綱手の兄貴は転生者   作:ポルポル

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三代目雷影

「扉間ァ……」

 

 暗闇の中、不気味な巨像から伸び出たコードに体を繋いだ皺だらけの老人が呪詛を吐く。やせ細った体、暗闇の中に不気味なほどに白い体が浮かび上がった。

 ギリ―――と、寄る年波の中で不揃いとなっていく歯を噛みしめた。

 

「やってくれたな……扉間ッ」

 

 千手畳間。千手柱間の孫にして憎き扉間の弟子たる若造が、今は亡きうちはイズナ―――老人の愛しき弟の転生体であると老人が知ったのは、己の体がもはや自力では動くことすらままならぬものとなってからだった。老人は、己の手で弟を連れ去ることのできぬ歯がゆさを堪え、しかし再び兄弟共に手を取り合い”無限の夢”へ向かえる日を待ちわびて、イズナの存在を知ったその日から、千手畳間を闇へ落とそうと、あらゆる策を弄して来た。

 

 柱間の息子夫婦―――畳間の親を殺した。弟を殺した。仲間を殺した。畳間の教師(カガミ)を殺した。恋仲と思しき女を操り仲間殺しの大罪を犯させ、そしてその裏切りを、山中一族の秘術に依って直接知らしめた。可能ならば妹である綱手も殺しておきたかったが、老人にとっては大変憎らしいことに、”あれ”の傍には、若き仙人が常日頃から寄り添っていた。今、仙人を相手取る余裕は、老人にはない。若造のほうはともかく、その裏にいる蛙仙人の存在が介入を戸惑わせた。また一番の友であろう、はたけサクモを殺すには手札の少ない今の老人には荷が重く、また畳間の祖母たるミトは厳重な警戒もあって殺すことは叶わなかった。しかし、その死で畳間を闇に染めえる者たちは出来る限り、あらかた殺しきったはずである。

 そして畳間のもう一つの故郷たる渦隠れに疑心を向けさせ、手柄を取らせたふりをして、それが幻だったことを突きつけ、自責の念を抱かせた。さらに畳間の悪評を流し里から孤立させ、うちは一族との軋轢を深めさせ、憎しみを育み、その元々脆い精神に二重三重の揺さぶりをかけた。追い詰めて、追い詰めて、追い詰めて来た。畳間は老人の手のひらの上で踊り続け、増長し、疲弊し、その精神は遂に限界を迎え、里を抜ける寸前、というところまでこぎつけた。

 

 あと一歩だったはずだ。

 計画は順調だった。

 確かに、あと一歩だった。

 ―――だというのに。

 

「小娘っ……」

 

 すべての計画が水の泡。ご破算である。

 

 原因は分かっている。

 

 ―――うちはアカリ。

 まことしやかに、”木の葉の青い鳥”と囁かれ始めているうちはの小娘。老人はアカリを、取るに足らない雑魚だと思っていた。もともとが己を捨てたうちは一族の末裔。愚かな一族の、愚かな、弱い女。老人が気にする価値もなかった。強いてあげるならば、殺しておけば、落とす役に立ちそうではあると、それくらいである。実際うちはカガミ殺害の際についでに殺しておこうとも思ったが、それはうちはカガミによって阻止された。そのときは“ネズミ一匹”逃がした程度にしか思っていなかったが―――それが、ここまで高くつくとは。計画に支障をきたす毒物になるとは、考えてもいなかった。

 後一年気づくのが早ければと、思わずにはいられない。後一年。後一年だけ早ければ、うちはアカリは未だ”仙人”へ到達することは叶わず、千手畳間を止める者はいなくなり、その精神を容易に落とすことが出来ただろう。

 

 どこで歯車が狂ったのか。そんなことは分かり切っている。

 最初からだ。最初から、この筋書きは定められていた。

 

「扉間ァ……いつもいつも、貴様が……っ」

 

 憎きは、二代目火影・千手扉間。

 あの男が命を賭して稼いだ、子供が大人になるために必要な成長の時間。己の死をもって隠し、守り通した可能性という光。それが、千手畳間の明暗を分けた。闇に眠る語られぬ死闘―――千手扉間の死の真相を、あの戦いの真の意味を理解する者は、老人のみ。当の畳間でさえ、師より受けた大いなる愛を知ることは、決してない。

 だが―――畳間は扉間より受けた愛と恩を、以後、最高の形で返していくことだろう。本人が気づかぬまま、しかし千手扉間がそうあって欲しいと望んでいた未来へ、畳間は進んで行く。もはや、畳間をこちら側に引きずり込める可能性は無いに等しいといえる。老人の手に唯一残った手札―――山中イナは、しかしうちはアカリの手に依って阻まれるだろう。そして今の老人に、うちはアカリを抹殺するだけの手札は無い。

 

「扉間ァ」

 

 ぎりと、噛みしめる。口の端から、乾いた肌を血が伝った。

 

 

 

 

 雲隠れの里。木の葉隠れの里が初代・二代目火影時代に友誼を結び、同盟を目前にした勢力であり―――今では、木の葉の最も巨大な敵となった里。

 雲隠れの三代目雷影は、歴代最強と名高く、木の葉の忍びたちを次々に葬り去り、勢力の拡大を続けている。雷遁を得意としながら、その弱点属性である風の忍術のことごとくを受け付けないそのあまりにも強靭な肉体は、三代目火影の右腕であり、風遁のスペシャリストである志村ダンゾウをして、防衛線を維持、あるいはじわじわとした後退に徹さざるをえないほどのものであった。

 そんなダンゾウも、長引く戦乱に蓄積されていく疲労を隠せなくなり、戦線の崩壊は秒読みにまで差し掛かっていた。

 

 今もなお、三代目雷影は木の葉の忍びの群れの中で、返り血すら浴びぬ無類の速さで暴れまわっている。ともすればその圧倒的な速さは、かの二代目火影に匹敵せんばかり。加えて、あらゆる防護を貫き通す矛を持つ彼を、止めることなど出来はしない。

 レベルが違う。

 ダンゾウは歯噛みする。これを止められるのは、同じく影を負う猿飛ヒルゼンのみ。そう考えさせられ、また己とヒルゼンの力の差を痛感する。

 仲間の断末魔は、聞き飽きた。今もまた一つ、命が失われた。たった一人の忍びに、木の葉の前線は壊滅へと追い込まれている。

 

 ―――今日が最期かもしれん。

 

 そんな弱音が、ダンゾウの胸中を過る。その圧倒的な身体能力は搦め手を寄せ付けず、ただただ純粋に強い―――三代目雷影を前に、もはやなすすべなどありはしなかった。

 

 ダンゾウが雲隠れの忍を斬ったとき、仲間の断末魔を聴きつけたのか、三代目雷影の視線が、ダンゾウを射抜いた。憤怒に染まった表情。

 次の瞬間、三代目雷影の姿は消え、再び現れたとき、ダンゾウの目前に、抜き手が迫っていて―――。

 

 風を斬る音がした。

 痛みはやってこない。

 

「遅くなった」

 

 自分が誰かに抱きかかえられていて、それがあの千手畳間で、自分が畳間に命を救われたのだと気づいたのは、その声を聴いてからだった。

 

 周囲を見れば、わらわらと現れた無数の畳間が、生き残った木の葉の忍たちを同じように抱えていた。

 景色が変わる。それは見慣れた木の葉隠れの里。歴代火影の顔岩を仰ぎ見れる広場だった。

 

「これは……、飛雷神で飛んだのか?」

 

 恐らくは影分身であろう。己を抱える畳間は、静かに頷くと、ダンゾウを敷物の上に降ろした。周囲を見れば、雲の前線で戦っていた仲間たちが、駆け付けた多くの医療忍者と思しき者たちに治療を受けて始めているところだった。

 

「三代目の命で、一旦、皆を里へ戻した。治療が済めば再び飛雷神で戦線へ戻ることになる者たちもいると思いますが、それまでは久しぶりの里です。ゆっくり休んでください。皆が戻るまで―――オレが食い止める」

 

 静かに言った畳間の雰囲気が、前とは明らかに変わっていて、ダンゾウはただ黙ってうなずく他無く、蓄積した疲労ゆえか、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

「木の葉の昇り龍。渦の負け犬が何の用だ」

 

 雷影の煽りに、しかし畳間は静かに敵を見据えた。

 今の畳間に油断は無い。あるのは、決して負けぬという意思。役割は、徹底した時間稼ぎ。1人で敵うか分からない。1人で敵う必要も無い。もう渦隠れの時の様なミスは犯さない。

 

「秘術・樹界降誕」

 

 畳間の姿が、沸き立つ樹界の中に消える。同時に、あるいは雷の速さかと誤認するほどの速さで、雷影が突撃する。怖いものなど何もないと言わんばかりの、迷いの無い突撃に、樹々はなぎ倒された。

 雷影の抜き手が畳間に突き刺さり、その瞬間、分身だった畳間の体が樹木へと変化し、雷影を縛り上げた。雷影はそれを力任せに弾き飛ばすが、その一瞬の隙は、雷影の頭上から無数の挿木を降り注がせた。

 しかしそのすべてを雷影は弾き落とし、ぎょろりと目を蠢かせて、畳間の姿を追った。畳間の姿を捉え、再び、雷影の姿が消える。雷影の抜き手が畳間に突き刺さらんとした際、寸前のところで畳間の姿が消えた。

 空ぶった雷影が、地面に足をめり込ませて急停止する。

 じろりと畳間を睨み付け、雷影が言う。

 

「ワシの速さ……単なる瞬身で上回れるものではない。二代目火影の時空間忍術か」

 

 答えない畳間に、三代目が首をこきりと鳴らした。

 

「どこぞに仕掛けたマーキング、すべてをぶち壊してやるわ」

 

 雷影の狙いは正しい。畳間の狙いが時間稼ぎであるならば、この場のマーキングすべてを壊されたとき、畳間は相当な後方へ飛ばざるを得なくなり、時間稼ぎどころの話ではなくなるからだ。

 瞬間、疾風が舞った。絶えず動き回る樹界の触手をものともせず、雷影は己を阻むすべてを打ち壊しながら、畳間へ攻撃を仕掛けつつ、畳間の仕掛けたマーキングを探す。

 しかし畳間は樹界の規模を拡大し、仕掛けたマーキングを巨大な森の中に隠した。あるいは砂漠で砂金を探すかの如き所業を迫られる雷影だったが、しかし逃げるという選択肢は無かった。ようやく押し上げた戦線ということもあるが、このまま畳間を野放しにすれば、自陣が大被害を受けることは想像に難くなかったからである。

 

 一つ、雷影がマーキングを見つけた。雷影がそれを抜き手で破壊しようとしたとき、きん―――と、鉄が鳴った。後頭部を刃物で斬られたのだと雷影は気づいたが、鋼の肉体がそれを防いだ。手を振り回し、背中の畳間を殺そうとしたが、すでに畳間の姿は消えていた。

 苛―――と、雷影が舌を打つ。

 

 しかし雷影は止まれない。

 

 戦いは、長引いた。

 畳間を見つけては突撃し、しかし寸前のところで”飛んだ”畳間に躱される。マーキングを見つけて破壊しても、その瞬間に妙な重圧がかかり動きが鈍り、その隙に雷影は一撃を貰った。体に傷はつかないが、その一撃は雷影の精神を蝕んだ。

 

 

―――なんつー速さだ……。時空間忍術も使ってないのに、ずるいよー。飛来神に反応するってどういう反射神経してんの。あんた写輪眼でも持ってんのか。

 一方で、畳間が余裕だったかといえば、実のところそうではない。ポーカーフェイス、悟られぬように無表情を貫いていたが、内心ではぎりぎりの綱渡りをしている気分である。隠れても隠れてもまるで場所が見えてるかのように、的確に急所を狙って突っ込んでくる筋肉の威圧感。じわじわ破壊されるマーキング。一生懸命作ったマーキングを施した忍具が無残に破壊されていくのは、精神的にも辛かった。

 

 戦いが始まって、日が暮れ始めたころ、互いがまるで体力的には消耗をしていないことを知ったのは、雷影の頭上に、巨大な土塊が落ちて来た時だ。いうなれば山一つが投擲されたかのようなその一撃を、雷影は指先に集めた雷のチャクラで穿ち、地中を泳ぐようにこれを乗り越えた。

 さらに戦いが続き、日が昇り始めたころ。日光を遮るように、再び山が降って来た。雷影はそれを再び砕き割り、絶句する。その向こうから、木の巨人が尻餅を付くように落ちて来たからだ。

 雷影は木人の下敷きになり、姿を消した。

 

 畳間は雷影が地面にめり込むのを、藪の中から見つめていた。じっと様子を見る。しばらくして、がりがりと何かを削る音がして、また少しすると、木人の脳天をぶち抜くように、雷影が中から飛び出して来た。怪我と言う怪我はしていない。土埃すら、チャクラの鎧で弾いたようだ。

 

「聞いてたけど、とんでもなく頑丈だな……」

 

 呆れたように言う畳間。雷影は頭に血が上っているのか、苛立たし気に木人の頭を蹴り飛ばした。木人の頭部が畳間の方へ飛んできたのを見て、頭に血が上っているわけではないということを理解し、畳間は再び”飛んだ”。

 畳間が真綿で首を絞めるように雷影を殺そうとしているのではなく、時間稼ぎに徹しているということを雷影が察しても、雷影が撤退は出来なかったのは、雲へ続く方面が、畳間の樹界と、そして戦いの中で放たれた火遁によって引火した巨大な業火の壁に遮られていたからだ。前門の龍、後門の炎である。帰還するには、畳間を突破し、回り込まなければならない。

 

「ここまで厄介だとはな……。無鉄砲な若造だと聞いていたが……」

 

 長引いた戦い。気が付けば、三度目の夜を迎えようとしていた。

 底なしのスタミナを誇る三代目雷影も、さすがに疲労の色がちらちらと見え始めて来た。一方畳間はといえば、雷影は知る由も無いが、木遁による妨害を影分身に任せ、仮眠を取る時間すら設けている。知れば激怒すること間違いなしである。

 4度目の朝が訪れたとき、戦況は動いた。

 十分な休息をとった畳間の全力―――樹界より無数の影分身が飛び出し、空を覆った。その数およそ3千が一斉に雷影に襲い掛かったが、雷影はそれらすべてをさばき切る。

 さすがに肩で息をし始めたころ、雷影が最後の影分身を突き殺し―――煙の晴れた先には。巨大なチャクラ槍、それを限界まで引き絞った須佐能乎の姿。

 あれはまずいと逃げようとする雷影を、畳間の万華鏡写輪眼が捉える。視界の一点に重力場を作り出し、敵をその場に釘付けにするその瞳術は、対千手においても活躍した、うちはイズナの切り札。千手扉間がその対抗策として、文字通りその場から消える”飛雷神の術”を開発した際は歯ぎしりをしたものだが、雷影にその重力場より逃れる術は無い。

 

「しまっ―――」

 

「―――螺旋槍」

 

 チャクラの槍が回転する。限界までしならせた腕が、槍を解き放つ。

 雷影が重力に抗い、両手をクロスし防御を固める。

 

 ―――激突。凄まじい轟音。後方で燃え盛っていた炎が薙ぎ払われるほどの衝撃を、しかし三代目雷影は耐え抜いた。

 雷の鎧は撃ち抜かれ、上腕の肉は半分消し飛び、骨が見えてさえいる。しかし雷のチャクラが槍の軌道を逸らしたのか、雷影の肩は抉れども、致命傷とは言い辛いものだった。

 

「木遁……」

 

 雷影の足元から幹がうごめき、足元を絡めとるように纏わりついて、上体へと這い上がっていく。

 水影の時のように何かあるかもしれないと、決して近づくことをしない畳間に、雷影が舌打ちをする。近づけば、足で貫き殺そうと思っていたからだ。

 雷影が遂に封じ込められようとしたとき、畳間は横に気配を感じ、須佐能乎を展開した。須佐能乎が揺れる。視線を向ければ、雷影を小さくしたような男が、須佐能乎を殴りつけている。雷影の息子だろうか。年若い。まだ20にも届かないだろう。その実力は親には遠く及ばない。

 畳間の須佐能乎を打ち破れないと悟ったのか、男は距離を取り、雷影の下へ向かう。男は雷影には及ばぬまでも、それなりの速さで雷影を拘束する木々を打ち払い、その体を攫った。

 

「止まるな!」

 

 雷影が叫ぶ。男の足元に重力場を作ろうとしていたのがばれていたらしい。雷影の叫びに、男は雷影を抱えたままに走り回る。

 

「親父どうするんだ!」

 

「退くぞ。……勝てん」

 

 男は、雷影の息子のようだ。男は雷影の言葉に絶句し目を見開いた。ちらりと畳間を一瞥し、悔し気に歯を噛みしめると、煙玉を放ち、その中へと姿を消した。

 追えば、殺せるかもしれない。父と母の仇だ。以前の畳間ならば、迷うことなくその逃げる背を負っただろう。だが、いま必要なのは、三代目雷影の首ではない。今三代目雷影を失えば、あの血気盛んな息子は木の葉憎しで染まり、どちらかが滅びるまで続く泥沼の戦争となるだろう。戦争を終わらせるには、事後処理をするための相応の”頭”が必要だった。

 

「……任務は達した。三日三晩。それだけあれば終わるだろう」

 

 ふうと息を吐いた。

 すっと、須佐能乎を消して、畳間が紫の外套を翻す。

 畳間が雷影を釘づけにしている間、別動隊であるアカリの部隊が雲隠れ本陣を襲撃している。成功していれば、雲隠れの撤退は免れない。作戦は成功しただろう。

 アカリがしくじるとも思わんと、畳間は戦場に背を向け、その場から”飛んだ”。

 

 

 

 

 雲隠れ撤退。

 その報告は、木の葉の里を大きく沸かした。成し遂げたのは、落ち目だった木の葉の昇り龍。そして人気急上昇中の”木の葉の青い鳥”。

 終末の谷の戦いより戻った畳間は、アカリの付き添いの下、三代目に「ごめんなさい」と頭を下げて、改めていち忍として使ってほしいと願い出た。互いにぼろぼろの2人を見て、またかつての素直さを取り戻した弟弟子の姿に、ヒルゼンはくしゃりと破顔した。その後数日間の休養を経て、2人は雲の前線に参加。その戦線を押し上げたのである。

 

 畳間との交戦で三代目雷影が負った傷は大きく、その間隙を見逃さない木の葉側は、畳間とアカリの奮戦もあり、奪われた拠点のほぼすべてを取り戻すことに成功。一カ月をかけて、遂に、雲を国境まで押し戻した。

 その数日後、雲隠れより休戦協定の打診があった。反発する者も出たが、ヒルゼンはそれを受け入れることを決め、三面攻勢を余儀なくされていた木の葉隠れは、砂隠れ一点に集中できる状態にまでその戦況を回復させた。

 

 その後、畳間は以前の猪突猛進ぶりは鳴りを潜め、徹して雲隠れの前線に居座り続け、その動きを牽制し続けた。縄樹たちを失う原因を作った砂隠れの里との決戦が始まると聞いても、畳間は静かに頷くだけで、それ以上を聞こうとしなかった。

 霧、雲という大敵が消えた木の葉隠れの前に、国力で大きく劣る砂隠れが勝る通りなどなく―――畳間が参戦することがないまま、砂隠れの里は岩隠れの里の仲介を経て、木の葉隠れへの休戦を望んだ。中立の小さな里で五影会談が行われると聞かされても、畳間はずっと、雲隠れの国境線で、里を守るために鎮座し続けたのである。

 

 第二次忍界大戦―――ここに終結。

 

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