!」」

 

 そのとき―――重なった幼い叫びが、里全体に響いた。悲痛を孕んだ、幼い声だ。

 

(……鏡間。心乃……)

 

 暗い夜、月明かりが照らし出す死の舞台を、木ノ葉の皆は固唾を呑んで見守っていた。

 傷ついても、傷ついても。倒れても、倒れても。里を―――家族を守るために立ち上がる五代目火影の姿を、皆は目に焼き付けた。

 

「火影様!!!」「五代目!!」「火影様!!!」「火影様!!!」「五代目!!」

 

 里の家族たちが、畳間の名を呼ぶ。重なり大きく響いた声は、夜空へと届く。

 

「―――おっちゃんッ!!」

 

 そして―――ナルトの叫びが、畳間の身体に染みわたる。

 

 ―――おっちゃん!! 

 

 ―――二代目様と呼べ!!

 

(ああ……。そうだ)

 

 脳裏を過った、かつての記憶。 

 畳間がゆっくり、腕を動かした。少しずつ少しずつ、腕に力を込める。

 

「……まるで呪いだな」

 

 マダラが嘲笑する。

 

「なに……?」

 

 畳間の呟きに、マダラが反応を示した。

 

「そうだろう。傷ついたお前を、なおも立たせ、戦わせようとする。その声を呪いと呼ばず、何と呼ぶ」

 

 一理、ある。だが、マダラの声は、畳間の心には届かない。

 なぜなら―――。

 

 ―――なにをしてる畳間!! 負けるな!! 立て!! 立てぇえええええ!!

 

 泣き虫で、口うるさい妻の涙声が、ずっと―――この耳に届いて、離れない。

 

 畳間()の悲惨な姿を見て、あのアカリが正常でいられるはずがなかった。たくさんの涙を滂沱と流しながら、しかしアカリは叫び続ける。

 五代目火影の妻として、家族を守るという忍道を貫く、『いち忍び』の妻として―――その役割を果たさんとしている。

 

 ―――アカリ様……ッ! く―――っ!! 火影様!! 五代目様!! お立ちください!! 

 

 ―――火影様! 火影様!! 火影様!!

 

 そんなアカリを見て―――涙を流しながら、胸を刺す悲痛に耐えるその姿を見て―――木ノ葉の者達の声援は、一層の激しさを増す。

 

「騒がしいな……」

 

 そんなことをしても、何が変わるわけでもないと、マダラはこの声を聴いてもただ、鬱陶し気に目を細めるのみ。

 

 ―――畳間ァ……ッ!!

 

 アカリの声が、再び響き渡る。

 

「―――立て!! 立てェーーッ!! お前は火影だ! 何があっても、この里を守るんだ!! イナと(・・・)約束したんだろう!! お前が―――お前が……ッ!!」

 

 うっ―――と、アカリの言葉が詰まる。

 

(イナ……。そうだ。彼女と、血の約束を結んだんだ。里を守ると、約束をした―――)

 

 畳間の濁っていた瞳に、再び炎の意志が灯る。

 何で知ってるのかな、なんて思いながら、畳間は体を震わせて、立ち上がろうとする。

 

(―――畳間……ッ!! 畳間―――ッ!!)

 

 必死に―――皆を守るために戦おうとする大切な人の姿を見て、アカリは一瞬だけ唇を戦慄かせ、言葉を詰まらせるが、それでも喉が壊れる程の大声を、叫んだ。

 

「―――倒れることは許さん……ッ!! お前が倒れたら、誰がこの里を守るんだ!! 立ち上がれ!! 立ち上がれ!!! 木ノ葉隠れの里の、五代目火影!!! 貴様の―――っ。う―――っ。貴様の……っ、使命を果たせ……ッ!! ―――たとえ……ッ!! 例え―――ッ!! その身が、滅んでもだ……ッ!!」 

 

 ―――アカリはそう、言い切って。

 

「うぅ……畳間ァ……ッ!!! 畳間ぁ……っ!!」

 

 その胸を刺す痛みと悲しみに耐えきれず、震える膝から力が抜けて、アカリは崩れ落ちた。流れ落ちる多くの涙が、アカリの足元を濡らす。

 

「アカリさん―――ッ!!」

 

 アカリの傍で、同じように涙を流すイルカが、アカリの身体を支えた。

 

(なんでかな……良く見える……)

 

 畳間の、後ろから掛けられる声だ。本来ならば、見えるはずが無い景色だ。だが、畳間の眼には鮮明に、その光景が映っていた。

 皆が悲しみに耐え、五代目火影という『父』へ声援を送る姿が、確かに見えた。

 

「―――『力』だ」

 

 項垂れたまま、しかし畳間は―――力強く、立ち上がった。

 

「なに?」

 

 畳間の呟きのような声を聴き、マダラが訝し気に声を漏らす。

 畳間はゆっくりと上体を起こした。ふらつく体を意志の力で引きずり戻し、畳間はまっすぐに、マダラを見据えた。

 

「この声を、何と呼ぶか……。その、答えだよ」

 

「……何を言うかと思えば。良いか、イズナ。『力』とは、物質の起こす事象のことだ」

 

 畳間の言い分を聞き、マダラは呆れた様に言った。

 

 ―――ああ。

 

 それを聞いて―――畳間は静かに、頬を濡らした。

 変わり果ててしまった―――兄を想って。

 

兄さん(・・・)……。なんて……労しい……」

 

「……イズナ?」

 

 突然泣き出したイズナに、マダラは動揺を示す。

 その姿が、かつての姿のままだったから―――畳間はなおのこと、変わり果ててしまった兄の心を想い、胸を刺す痛みに打ちのめされた。

 

 ―――もしかしたら。

 

 心のどこかで、そう、思っていた。そう、願っていた。

 マダラの言動は合致せず狂っているが、(イズナ)を想う心はきっと、変わっていない。平和を目指す心は確かに、本物なのだろう。

 そしてその平和を目指す思いは―――一番下の弟の死より、生まれ出た、本心からの悲痛な願いだったはずだ。―――なのに。

 

 ―――どこでそれが、こんなふうに狂ってしまったのか。

 

 ―――どうしてそれが、ここまで歪んでしまったのか。

 

「昔の兄さん(・・・)なら、オレの言葉の意味が分かったはずだ。昔の兄さん(・・・)なら、この声に宿る力に、気づいたはずだ―――ッ!!」

 

 当時のイズナはマダラの本心に気づかず、ただひたすらに憎しみと争いに生きたが―――マダラは、違った。

 いつもずっと、千手柱間と手を取り合った先にある平穏な未来を、心のどこかで望み続けていた。

 一族のしがらみ、一族の憎しみ。そう言ったものに雁字搦めにされて、身動きを取れなくなっていただけで―――本当は、うちはマダラという人は、心の優しい人だった。

 同世代の少年と、水切りをしてはしゃぐ、立ち小便をして無邪気に笑う、落ち込んだ友を気遣う、そんな―――愉快で穏やかな人だったのに。

 

 だから、もしかしたら。

 もしかしたら、昔の―――イズナが見ようとしなかった、本来のうちはマダラが、まだ残っているのではないかと、期待していた。

 平和を望む、穏やかな兄。風邪を引いたイズナのために、神社にお参りに(かよ)う、優しい兄。

 

 ―――どこで、狂ってしまったんだ。

 

 やはり、イズナの死か。それとももっと前―――イズナが憎しみに染まり、引き返せないところまで、行ってしまったからだろうか。

 

 ―――どこで……。

 

 畳間の変化に気づいたのか、マダラはふいに目を細めた。

 そして重々しく、口を開く。

 

「……イズナ。この世界は、柱間の遺した、矛盾だらけの世界だ。柱間の国造りは、大きな矛盾を抱えていた。人は争いを望みながら平和を望み、平和を望みながら……争いを望む。人とはそういう矛盾した生き物で―――片方だけを望めば、それはもはや人ではない。人は争いの螺旋からは逃れられん。人は何かを守るためには、何かを犠牲にしてしまう―――『本当の夢』の世界以外はな……。それを、お前は見てきたはずだ」

 

「―――そうだな……」

 

 畳間は僅かに頷いた。確かに、たくさんの矛盾を見て来た。たくさんの痛みを抱えて来た。前世も合わせれば、もう柱間の歳も超えている。たくさんの闇を、畳間は見て来た。だが―――。

 

「この世界がどれだけの矛盾を抱えていても。千手柱間の『夢』が、どれだけの矛盾を抱えていても。オレはこの世界を……」

 

 そして畳間は優しく―――微笑んだ。

 

「友と、家族と、そして……兄さん(・・・)。あなたと共に生きたこの世界を―――愛している」

 

 畳間の脳裏に浮かぶのは、たくさんの思い出。

 兄と駆け抜けた日々。祖父や兄貴分と遊んだ日々。師にしごかれた日々。友達といたずらをした日々。恋をして、愛を知り、子を儲け、父となった。

 辛いことはたくさんあった。だけどそれ以上に―――。

 

「オレは二度の人生で、たくさんの絆を知った。たくさんの愛を貰った。この胸に宿る温もりを、この思い出を消すことなんて出来ない。無かったことになんて出来ない。……兄さん。あなたが孤独に、修羅の道を行くならば―――。オレは弟として……あなたを止めなければならない。だけど……一人にはしないよ。共に逝こう(・・・)兄さん(・・・)

 

(あのとき、サラダ(サスケ)は言った。夢のようだ(・・・・・)、と)

 

 それはつまり―――別の未来のサスケにとってこの里の姿は、本来在りえない(・・・・・)ものだった、ということだ。

 あのサスケは、この世界では当然の様にあった、『当たり前の幸福』を、奪われたか、あるいは与えられずに、育ったということだ。

 

 祖父と遊ぶ孫。

 親と手をつなぎ歩く幼子。

 切磋琢磨する友、兄弟。

 それらがすべて、失われた世界。

 それらを、『夢』として憧れてしまうような、そんな過酷な人生を送ったということだ。

 

(オレが負ければ、すべてが『儚い夢』になる。今を生きる子供たちが大人になった時―――『そんな幸せな過去があったな』と、辛苦と共に思い出す、『失われた幻』に変わってしまう。この里のすべての子供たちが、サラダ(サスケ)と同じ哀しみの道を、歩んでしまうことになる―――。それどころか―――)

 

 すべてを幻術に変えるというのならば、今この世界にあるすべてが、本当の意味で幻へと変わってしまう。未来のために戦った先人たちの遺志も。我が子のために戦い散った英雄たちの思いも。戦争の痛みを乗り越え、ようやくたどり着いた幸福な日々も。そこに在る温もりも。すべてが、無に帰すことになる。

 

 ―――確かに、マダラの言うことには一理ある。だが、これまで連綿と受け継いできた願いを、託されてきた思いを、無為にすることは出来ない。それだけは、絶対に。例え、この命尽きようと。

 

オレ()の子供たちが大人になり―――『いつかの日か懐かしむ今』を。『夢のようだ』などと―――言わせぬために。子供たちが大人になり、やがて生まれる幼子たちが―――今までと同じ幸せの中を、生きられるように)

 

 シスイや、鏡間、心乃がいつか大人になった時。そして結婚し、子を設けた時。

 木ノ葉隠れの里が滅び去り、ただ哀しみと共に在りし日の幸せを懐かしむなど―――そんなことは、あってはならない。昔は良かったなどと、言わせてはならない。

 まだ見ぬ孫に、ひ孫に、子孫たちに―――この平和な世を、残すために。

 

「―――忍びの世のため(・・・・・・・)木ノ葉のため(・・・・・・)ッ!! ―――マダラ!! お前はここで、オレが殺す!! この命に代えてでも―――ッ!!」

 

「……」

 

 無言で見つめるマダラ。

 どくん、と畳間の心臓が大きく脈を打つ。

 

 ―――うちは、イズナ。

 

 最初は、拒絶した。次に存在を認め、受け入れ、分かり合い―――そして今、二人の魂は融合し、一つになった。

 

 今なおも響き渡る声援。

 五代目火影の勝利を信じて疑わない里の家族たちの思いが、畳間(イズナ)の身体に染みわたる。

 枯渇していたはずのチャクラが、力が、漲って来る。

 

 ―――失われた仙術チャクラが、畳間の身体に溢れだす。

 

「―――なに? これは、柱間の……」

 

 マダラが瞠目する。マダラの眼には、畳間の身体から溢れる千手柱間のチャクラが、映っている。

 考えてみれば、分かることだった。千手柱間が孫のために残したチャクラは、期せずして、二人の間で分かたれた。

 

「―――ああ。そうだったのか」

 

 ―――無くしたと思っていた。あのとき―――命を捨てて角都を討とうとしたとき。その身代わりになって、消えてしまったのだと思っていた。

 

「―――ずっと、そこにいてくれたんだな。爺ちゃん(・・・・)

 

 畳間の心臓が、大きく鼓動する。

 角都の心臓と分割されていたチャクラ。しかし今、角都は死に、畳間のかつての心臓は消滅した。

 柱間が畳間に―――愛すべき孫に残した(火の意志)は今、長き時を経て、一つに戻る。

 畳間は刮目し、討つべき敵を見据え―――すべてのチャクラを練り上げる。

 畳間の器から漏れ出し、噴き上がるチャクラが暴風を生み出した。

 

「これは―――」

 

「―――仙法」

 

 畳間が両手を合わせる。

 

「―――木遁」

 

 火影装束が暴風に揺れる。

 五代目火影の名が、月明かりに照らされる。

 その大きな背中を、里の皆が眼に焼き付ける。今、初代火影すらも超えんとする、五代目火影の―――その大きな愛を、思いを、絆を、人々は胸に刻みつける。

 

「―――真数千手」

 

 生み出された巨大な木像。それは里の大半が消滅したがゆえに、被害を気にせず、里の中に呼び出せたもの。

 

「―――なにッ」

 

 マダラが初めて、驚愕と焦りを見せる。

 油断、慢心。その隙を畳間は逃さず、そして全力を出す隙は、与えない。迎撃の体勢は、整えさせない。この勢いのまま、うちはマダラという脅威を撃滅する―――ッ!!

 

「―――頂上化物ッ!!」

 

 マダラへと寸分の狂いなく、千の手が降り注ぐ。

 

「―――柱間ァ!!」

 

 壮絶な笑みを浮かべながら、マダラは完全なる須佐能乎を展開し、畳間の放つ千の手を迎え撃つが―――体勢の整っていないままの迎撃は、全力で放たれた真数千手の物量と質量を前に、僅かな抵抗しか許されなかった。マダラはその須佐能乎ごと、真数千手によって押し潰される。

 

 ―――千の手の流星。その終演。畳間は維持が困難となる真数千手を消して地に降り立つと、肩の力を抜いて、大きく息を吐いた。

 戦いの終わり。木ノ葉隠れの里の勝利。うちはマダラの、敗北。九尾事件以来の―――九尾事件すら超える、木ノ葉史上最悪の戦いは、五代目火影の奮戦により、勝利を以て幕を閉じた。

 犠牲は大きい。失ったものは多い。そして、それらは二度と戻らない。それでも、木ノ葉隠れの里は、未来を勝ち取った。

 

 ―――偉大な英雄、五代目火影の手によって。

 

「―――や……。やったぁ!! 火影様の勝ちだ!! オレ達の火影様が、勝ったんだ!!」

 

 誰かの言葉を皮切りに、木ノ葉の家族たちが歓声を大きく上げた。次々に飛ばされる祝福の声。声援。安堵。歓喜。多くの声が夜の里に響き渡り、

 

「火影様!!」「五代目様!!」「あのマダラを倒すなんて!!」「五代目様万歳!!」「火影様万歳!!」

 

 響き渡る歓声は。

 

「―――え?」

 

 突如として止まり、夜の里が静まり返る。

 

「―――か、は」

 

 畳間の口から、赤い何かが、噴き出した。

 

「―――さすがに驚いたぞ、イズナ……。まさかお前が、真数千手まで使えるとはな」

 

 ―――畳間の胸から、鮮血と共に、青白い刃が、飛び出していた。

 畳間は体を震わせながら、壊れた人形のような動作で首だけで振り向き、そしてその後は眼球のみ動かして、声のした方向へ―――背後へと、視線を向ける。

 

「あ―――。マダ、ら……」

 

 そこには畳間の背中に張り付くようにして、その背中に須佐能乎の刃を突き立て、押し込んでいるマダラの姿があった。

 なぜ、と畳間は眼球のみを動かして、マダラがいたはずの―――真数千手によって消し飛ばされたはずの場所へ、視線を向ける。

 

「―――木遁、分身……?」

 

 真数千手によって破壊された場所には―――砕け散った、人の形をしていたであろう、樹木の破片。

 それはかつて、終末の戦いの折、マダラが柱間に敗北した時の―――再演だった。

 

 マダラが木遁を使えるはずが無い―――しかしその疑問は、にわかにあふれ出したマダラのチャクラの中に混ざる、千手柱間のチャクラを感じ取ったとこで、霧散する。

 

 ―――ペインと同じ、柱間細胞の適合。

 

 畳間は気づいた。

 暁に柱間細胞を持ち込んだのは―――うちは、マダラだったのだと。もしかしたらそもそも、暁自体が、マダラが作り上げた組織なのかもしれないが。

 あの終末の谷の戦いを何らかの術―――イザナギだ―――で乗り越えたマダラは、その際に何らかの方法で奪い取った柱間の細胞を培養し、己の身体に移植した。そして、木遁を身に着けたのだ。

 驚愕と痛みに目を見開いた畳間の後ろから、マダラの息遣いが聞こえて来る。それは確かに、深い哀しみを含んだものだった。

 

「―――言ったはずだ。……何かを守るためには、何かを犠牲にしてしまう。『本当の夢の世界』に行く以外はな。そして―――『夢』に仇為す者(・・・・)は……許さん(・・・)。例えそれが―――」

 

 冷たい声音。冷たい視線。先ほどまでの―――イズナを受け入れようと開いていた心は、既に冷え切り、閉じ切っていた。

 

「―――友であろうと、我が子であろうと。―――兄弟であろうと(・・・・・・・)……!」

 

 マダラが須佐能乎の刃を引き抜き、畳間の身体から鮮血が噴き出す。

 がくり、と畳間は膝から崩れ落ち―――膝立ちの姿勢で、糸の切れた人形のように、力なく、項垂れた。

 

「そして……言ったはずだ。残された時間は、少ないと」

 

「―――」

 

 肺が潰された―――畳間は激しい痛みと息苦しさに悶えながら、顔をあげた。

 畳間の視界が、痛みと出血多量によって霞みだす。疲弊した体、失われた血液、消耗したチャクラ。再生を行うだけの体力は、もはや残っていない。

 残された時間は(・・・・・・・)少ない(・・・)。もう間もなく、畳間の命は尽きるだろう。

 

(―――だが……ッ!! こいつだけは―――ッ! 必ずッ……! 連れて逝く……ッ!!!)

 

 カッ―――と、畳間が眼を見開いた。

 そして畳間は、自ら心臓に施した呪印を解呪せんとチャクラを込める。

 

 ―――裏・八卦封印。

 

 自らの死と引き換えに、周囲の物質を空間ごと引きずり込んで、二重に重ねた異空間に封印する、畳間の最終禁術。

 例えそれが尾獣であろうと逃れることはできず、穢土転生などの術で呼び戻すことすらも出来ない―――究極の封印術。この最後の術を以て、うちはマダラを己が遺骸と共に、この世ならざる場所に永遠に隔離する。

 

 ―――うわぁあああああ!!

 

 そして響き割った、声。

 

 ―――ナルト。

 

 最期の術を発動しようとした畳間は、しかし己が耳に届いた愛し子の声に、その発動を戸惑った。戸惑って、しまった。

 

(ナルト―――ッ!!)

 

 何故、来た。何故、来てしまった。何故、言うことを聞かなかった。何故、アカリはナルトが飛び出すのを止めなかった。アカリは、止められなかったのか。

 

 ナルトは、こちらへと駆けて来る最中に、その姿を変貌させていった。

 チャクラの尾が、三本、四本、五本、六本、七本、八本―――。次々に生え伸びて来る尾の数は、今のナルトの中の九尾のチャクラ量、ナルトへの影響力に比例する。

 ナルトの身体はにわかに人の姿をなくし、どす黒いチャクラに覆われた。やがてその体は小型の九尾のような獣染みたものへと変わり、ナルトの面影は―――なくなった。

 

「―――九尾か。わざわざお前の方から来てくれるとはな。存外、気に入られていたようだ。飼い主(・・・)として喜ばしいぞ」

 

 マダラはその両目を輪廻眼へと変化させる。そして須佐能乎を展開し、ナルトの突撃を食い止める。

 そして襲い掛かる九尾の尾に弾き飛ばされたマダラは、空中で回転し、体勢を正し、ナルトを―――九尾の人柱力を見下ろした。

 九尾の人柱力(・・・・・・)は傷つき死にかけている畳間へ見向きもせず、ただ憎い相手を睨みつけ、激しい咆哮をあげた。そして―――九尾の人柱力(・・・・・・)は口を大きく開けて、その口の前にどす黒いチャクラを溜め始めた。

 

「―――尾獣玉か。は、畜生風情が、飼い主の手を噛むつもりか?」

 

 嘲笑を浮かべたマダラは、しかし次の瞬間には冷徹を以て、九尾の人柱力(・・・・・・)を鋭く見据えた。

 

「―――躾が必要だ」

 

 マダラは印を結ぶ。

 

「―――木龍の術」

 

 木人までは出せんか、とマダラは小さく呟いて、しかし木龍を難なく生み出した。

 生み出された木龍はにわかに九尾の人柱力(・・・・・・)へと襲い掛かり、その体を縛り上げた。

 もがく九尾の人柱力(・・・・・・)の『醜さ』に、マダラは嘲笑を浮かべる。

 

「―――やけに小さくなったな、九尾。不完全な封印をされたか? あるいは術者が未熟だったか……。完全な九尾であれば、この程度の縛りなど、容易に抜け出せたものを」

 

 マダラは自身の『今の』木龍が、柱間に比べて劣るものだということを、自覚している。だが、今の九尾の人柱力(・・・・・・)には、この程度で十分だという確信もあった。それは九尾の人柱力(・・・・・・)が纏う九尾の力が、かつてマダラが使役していた頃に比べ、半分以下に落ち込んでいたことに気づいていたからだ。

 

「―――さて、イズナ」

 

 木龍に縛り上げられ、足掻くことしか出来ない九尾からつまらなさそうに視線を切ったマダラは、再び畳間へと近づいて行く。

 

「―――なにか、よからぬことをしようとしていたようだが……。無駄なことだ」

 

 そしてマダラは、畳間の前に立った。

 マダラは、苦し気に睨みつけて来る畳間を哀し気に見つめ、その頭を掴むと、無理やりに持ち上げる。

 マダラの手によって持ち上げられた畳間の身体が、力なく揺れた。

 

 ―――そして。

 

 畳間の身体から、最後の力が抜けていく。

 

「―――あ」

 

 最期の術を放つために貯めていた仙術チャクラが、畳間の身体から吸い取られていった。そして、畳間の中の残された力が、マダラの中へと流れ込んでいく。

 激しい脱力感、倦怠感。畳間の意識と、顔の隈取が消えていく。

 

「―――これが仙術チャクラか。なんだ……この程度の力か……」

 

 マダラの身体に、畳間から奪い取った―――千手柱間から受け継がれ、畳間の生の中で磨かれた、完全なる仙術チャクラが満ち溢れる。

 

 そして―――マダラは畳間の身体を振り上げ、上空へと放り投げた。

 

 畳間の身体が力なく、宙を舞う。

 マダラはそんな畳間を、やはり哀し気に見つめ―――両掌を合わせ、指を組んだ。

 

「封印術・地爆転生」

 

 宙へ投げ出された畳間のさらに上空に生み出された超重力場が、畳間の身体を吸い寄せていく。既に意識が朦朧としている畳間に、そこから逃れる術はない。

 そしてその超重力場は地面から岩を剥がし、引き寄せていく。

 畳間の身体を、多くの岩石が覆い―――。

 

(―――アカリ)

 

 ―――畳間の身体が、岩石の中へと、消えた。

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